二次創作小説(紙ほか)
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- ダメ同士、愛してやまない
- 日時: 2018/09/24 05:50
- 名前: だー (ID: RO./bkAh)
可愛い可愛い切原赤也くんがいつの間にかただのヤンキーと化した!
- Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.10 )
- 日時: 2018/10/05 06:19
- 名前: だー (ID: RO./bkAh)
「切原、ちょっと付き合えや」
赤也が教室で1人携帯でジャッカル先輩とLINEをしていると、財前とその取り巻きたちが入ってきた。赤也の机の前に立ち止まり赤也を見下ろすような形で。赤也は視線を真ん中にいた財前に合わせたが、再び携帯に目を落とした。財前は大きく聞こえるように舌打ちをしたが、それが本人に届いているのかいないのかひたすら無視されている。
「祐花に手ェ出したやろ」
祐花、なんか聞き覚えのある。確か先週廊下で名前を呼ばれてLINEを聞かれて、俺が断ってそれきりなはずだ。とにかくその祐花とやらとは何も無いので、反論する必要も赤也になかった。
「おい、お前さァテニス強かったんやろ」
「…だからなんだよ」
財前は知ったようにいきなり赤也に話を振ってきた。
「なんで辞めたん?まさか、問題起こしたとか…」
気がついたら財前は机に背中をもたれかかって倒れていた。口の端からはかすり傷のようなもの、血が流れているように見えた。そう、赤也はそう言って財前がニヤついた瞬間、初めて人に手を出して殴りかかった。赤也は瞳孔が開いて小刻み息を荒くしている。我に返るまで、財前の取り巻きたちが怯んで財前を力なくかばいに行ったのが分からなかった。
「…わりぃ」
「てめぇ!光殴るとか死んどけや!」
赤也が焦って呟くように謝るのも掻き消された。赤也の身体能力は全く衰えない、殴る蹴るを避けるのに涼しい顔をしていた。なんだ、喧嘩ってこんなモンかよ。
「喧嘩ってつまんないじゃん」
相手の回し蹴りを避けたあと、赤也はそこから助走をつけて赤也に回し蹴りをし返した。見事に綺麗に当たり、倒れ込んだ取り巻きの1人を見て赤也はため息をついた。俺かて全国3位やで。なんでこいつ、俺のことわからんのや、腹立つわ。財前は、自分が赤也の中で認知されていないことに気がついた。
- Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.11 )
- 日時: 2018/10/05 23:11
- 名前: だー (ID: RO./bkAh)
家に帰ると、やはりあの小さな靴があった。曽祖父はのんびり野球を見て、たまに野次を飛ばしている。
「あ、赤也くんおかえり」
「…どうも」
市山さやかは部屋の掃除をしていた。
「あの、デイサービスって雑用なんすか?」
ヘルパーってひいじいちゃんの世話じゃないの?赤也はふと疑問に思い、さやかに聞いてみた。
「おじい様お元気だからね、ご飯も1人で食べちゃうし洗濯も自分がやるって言っててきぱきやっちゃうの。ね、切原さん」
確かに。曽祖父の野次はまだまだ野太く威厳がある。なんで雇ったんだろ。赤也が曽祖父といて困ったことは食事ぐらいだ。お小遣いは月1万5000円もらって、自身の生活費に当てている。家事は皿洗いだけ。あとは曽祖父がやっていた。
「まだまだ動けるからな」
さやかに褒められご満悦の赤也の曽祖父はいつまでも若いように見える。赤也は二人の会話の間に2階の自分の部屋に上がった。
- Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.12 )
- 日時: 2018/10/05 23:38
- 名前: だー (ID: RO./bkAh)
「赤也くん」
ドアのノック音がした。赤也はすかさずドアを開けると、さやかが立っていた。
「今日の夜ご飯、なにがいい?」
「なんでもいい」
「そ、そう。ありがと」
赤也の即答にさやかはただ頷いて去って行ってしまった。あ、やべ。あとから赤也自身は自分が制服から着替えている途中で、上裸とベルトとチャック全開だったことに気がついた。それにしても、徐々に筋肉が落ちてきた。あれだけ筋肉と体幹を鍛えていたなら、体中筋肉バキバキになるくらいが当たり前だが、運動を辞めて食べるようになっただけなので、縦に伸びた。学校でこないだ測ったら178cm。先輩たちと変わんねぇ。ズボンを脱いだら、とうとう寒さを感じる季節になっているのがわかった。
「さやかさん、またな」
赤也はさやかを送るため、家を出た。さやかの作り置きの唐揚げやサラダが今日の晩御飯だったようだ。
「寒くなってきたね」
さやかはセーターの裾を伸ばして手の甲を覆った。
「俺のでいいなら」
赤也はジャンパーの上着を脱いで、さやかに差し出した。トレーナーにジャージ姿である。
「いいよ、そんなつもりで言ったんじゃないし」
年上の人に言いくるめられてしまうとはこの事だ。赤也はまたジャンパーを着た。
「赤也くんって、何かスポーツやってたの?」
「テニス」
「筋肉すごいなって思ったから」
バッチリ見られてたのかよ。最悪。それよりもさやかのはにかむ姿が目に入った。
「俺ァ普通なんだけど」
「かっこいいね」
ダメだ。赤也は自分が弱い生き物だと確信した。さやかは特に気にする様子もなく、話をしている。21歳で4つ上だが、もちろん赤也の方が背丈は大きい。普段の物静かで決してハキハキした口調ではないが、不意に笑った姿に目が話せないのだ。
「バカにしてるんスか」
「そんなことないよ」
どっちだよ、可愛いって言ったりかっこいいって言ったり。さやかと赤也は駅前まで来ると、
「ありがとうね」
「いえ」
軽く赤也に手を振って改札を抜けた。その小さくなる後ろ姿を呆然と赤也は見ていた。
- Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.13 )
- 日時: 2018/10/07 06:44
- 名前: だー (ID: RO./bkAh)
「年上?」
「そうっす」
仁王は赤也からの着信を、部活後に折り返した。赤也はどうやらデイサービスの介護士に恋しているらしい。赤也曰く
ひかえめ
でも笑うと可愛い
話をしてくれる
4歳上
らしい。
「どうしたいんじゃ」
「え?…どうするって」
赤也は考えた。ただ可愛かったからドキっとしたのか、でもなんで話すのがこんなに恥ずかしいのか、自分でもわからない。赤也はこのようなとき、信頼する人の1人である恋愛マスターの仁王雅治に相談している。
「ははーん、貴様下心丸出しじゃのぉ」
「そんなんじゃないっす」
やはり地元の先輩とは気兼ねなく話すことができるようだ。
「だって、さやかさんそんな風には見えないし…」
「甘いぜよ」
珍しく仁王がビシッと発言をした。
「そういう大人しそうな人はただの清楚系じゃな」
「系は余計」
「赤也はまだまだウブじゃからなぁー」
「違います!」
兄弟くらいの差でこんなに厳しいのか、同級生なら考えてることとか趣味もわかりやすいのに。赤也がアドバイスをもらおうと、仁王に電話越しに呼びかけようとすると「マサくーん」と女の声がした。
「風呂の時間じゃき、すまんな」
「お盛んすねー、あざした」
「プリッ」
通話は切れた。
- Re: ダメ同士、愛してやまない ( No.14 )
- 日時: 2018/10/08 08:00
- 名前: だー (ID: RO./bkAh)
学校はとてつもなくだるい。立海大附属中の偏差値は62、転校した大阪の市立の中学は不明、そして今赤也が通う学校の偏差値は32。ここまでわかりやすく民度の差が出るものなのか。ガラスは毎日割れるし、原付バイクの登校が後を絶たないし、タバコの吸い殻は落ちてるし、近所からも腫物のように扱われる高校である。
「前の中学私立やったんやろ?通りで頭ええはずなんや」
「俺、立海で下から数えた方が早かったっすよ」
教師に廊下で呼び止められ、これまた怪訝そうに振り向いた。教師の方が逆に俯いて、しどろもどろになっている。ったく、いい歳こいたジジイが高校生相手にたじろいでんなよ。
「そうやなぁ。うちの学校よか、編入試験とか受けた方がええよ」
高校に入って初めてマトモな学校の人間に会った気がする。赤也はちょっとだけ話す気が湧いたので口を開いた。
「…例えば、どこ?」
「あぁ…俺が前教えとった高校なんやけど…」
教師が紹介してくれた高校は、府内で平均値の高校だった。府立で、ここならBランの大学までなら入れるらしい。でも進路が決まっていない赤也にとっては、ただこの状況を抜け出すことしか考えられなかった。高校受験時はほとんど何もしなかった。グレたと言うより自暴自棄になり、名前を書けば入れる高校を選んだ迄だ。
「…ありがとうございます」
赤也は先生にとりあえず礼をして、渡された高校の資料を開いてみた。なんだ、俺も腐り切ってないじゃん。学校で初めて口角が上がりかけた気がした。