二次創作小説(紙ほか)

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ダメ同士、愛してやまない
日時: 2018/09/24 05:50
名前: だー (ID: RO./bkAh)

可愛い可愛い切原赤也くんがいつの間にかただのヤンキーと化した!

Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.15 )
日時: 2018/10/08 08:15
名前: だー (ID: RO./bkAh)

「切原に話かけに行かんの?」
「え、遠慮しとくわ」

祐花は廊下で大きいサイズの茶封筒を渡される赤也を見つけた。なんやろ、気になるけど。でも、私は今まで生きててたくさんの人に取り返しのつかないことをしてたらしい。そして、これからそのツケが生きてて回ってくるかもしれない。だから、私が切原くんを好きになる資格なんか…

「行ってきなやー!」

祐花がボーってしていると、そのまま友人らに引っ張られて赤也の目の前まで強制連行された。

「何?」
「う、ううん。なんかハゲ(先生)と話しとったから、気になっただけや」

最大限笑って、ふざけて茶封筒をのぞき込んでみた。切原くんはまた無視して教室に入ろうとした。

「ちょっと!あんたやってること、いじめやん!」
「無視することないやろ!」

赤也に掴みかかる形で、祐花の友人らが飛び出してきた。赤也はため息をついて席に戻った。いじめ、いじめって、何なん。別に悪いことってか、ただ面白いことに笑て、嫌なもの汚いものに触ろうとしないだけやろ。何が悪いん、私、やっぱ一方的に「いじめしてた」とか言われとるだけやんか。なんも気にすることやないやん。さっきまでの祐花の焦りと自負に満ちた表情に代わり、いつもの笑顔の祐花に戻った。

「いいわー、もう行こ」

祐花は友人を宥めるようにして教室へ帰った。

Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.16 )
日時: 2018/10/08 21:02
名前: だー (ID: RO./bkAh)

さやかは自分の住むアパートに帰ろうと、電車を降りた。介護の専門学校を出てまだ1年も経っていない。新米だし、介護の職場ははっきり言うとあまりよろしい環境ではない。人間関係も面倒で、交通費も出ないときがある。

「あ、」

改札口を抜けて一際人が溢れかえっていた。さすがに肌寒いので、立ち止まってマフラーを巻くと目の前に切原赤也くんがいた。今月の初めから私が出向いている切原さんのお孫さん。切原さん家に行くとほとんど仕事をしていないし、何より切原さんの息子さんからの契約らしいので別にご本人が希望された訳では無いらしい。赤也くんも高校生だからいっぱいご飯食べるだろうし、私の仕事と行ったら本当にそれくらい。

「…どうも」

学校帰りの赤也は学ランで、特に着崩すことも無く第1ボタンだけ開けている。ごつい大きなリュックを背負って、ちょっとオシャレなスニーカーを履いている。なんて、健全な高校生だろう。

「学校終わったの?」
「まぁ…さやかさんは?」
「私も仕事終わり」

赤也はさやかが両手に抱える買い物袋が目に付いた。一瞬、軽く深呼吸をすると口を開いた。

「荷物、重そう」
「え?」
「持ってきますよ」

さやかの両手から買い物袋を剥ぎ取る形になった。さやかの驚く表情を見ることもなく、赤也はずんずん歩いていってしまった。赤也にとって荷物はそこまで重くなかった。

「赤也くん、家あっちだよー!」

さやかに呼び戻された。10分ほど歩いたところでさやかのアパートがあった。


Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.17 )
日時: 2018/10/10 21:20
名前: だー (ID: RO./bkAh)

さやかさんのアパートは2階でお世辞にも綺麗とは言えない外観だったけど、玄関が開くと中はシンプルな内装だった。

「ありがとうね」
「はい」
「なんか…家まで荷物運んでもらって突き返すのも申し訳ないや」

上がってけってこと?赤也は自分が不覚にもじわじわと赤面している気がした。「ちょっと休んでっていいよ」言われるがままに靴を脱いで、少し軋んでいるフローリングに足を付けた。

「お邪魔します」

ベッドと小さなテレビ、全体的に白い家具で統一されている。テーブルには国家試験対策と書いてある分厚い資料やノート、蛍光ペンなんかが散らばっている。さやかはそれに気がついていそいそと片付け始めた。

「汚くてごめんね。あ、なんか食べてく?」
「いいんすか?」
「うん、お礼だよ」

神様ありがとう。でも、抵抗はないのか。俺だって性別上男だし、見た感じ厳ついだろうし、童顔だけど。だからそんな簡単に男を部屋に入れるものだろうか。分からない。大人が考えることは。さやかはテレビをつけた。ゴールデンタイムの前の夕方のニュースである。アイドルがニコニコ微笑んでインタビューを受けている。

「やっぱ赤也くんは、ああいう可愛い子がタイプ?」

確かそのアイドルと俺は同い年だ。

「俺は…」

年上が好き。と言いかけたところで、言葉が出なくなった。

「ごめんごめん。からかったみたいで悪いことしちゃったね」

さやかはホットココアを赤也に渡した。カップからはゆらゆらと湯気が出ている。

「…ホントだよ」
「そんな拗ねないでよー、可愛い」

可愛くない、俺は。

「ねぇ、赤也くんって頭ふわふわしてるね」
「天パっすよ」
「触ってもいい?」

断れるはずがなかった。「別に」と赤也は平静を装って携帯を開いているとさやかが隣にやって来た。さやかは赤也の頭頂部に手を伸ばして、赤也の髪を軽く抑えるようにぽふぽふと叩いた。

「触ってどうすんの」
「気持ちいい」

俺は多分滅法無愛想だと思われてる。でも、素直に笑うことを忘れてしまった。

「また拗ねた」
「拗ねてないって」
「もうしないからー」
「…どっちが年上かわかんないっすね」

赤也が顔を上げると、さやかとばっちり顔が合った。こうして見るとやはりさやかの方が大人だ。またにっこり微笑んでいる。いたずらっぽく笑うがあどけなさというより、静かに微笑んでいる。さやかは何気なく赤也の耳に顔を近づけた。

「私がお姉さんだよ」

赤也は囁かれた右耳から右半身に鳥肌がたった。あんまり調子に乗るなってことか、俺をからかってるのか。でも、すげーゾクゾクして。その場からしばらく赤也は固まったままであった。何事もなかったようにさやかは台所へ戻った。

Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.18 )
日時: 2018/10/13 08:15
名前: だー (ID: RO./bkAh)

俺はやっぱり餓鬼だ。いくらダルくて日々周りと関わるのが面倒でも、大抵のことに興味はなくても反応するモンは余裕で来る。それが、今回はさやかさんだったわけで。

「切原、答えは?」

そういえば、数学の時間。赤也はずっとさやかのことを考えていて、授業を全く聞いていなかった。いや、いつも呆然と机に座っているだけであるが。

「……2πです」
「せやな」

テキトーに答えたら間に合った。昨日は色々さやかさんのことが知れた。父子家庭だったけど中2のときに新しい母親が来て家がおかしくなったとか、弟が出来たけど結局グレてさやかさんは喜んだとか。意外と気が強いことも何となくわかった。わがままなところもたまにおちゃめなところも。

「切原くん!一緒にお弁当食べない?」

祐花が授業終わりにすぐさま教室にやって来た。赤也の前の席に座り、赤也の机にお弁当を広げた。

「ねぇどこ行くの?」
「別に」

祐花は、赤也がそそくさと表情を変えずに自分から離れていったのを見て、舌打ちをしてまた赤也の前の席に座り直した。うちのどこが嫌なんやろ。しつこいから?わからん、だって振られたこととか男から突き放されたことないからなぁ。弁当を食べ始める。

「祐花ぁ」
「あ、光やん」
「切原お前のこと嫌いそうやもん。こっちで食おうや」

光や祐花の女友達が祐花を呼びに来た。祐花の切原を憎く思うようだが、どこか刹那げな顔に俺は吐きそうになる。分からないわけがない、俺やて人が好きなんやから。アホやな、これじゃただ切原に嫉妬しとるだけやん。

「うちに構わんで。みんなで食べてて?」
「わかった!頑張りやー!」
「ありがとー」

お互い陽気に手を振っていた。途中財前は赤也とすれ違った。赤也の後ろ姿がどんどん小さくなる。

Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.19 )
日時: 2018/10/16 23:10
名前: だー (ID: RO./bkAh)

「高木さん?」
「…実はね、そうなの」

ささやかな声だが、微かに聞こえる。前の席(名前は知るはずない)の女子が頷くと、机の中から何かを取り出した。教科書らしき本が開かれたまま見えたが、教科書というよりただの落書き帳と化している。ちょっと見えた。「死ね」「ブス」「ゴミ」だの赤いインクで殴り書きにされていたり、紙面が破かれているのが目に入った。相変わらず民度低すぎるな。赤也はそれだけ思ってあとは特にすることがなく、ぼーっとしていた。

「先生にはとりあってもらえたん?」

ボロボロの教科書を見つめたまま女子は頷くことなく、首を横に振った。確かに女子2人は可愛いとは言えず、多分陰キャと呼ばれる部類である。しかし2人はクラスで目立った言動は無いはずだ。

「しょうがないね、だって私らずっとこうやん?」
「でも、憎いよなぁ」
「アカンてー。そんなん思ったらあいつらと一緒や」

2人は修正ペンとテープでいそいそと教科書の修復作業を始めた。見ていて胸が痛くなる場面だが、面倒なことに首を突っ込みたくないのでとりあえず屋上に行くことにした。

「お?お前らぁ!教科書直しとんのや?」

財前とその取り巻きが教室のドアから2人に声をかけた。教室一帯は静まり返ると同時に2人は固まったように動けなくなっていた。2人のうちの1人が、もう1人の手を握った。2人は手を握りあったまま、床に顔を向けて肩を震わせている。慣れっこだのなんだの一見平気そうな面持ちだったが、やはりダメだった。

「いってぇ」

切原が席を立つと、すぐ横に立って2人を見下ろしていた財前と肩が触れるくらいにぶつかった。財前はそんなことを言ってあたかも因縁を付けるように、赤也の進先に立ちはだかった。いつでも余裕にだるそうな顔しやがって、腹立つわ。

「謝れや」
「…」

赤也は財前の横を通り過ぎようとしたが、財前が歩き出した赤也の足に自分の足を妨げるように出して、赤也はそれに突っかかり転びそうになった。

「無視せんで?」

財前は何やらニヤついて赤也に言葉をかけると、途端に机がなぎ倒される音が聞こえた。見ると女子2人の机があらぬ方向を向いて床に置かれている。

「死ねば?」
「ブスがイキってんのばりキモイんのやけど!」

気がつけば祐花やほかの女子が加わって、教室にいた男女はそれを見る形で周囲に野次馬のようにただ立って見ている。なんだこいつら。ただ可哀想だって見てるだけで、結局助けてくれやしなかったんだ。あの、また絶望的な感覚が襲ってくる。嫌で、嫌で。居場所なんかなくて、でも当たり前にヘラヘラしなきゃいけなかったんだ。なんで、

「っ!」

気がついたら財前は床に腰を下ろす形で口元からは血が流れていた。

「光殴ってんなや!」

来るな、来るな。赤也は必死で拳や蹴りを避け、その度に1人ずつ起き上がってくることはなくなった。傍から見ればただの喧嘩で、赤也が1人で4、5人のDQNをなぎ倒しにしているようにしか見えない。目は赤く充血したようで、瞳孔が開き口で荒い息をしていた。


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