社会問題小説・評論板

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奴隷育成所
日時: 2019/07/28 17:27
名前: アマギ (ID: HuynY/aq)

——その日、俺は奴隷になった。
監禁され、地獄の日々を過ごす——

日本奴隷監禁社の紹介です。
弊社は、借金を背負った人や罪を犯した人の味方でございます。
借金や賠償金を抱えた人なら、身近な人を差し出すことで貴方の払う金額が
タダになる・半額以下に減ることになります!
罪を犯した人なら、身近な人を差し出すことで、貴方の刑がなくなる・現金を数万円で払うことで済みます!
私達は警察や金融機関などと関係があるので、このような事が出来るのです。
今、お困りの方、私達に相談しませんか?

Re: 奴隷育成所 ( No.6 )
日時: 2019/08/17 21:59
名前: アマギ (ID: y36L2xkt)

部屋の鍵を開けられ外に出られた。俺はまだ生きたいのだ。
次々と牢屋から奴隷が出てくる。
老若男女問わず色んな人がいるんだ、と思った。
鉄格子を掴んで叫んでいた男も、泣いていた老婆も。
それに囚人服は真っ黒、よく見る白黒ではない。蚊が寄ってきそうだ。所々ほつれや血の染みた跡がついていて、清潔という言葉とは無縁の服。
するといきなり奴隷達が並び、正座をし頭を下げ始めた。

「25番! さっさと頭ぁさげろ!」
さっきの黒服とは違う、看守らしきおじさんが言う。
「はいっ、すみません!」
謝るのは営業マンの特技。九条課長や部長から教えられた。
一体なんだこれは。イベントなのか、拷問なのか。

「はぁ〜っ、天王寺様ぁぁ」
列の先端の女が天王寺というやつに言った。
天王寺っていう奴らしき男を見ると、年はアラフィフくらい、やや焦げた小麦色の肌、背はそれほど高くないが堂々とした雰囲気。よく言えば社長さんらしいというものだ。
その女以外の人々も天王寺に頭を下げ、神として扱うようだ。
また、黒服や看守もピシッと並び、少し驚きながらも「天王寺様!」と敬礼し頭を下げていく。

列の一番端の俺はよくわからず
「はっ、はぁ天王寺様っ」としか言えなかった。
すると天王寺とやらが俺に声をかけてきた。

「よぉ〜、新入りの25番。俺は天王寺鬼広。54歳男。1965年6月11日生まれ 血液型A型
日本奴隷監禁社の社長 好きなことは奴隷が苦しむとこを見ることだ」
なっ、なんだコイツ。奴隷が苦しむとこを見ることが好きだなんて....
頭おかしいんじゃないのか。きっとヤバイぞ。
そもそもこんな会社の社長なんだから、まともで優しさのある人間とは思えない。

「おい、25番の情報教えろ、黒服共!」
黒服がタブレットで俺の情報を天王寺のタブレットに送っているようだ。
天王寺に俺のことが伝えられる。他になにかされると思うと心臓がバクバクする。
ついにタブレットらしき機器の文字を読み上げて言われた。

「岡崎賢人 25歳男性 1993年10月30日生まれ 血液型O型、家電メーカーのSUNYの平社員
恋人に裏切られ、身柄を拘束される 好きなYouTuberは南海オンエア」
「ほぉー、なかなか面白そうな奴だな。立派な奴隷になれよ25番」
天王寺は気味の悪い笑い方をしながら読み上げた。
立派な奴隷になれよ.....? ふざけたこと言うな。天王寺ってやつはここの権力者なのか。

「あっ、言っておくけどその首輪はGPSが内蔵されてるから、脱走なんてしたら分かるからな、
このタブレットで丸わかり。首輪のロック番号がわかったら逃げられるけどな」
天王寺はさっき使っていたタブレットを俺に見せつけてくる。
ここは本当に奴隷を監禁するところだって改めて思ってしまった。

「___お前ら、餌やりの時間だ、食堂へ行け!」
天王寺の声を聞いた奴隷達は、すぐさま二列になり兵隊のように奥へ進む。
なんで二列に分かれているのだろうか。もしかして左の列と右の列で格差があるとか.....?
そもそも餌やりってなんだろう。養鶏場でもあるのか。でも食堂って言っているし....
「お前は左の列の後ろへ行け!」
「は。はいっ」
天王寺に怒鳴られてしまったのでおとなしく左の列についていった。
段々歩いて行くと暗くなっていく。餌やりっていうのは何を表しているのか。

Re: 奴隷育成所 ( No.7 )
日時: 2019/08/03 16:22
名前: アマギ (ID: HuynY/aq)

 とりあえず左の列についていくと食堂についた。
部屋より薄暗くいかにも地下室らしい雰囲気。
人々をみると、痩せ細った者、やつれた者色んな人がいる。
囚人服をよく見ると、麻のようなもので出来ていて雑巾のような、貧しい服。
皆、俺と同じく首輪のようなものをつけられていた。
とある男達は、ご飯と味噌汁、梅干しらしきものを食べている。
ま、まさか人の食事を「餌やり」って言っているのか。
俺達をペットや家畜と思っているような態度。

 飯を受け取り口でもらった。器のわりには少ないご飯、菜っ葉の汁物、梅干し
近くのテーブルに相席させてもらおうか。刑務所ではお互い親しくしてはいけないと聞くが、ここもそうなんだろうか。誰かと親しくなれたらここも怖くなくなるかもしれない。
ここへ連れてこられたことで心が真っ暗になってしまったからな。

「すいません、相席よろしいですか」
声をかけたのは俺より少し年下らしきの女性、40代くらいの大柄の男性、そして小学生と思われる女の子。
「...はい、いいですよ」
答えてくれたのは若い女性だった。また、小学生ぐらいの女の子もここに連れていくなんて
天王寺たちはおかしいんじゃないか。それに保護者は何とも思っていないんだろうか。

「君、新しくここへ来た人だね、岡崎賢人君だっけ?」
まだ囚人服に着ておらず、他の奴隷の前で自分のことをベラベラ紹介されたからな。
「はい、そうです。あなたの名前は?」
「俺はな大熊力也。41歳だ、よろしく」
....大熊力也。体と名前が合っていると思ってしまった。
プロレスラーのような体格なんだから、黒服なんてひねりつぶせそうだが。

「私も自己紹介するわ。私は松沢春奈、22歳、この子は天水みかんちゃん、8歳よ」
「うん! わたし天水みかん! お兄ちゃんよろしくね!」
松沢さん。ぱっと見てはすごいしっかり者だなあと思った。
なんとなく頭も良さそうだし、みかんちゃんの面倒を見るお姉さんって感じ。
みかんちゃんは元気な女の子って感じで小学生らしい。
俺の兄貴の子、姪に雰囲気が似ている。

大熊さんと松沢さんとみかんちゃん。親しくなればいいけど....

「ところで皆さんはいつからここに?」
自分から話題を振ってみる。
「そうだな、感覚的に俺は半年くらいかな、みかんちゃんも俺と同じくらいだな」
「私は二年くらいいるかも」
「わたしも半年くらいかなあ」
えっ、そんなに長くいるの!? よほどのことがない限り半永久的にここへ閉じ込められるんだろう。
だから数年いますって言ってもおかしくないんだろう。

 「賢人君、左見てみろ」
大熊さんに言われてみると透明な壁で仕切られている。
「あれはね、良民と賤民を分けるものだ、奴隷の中でも上下関係があるんだ。
俺らは良民で飯は食わせてもらえるけど、向こうは扱いも酷いし飯は三日抜きは普通さ」
まだ良民でよかった....とホッとする。向こうは扱いも酷いし飯は三日抜き....。
さっき奴隷たちが二列になったのも良民と賤民を分けるためだったのだろう。

Re: 奴隷育成所 ( No.8 )
日時: 2019/08/04 14:44
名前: アマギ (ID: HuynY/aq)

気になった俺は、壁の方へ耳を寄せて声を聞いてみる。
「4日ぶりの飯だー、やったぜ!」
「お前そんな食ってないのか? 俺もだけど」
「あたしは雑草の塩揉みとネズミの茹でたものは食べたよ」
どうやら賤民たちはまともに食べさせてもらえないらしい。
食えても、腹壊しそうなものしか食べてない。
雑草とかネズミとか。そういう食文化がある訳じゃないのに....

 「まあ、まだ良民でよかったですね、岡崎さん」
松沢さんの言葉に同意しかない。
賤民たちの声は松沢さんたちにも聞こえてたみたいだ。
「春奈お姉ちゃん梅干しはどうするの?」
梅干しは食べるんじゃないのか。まだ良民なら食べさせてもらえるから、大丈夫なはず。
「あー、ポケットの中に入れておこうか」
松沢さん、みかんちゃんだけではなく、大熊さんも囚人服のポケットにそーっと梅干しを一つ、入れていった。

Re: 奴隷育成所 ( No.9 )
日時: 2019/08/05 19:06
名前: 李元根(イ・ウォングン、& ◆4iEYrMh84M (ID: GP0veB9W)

カイジかな?

Re: 奴隷育成所 ( No.11 )
日時: 2019/08/07 21:46
名前: アマギ (ID: HuynY/aq)

「岡崎さんも梅干しとか保存の効くものは取っていた方がいいですよ」
松沢さんはそう言って席を立った。
もしかしたら良民とはいえ、3日間飯抜きみたいなことや食べれてもあまり食わせてもらえないことがあるのかもしれない。
松沢さんはここに長くいるから、言うことを聞いた方がいいな。
まだ俺も囚人服に着替えてないが、パジャマのポケットにそーっと梅干しを一つ入れた。

 松沢さん、みかんちゃん、大熊さんは返却口に食器を戻し、部屋の方へ戻っていった。
「お兄ちゃんバイバイ〜」
「賢人くん、またな」
「岡崎さんまた一緒に食べましょう」
俺は勢いよく味噌汁を飲み干した。変なところに連れてこられて知り合いもいないし、地上へ逃げられそうにもない。三人に話しかけてよかったなと心から思う。
段々が人が減っていく食堂の中で俺は一人、食べかけのご飯を食べた。
「ごちそうさまでした」
返却口に食器を戻しに行ったが、こういう食堂でいるおばちゃんがいない。
日帰り温泉やSAのレストランみたいな。
気になったがまた誰かが食堂に来るだろう、ごはんをもらった時に痩せた女がいたから。

 黒服が食堂を見に来る。
「25番、早くに戻りなさい、部屋で一旦待機だ」
ついに食堂には俺一人だけ。部屋で一旦待機ってまた何かするんだろうか。
食器は片付けたので急いで食堂を出て、黒服に付き添われながら部屋に戻る。

「25番、囚人服です」
さっき渡されていなかった囚人服。柄があるわけでも、カラフルでもなく真っ黒で、この会社のマークを刺繍されただけの囚人服。
ガチャッと部屋の鍵をかけられ、また汚い部屋で過ごす。
トイレはあるが使いたくない という印象しかない。
埃が待って虫がわいていて不衛生極まりない部屋。
もはや自分が悪いことをしたのではないかとまで思う。因果応報というような。
ここで待つしかないと心に思い、座禅を組むように静かに目を閉じた。
ここで叫んでも横になっても何の意味もないし、汚い。
何もない、聞こえるのは黒服達の足音や隣の部屋の奴隷の小さな声だけ。
俺は眠りについてしまった。


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