社会問題小説・評論板
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- その人の花は枯れていく。
- 日時: 2013/05/06 18:38
- 名前: 来夏 (ID: pHBCaraS)
その人の花は、枯れていく。
傷によって、その人の花は枯れていった。
完全に枯れたら−−その人は死んだ者だと思う。
花はその人の人生なのだ。
◆詳細
この小説は、“虐め”ものです。
フィクションとノンフィクションが入っています。
過度な暴力表現などが苦手な方は、ご覧にならない方がいいと思います。
この作品は
“暗闇の世界で、翼は溶けていった”と同じ舞台です。
ですので、その作品に出ている人物も登場します。
■目次
学校説明→>>1
登場人物→>>2
登場人物Ⅱ→>>15
■話のまとめ
第1章『A組の生徒』 >>10
- Re: その人の花は枯れていく。 ( No.16 )
- 日時: 2013/06/27 21:13
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y (ID: pHBCaraS)
episode 本田沙耶
私には雫ちゃんや空ちゃんにしか話していない、秘密がある。その秘密とは———
「キレイだなー………」
宇宙の写真が沢山ある本のページを見ながら、私はそう口にした。いや、素直に綺麗だなぁと思ったんだ。
「うん。いいよね」
そう言うのは、宇月陽向君。
青みがかかった黒髪がサラサラで、少し長め。瞳は小さいけど、優しそうな目。
だけど身体は地味に引き締まっている。身長は161㎝って言ってるど。
「陽向君が、宇宙に興味持っているとは思わなかったよ。身体引き締まってるんだから」
「だって僕、中学の部活以外でやってるから。今も」
陽向君はそう言いながら、紅茶を飲む。
今は陽向君の家に居て、二人で宇宙の本を読んでいた。
学校よりも、気ままで、のんびりとしてて。すごく幸せだった。
「………いいなぁ」
「沙耶が引き締まったら、僕嫌だなぁ」
苦笑を浮かべながら、陽向君はそう返した。私も何かやればよかったかなぁ?
「陽向君、そういえばさ」
「ん。あの人達? 評判めちゃくちゃ悪いからねー……」
あの人達とは、小島さん達の事だ。特に雫ちゃんは凄くビクビクしていて、可哀想だった。
隣のクラスでもそれよりも過激ないじめがあるらしい、って聞いた。
「ほかのクラスの方は、酷いからね……剛君が言ってた」
「うん。四之宮さん停学だから、平和みたいだけど」
本当に平和だけど、こっちは平和じゃない。
大体何が楽しいのか分からない。他のクラスは、平和なのになぁ。
「……陽向君、ぎゅうってしてくれる?」
「うん」
変な気分がしたし、変な予感がした。
だから私は、陽向君と抱きしめ合っていた。
———私の秘密とは、陽向君と付き合ってるってという事だ。
- Re: その人の花は枯れていく。 ( No.17 )
- 日時: 2013/07/03 19:17
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y (ID: pHBCaraS)
episode 須貝健斗
「へー、文化祭再来週になったのかよ」
「先生達が、とあるクラスの対策を取るって事で」
放課後、俺と明良は珍しく二人で帰る事にした。
いつもなら、生徒会室に明良が居るから一緒に居たり、大和達と居たりするんだけど。
明良は生徒会だから、結構生徒会室に居る事が多かったりする。
もともと意見をはっきり言う奴だから、それが先生達に良かったらしいんだけど。
「へー、大変だなお前」
俺は笑いながら、校門を一気に出る。
暫く歩くと、見知った集団を発見した。
「あれ、大和と流星じゃねーか」
一番後ろにいたのは、大和と流星。その近くには、椎名って言う女子と、千原。
その前には、麗と榎本? が歩いている。
「麗も居るけど」
「いるな。大和! 流星!」
俺の声に、二人は振り向いた。一番最初に口を開いたのは流星だった。機嫌は、今日は悪くなさそうだな。
「健斗と……曽我?」
「覚えてたのか。あんまり話した事ないのに」
「いや、健斗といっつも居るから」
二人と話すと、女子四人も歩みを止める。千原の目は腫れていたが、残りの女子は普通だった。
「あんた達、いつものように生徒会室にいるんじゃないの?」
「いや、再来週に文化祭が回されたから。あるクラスの対策で」
そう明良が返すと、榎本が口を開いた。髪を切られたらしいけど、でもショートの方が明るく見えるから良いと思うけど。
「わたし達のクラスだよね?」
「多分……。先生伝てだけど、四之宮は明日ちゃんと来るらしいから」
明良がそう伝えると、椎名が口を開いた。大人しそうで、可愛い顔立ちをしてる気がする。でも大和は「結構強いぞ」って言ってるんだけど、それは気のせいか?
「そう。あいつ、来るんだね。何も起きなきゃいいけど」
「……いや、絶対起きるわ……。胃が痛い」
「大丈夫か?」
椎名の言葉に、千原がお腹をさすりながらそう言う。そんな千原を流星は心配していた。
「そういや麗、お前課題出してねーんだろ」
「あ、忘れてた。後で見せてくれる」
「じゃあ帰りでいいぜ。家に帰ってもやる事ねーから」
麗と俺は、割と話す。明良も割と話す。
結構真面目にみられる明良と、明らかにサボり魔の俺と、キツイかもしれない麗。結構デコボコトリオみたいな、感じか。
「お前ら、仲良いんだな」
「結構一緒に居る」
明良が簡潔に答えた。取りあえずここでは邪魔なので、俺達は歩いた。
———明日、何が起きるか予想できなかったけど。
- Re: その人の花は枯れていく。 ( No.18 )
- 日時: 2013/07/06 21:43
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y (ID: pHBCaraS)
episode 和川麗
「お帰り、麗ねーちゃん! あ、健斗兄ちゃんと明良兄ちゃんこんにちは!」
出迎えたのは、あたしの弟で小学六年生の“海(かい)”だった。六年生にしては背が高い、百六十センチ。伸びない、と言われているけど父親が百九十センチなので、まだまだ伸びると思う。
「おー、久しぶりじゃねぇか!」
「だな。久しぶり」
二人がそう挨拶しているとき、あたしは既に履いていたローファーを脱ぎ捨てる。
あたしは玄関に入ってすぐ見える階段を登って行く。あたしの家は、外装は和風だけど、中は一部が洋風という、不思議な所だ。
***
「明良、寝てんな」
「……」
いつの間にかあたしのベッドの近くで、床に座ったまま寝ている明良。風邪をひかない様に、薄い毛布をかけておく。
この二人、どっちかは必ず寝ているのだ。どんだけ落ち着くのか、全く分からないけど。
「エルナに相変わらず、懐かれてんなー」
「そう?」
身体に灰色の模様がある、白い猫のエルナはメス。まだ若い歳で、あたしに良く懐いている。そんなエルナはあたしの膝の上だ。
「つか麗、お前やっぱ学力ついていけてねーの?」
「ついていけてるわよ。大和が杏子を連れてきてくれて、教えてくれたのよ」
「椎名が?」
いつの間にか隣に居た健斗は、驚いていた。驚く必要があるのか、分かんないけど。
「杏子、不登校の間ずっと勉強してたから。それで、あたしに教えてくれた」
あれは先生になるべき、だと思った。良く独学であそこまで……っても思ってしまった。
「何でそこまで……」
「学校に行きたかったから。でも、四之宮がいたせいで、通えないのもあった」
「……ひでーいじめだっては聞いたけどなぁ」
そう言いながら、近寄ってきたエルナの頭を撫でている。エルナは幸せそうに健斗にすり寄っている。
「大和達に対しても、すげーしな……。明日って聞いたけどさ」
「そうだね。でも、何かしら起きると思う」
いじめグループで、四之宮と仲が良かった千原の顔色が悪かった。
何かしら起きるはずだ。
———何も起きませんように。
- Re: その人の花は枯れていく。 ( No.19 )
- 日時: 2013/08/20 21:08
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y (ID: pHBCaraS)
episode 中館美鈴
ああ、やっぱり暴動みたいなのは起きてしまった。
学校へ来て思った事は、まずそれだった。
「美鈴ー! 今日はブレザー?」
「希……。今、その場合じゃない……」
うん、確かに私はブレザーを着てるけど。
でも今は、そんな場合じゃない。
「え、何でこんな人?」
あるクラスの教室前で、みんな騒いでいた。
抜け出した何人かが、先生達に知らせに行ったり、響く怒声に全員びっくりしたりなどと、様々な反応を見せていた。
私はというと、来たらこうなっていた。
あるクラスで仲が良い、っていう人物はいない。
そんな時希が来たのだ。
希は誰かを捕まえて話を聞いていた。
———黒澤達も、これを見てどう思うんだろう?
四之宮すらも見下してたけど、あの人は割と努力していた方だとは思う。
親が結構厳しい人らしいが。
四之宮の方が明らかに順位は上だったし。
所詮、あいつ等もあいつ等だ。
きっとあいつ等がやっている事もバレるだろう。
「———音原、歩けるか?」
「歩けるわよ。大丈夫」
私の近くを、女子と男子が通った。
確かあれは、音原と矢上だ。
どちらも黒い髪を靡かせながら、どこかへと消えて行った。
「……」
ついに起きてしまったこの暴動とかは、はたしてすぐに収まるのだろうか。
いや、収まらないか。
———先生達が力無さすぎだし、優等生を信じすぎだしね。
- Re: その人の花は枯れていく。 ( No.20 )
- 日時: 2013/09/21 09:29
- 名前: 来夏 ◆2ZBHn0dH/Y (ID: pHBCaraS)
episode 遠藤香
『あなたと過ごした日々をこの胸に焼き付けよう。
思い出さなくても大丈夫なように』
私が一番好きな歌手は、奥華子さんという人だ。
特に好きなのが、このガーネットという曲だ。
あまりメディアには出てこないかもしれないけど、この人の曲は良い。
「…………」
良くも、飽きもせずに悪口を言い放っているクラスメイト四人は、この人の良さは分からないだろう。
四之宮さんが停学になっても、逆に調子に乗りかけている。
「あ、遠藤さんおは