二次創作小説(紙ほか)
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- 東方夜廻抄 [夜廻・深夜廻]
- 日時: 2023/05/27 09:44
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
※注意
この物語は夜廻・深夜廻のネタバレを含みます。
・オリキャラは出ません。
・独自解釈あり
・微グロ描写
・東方キャラの死ネタ
それでも読みますか?
うん やだ
-プロローグ-
ある夜、二人の少女は離れ離れとなった。二人の少女は大切な物を失った。
山に住み着いていた-縁結びの神-に自殺に追い込まれた少女・ユイは、縁結びの神がいなくなっても尚、ハルと花火を見たこの山に幽霊として存在し続けていた。
しかし、何年か前に春雪異変で結界が緩んだ幻想郷にユイはいつの間にか迷い込んでしまう。
しかも、縁結びの神は生きていた。ユイの体に憑依していた縁結びの神は、ユイから抜け出して、冥界を超えて、幻想郷に逃げ込んだ。縁結びの神は妖怪の山に隠れ、密かに完全復活を遂げようとしていた。
- Re: 東方夜廻抄 15話 忘れられた者は... ( No.15 )
- 日時: 2023/06/11 09:58
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
ハル達は再び夜を廻った。
見慣れたお化け達から逃げながら、山を目指して走った。
-山のトンネル-
トンネルの中にこともが入って行く。ともことハルはこともにゆっくりとついていった。しかし、突然こともの動きが止まった。こともは懐中電灯をトンネルの奥に向けたまま、残念そうにハルに振り返った。
ともこ「どうしたの?」
ことも「ここから先に、山の神様のいる神社があるんだけど...もう」
トンネルの途中で瓦礫が穴を塞いでおり、通れなくなっていた。
ハル「それなら大丈夫」
しかし、こともの声を遮って、ハルが前に出る。ハルはリュックから藁人形を一つ取り出して
ハル「...もういやだ」
グワァァァァァァァ!! ジャキンッ!
コトワリさまを呼んだ。
ことも&ともこ「ハルちゃん!?」
ハル「心配しなくても良いよ。」
ハルは困惑する二人に笑顔でそう言った。コトワリさまはトンネルを塞ぐ瓦礫を粉々に粉砕し、穴を開けた。
ハル「コトワリさま。ありがとう!」
コトワリさま「グワァァァ!」
ハルの声に応えるように鋏の音を鳴らす。コトワリさまは藁人形を切ると、その場から消えていった。
ことも「今のお化けは何...?」
ハル「コトワリさま。私の町にいる縁切りの神様だよ。少し怖いけどね...」
それを聞いても、こともは驚かなかった。
今から会う-山の神-も、元は優しいのに、忘れられたせいで歪んでしまった神様なのだから。
トンネルの奥は、原っぱが続いていた。所々に祠が置いてある。
こともはお守りを、ともこは懐中電灯を周りに向けて、辺りを警戒する。
ハル「どうしたの?」
ことも「昔に来たとき、ここからは山の神様の『腕』が襲ってくるの。」
ハル「腕...?」
ともこ「神様の手下よ。」
ともこの言葉で、ハルは縁結びの神までの道で蜘蛛のようなお化けに会ったのを思い出す。あれも縁結びの神の配下だったかもしれない。
幸い、『腕』がハル達の前に現れる事は無かった。
さらに奥に進むと、石段に辿り着いた。階段には鳥居が何基も立っている。階段前の大鳥居をくぐって三人は歩き始める。『腕』が現れないので、山の神はもういないのかと、こともが不安に思ったが、トンネルに入った時に雰囲気が少し変わったので、力が弱まっているだけだろうと考えた。しばらく歩いていると、ようやく神社に辿り着いた。夜空は曇っておらず、月明かりが境内を照らしていた。お社を囲むように祠がいくつも置かれている。
古びていても大きくて立派な神社だったが、誰も整備していないせいで、境内の地面は砂埃にまみれいた。ハル達がお社に近づく。
その時だった。
ハル「!?」
お社から低い吐息が出てきた。
ことも「ハルちゃん!逃げて!」
ハルは急いでお社から離れようとしたが、もう遅かった。お社の横から二体の『腕』そして、お社から『顔』が出てきた。青白い人間が何人も折り重なったような不気味な『顔』が三人を睨みつけた。
山の神『ーーーーーーーーーーー』
山の神が、いろんな声が混ざったような雄叫びを上げた途端、ハルの視界が変化した。
-紅の世界-
ハル「ここは...!?」
周囲の景色はそのままだが、山の神とハル以外の物が全て赤色になっていた。さらに、ことも、ともこの二人が消えていた。
ハルはすぐに、『顔』が自分を生贄にするために異空間に連れ去ったと確信した。『顔』と共に二体の巨大な『腕』がハルに突進してくる。周りから小さな黒い『腕』も集まってきていた。
しかし、ハルは動かない。その場に立って、ただ『顔』を見つめていたのだ。それに気づいたのか、『顔』はハルに突進する『腕』達の突進を止めて、ハルに近寄った。
山の神『...お前は何を望む』
歪んだ声でハルに尋ねる。
ハル「神様は...死んだ人を生き返らせるの?」
山の神『蘇生は簡単にできる』
ハル「なら...魔理沙さんを生き返らせて!」
ハルの願いは魔理沙を生き返らせる事だった。自分への劣等感と縁結びの神の-声-によって自殺した魔理沙を助けたかった。
山の神『願いには代償がいる。私は...』
ハル「私の左目をあげる。」
山の神『...お前の左目が代償?」
山の神は赤い空を見上げ、ハルを一瞥する。
山の神『では、-左目-を貰おう...安心していい...もう大丈夫』
『腕』がハルが両手を掴んでその場に固定する。完全に動けなくなった所でハルの顔に一体の黒い『腕』が近づく。
山の神『魔理沙は生き返る...安心して良いよ』
『腕』がハルの左目を掴もうとする。
その瞬間。紫がスキマから現れた。
紫「こらこら...物騒な奴に体を売らないでね?」
ハル「え...紫さん!?」
紫「結界を貼って自分の領域を作るとは...力は健在ね。忘れられているのに...」
山の神『ーーーーー!?』
突如現れた紫に困惑していると、境内を全て包むように、空から巨大なスキマが神社を覆った。
紫「そういう神様は大歓迎よ。」
紫は山の神社を全てスキマで包み、どこかへ行ってしまった。
-元の世界-
ハルが消えた後、山で地響きが起こった。
ともこ「嫌な予感がするわ...ことも!山から出るわよ!」
ことも「でも...ハルがまだ神社に...」
その時だった。神社をスキマが包み込んだ。スキマが消えた後には、ぽっかりと大きな穴が開いている。
ともこ「神社が消えた...!?」
いつの間にか地響きは止まっていた。ことも達は、呆然とその穴を見て、ハルの無事を祈る他に無かった。しかし、こともの側に出来た小さなスキマから突然、ハルが帰ってきた。
ハル「痛た...」
ことも「大丈夫!?」
ハル「うん...神様も分かってくれたよ。私の願いを。」
ことも「それなら良いんだけど...」
それ以上は聞かず、ことも達はそのまま山を降りて、家に帰った。
-こともの家-
元々、山の神に会うためにハルはこともの家に訪ねたので、明日の朝にもう帰ってしまうらしい。
ことも「もっと泊まったって良いんだよ?」
ハル「気持ちはうれしいけど...まだやる事があるの。ごめんね。」
ハルはこともと一緒に部屋で寝ていた。帰ったのは午後十一時頃。入浴などを済ませて二人はすぐ寝る事にした。ベッドは一つしか無いので、ハルとこともが一緒に寝ている。
ことも「そっか、そっちでも頑張ってね!」
ハル「うん、ありがとう!おやすみ。」
二人が寝静まった後、よまわりさんが部屋に出た。
ベッドから落ちた布団をかけ直して、二人を見守る。
もう夜にさらわれる事は無い。
- Re: 東方夜廻抄 16話 その山の禁忌 ( No.16 )
- 日時: 2023/06/12 18:59
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-妖怪の山-
スキマによって、山の神は、祀られていた神社と一緒に幻想郷の妖怪の山に飛ばされた。夜の山を満月が照らしている。自分のいる場所が変わった事で、山の神は困惑していた。
紫「まだ困惑しているようね。」
木々の影から紫が現れる。
山の神『ーーーーーーーー』
自分を山から急に連れ出した紫に雄叫びを上げた。配下の黒い『腕』達が木々の裏から現れ、紫に突進して行く。
紫「思い出せないようね。貴方は信仰を失い、誰からも忘れられて、邪神になったのよ。」
-山の神-
隣町の山の奥、古びた神社に祀られていた『顔』の神様だ。
隣町の山を統べる神として、昔は崇められていたが、時代が経つに連れて人々は生贄を与える事に抵抗を感じ始め、災害の危険性からの閉鎖という名目で、山の神を神社ごと、人々は町から遠ざけてしまった。月日が経ち、誰からも忘れられた山の神は、神としての存在意義を失い、ただひたすらに生贄として、隣町の人間を少しずつ、『腕』の配下を使って山の奥に攫っては殺していた。
しかし、山の神も昔は-コトワリさま-や-ムカデの神様-の類の神様だったのだ。
生贄の左目をお供えするなど、確かに、犠牲を伴う神様ではあったが、山の神は、人間の願いや祈りを垣間見て、その願いを叶えるという神様であり、完全な邪神では無かった。
紫「貴方、信仰集めに必死だったみたいね。」
紫は山の神と会話を試みているが、喋っている間も黒い『腕』の攻撃は続いた。
紫「でも、もう信仰集めに心配しなくて良いわ。《境符・四重結界》」
『顔』の周りを結界が包囲する。結界に開けたスキマから『顔』に弾幕を集中砲火された。
山の神『ーーーーーーー』
弾幕に直撃した『顔』が苦しむように悲鳴を上げる。その瞬間、『顔』の横に現れた二体の太い『腕』が結界を強引に引き裂いて、紫に突進した。
紫「おっと...それは予想外だったわ。」
突進してくる『腕』を目の前に作ったスキマに入れ込み、『顔』に打ち返した。
山の神『ーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
『腕』の突進が『顔』に直撃した途端、山の神の配下が次々と消えていった。残された『顔』は、紫をただただ睨んでいた。
紫「まぁまぁ、そんなに怒らなくたっていいじゃない?」
満月の影に重なり、フフフ...と不敵な笑みを浮かべる紫の姿は、冷酷で、妖美な雰囲気を醸し出していた。
山の神『くるな...妖怪の王気取りめ...』
紫「それを言うなら、妖怪の女王ね。」
紫はその場でただ、山の神を見つめてこう言った。
紫「貴方は信仰を求めているのでしょう?人間にまた神として敬われる日を待ち望んでいる。」
山の神『...何が言いたい?』
紫「貴方に-もう一人-の山の神を務めて欲しいの。」
-次の日・博麗神社-
霊夢はここ一週間、神社に閉じこもっていた。
咲夜「今日も出てこないわね...」
神社の前には一人。紅魔館のメイド長-十六夜咲夜-が立っていた。
咲夜「お嬢様も相当動揺してたし...何かあったのね...」
--------
遡る事...5日前
-紅魔館-
咲夜「また異変ですか?」
咲夜はこの日、レミリアに呼ばれて図書館でパチュリー達と会議をしていた。
レミリア「最近、うちの妖精メイドが何の前触れも無く...次々と首吊り自殺しているわ。」
咲夜「自殺?妖精なら生き返るんじゃないのですか?」
パチュリー「それが問題なのよ。」
パチュリーが本を捲りながら、呟いた。
パチュリー「本来、妖精は自然の具現。死んでもすぐに傷を治して生き返るのが普通だけど、首を吊った妖精メイド達はみんな、-魂-を抜かれたように動かないの。」
死んだ妖精メイド達の虚ろな目は、何かから抵抗しようとしている物だったらしい。
レミリア「...恐らく、山に何かいるはずだわ...」
レミリアの運命を操る程度の能力は一種の未来予知であった。レミリアは焦るように、咲夜達に警告する。
レミリア「貴方達...何があっても、妖怪の山に行かない事。良いわね?」
パチュリー「分かってるわよレミィ。」
美鈴「でも...なぜ山に行ってはいけないんですか?...別に私が行くわけじゃありませんよ!?」
レミリア「あの山から...触れてはいけない-禁忌-のような何かを感じるのよ。」
咲夜「私が霊夢に相談してきます。霊夢なら今回の異変も解決できるでしょう。」
咲夜は時を止めて、博麗神社へと向かっていった。
レミリア「...気をつけてね。」
--------
あの日から神社を訪ねているが、声を出しても霊夢が出てくる気配は無かった。本殿には結界が張ってあって、中に入る事はできなかった。
咲夜「はぁ...って、あなたは?」
気づけば、後ろに妖夢が立っていた。
妖夢「こんにちわ、咲夜さん。」
咲夜「こんにちわ。貴方も霊夢に用があったの?」
妖夢「はい...最近、人妖の行方不明が続いているのは知ってますよね?」
咲夜「知ってるわ。うちの妖精メイドも最近、首を吊って死んでいくし...」
妖夢「首を吊る...!?」
咲夜「お嬢様に山に近づくなと突然注意されたのよ。」
妖夢「そうですか...でもおかしいですね。行方不明に死人が出ているのに、冥界の死者は全く増えないんですよ。」
そこで、咲夜の顔が強張った。
咲夜「死者がいないの...?」
妖夢「そうなんです!ここ一週間で新しい死者は一度も冥界に来ていないんですよ...」
咲夜「...死者がどこかで囚われているのかもね。」
妖夢「え?」
咲夜「お嬢様は山が危険だと言っている...もしかしたら山の妖怪の仕業かもしれないわね。」
妖夢「でも...何のために?」
咲夜「それを見つけに行くのよ。」
咲夜は妖怪の山の方に飛んでいく。その後を妖夢が追いかけていった。
咲夜(お嬢様...すぐに戻りますからね。)
しかし、咲夜は知らなかった。人妖がいなくなる異変の正体が、正にレミリアの言った-禁忌-だという事を。
一方その頃、霊夢とユイは居間で座っていた。
ユイ「...霊夢さん」
話しかけても反応しない。魔理沙が消えて、一週間前からこれだった。
ユイ「魔理沙さんが...死んじゃったのはかなしいけど...」
ユイは怖かった。昔、縁結びの神によって壊された家庭。父親が身代わりとなって家を出ていき、最愛の夫という大切な物を失った母親はユイに暴力を与えた。大切な友達、魔理沙を奪われた霊夢も、自分を傷つけてきそうな気がして、喋りかけられなかった。
ユイ「かなしいけれど...閉じこもっているなんて...そんなの!」
ユイは勇気を振り絞って声を上げた。
ユイ「そんなの...魔理沙さんがかなしんじゃうよ...!!」
霊夢「......ユイちゃん...」
その時だった。ユイの持っていた八卦炉が輝いた。
ユイ「え...?」
光は部屋の中を包み込み...
魔理沙「起きろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!霊夢!」
光の中から魔理沙が出てきた。
霊夢「魔...魔理沙!?」
目を擦りながら、目の前の白黒の魔法使いに訪ねた。
魔理沙「それ以外だったらどうするんだよ...」
霊夢「魔理沙ぁぁぁぁ!」
霊夢が魔理沙に抱きついた。膝を崩し、大粒の涙を流す。
霊夢「会いたかったよ...魔理沙...ごめんね...本当にごめんね...」
魔理沙「おっとっと...私もすまなかった...霊夢...」
魔理沙の首には、赤い跡がついている。その跡を擦りながら、霊夢に話す。
魔理沙「私の肉体はあの蜘蛛野郎が持っている。あいつを私に変わって倒して欲しいんだ。」
霊夢「蜘蛛?」
魔理沙「山の麓に小さな洞穴がある。その中の巨大な洞窟にソイツはいる。」
魔理沙の姿がまた消え始めた。
霊夢「魔理沙っ!」
消えていく魔理沙を掴もうとするが、手を出してもすり抜けてしまう。
魔理沙「心配かけてごめん...霊夢。私の代わりに無念を果たしてくれ...」
魔理沙が完全に消えていった。しばしの静寂の後に、霊夢は動き出した。
ユイ「どこに行くの?」
霊夢「魔理沙を殺した奴を退治しに行くわ。待っててね。」
霊夢は神社から飛び出して、妖怪の山へと飛んでいった。一人神社に残されたユイはため息を吐いて、「ハル...」と口にした。
-妖怪の山-
一方で、霊夢より先に洞窟に着いた咲夜と妖夢は、洞穴の前で立ち止まっていた。
咲夜「恐らく...原因はこの奥にいるわね。」
妖夢「そのようですね...」
洞穴から不気味な何かが聞こえてくる。それは触れてはいけない-禁忌-だった。しかし、もう遅かった。二人は縁結びの神の-声-を聞いてしまった。
オイデ...ミンナイッショニキテアゲテ...
- Re: 東方夜廻抄 17話 神への祈りは... ( No.17 )
- 日時: 2023/06/14 22:54
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-守矢神社-
妖怪の山に美しい朝日が昇る。
この神社の-表向き-の神・八坂神奈子は、縁側に座りながら、その景色に感嘆していた。
神奈子「いつになっても、幻想郷は美しいわねぇ...」
その時、目の前にスキマが現れた。煩わしく眉を潜め、スキマから出てくる紫に目を無けた。
神奈子「なんだい...紫。異変でも起きたのか?」
紫「その通りよ。」
まるでその質問を待っていたかのように、紫は笑みを浮かべていた。
神奈子「私らは今回何もしていないけどね。」
紫「...別の神が侵入してきたのよ。」
神奈子「別の神?」
辺りの空気が若干変わる。
紫「貴方には言ってなかったわね...この山の-本当の神-を。」
神奈子「本当の...神?この山にいたのか?」
紫「昔、鬼が山を支配していたのは知っているわよね?」
神奈子「それは聞いた。」
紫「鬼が山を支配していた昔、誰も気付かなかった洞窟が山の麓近くにあるの。」
神奈子「その中に神がいたのか...」
紫「そうよ。名は-縁結びの神-...元から悪縁を結びつける邪神だと思うわ。」
紫の後ろに浮かぶスキマが少し大きくなる。
紫「元々、誰にも信仰されずに祟り神として封印されてた様だけど、里の人間を生贄に一時期、力を獲得した。」
当時、-縁結びの神-は、先々代の博麗の巫女によって、幻想郷から退治されたと言う。
紫「その邪神が今、この山に帰ってきたのよ。」
神奈子「それで来たわけか。霊夢なら倒せそうだがな。」
紫「あの神は知性を持つ生物の心に直接-声-をかけて、精神的に追い詰めるのよ。魔理沙も死んでしまったわ。」
神奈子「魔理沙が......そうか。ならば私が出向いてやろう。」
紫「おっと、貴方に来てもらいたいわけじゃないの...出てきなさい。」
さらにスキマが大きく開いた。中から出てきたのは『顔』だった。
神奈子「ほう...また山に住む神が増えるな。」
山の神『なぜ分かった。』
神奈子「気配で分かるのよ。相当穢れちまったね...信仰が途切れたようだな。」
紫「この『顔』は貴方と同じく、外の世界にいた-山の神-よ。」
神奈子「へぇ、この神も神社で祀って欲しいのか?」
紫「この神の神社は別の所にあるわ。この神社にこの神の分社を置いて欲しいのよ。」
神奈子「私は構わないが、諏訪子がどう思うか...」
諏訪子「別に良いわよ〜神様同士、仲良くしなきゃね。」
紫「決まりね。」
紫はそそくさとスキマに入ってしまった。山の神だけがその場に残された。
諏訪子「それにしても不気味だねぇ...信仰が途絶えて存在意義も失った神様の成れの果てね。」
山の神『......』
山の神は黙り込んだままだ。その時、本殿から早苗が出てきた。
早苗「神奈子様おはようございます!...って、顔!?」
山の神『......人間。』
『顔』の姿に驚く早苗の前に、巨大な『腕』な腕を卸した。
早苗「...もしかして、神様ですか?」
山の神『......神か。』
久々に人間に呼ばれ、山の神はどこか懐かしいように感じた。
神奈子「早苗。この神の分社を今から作るんだ。手伝ってくれないか?」
早苗「はい!...えっとその前に、この神様の名前ななんて言うんですか?」
山の神『我の名は......山の神。』
早苗「山の神?あなたも元々は山に住んでいる神様なんですか?神奈子様達と同じですね!」
そう言って、早苗は笑顔を見せた。その笑顔に山の神は困惑した。
山の神『何故だ。何故......お前は笑顔を向ける。』
早苗「え?」
山の神『私を崇めた人間は皆...頭を垂れていた。』
--------
昔々、人々は、村の安全を祈ってお山に神社を建てました。
人々は立派なお社に向かって、土下座していた。
人々は生贄と左目をお供えしていた。
人々が願う時...皆、口を開けて絶望しながら祈っていた。
人々が願う時...皆、頭を垂れて、手を下に向けていた。
願っていたから、祈っていたから、叶えてやった。
だが、いつの間にか神社には一人も来なくなった。
だから、人々の真似をして誘った。
手の配下を生み出した。顔には生贄をつけて、左目にはお供えされた目を取り込んで、ひたすら待った。
なのに、人間は恩知らずだった。神は誰からも忘れられ、消えかかった。
消えたくないと思った。
誰が祈りに答えた?誰が叶えた?人間は神を称え、祀るんじゃなかったのか?
うそつきめ。
自分を忘れた人間に報いを受けさせようとした。
攫って、捕まえて、生贄にしてやった。
そして、ある時、一人の母親を攫った。その娘は神に挑み、最後には一人で逃げた。やっぱり人間はうそつきだ。
その娘も攫ってやった。
しかし、神は娘を攫った-あの夜-で...一つの疑問を考えた。
娘には妹がいたらしい。妹は姉を救いに神社へ来た。そいつも生贄にしてやろうと思った。だけど、少しの情けもやった。
夜に怯えなくても良いという夢をやった。少女は恐い夜を独りぼっちで廻っていた。生贄になれば、独りぼっちはもう終わりだと言った。夜を怖がらなくても良いと言った。
恐ろしい夜を廻った少女にとっては、最高の願いだった。
しかし...その少女は...
ことも「...私はお姉ちゃんを助けにきたの。」
山の神『......』
ことも「お姉ちゃんのためなら、夜なんてちっとも怖くない。」
少女は神を睨んだ。
ことも「わたしの願いは...」
祠に光を灯して、少女は叫んだ。
ことも「お姉ちゃんを返して!」
山の神『...それが願い...か?』
祈った人間達は皆、死にたくないと叫ぶ者しかいなかった。生贄となれば、未来永劫、死ななくてすむのに、何故?
やがて、少女は全ての祠に光を灯した。忌まわしい太陽の様な光は、神を一瞬、その夜に鎮めた。
だが、生贄を奪った少女を返そうとはしなかった。『腕』で捕まえてやろうと思った。
しかし、少女の願いは、ただ姉と一緒に帰りたい事だった。ただただ、目を瞑って心の底から願っていた。
だから、その少女に最後の情けをかけた。左目を代償に、二人を帰してやった。
その願いが、神の叶える最後の祈りだと思っていた。
諦めたのに、また人間に会った。
--------
山の神『何故だ...お前は何を望むんだ。何を願うんだ。』
早苗「...願いですか。」
早苗は、目を瞑って、考えていた。そして、こう言った。
早苗「私は、神様と人間が...妖怪と人間がいつか、一緒に幸せになれたら良いなと思ってます!」
早苗は笑顔で山の神に言った。
山の神『...そうか。』
早苗は神奈子と一緒に本殿へ入っていった。山の神はしばらくその場で考えていた。
あの少女とこの少女の願いは...どちらも、他人も幸せになれる様なものだった。生贄を捧げ、自分の安心を祈る様なものじゃなかった。その違いを山の神はようやく理解したのだ。信仰が薄れ、生贄をひたすら求めていた神は、また-山の神-として蘇った。
山の神『...奇跡のようだ。』
- Re: 東方夜廻抄 第18話 歪んだ運命 ( No.18 )
- 日時: 2023/06/18 18:12
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-悪縁の洞窟-
咲夜と妖夢は、時折現れる蜘蛛の異形を殺しながら洞窟の奥へと進んでいた。そして、ある程度突き進むと、広い洞窟が広がっていた。真ん中には巨大な穴が空いており、その周りを蜘蛛の糸のようなものが壁や天井を取り巻いていた。
巨大な穴の前には、魔理沙が立っていた。
妖夢「魔理沙さん!?」
咲夜「貴方...行方不明になっていたのに...」
魔理沙が最近、行方不明になった事は噂として流れていた。妖夢達も心配していたが、まさかこの洞窟の中で再開するとは思ってもいなかった。
咲夜「...様子がおかしいわ」
しかし、目の前にいた魔理沙は何かが変だった。言葉も発さず、その場でかすかに-浮いていた-。魔理沙の腕や足には紅い糸が無造作に結ばれている。
その時、魔理沙の腕が糸に引っ張られて不意に咲夜の方を向いた。魔理沙の手から黒い棘が数本放たれる。
妖夢「危ないっ!」
妖夢が咄嗟に刀を抜き、棘を斬り落とした。
咲夜「ありがとう、妖夢!」
妖夢「お礼は魔理沙さんを止めてからです!」
咲夜はナイフを、妖夢は楼観剣を構えた。それと同時に魔理沙が目から黒い涙を流した。黒い涙は魔理沙の顔を覆い尽くし、炎のように揺らめく。元々あった右目は肥大し、左目は萎縮している。醜い姿に変貌する魔理沙を見て、妖夢は動揺するが、刀を強く握りしめ、気を強く持った。咲夜の合図と共に、魔理沙に攻撃を仕掛ける。
咲夜「始めるわよ!《メイド秘技・殺人ドール》!」
時を止めて無数のナイフを魔理沙に放つ。時が動くと共にナイフが魔理沙の真正面に降り注ぐ。魔理沙は腰のあたりに手を突っ込んで、何かを取り出した。
取り出した物は、真っ赤に染まった八卦炉だった。八卦炉からマスタースパークが放たれる。ビームは真っ黒に染まっている。ナイフはマスタースパークによって消し飛んだ。魔理沙は咲夜に接近しようとするが、放たれたナイフと共に距離を詰めていた妖夢が首に斬りかかった。魔理沙の首は見事に真っ二つにされ、妖夢の剣を鮮やかな血が汚した。
妖夢「...やはり、魔理沙さんはもう死んでいるようですね。」
首を斬っても、胴体はその場で蠢いていた。咲夜と妖夢が戦っているのは、魔理沙の死体だった。
妖夢「魔理沙さんの体を操っている者はどこだろう...」
その時、巨大な穴の下から雄叫びが上がった。
カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ
聞くだけで嫌悪感が湧き出るような声が洞窟の中に響く。洞窟の景色が一瞬真っ赤に染まったと同時に巨大な穴から巨大な蜘蛛のような怪物が姿を現した。半身が穴の上に出ており、人間の手足をバラバラにくっつけたような見た目だった。四本の巨大な足が上半身についている。その足を苛立っているように洞窟の壁にぶつけて、咲夜達に目を向けた。
......オイデ
咲夜達の心に言葉を入れ込む。
妖夢「あの怪物から神様と同じような気配を感じる...相当危険な邪神かもしれないです!」
...イッショニキテアゲテ
咲夜「行方不明の人妖にうちの妖精メイド。そして...魔理沙を殺したのも、お前か!」
...タスケテアゲテ
妖夢「この神様...人を自分の玩具としか見ていない...!」
...イッショニキテ
咲夜「妖夢!さっさと片付けましょう!}
妖夢「はい!」
...カワイソウカワイソウ
縁結びの神は、手を合わせたような体を持つ子蜘蛛をそこら中に放った。縁結びの神の配下だ。
咲夜「大した事ない攻撃ね。《奇術・ミスディレクション》!」
周りにいた蜘蛛達は、ナイフによって次々と切り裂かれていった。
妖夢「《人符・現世斬》!」
妖夢は縁結びの神に向かって突進して、斬撃を叩き込んだ。斬撃は顔に当たらなかったが、それを防御した《手》から血を出していた。縁結びの神の顔の横についている2つの手のひらには、目がくっついている。妖夢の攻撃した左手は、親指が目に食い込むようにして傷ついていた。
咲夜「あの手のひらが弱点かもしれないわね...」
妖夢「右手にも同じ傷をつけましょう!
...ヤメテ...コウゲキシナイデ
咲夜「自分勝手ね。他人を傷つけておいて、自分は傷つけられたくないなんて」
.....コウゲキシロ
咲夜「もういいわ。《幻世 ザ・ワールド》」
時を止めて大量のナイフを縁結びの神に放つ。時止めが解除された瞬間、ナイフが縁結びの神に当たる。
その瞬間、ナイフが全て弾き返された。
咲夜「っ!?」
...ホラ、カワイソウ
咲夜に数本のナイフが跳ね返った。手足を掠め、咲夜の頸動脈に一本のナイフが突き刺さった。
咲夜「あがっ...!」
咲夜は首から血飛沫を上げて、地面に落ちた。
妖夢「咲夜さん!」
妖夢が咲夜の方に駆け寄る。
......ハシレ...ハシッテオイデ
妖夢「動くなだと...?」
目の前には咲夜が首から血を流して、苦しそうに呻いている。その場で止まっているなんてできなかった。
咲夜に向かって走っていた妖夢の真下から黒い棘が何本も突き出てきた。
妖夢「なっ...!?」
声を出す暇も無く、妖夢は串刺しにされた。
洞窟の穴の前に、魔理沙の遺体が倒れている。その傍らに、手足が紅い糸で繋がれた二人の少女の死体が増えていた。
...カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ
- Re: 東方夜廻抄 19話 もう一度 ( No.19 )
- 日時: 2023/06/25 14:33
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
ハルは一晩泊めてもらった後、朝早くに、ことも達にお礼を言って家を出た。自宅に着いたのは正午過ぎ。自室で寝転びながら、ため息をついていた。
ハル「ユイと会いたいな...」
一度死んでしまい、二度と会えないと思っていた親友と二年ぶりに再開できたと言うのに、ユイのいる幻想郷には縁結びの神がいる。ユイに心配をかけたくないが、どうしても幻想郷にもう一度行きたかった。
ハル「...よまわりさんなら」
そこでハルは一つの策を思いついた。よまわりさんにもう一度、幻想郷に攫われるのだ。自分から捕まるなんて...しかも、そこらの怪異より物凄く異質なよまわりさんに自分から近づくなんて、とんでもなく危険な行為だ。しかし、ハルは決意した。ユイとまた会うために、縁結びの神の犠牲が増えないために。
ハルは歯磨きや入浴を済ませて、親に「おやすみ」と一声かけて、二階の自室に戻った。当然、そのまま寝るわけじゃない。懐中電灯を首にかけ、こともから貰っていた塩の袋、十円玉、お守りなどをウサギ型のリュックに入れる。右手にはコトワリさまから貰った-紅い鋏-を持つ。気づかれないようにそっと、家の外に出る。日は傾き、夕焼けが夜に飲み込まれそうになっている。ハルは前によまわりさんに攫われた学校の方へと走っていった。案の定、よまわりさんはそこにいた。こちらの方をじっと見ながら、その場に佇んでいた。
ハル「もう一回...もう一度だけ...幻想郷に攫って!」
よまわりさんが動く気配は無い。話しかけても、また返事をくれるのかは分からない。だが、明らかに、背中に持つ袋が膨らんでいるのが分かった。
ハル「あの神様に...また奪われるわけには行かないの!」
ハルが心の底から叫んだ時、よまわりさんは既に袋を持って、ハルに接近していた。またたく間にハルは袋に入れられ、どこかに消えていった。
-幻想郷・博麗神社-
霊夢が神社を出ていった後、しばらく、ユイは居間で寝っ転がって退屈そうに天井を見上げていた。
ユイ「ハルがいないとつまんないな...」
そう呟いた瞬間だった。縁側の方から何かが倒れるような音がしたのだ。
ユイ「...なんだろう?」
ユイは障子を開けて縁側に出た。そこにはハルが意識を失って倒れていた。
ユイ「ハル!?」
驚いたあまりに、叫んでしまった。その声に反応して、「ひゃっ!」と言いながら、ハルが飛び起きた。
ハル「えっと...久しぶり」
ユイ「なんでここに?-声-が聞こえちゃうかもしれないんだよ!?」
ハル「それなら大丈夫!」
ハルは胸ポケットから紅いお守りを取り出した。
ユイ「何これ?」
ハル「元々住んでた所の隣にもう一つ町があったでしょ?その町の神社のお守りだよ。」
こともの家に行った時、こともから譲り受けた物だった。隣町の商店街の守護神-大百足-の神社のお守りだった。
ハル「これを持ってると、なぜか声が聞こえなくなるの...」
ユイ「そうなんだ...って、大変なんだよハル!霊夢さんが山の方に向かっていったんだ!」
ハル「山に!?」
二人は神社から飛び出して、山に急いで向かった。既に日は傾いていた。真っ暗な闇がゆっくりと、空を覆っていった。
-悪縁の洞窟-
霊夢は一人で洞窟の奥へと突き進んでいった。度々現れる配下の蜘蛛を殺しながら、広い空間に辿り着いた。大きな穴の目の前に、魔理沙が立っていた。
霊夢は一瞬動揺するも、迷いなく魔理沙に封魔針を投げつけた。封魔針が魔理沙の身体に直撃すると、煙のように消えていった。
霊夢「...姿を見せなさいよ。縁結びの神!」
霊夢の声に反応して、穴の奥から雄叫びが上がった。穴から上半身を出して、縁結びの神が霊夢を見下ろしていた。
タスケテアゲテ...
霊夢の周りに死体がいくつも落ちた。死体の顔は、魔理沙に似ていた。
イッショニキテアゲテ...
霊夢「...嫌よ。」
霊夢の返事を聞いて、縁結びの神は、叫びながら洞窟の壁を叩いた。大きな振動と一緒に、落ちてくる死体の数が増えた。
キテアゲテ...
霊夢「嫌。」
縁結びの神がもう一度叫んだ。
カイワソウカワウカワイカワソウカイソウカワワイソイウカワウカワイワイソウカワソウ...
霊夢の心にブツブツと囁く。
霊夢「妖怪や里の人間達はもう殺させないわ!《霊符・夢想妙珠》」
縁結びの神に弾幕を浴びせる。しかし、縁結びの神はよろめくだけで、決定的なダメージは効いていなかった。しかし、確信していた。縁結びの神は弾幕で倒せるはずだと。その理由は、縁結びの神の顔の横にくっついている2つの手だった。どちらも手のひらに目がついているが、左の手のひらだけがまるで、ビームを食らったかのように、目が焼け焦げて潰れていた。
霊夢「...魔理沙」
魔理沙が縁結びの神と戦った時に使用した最後の技。《魔砲・ファイナルスパーク》は、縁結びの神に一矢報いていたのだ。
霊夢は縁結びの神を結界で囲み、とどめを刺しにかかる。
霊夢「これで蹴りを付ける!《夢想天生》」
夢想天生。それは、霊夢の空を飛ぶ程度の能力を応用した必殺技だ。ありとあらゆる物から浮き、完全な無敵となる究極奥義であり、どんなに強大な敵でもこの技には敵わない。
結界のあらゆる方向から、縁結びの神に弾と御札が降り注ぐ。縁結びの神は悲鳴に似た雄叫びを上げる。しかし、叫び声は途中で止まった。縁結びの神はギョロギョロと動かしていた目を突然、霊夢に全て向けて、呟いていた。
霊夢「な...なんなのよ」
オマエノセイダ...
縁結びの神は霊夢の心に語りかけた。
オマエガスベテワルイ...オマエガシネバヨカッタ...
霊夢の後ろから物音がした。霊夢は振り向かない。
オマエのセイデシンダ...オマエガワルインダ...
霊夢の後ろから複数の物音がした。霊夢は遂に振り返った。
後ろには、魔理沙...そして、血だらけの妖夢と咲夜が立っていた。
霊夢「...魔理沙!?...それに咲夜と妖夢がなんでここに...」
霊夢の質問を遮って、魔理沙が呟いた。
魔理沙?「なんで...なんでお前が生きてるんだよ。」
咲夜「遅いのよ霊夢。おかげで死んだじゃない。」
妖夢「もう犠牲を出さないとか...言わないでくださいよ。」
魔理沙「一つの異変もすぐに解決出来ないのかよ。」
霊夢「...違う...違う違う違う!」
夢想天生は発動しているが、必ずしも精神攻撃が効かないわけでは無かった。
妖夢「いつも冷たいですよね。私達なんてどうでもいいんですね。今更、魔理沙さんに執着して」
魔理沙「お前さえいなければ私はまだ生きていた。」
咲夜「貴方がもっと早く着いていれば、私は死んでいなかった。」
お前が生きてるから...お前のせい...お前が全て悪いと責め立てる。霊夢はいつの間にか夢想天生を解除していた。
霊夢「私は...どうすれば良いのよ?」
霊夢の心の中から何かが消えた。もう何もかもがどうでも良くなっていた。
霊夢「どうすれば...許してくれるのよ?」
魔理沙「...おいで」
魔理沙は霊夢に手を差し伸べた。
妖夢「いっしょにきて」
咲夜「そうすれば、もうこわくない」
霊夢は魔理沙の手を取り、虚ろな目で手に持つ封魔針を見つめた。
魔理沙「いっしょニオイデ...」
霊夢は封魔針を自分の首に向ける。
霊夢「私も...一緒に」
封魔針を思いっきり、首に振りかぶった。
ハル「霊夢さん!」
その時だった。神社から抜け出してきたハルとユイが霊夢の後ろにいた。
霊夢「...っ!?...二人共どうして」
ユイ「死んじゃだめだよ!-声-に逆らって!」
霊夢の手から封魔針が落ちた。それと同時に黒い-怨霊-の姿になった魔理沙達が霊夢を殺そうと首に手をかける。
霊夢「うぐっ...!は...離して...」
咲夜と妖夢が手を掴み、魔理沙が首を締める。身動きが取れずにもがいていた。
ハル「これ以上...霊夢さん達を苦しめないで!」
ハルは縁結びの神に真正面から睨みつけた。横には、ユイがいる。
ユイ「悪縁なんて...!」
ユイとハルは手を繋ぎ、息を大きく吸った。
ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ...
縁結びの神は何かに気がついたように、二人に紅い糸を放った。
ハル&ユイ「もういやだ!」
グワァァァァァァァァァァ!!
ハルとユイの後ろからコトワリさまが現れる。ハル達に近づく紅い糸を斬りながら、霊夢の方に向かう。霊夢の後ろには、物凄く太い紅い糸が地面に繋がれていた。コトワリさまはその糸を容赦無く...
ジョキン!
断った。
アガァァァァァァァァァァァァァッ!!
縁結びの神が絶叫する。それと同時に縁結びの神の胴体としてくっついていた巨大な顔が首に噛みつき、そのまま穴の下へ落下していった。
ハル&ユイ「ありがとうございました!」
ハル達がお礼する事を見届けながら、コトワリさまは、消えていった。霊夢の周りから、魔理沙達の姿が消えた。
霊夢「...終わったのね」
首を締められ、ほぼ気力で意識を保っていた霊夢は、その場で倒れてしまった。
ハル「霊夢さん!」
ハル達は駆け寄り、霊夢を洞窟の外に運んでいった。
だが、縁結びの神は配下の小蜘蛛の姿で生き延びていた。足から紅い糸を出して、霊夢に結びつけようとする。
...カワイソウ...カ...
その時だった。小蜘蛛の前に、コトワリさまが現れた。
...オ...タスケ...
小蜘蛛は無数の眼で、対となる神を見上げた。
グワァァァァァァッ!!
コトワリさまは、小蜘蛛の胴体を紅い糸と一緒に断ち切った。今度こそ、縁結びの神の命は終わった。
-忘れ去られた神社-
ハル達はようやく洞窟から脱出した。気がつけば、もう夜だった。霊夢は既に意識を取り戻していた。三人で夜の山道をしばらく歩いていた時だった。その道が途中で別れており、左の道の奥には、古びた神社があった。
霊夢「...妖怪の山にこんな神社あったっけ?」
ユイ「本当だ!行ってみようよ。」
興味本位で、三人は鳥居をくぐって境内に入る。整備もされていなく、ボロボロだが、確かに立派なお社が立っていた。だが、ハルはこの神社をもう知っていた。
ハル「...この神社って!」
そう呟いて顔を上げる。いつの間にか、お社から巨大な『顔』がこちらを見下ろしていた。
霊夢「な...何よ。」
ハル「この神社の神様だよ!」
昨日、突然消えてしまった隣町の山に佇む山の神とその神社。幻想郷に入ってきていたのだと、ハルは知った。
霊夢達は神と聞いて、身構えるが、山の神が襲ってくる気配は無かった。
山の神『安心しろ。取って喰うわけじゃない。』
ユイ「...良い神様なの?」
山の神『見て分かるだろう。』
青白い人間を肉団子のようにして、繋げたような顔。良い神様ではなさそうだ。
山の神『とっくの昔に忘れられて、生贄を求めて人を攫っていた。』
山の神が喋るたびに、青白い人間達が蠢く。ユイが後退りしていると、ハルが山の神の前に立って語りかけた。
ハル「でも...願いは叶えられるんだよね?」
山の神『左目を寄越してもらえばな。』
『顔』の横から二体の『腕』がハルに近づいて来る。その前にユイが立ちはだかった。
ユイ「ハルの目はあげないよ!もう左手だって失ってるんだよ?」
ハル「ユイ...」
ユイ「...代わりに私の左目をあげるよ。」
山の神『そうか...』
ハル「待ってよユイ!」
ユイ「大丈夫だよ。私はまだ何も...」
霊夢「駄目よ。」
霊夢が二人の間を通って、山の神に近寄った。
霊夢「ハルちゃん...魔理沙達を生き返らせようとしているんでしょ?」
ハル「...なんでそれを」
霊夢「魔理沙は...私の友達よ。代償は私が受ける。」
霊夢はさらに、山の神の方に歩み寄った。霊夢を生贄と判断したのか、山の神は『腕』を霊夢に向けた。
霊夢「...これで、魔理沙達が」
霊夢の左目に激痛が走る。視界が紅くぼやけ始めてきた。
その時、霊夢の紅い視界は黄色い閃光に包まれた。

