二次創作小説(紙ほか)
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- 東方夜廻抄 [夜廻・深夜廻]
- 日時: 2023/05/27 09:44
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
※注意
この物語は夜廻・深夜廻のネタバレを含みます。
・オリキャラは出ません。
・独自解釈あり
・微グロ描写
・東方キャラの死ネタ
それでも読みますか?
うん やだ
-プロローグ-
ある夜、二人の少女は離れ離れとなった。二人の少女は大切な物を失った。
山に住み着いていた-縁結びの神-に自殺に追い込まれた少女・ユイは、縁結びの神がいなくなっても尚、ハルと花火を見たこの山に幽霊として存在し続けていた。
しかし、何年か前に春雪異変で結界が緩んだ幻想郷にユイはいつの間にか迷い込んでしまう。
しかも、縁結びの神は生きていた。ユイの体に憑依していた縁結びの神は、ユイから抜け出して、冥界を超えて、幻想郷に逃げ込んだ。縁結びの神は妖怪の山に隠れ、密かに完全復活を遂げようとしていた。
- Re: 東方夜廻抄 10話 もう一つの絆 ( No.10 )
- 日時: 2023/05/27 08:05
- 名前: 10話 もう一つの絆 (ID: 7ZyC4zhZ)
祭りの日から3日後、里では人妖が数人行方不明になった事で混乱していた。妖怪の行方不明者が現れた事で、幻想郷の賢者達も動き出す。
-博麗神社-
本殿の前に幻想郷を造った賢者の八雲紫と摩多羅隠岐奈、博麗の巫女である霊夢が情報交換をしていた。
霊夢「で...やっぱりその神が犯人なのね。」
紫「幻想郷ができる前から妖怪の山にいたからね...あの時は大変だったわ。」
隠岐奈「あの神の能力は-言葉を操る程度の能力-だ。どこにいても、狙った獲物に話しかけて自殺に追い込む...そうやってあの神は人間を貪っていた。」
縁結びの神・山の神・お結び様...いろんな伝承が残っていたようだ。
隠岐奈が何個かの巻物や書物を取り出す。その中の一つを指さして喋り始めた。
隠岐奈「今回復活した神が縁結びの神である事に間違いないが、あれは完全に邪神として祀られて封印されたものだ。早急に手を打たないと大変な事になる。」
隠岐奈は扉を使い、どこかに行ってしまった。
紫「霊夢。今回の敵は神だけど...あなたには危険すぎる。あなたはハルちゃん達を守ってあげて。」
霊夢「わかってるわよ...」
紫もスキマへ入ってどこかに行ってしまう。
霊夢「あ、ハルちゃん達!大丈夫?」
本殿から出てきたのはユイとハルだった。
霊夢「この神社は結界が貼られてるから安心してね。」
ハル「いや...また声が聞こえてくるの。」
霊夢「何!?」
結界で遮断したはずの声はハルにまたもや聞こえるようになってしまったようだ。
霊夢「どうすれば...」
今にも泣き出しそうなハルを掴んだのはユイだった。
ユイ「大丈夫!私がいるよハル!」
ハル「ユイ...!」
ハルは安心した表情を見せていた。
ハルにユイがついていれば声に抗えるだろう。その姿を見て、霊夢は安心した。
霊夢「...きっと大丈夫よね。」
しかし、霊夢は気づいていなかった。自分の親友が辛い思いを溜めている事に...
-魔法の森-
魔理沙は一人、家の中で魔法の研究を続けていた。
魔理沙「ここをこうすれば...出来た!これで霊夢に...」
その時、魔理沙の手に持っていた瓶が爆発を起こした。起き上がった魔理沙はボロボロだった。
魔理沙「...これも失敗か」
しばらくして、机の上の材料を片手で全てなぎ倒し、拳を叩きつけた。
魔理沙「畜生っ!畜生っ!」
新しいスペルになるはずだった魔法は粉々になった。
魔理沙「...なんであいつに勝てないんだよ!」
霊夢とは親しかった魔理沙だが、何も、ただの友達として接したわけじゃない。ライバルでもあったのだ。霊夢は物凄い強さと美しい弾幕を持っている。それに感化された魔理沙は魔法を研究して新しいスペルを作っていたのだ。
しかし、新しい弾幕は全て一瞬で霊夢に見切られてしまう。
霊夢に勝つ時こそあったが、いずれも霊夢が手加減していたものだった。
全力の霊夢に勝ちたいが、どれだけ努力しても、才能で勝る霊夢は魔理沙にとって憧れであり、妬む者でもあった。
魔理沙「こんなに頑張っているのに...これだけ努力してるのに!私はあいつに勝てない...!」
魔理沙は机に持たれかかり、自分を恨みながら涙を溢した。
オイデ...
魔理沙「っ!?」
突然の声に魔理沙は恐怖する。
魔理沙「だっ...誰だ!」
八卦炉も片手に家の隅々を見回した。
...ツヨクナリタイデショ...?
その言葉に魔理沙は動きを止めた。
魔理沙「どうすれば...あいつを超えられるんだよ。」
バカバカしいと思いながら、声に尋ねる。
オイデ...ヤマニオイデ...
魔理沙「山...?」
オイデオイデ...ヒトリデオイデ...
魔理沙「......」
魔理沙は何か思いついたように箒にまたがり、妖怪の山へと飛んで向かった。
-妖怪の山-
麓に降りた魔理沙は声に従って動き、一つの洞窟へとたどり着いた。
魔理沙「この中か?」
魔理沙は穴の奥へ奥へと突き進み、広い場所に出た。真ん中には巨大な穴が空いており、その周りを蜘蛛の糸のようなものが取り巻いていた。
魔理沙「あれ...私はなんで声に従って」
コノナカオイデ
穴の方へと魔理沙が近づく。
その瞬間、魔理沙をここまで導いた縁結びの神が穴の中から現れた。
魔理沙「...っ!!なんだこいつは!?」
オイデオイデ...キテアゲテ...
魔理沙「明らかにヤバそうな奴だな...私が退治してやるぜ!」
カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ
魔理沙の心は既に疲弊しきっている。
続く...
- Re: 東方夜廻抄 11話 絶望はより深く ( No.11 )
- 日時: 2023/05/27 09:43
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
地面から休むこと無く黒い棘が魔理沙を殺そうと突き出ていた。
魔理沙「そんな速さで当たるか!」
洞窟の天井を飛び回り、伸びてくる棘からひたすら逃げていた。そこで、縁結びの神がまた何かを呟いた。
ハシレハシレ...ハシッテニゲロ...
魔理沙「逃げろだと?そんなつもりないぜ!」
八卦炉も向けて、《恋符・マスタースパーク》を発動させた。ビームに直月した縁結びの神はほんの一瞬態勢を崩した。しかし、目立った傷はどこにも無かった。
魔理沙「効いていない...っ!」
その瞬間、魔理沙の箒に無数の棘が突き刺さり、落ちてしまった。
魔理沙「痛ってぇ...」
箒を失って落下した魔理沙は頭を抱えてうずくまった。
ウゴクナ...
その時、またもや縁結びの神が魔理沙に語りかける。
魔理沙「うるさい!」
声を遮って神の方へと突っ走る。後ろから絶えず棘が迫って来ていたのだ。しかし、魔理沙は次の攻撃を準備していた。
魔理沙「喰らえ!《魔砲・ファイナルスパーク》!」
極太ビームは縁結びの神を覆い尽くして大爆発を起こした。
魔理沙「所詮こんな物か...声を操るとは珍しい妖怪だったな。」
勝ち誇った笑みを浮かべ、洞窟の出口を目指した。
カワイソウ...
魔理沙「っ!?」
後ろを振り向くが、先程の化け物が姿を表す事は無かった。
魔理沙「...気のせいか。」
折れた箒を担いで、山道を降りていく。しかし、縁結びの神は全くダメージを受けていなかった。縁結びの神は魔理沙を諦めていなかった。
カワイソウカワイソウカワイソウ...
次の日、またもや人妖が消えた。
-博麗神社-
魔理沙「よう、霊夢!」
霊夢「あ、魔理沙じゃないの。魔法の研究は?」
魔理沙「まぁ...いろいろとあってな。」
霊夢「最近、人妖が消えているのを知ってるわよね?」
魔理沙「当たり前だぜ霊夢。だけど、私と霊夢なら」
霊夢「しばらく自分の家に居なさい。」
霊夢の一言で魔理沙の動きが止まった。
魔理沙「は...?」
霊夢「あんたには危険すぎる。首を突っ込まないで頂戴。」
魔理沙「どうしてだよ霊夢!私だって」
霊夢「いつもの様な弾幕ごっこで戦える敵じゃないのよ!」
霊夢は魔理沙の横を通って、外に飛び出てしまった。居間に残っていた魔理沙は絶望したようにその場に膝をついた。
魔理沙「なんだよ...私は力不足なのかよ霊夢...」
八卦炉を握って呟いた。
魔理沙「どうしたらお前に追いつける...どうしたら認められる...?」
オイデ
ああ、またこの声だ。こうやって絶望した時だけ語りかけてくる。
オイデ...
やめろ...話しかけるな...
オイデオイデ...キミニハタリナイ...
何がだよ。もうやめろ...
イッショウオイツケナイ...カワイソウ...
私は諦めない...あいつに勝つんだ...
カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ
うるさいうるさい!...もう...もういや...
ユイ「魔理沙さん!!」
はっと後ろを振り向く。魔理沙の後ろにはユイとハルが立っていた。
魔理沙「...二人ともいたのか。」
魔理沙は神社から立ち去ろうとするが、腕を掴まれる。
魔理沙「悪いな...独り言だよ。」
ハル「あの声が聞こえるんでしょ...?」
魔理沙「...知ってるのか?」
ハルは魔理沙に縁結びの神の事を話した。
魔理沙「手の異形?あ...そいつ山にいたぞ!」
ユイ「大丈夫だったの!?」
魔理沙「ああ、ビームでぶっ飛ばしたんだけどな...」
ハル「おそらく、あの神様はまだ生きています。」
その言葉で魔理沙の声が詰まる。あの時は倒していたと思ったが、攻撃は全く効いていなかった事を知って絶望した。
ユイ「あの神様は、私達の弱みを語りかけて...少しずつ自殺に追い込むんです。」
魔理沙「...そうか」
魔理沙はす呟いて、外に出た。
ハル「どこに行くの?」
魔理沙「帰るだけさ...ありがとな。」
直した箒にまたがって、森の方へと飛んでいった。
-魔法の森-
家に帰った魔理沙は絶望していた。やはり、霊夢に追いつけないという事が自分の弱さだという事に再度実感させられて、自分への苛立ちと嫌悪感で心はズタズタになっていた。
魔理沙「やっぱり私は追いつけないのか...」
いつの間にかロープを手に持って、家から出ていた。
方向キー、左スティックで移動します
魔理沙は森の奥へと進んでいた。
R1を押しながら移動で走れます
そばには一個の木箱が置かれていた。
小さいオブジェクトは持つことができます
魔理沙はその木箱を見つめた。
木の下へ箱を移動させましょう
何も考えず、魔理沙はその箱を手に持った。
○ボタンを押している間、持ち上げます
箱を一本の木の前に置いて、箱の上に乗る。
アクションできるオブジェクトの前では!アイコンが表示されます
持っていたロープを木にかける。
!アイコンが表示されている間、○ボタンで対象にアクションできます
吊り下げたロープに自分の首をかける。
魔理沙は木箱を蹴った。
- Re: 東方夜廻抄 12話 輝いていない星 ( No.12 )
- 日時: 2023/06/03 11:14
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
夕日が差し込む森の中、一つの死体が木の枝から伸びた縄にぶら下がっていた。しかし、その目に光が灯る事は無かった。地面には、その死体が持っていたと思われる小さなマジックアイテムと白い紙切れが落ちていた。そこに一匹の蜘蛛のようなものが忙しなく動いていた。
-博麗神社-
霊夢「魔理沙が消えた?」
霊夢は居間に座ってユイと話していた。まだハルは幻想郷に来ていなかった。
ユイ「昨日、ここに来てすぐにどこかに行っちゃって...」
霊夢「全く...何考えてるか分かんないわ。」
ユイ「...魔理沙さんに-声-が聞こえていたんです。」
霊夢「魔理沙に...?」
その時、霊夢の横にできたスキマから紫が出てきた。
霊夢「どうしたの?いきなり現れて...」
紫「貴方には辛いでしょうけど、一つ言わなければいけない事があるわ。」
霊夢「え?」
紫「魔理沙が死んだわ。」
その言葉が出た瞬間、部屋の空気が変わった。
霊夢「冗談はやめて。」
紫「魔理沙は既に-声-を聞いているようだわ。昨日からどこを探しても見つからなかったわ。」
霊夢「...それはユイちゃんに聞いたわよ。」
紫「最近、魔理沙の行動が少し変化していたのよ。家に籠もってる時間が長くなったと思わない?」
その時、いきなり霊夢が外に飛び出した。
魔理沙が死んだ
その言葉を受け止められなかった。まだ死体が見つかったわけでも無い。急いで魔法の森に向かった。
-魔法の森・魔理沙邸-
霊夢「魔理沙!」
魔理沙の家に行ってみたが、中にはいなかった。代わりにその家から森の奥に足跡が続いていた。霊夢はその足跡を追いかけて森の奥に入っていく。
しばらく歩くと、人影が見えた。近づいて見ると、魔理沙が立っていた。こちらの方を不思議そうに見ている。
魔理沙「霊夢?こんな所に来てどうしたんだ?」
霊夢は何も言わずに魔理沙に近づいて抱擁とした。
霊夢「こっちが言いたいわよ魔理沙!なんで森の奥にいたの?」
魔理沙「はは...キノコの採集してたら結構歩いちゃってさ。」
霊夢「え?」
そこで霊夢は違和感を感じた。
魔理沙は手ぶらだったのだ。何も持たず、八卦炉だけを持って立っていた。
魔理沙「どうかしたか?」
霊夢「アンタ...本当に魔理沙なの?」
霊夢はお祓い棒を片手に持って勢い良く魔理沙に攻撃した。魔理沙は吹き飛び、辺りに砂埃が舞った。攻撃をまともに喰らったはずだが、魔理沙は何事も無かったように起き上がってきた。
魔理沙「いきなり攻撃するなよ霊夢。」
まるで感情が籠もっていないような声だった。
魔理沙「...私はお前に憧れていた。私はお前に勝ちたい一心で魔法の研究も努力した。」
魔理沙がゆっくりと霊夢に歩み寄りながら話す。
魔理沙「なのに...どれだけ努力しても勝てやしない。才能がある霊夢は良いよな...大して努力しなくても強いし、私なんていらないだろ?」
霊夢「違う...違うわ」
魔理沙「私が弱いから...あの時だって私を置いていったんだろ?」
数日前、縁結びの神に関わるなと魔理沙に警告した時を思い出す。
霊夢「あれは...魔理沙を危険な目に合わせたくなくて...」
魔理沙「嘘だ。ウソダウソダウソダウソダウソダウソダ!」
魔理沙の全身から黒い霧が立ち込める。手に持っている八卦炉は紅い光を纏っていた。
霊夢「...魔理沙」
魔理沙は既に怨霊と化していた。強大な妖気が霊夢の周りに漂っている。
霊夢「良いわ。本気で戦いましょ...人から怪物になったアンタを今から-殺す-」
御札を持って、戦闘態勢に入った。霊夢は妖怪に変わり果てた人間を殺す-博麗の巫女-として、魔理沙とこれから戦う。
既に夕日が潜り、暗くなっていた森の中で死闘が始まった。
- Re: 東方夜廻抄 13話 夜が来る ( No.13 )
- 日時: 2023/06/07 23:14
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
霊夢「はぁ...はぁ...魔理沙!」
怨霊と化した魔理沙はその場から全く動かず、周りに黒い棘を無差別に突き出していた。霊夢は先程からずっとこの攻撃を避けていた。
霊夢「もう魔理沙は人間じゃない...でも...!」
--------
普通、博麗の巫女は世襲制では無く、任命制だが霊夢は珍しく、博麗の巫女として活躍した母親から生まれ、幻想郷を守る博麗の巫女として先代からその役目を引き継いだ。
霊夢の力は普通の人間を遥かに超えており、それに博麗の巫女という立場が拍車をかけて、里の人間から妖怪ではないかと気味悪がられていた。
その状況を救ったのは魔理沙だった。
-博麗神社-
ある日の夕方だった。霊夢が十歳程の頃、親が亡くなり、独りで神社にいた時だった。魔理沙はやってきた。
魔理沙「おーい!誰かいるか?」
階段を上り、神社の本殿に向かって声を上げた。
霊夢「うるさいわね...誰よあんた。」
魔理沙「お!博麗の巫女じゃんか!」
霊夢「さっさと帰って...私なんて気味悪いでしょ?」
魔理沙「は?」
霊夢「人間離れした力を持ってるのよ。怖くないの?」
魔理沙「ぜんっぜん思ってないぜ!」
霊夢「...良いから帰って。」
背を向ける霊夢に魔理沙は叫んだ。
魔理沙「また明日も来るからな!」
-次の日-
魔理沙「博麗の巫女さーん!」
霊夢「本当に来たのね...って、それは!?」
魔理沙は箒に乗って浮いていた。
魔理沙「魔法使いみたいだろ?」
誇らしげに言う魔理沙に霊夢は封魔針を向けた。
霊夢「あなたは人間のはずでしょう?なんでそんな力を...」
魔理沙「それはな...」
魔理沙が取り出したのはミニ八卦炉だった。
魔理沙「これで人間の私でも魔法を使えるんだぜ!」
霊夢「ふぅん...」
霊夢は縁側に座り込んだ。それに続いて魔理沙は霊夢の横に座った。
霊夢「馴れ馴れしいわよアンタ。」
魔理沙「...だって他に誰もいないじゃんか。」
確かに、神社には霊夢と魔理沙の二人しかいなかった。辺りは静寂に包まれていた。
霊夢「...みんな私を気味悪がるの。私の力は普通の人間と比べ物にならないし...」
魔理沙「なら、私が追いついてやるぜ!」
霊夢の手を握り、その眼を真っ直ぐ見つめた。
霊夢「な...何よ。」
魔理沙「なぁ、私と友達になろうぜ!」
霊夢「ええ!?」
想像しなかった返事に拍子抜けする。
霊夢「でも、私は博麗の...」
魔理沙「そんなの関係無いだろ!」
魔理沙の言葉に霊夢の心の奥で何かが動いた。
魔理沙「私はお前が人間だろうと妖怪だろうと友達になってやるぜ!」
霊夢「......あんたって馬鹿ね...良いわ。なりましょ。友達に!」
魔理沙「おう!」
霊夢はこの時、初めて親以外に笑みを溢した。
霊夢「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は博麗霊夢。この神社の巫女をやってるの。」
魔理沙「私は霧雨魔理沙!普通の魔法使いだぜ!」
魔理沙のおかげで、霊夢は他人と関係を持つ大切さを知ったのだ。
魔理沙と出会った霊夢は、吸血鬼や幽霊、鬼や他の神社の神や巫女と戦い、仲良くなっていった。今の関係があるのは、魔理沙のおかげだった。魔理沙が霊夢と同等の強さを求める時、霊夢は魔理沙のようなかけがえの無い存在を無意識に求めていたのだ。
--------
自分を救ってくれた最高の親友(魔理沙)は今、最大の敵となった。
魔理沙「オイデオイデオイデ...」
霊夢「...やめて魔理沙」
魔理沙の頬に黒い涙が伝っていた。黒い涙は魔理沙の顔を覆い尽くし、炎のように揺らめく。元々あった右目は肥大し、左目は萎縮している。醜い姿に変貌する親友を見て、霊夢の心は傷ついていった。
霊夢「お願い...もうやめて!」
いつの間にか涙を流して膝を落としていた。怪物(魔理沙)は霊夢にゆっくりと近づき、両手から黒い糸を出す。その糸は霊夢の手首に刺さり込み、血を吸っていた。黒い糸が紅くなるにつれて、霊夢の意識が遠のく。
霊夢「...魔理沙」
霊夢は魔理沙に抱擁とする。魔理沙の体からはもう体温を感じなかった。
霊夢「...私がいけなかったのかな?」
その言葉に魔理沙の動きが一瞬止まった。
霊夢「わたしは...魔理沙なら一人だって大丈夫なんて...思い込んでた...最低よね...」
霊夢の体はもう動けなくなっていた。
霊夢「あなただって...心のどこかに...」
言い終える前に、霊夢は意識を失ってしまった。
魔理沙「...レイ...夢...」
赤黒い糸が霊夢の手首から離れた。
魔理沙「...友達でいたかっただけなのに...私はっ...!」
霊夢への好奇心は憧れへ。憧れは焦りと恐怖に。恐怖は嫉妬に移り変わっていた。
魔理沙「お前の才能にいつの間にか嫉妬していた...霊夢と一緒にいたかっただけなのに...!」
黒い顔からは、透明な涙がボロボロと流れ落ちていた。
魔理沙「なのに私は...!」 オイデ
魔理沙「私は...」 ツレテッイッテアゲテ
魔理沙「......」 イッショニオイデ
魔理沙「...レイム...イッショニ...オイデ」 カワイソウカワイソウカワイソウ
黒い糸はまたもや霊夢に繋がれた。霊夢に残る命が吸い上げられる。
はずだった。
紫「はい、そこまで。」
突然、スキマを開いて現れた紫が魔理沙の黒い糸を容赦無く切断する。
魔理沙「ッ!?」
紫「霊夢は返してもらうわ。」
紫の式神が魔理沙を拘束する。紫はスキマを永遠亭に繋げて霊夢を避難させた。魔理沙はあり得ない程の怪力で式神を吹っ飛ばして、真紅に染まった八卦炉を紫に向けた。
魔理沙「レイムヲ...返せ!!《恋符・マスター...」
グワァァァァァァァァァ!! ジョキンッ!
八卦炉は魔理沙の腕と共に地面に落ちた。
ハル「魔理沙さん!」
魔理沙の後ろには、ハルとユイが立っていた。そして目の前には自分の腕を断ち切ったコトワリさまがいる。
魔理沙「...ハは...迷惑カケたな...」
次第に魔理沙の体は薄くなっている。それと同時に、黒いモヤが消え、本来の姿に戻っていた。
魔理沙「...霊夢」
黄色く輝いたその眼で、真上に登った満月を見つめて、最後の言葉を発する。
魔理沙「...ごめんな」
魔理沙の姿が完全に消えた代わりに、近くの木に首吊り死体が現れた。
紫「...魔理沙」
霊夢の心の支えとなってくれた人間。紫はその名を呟いてスキマへと入っていった。
その場に残されたのは、ハルとユイ、コトワリさまだけだった。
コトワリさま「グワァァァ!」
その時、コトワリさまは手に持つ鋏を近くの地面に向けた。
ハル「...どうしたんだろう?」
鋏を向けた先には、赤いゼラニウムが数本咲いていた。ハルは何かを思いついたようにその花に近づいて、その中の一本を取って、首吊り死体のある木の前に置く。
ハル「...行こうユイ。もう夜だよ。」
ハルは懐中電灯をつけて、森の外へと歩き始めた。コトワリさまはもういなくなっていた。
ユイ「そうだね...ん?」
ハルについて行こうとしたその時、後ろから物音が鳴った。振り返ると、白黒の八卦炉が落ちていた。
ユイ「......」
ユイは八卦炉を持って、ハルの後について行った。
何?無意味だって? カワイソウ
大丈夫だ。あいつらと霊夢ならやっていける カワイソウ
お前に二度も同じ事はさせないぜ。 カワイソウ
霊夢がお前なんかに負けるわけが無い。 カワイソウ
あいつらには...私の八卦炉を預けたんだ。 カワイソウ
歯ぁ食い縛って待ってろよ。縁結びの神。 カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソ
続く...
- Re: 東方夜廻抄 14話 願い ( No.14 )
- 日時: 2023/06/10 22:50
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
怨霊-魔理沙-が消えて一週間。
永遠亭で治療を終えた霊夢は神社で閉じこもっていた。ユイは博麗神社で霊夢と共に暮らしている。幸い、異変は全く起こっておらず、幻想郷の警備などは早苗が霊夢の代わりとして紫に任された。ハルは幻想郷のどこにいても-声-が聞こえてしまう状態となったため、外の世界へと帰ってしまった。
-とある町-
ハルはここしばらくの間、幻想郷に入る事なく外の世界で暮らしていた。縁結びの神の声が引っ越した町の中で聞こえることは無かった。
ハルの引っ越した家は前に住んでいた家と同じ二階建ての一軒家だった。
午後九時。ハルは歯磨きや入浴を済ませて、親に「おやすみ」と一声かけて、二階の自室に戻った。
ベッドのすぐ近くにクッションが敷いてある。クッションの上には、チャコが寝ている。チャコを起こさないように、ハルは静かに勉強机についた。
そして...
ハル「...いつまでいるの?」
横には、よまわりさんが佇んでいた。実は、怨霊と化した魔理沙が消えたあの夜。幻想郷から外の世界に帰った。あの日から、こうやってよまわりさんが夜にハルの部屋でずっとハルを監視しているのだ。
ハル「もう夜を回ったりはしないよ...」
よまわりさんは何も言わず、ただじっと見つめ返してくるだけだった。ハルがよまわりさんに攫われ、幻想郷に入り込んだ時は喋っていたのにと頬を膨らませる。
ハルは夏休みの日記に取り掛かった。他の宿題はユイとたくさん会えるようにと、夏休みが始まってすぐに全て終わらせてしまった。
-ハルの日記-
今日は、チャコといっしょに町のいろんな所を歩きました。前に住んでた町にどことなくにていて、少しうれしかったです。
明日は、ひっこす前の町にお出かけに行きます。会いたかった友達がいるのでワクワクします。
-次の日-
自然の豊かな田んぼの道を、澄んだ青い空の下を、ハルは歩いていた。
家族には、友達の家にお泊まりに行くと言って、朝早くに支度を済ませ、ハルは電車で二年前に引っ越したあの町へと向かった。着いたのは正午を過ぎた辺りだった。一応、3日程は泊めてもらうと親に言っていたため、明日までこちらに居ることになる。流石にチャコを連れて行く事はできなかった。
ハル「えっと...この辺りかなぁ...」
右腕で地図を持ち、青いリボンを揺れ動かせながら、ハルは昼の町を歩いていた。向かったのは隣町のとある一軒家だ。
インターホンを押して、扉の前で待つ。出てきたのは、ハルよりも身長の高いお姉さんだった。
ともこ「はい...って、子供?」
ハル「私、この手紙をもらって来たんです!」
ともこ「手紙...もしかして、あなたがハルちゃん?」
ことも「お姉ちゃん?」
その時、玄関からもう一人の女の子が出てきた。こちらはハルよりもちょっぴり身長が高い程度だった。その女の子はハルを見て、目を輝かせた。
ことも「あ、ハルちゃん!久しぶり!」
ハル「久しぶりだね!」
--------
こともは、ハルが二年前、引っ越しまでの間、夜を廻っている時に隣町に行って偶然出会った少女だった。
こともが夜を廻ったのは今から四年前...二年生の時だった。
-いなくなった-愛犬とそれを探しに行った姉のともこを探しに、夜を廻った。
ハルが夜を廻ったのは二年前。その時、こともは四年生であり、ハルとユイは三年生だった。
--------
今のハルは五年生。こともは六年生で学年が一つ上だが、こともは、ハルから頼もしい友達だと親しまれていた。一方で、姉のともこは中学三年生。母を失い、父も仕事で忙しくて家にあまりいないので、こともの母に変わって家で面倒を見てくれる優しい姉だ。
ハル「手紙をくれてありがとう。」
ことも「別に良いよ。約束したもんね!」
ハルが二年前にユイを失った後、心の支えとなったのはこともだった。引っ越しの前日、引越し先の住所を教えると、次の日に早速手紙をくれたのだ。ほぼ毎日、引っ越し先の暮らしの事などを質問したりしているうちに、ユイと同じくらいの親友になった。
夏休みの今が、こともと会えるチャンスだった。ハルがこともを訪ねたかった事もあるが、それ以上に隣町に来た理由があった。
ハル「ねぇ、こともちゃん...」
ことも「何?」
ハル「-あのトンネル-に案内して」
その言葉で、こともの顔から笑顔が消えた。こともは左目の眼帯を擦りながら、呟いた。
ことも「...あの場所は」
ともこ「絶対に駄目よっ!!」
その時だった。恐い顔で、ともこがハルに叫んだのだ。ともこの声にハルはびくっとする。それに気づいたのか、ともこはバツが悪そうに俯いた。
ともこ「ご...ごめんね」
ハル「いや、良いんです...私も事情は知ってます。」
ハルはともこの目をじっと見て、答えた。
ハル「-山の神様-に用があるんです...」
ともこ「ならば...-ムカデの神様-に」
ハル「あの神様は...もういないんですよね?」
ともこはその質問で黙り込んでしまった。
ことも「ムカデの神様も、神社が取り壊されて...もう...」
こともは自分の手に赤いお守りを握って、目を瞑った。
ハル「だから...-山の神様-にどうしても会いたいんです!」
ともこ「会いたい...?」
-山の神-
隣町の山の奥、古びた神社に祀られていた『顔』の神様だ。
正式な名前は分からないが、山を根城とするので、ともこが名付けた名前らしい。本当の名前はあっただろう。しかし、誰からも忘れられた山の神は、存在意義を失い、ただひたすらに生贄として、隣町の人間を少しずつ、『腕』の配下を使って山の奥に攫っては殺していた。
しかし、山の神も昔は-コトワリさま-や-ムカデの神様-の類の神様だったのだ。
生贄の左目をお供えするなど、確かに、犠牲を伴う神様ではあったが、山の神は、人間の願いや祈りを垣間見て、その願いを叶えるという神様だった。
無論、今ではその能力を利用して生贄を求めるだけの神様だ。
ことも「確かに、あの神様は願いを叶えてくれる...それでも危険すぎるよ...」
こともが四年前、お姉ちゃんと帰ろうとしたあの時。実は、消滅していなかった山の神が追いかけてきていたが、こともの「お姉ちゃんと帰りたい」という願いを聞いて、こともの左目を代償に、それから山の神がことも達を襲う事を辞め、願いの通り、こともを逃した。その代わり、代償として消えた左目は、こともの体を半分だけ夜に引き込み、昼間でもお化けが見えるようにしてしまった。
ハル「私には叶えたい願いがあるの!」
ことも「...ついてきて」
こともはハルを手招きしながら、家の中に入る。物置から懐中電灯を、台所から塩を取り出して、ハルにそれを手渡した。
ことも「そろそろ夜が来るから、その時に行こう!」
気づけば、もう夕方だった。夕日は沈み、夜が町を包み込む。
午後七時。
ことも、ハル、ともこの三人は再び、夜の町を廻る。

