二次創作小説(紙ほか)
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- ハリー・ポッター 科学を舐めないで
- 日時: 2018/07/20 12:52
- 名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)
ハリーポッター 科学を舐めないで
11歳の少女、クレアレネッサ・オリヴィア・ブランドンは表向きにはアラベラ科学研究所の爆発に巻き込まれて行方不明。でも本当はカーガティ・ヴィオールという偽名で傭兵として各国情報局から汚れ仕事を引き受けるベテランの暗殺者だった。
そんな彼女にはある日本名、クレアレネッサの名前で手紙が届く。差出人はなんと自身を魔法使いと名乗る訳の分からない魔法学校長だった。
どうして名前を知っているの? >>01
科学 対 魔法 >>02
信じたくない、信じれない >>03
計算の上での偽善者、ダンブルドア >>04
入学までの幽閉 >>05
ペトリフィカス・トタルス >>06
悪夢の体現 >>07
魔力の暴走 >>08
血の味と動揺 >>09
回想と孤独 >>10
全教師との対面 >>11
国際指名手配犯と愛→sideダンブルドア >>12-13
組み分けの儀式 >>14
人脈→権力とガールズトーク >>17-18
魔法界の時計事情 >>19
初めての授業 >>20
地下室の記憶 >>21
苦しみと嘆き >>22
状況確認 >>25
血に飢える >>26
噂話 >>27
邪悪な意識 >>28
ホグズミード村 >>29
※「地下室の記憶」の内容を一部改変させて頂きました。
- ペトリフィカス・トタルス ( No.6 )
- 日時: 2018/03/30 09:05
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
「断固拒否するわ。」
クレアレネッサは腕を組んだ。
マコグナガルは厳しい顔で言う。
「塔に行かなければなりません。今すぐにです。」
あの初対面の人を幽閉しようとする訳?
「変人に用は無いのだけれど。」
スタングレネードを使ったら逃げられるかしら。やってみましょうか。
マクゴナガルから見えないように耳栓を取り出すと、クレアレネッサはそっと服のブローチを外した。
そのままブローチの裏にあるピンを引き抜き、マクゴナガルに投げつける。
素早く耳栓を着け、目を閉じてスタングレネードの脳を揺らすような効果が終わるのを待つ。目を閉じ、耳栓をしても近距離だと影響を受けてしまうのだ。
ダンブルドアが魔力酔いと言っていた現象であまり素早く行動出来ないけれど、スタングレネードならある程度は効いている筈。
「ミス・ブランドン、失礼ですよ。」
マクゴナガルは変わらない姿で立っていた。老人もクレアレネッサをじっと見ている。
クレアレネッサはまた舌打ちをした。
クレアレネッサは考え込んでいた。銃は効くかもしれない。あまり影響せずに相手に自分の装備を見せるだけになるのは困るけれど。
マクゴナガルは素早く棒切れを振った。
「ペトリフィカス・トタルス、石になれ。」
クレアレネッサは考え込んでいた数秒の間で手足がぴったりと胴体に付いた。身体が全く動かなくなる。脳以外の部位は眼球も含めて全く動かせなかった。
- 悪夢の体現 ( No.7 )
- 日時: 2018/03/30 09:20
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
身体が下から掬われる様な感覚がした。クレアレネッサは咄嗟に防御の姿勢を取ろうとしたが、身体は全く動かなかった。身体が浮いているのかもしれない。
そんなばかな。クレアレネッサは劣等感に浸っていた。これも魔法の仕業だろうか。こんな事が出来るのなら自分に元から勝ち目は無かった事になる。
ミス・マコグナガルはクレアレネッサの手を掴むと、またパイプに押し込まれる様な圧迫感があった。景色がぐるぐると周りはじめる。
目の前が真っ白になっているのを傍観しながら、クレアレネッサはまたか、と諦める様な気分になっていた。
気づいたら石造りの壁の部屋に来ていた。小さな窓が幾つかと、ドアが一つ。
魔力酔いとやらがまたクレアレネッサを襲う。いつの間にか身体は動くようになっていた。すぐさま冷たい床に倒れ込んだ。身体が酷く怠い。息が上手く出来ずに詰まっている。あの老人の居た部屋の時よりも更に酷かった。
クレアレネッサは吐き気を必死に抑えた。スタングレネード等比にならないくらいの脳が揺らされる感覚がする。周りの物の輪郭がぼやけ、回っている。頭が割れそうな痛みに悩まされ、クレアレネッサは呻き声を上げた。
周りの景色が真っ黒に塗りつぶされていく。マクゴナガルの驚いた顔が一瞬見えた。
気を失ったはずなのに、ぐるぐると回っている様な感覚がした。どの方向が前や後ろ、上、下なのか全く分からない。
今までに任務中に受けたことのあるどの拷問よりも悪夢の体現に近い気がした。
- 魔力の暴走 ( No.8 )
- 日時: 2018/03/30 10:41
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
何時間経ったのかも分からない程長い悪夢の体現が不意に終わった。目の前が段々と明るくなっていく。
何かの輪郭が動いていた。そのままぼやけていた輪郭がはっきりする。クレアレネッサは眩しさに目を細めた。
「意識が戻ったようですね。」
知らない女性が片手にゴブレットを持って言った。博物館のスタッフか何かだろうか。
ダンブルドア、マクゴナガルとスネイプが勢揃いしていた。クレアレネッサは身体を固くした。
また魔法で金縛りを掛けるつもりなの?
クレアレネッサは悪夢を思い出した。いつの間にかベッドに運び込まれていた様だ。ここはダンブルドアの言っていた医務室だろうか。
クレアレネッサはホルスター等が全て無くなり、患者衣になっている事に気が付いた。
「銃は、貴方たちが持っているのかしら?」
スネイプが苦い顔をする。マクゴナガルも顔を顰めた。
「意識が戻って一番に武器の心配をするんですか。その前に自分の心配をなさい。」
自分が姿現しとやらで塔まで運んだのが悪いのに、偉そうに。
「心配は無用よ。貴方たちが魔法を掛けなければね。」
クレアレネッサは上体を起こすと4人を冷たい目で一瞥した。
まずい事になった。武器が取り上げられているなんて。少なくとも今は逃げられない。クレアレネッサは大きく溜息をついた。
「入学勧誘は、人を誘拐してきて幽閉する事では無い筈よ。そもそも、私に入学する権利は無い。」
今まで通りの生活をしているので一杯なのに、これ以上学費なんか払えない。しかも入学すれば仕事が出来ないから更に学費が払えない。
「私は行方不明者って言う事になっているのに、見つかるじゃない。第一両親も居ないし一人暮らしで戸籍も無い。手続き辺りのややこしい事も出来ない。学費は払えない。これでも入学しろって言うの?」
マクゴナガルはてきぱきと説明する。
「奨学金制度が適用されれば、7年分の学費を半分払うだけで済みます。それに孤児の入学はこれまでにもありましたし、戸籍が無い児童の場合もそうです。偽名で入学する事も許可するそうです。」
どうしてそんなに入学させたいのだろう。どうしても入学させるつもりなら入学してすぐに途中退学した方が良いかもしれない。
クレアレネッサはうんざりした顔で髪を払いのけた。
「分かったわ、入学すれば良いんでしょう。正直に言って、魔法なんかを勉強する気には慣れないのだけれど。」
ダンブルドアは不思議そうに首を傾げた。
クレアレネッサは怒りを抑えるように手を握り締めて言った。
「今まで見た魔法を使えば、暗殺なんかせずに生きていけた。魔法が使えたとしても、喜べないと思うわ。」
クレアレネッサは言いながらきつく手を握り締める。血が手首に垂れた。
バン、と大きな音がして部屋の窓が割れる。カーテンがびりびりに裂け、ベッドや椅子が物凄い勢いで浮くと、クレアレネッサを中心に回転していた。
- 血の味と動揺 ( No.9 )
- 日時: 2018/03/30 14:59
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
ダンブルドアが杖を一振りすると壊れた窓や家具が全て元に戻った。
クレアレネッサは酷く動揺した様子で頬に走った長い傷跡をなぞっていた。爪痕が付いた手を開き、また固く握り締める。
クレアレネッサには気に掛けている事があった。彼女は密かに血の味を気に入っていた。だから手首に垂れた血を見た時、魔力が暴走して部屋が滅茶苦茶になっている事にも気が付かず目に見えて動揺していた。
「大丈夫かの。」
ダンブルドアが癪な程呑気な笑みを浮かべた。クレアレネッサは慌てて動揺を打ち消すと無表情になった。
「何の事かしら。」
ダンブルドア、マクゴナガル、スネイプ以外の人物がゴブレットを掴み、急かすように言った。
「さあ、彼女は病み上がりなんですから早く。これを飲みなさい、ミス・ブランドン。」
入学させる相手に劇薬は飲ませないだろうと思うが、念のため香りを確かめる。
舌先に少しだけつけて確かめるが、物凄くまずい以外に何物でも無かった。そのまま一気に流し込むと、どこからか煙が出ているのが見えた。
「耳?」
耳から煙が出ている。思わず顔を歪めるとスネイプが口角を上げているのが見えた。
クレアレネッサは凍て付く様な視線でスネイプを一瞥すると、諦めた気分で毛布を被った。
- 回想と孤独 ( No.10 )
- 日時: 2018/03/30 21:33
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
耳の煙が無くなったころ、あの女性は名前を名乗った。
「ポピー・ポンフリーと言います。初めまして、ミス・ブランドン。」
一通りの挨拶を終え、健康状態を確かめた後、やっとクレアレネッサは解放された。
「フランス、ツィトリナ孤児院在中、ミルドレット・マデリラ・アールチェ、11歳、女性。これで良い?」
彼女がこの狂った学校で使う偽名だ。ダンブルドアは頷いた。
「それから、念のため学校内では変装するわ。紅い目は目立つから。これも良い?」
ダンブルドアはまた頷いた。マクゴナガルは言った。
「着いて来なさい、ミス・ブランドン。塔まで案内します。」
暫く複雑な廊下を歩いたが、階段が蠢くのを見てクレアレネッサは道順を覚える事を放棄した。
「着きました。読みたい本等がありましたら、しもべ妖精のアルジーに言いなさい。」
クレアレネッサはマクゴナガルが退室するのを見届けた途端、古風な天蓋付きのベッドに倒れ込んだ。
医務室で睡眠を採ったとはいえ、日の高さからしてあまり時間は無かった様だ。そのまま彼女は眠りに引き込まれる。
___クレアレネッサは冷たいコンクリート製の部屋に倒れていた。身体が血だらけなのは分かる。でも痛みは無かった。これは、6歳の時の記憶だ。趣味の悪い茶色の高級そうなスーツの男に鞭打たれている様だ。
そうだ、確か私は奴隷だったのだ。何かをして、罰を受けている。何かとは、何だろう。
景色が変わって今にも崩れそうな小屋の中になった。3メートル掛ける3メートルほどの広さの部屋に六人でぎりぎりベッドに収まっている。ふと、誰かの首筋が見えた。
記憶の自分が首筋に尖った歯を当てる。誰かが悲鳴を上げ、私はまた罰を受ける。いつも、そう。
そうだ、私は吸血鬼だったんだっけ。クレアレネッサは、何かを諦めたように思った。___
そこで、悲鳴を上げてクレアレネッサは目を覚ます。見ると、小さな窓から見える景色が暗闇に包まれていた。随分と長めの仮眠だった様だ。
不意に、思い出したくない事を夢で思い出した気がして、クレアレネッサは眉を顰めた。
むしゃくしゃした気持ちを収めようと、ナイフでも投げようかと思う。
我ながら物騒な趣味だと、クレアレネッサは乾いた笑い声を漏らした。何でも無いような表情をしているが、スラムの夜の煩さが実はかなり恋しいらしい。
ああ、武器は全て取り上げられているんだった。アルジーとやらを、呼ぼうかしら。
「アルジー!」
何となく、試しに声を上げてみる。魔力酔いのせいか、まだ微かに眩暈がした。ゆっくりと立ち上がる。
いきなりベッドと椅子、テーブル以外に特に何もない部屋にバチン、と大きな音がした。警戒して振り向くと、クレアレネッサは思わず後ずさりする。
「何者?」
何処から来たのか、という疑問を飲み込み鋭く尋ねると、アルジーは戸惑ったようにテニスボールのような大きな目を瞬かせて言った。
「アルジーでございます、お嬢様。何をご要望でしょうか。」
「ナイフ。それとぬいぐるみ。」
即答すると、アルジーは微妙な顔をして後ずさった。
「申し訳ありませんが、ご主人様に武器の持ち込みを禁じられておりますのです。」
「なら、小さめのぬいぐるみと針。」
またもや即答するとアルジーは大きく頷き、バチンという音を残して消え去った。あれも魔法だとしたら、杖を使っていないのは何故だろう。クレアレネッサはベッドに倒れ込むと、長い溜息を吐いた。
またもやバチンと音がする。アルジーは裁縫針やまち針の入った箱と、両手に乗るくらいの小さめのテディベア。
クレアレネッサは髪を跳ね除けて立ち上がると箱とテディベアを受け取った。
「ありがとう。」
アンジーはクレアレネッサが怖いのか逃げるようにバチンと音をさせるとすぐに消えた。
「一本目。」
クレアレネッサはテーブルを引きずり、テディベアを部屋の出来るだけ遠くに置くと自分は壁に付くほど後ろに下がった。針を取り出し、構え、勢いよく投げる。
暫く針を投げ続け、テディベアの心臓に当たる部分が針だらけで綿がはみ出している光景を眺める。
また針を投げていると部屋のドアが開いた。集中していたため、クレアレネッサは気づかない。
最後の針をテディベアの眉間に投げると、クレアレネッサはやっとスネイプが不機嫌そうにドアの前で立っているのに気が付いた。訓練中を見られていたと気づき、思わず苦い顔になる。真剣だった事もあって、若干恥ずかしいのだ。
「夕食だ。」
スネイプはそれだけ言うと、ドアの前でじっと立っていた。着いて来いということだろうか。