BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 黒子のバスケ
- 日時: 2016/10/06 18:53
- 名前: ビニール袋 (ID: wfu/8Hcy)
黒子のバスケのBL小説です!
伊月受けの、ハーレム要素強めです!
結構皆人格がイケメン風になってしまってます。
特に黄瀬は変わりすぎてなんか申し訳ないです。
黒子が健気です。そして可哀想です。
ちょっと暗めなところがあるのでそういうものだと思ってご覧下さい。
ストーリー的には自信あります。
良いところとかダメな所とか、コメントくれたら嬉しいです。
- Re: 黒子のバスケ ( No.12 )
- 日時: 2016/04/04 18:02
- 名前: ビニール袋 (ID: Od3Uhdie)
人波に負われながら、ジワジワと日向と木吉が乗るであろう車両の列から離れていく。電車が来るまで残り約15分。そして、電車の中での時間がおよそ20分。今だけは、自分を全力で褒め讃えたいと思う。
今頃二人は何を話しているだろう。いいムードになっているだろうか。明日日向に問い詰める必要がありそうだ。
———ここら辺で良いかな。
一番改札に近い車両乗り場に着いた。二人との距離もそこそこ遠いし、なかなかいい場所に辿り着いたかもしれない。かなりゆっくりと移動してきたから時間も潰せただろうと思っていたが、驚いたことにまだ2分も経っていなかった。
今度は何しようかと迷う。時間はそこそこ長いけど、こういう時の上手な暇潰しを用意していないので、何もしないことにした。
取り敢えず、近くにあった柱に背中を預ける。
ダジャレを考えたり、帽子を被っている人の人数を数えてみたりしていたら、肩に人がぶつかった。
人が増えて来たな。
いつの間にか駅は人で埋め尽くされていた。このままでは電車に乗れなくなってしまいそうなので、のろりのろりと近くの車両の列へと足を運んでいく。
その時、反対車線に停車してきた別の電車から驚く程の人数が降車してきた。どっと押し寄せて来る人波に流されまいと急いでその場から離れる。が、見事に流れに巻き込まれてしまった。
部活で体を鍛えているからと言って、これは流石に倒れそうになる。慌てて逃れようと体を翻したその瞬間———
あろうことか自分のスニーカーの靴紐を踏んでしまった。
体が一気に傾いていくのが分かる。
ヤバイ、転ける!
しかし、ほんの一瞬の浮遊感の後に俺を待ち受けていたのは、冷たい床でも見知らぬサラリーマンでも無く、やけに厚い胸板と見慣れた大きな手だった。
「……あれ?」
「伊月、みーつけた。」
そこにあるはずの無い顔を見て、感謝の言葉も告げないまま俺の思考は完全に停止した。
- Re: 黒子のバスケ ( No.13 )
- 日時: 2016/04/04 20:32
- 名前: ビニール袋 (ID: TiVvIMad)
「き、よし……?」
なんで。
日向と一緒にいる筈なのに。ここまでは来ないと思っていたのに。
「ああ、さっきぶり。いきなり転ぶからビックリしたよ。ずっと探してたんだ。大丈夫か?」
ワンテンポ遅れて、俺はコクコクと頷いた。言葉にならない。俺の努力は何だったのだろうか。おそらく木吉が俺を探しに行くと言って聞かなかったんだろう。全く、日向も主将なんだからそれを阻止するくらいの度量は持って欲しい。
というか、もし俺が見つからなかったらどうするつもりだったんだよ。3人バラけたら本末転倒じゃないか。やっぱり木吉はどこか抜けてる。
「取り敢えず、離して欲しいんだけど。」
今の俺と木吉の体制は、転びかけた俺を木吉が支えたままになっている。ぶっちゃけ、周囲から見たら木吉が俺を後ろから抱きかかえているように見えているだろう。というか、実際にそうなっている。腕にこもっている力もかなり強いし。
「苦しいんだけど。」
木吉の顔を見上げると、思ったよりも近いところにあってビックリした。慌てて目を逸らすと、ふいに呼吸が楽になった。木吉が離れていったのだ。
「ごめんな、つい力入っちゃって。」
ううんと首を横に振る。
「大丈夫。ありがとうな。」
だんだん落ち着いてきた。最初は驚き過ぎて心臓が爆発するかと思った、本当に。そうだ、そんなことよりも日向だ。日向は今一人でいる筈だ。早く合流しないと。
そう思ったその時、木吉の携帯がブーブーと振動し始めた。LINEみたいだ。
「……取らないのか?」
何でもないような顔をする木吉に、思わず口を出してしまう。
「あぁ、そうだな。」
「誰から?」
「日向からだ。」
ナイスタイミング。そりゃそうだ、この人混みの中で離れ離れは正直ちょっと寂しい。日向は今どこに居るんだろうか。
「なんていってる?」
「伊月は見つかったか?5車両目の所にいる。だって。」
「なるほどそっか、じゃあ早く日向の所に————」
「何でだ?」
……ん?何が?
木吉がもう一度携帯画面を操作し始める。つられるようにして俺も画面を覗き込んだ。
『見つからなかった。そろそろ電車も来るし、今日は別の車両に乗ろう。また明日。練習試合頑張ろうなd=(´▽`)=b』
携帯をポケットにしまい込むと木吉はこちらに向き直った。
「やっと二人きりになれた。」
- Re: 黒子のバスケ ( No.14 )
- 日時: 2016/04/05 17:13
- 名前: ビニール袋 (ID: TiVvIMad)
プシュー
という音と同時に、電車が着いた。
のに、動けなかった。
木吉のついた嘘と、その後に言われた一言が頭の中で何度も繰り返される。気分が悪くなりそうだ。
「乗らないのか?」
かけられた言葉に肩をビクリと震わせる。その様子を木吉はひどく嬉しそうに眺めた。
電車から降りてきた人波と、電車に乗ろうとする人波が騒がしく交差する。その中で、自分達の周りだけが別の世界のように止まって思えた。
「いや、次の待つ。」
考える前に口が開いていた。このまま二人で電車に乗ると、俺はきっと後悔する。意味は自分でも分からなかったけれど、ただただ木吉と一緒に居たくなかった。
「そうか、じゃあ俺も残ろう。」
「……っ!やっぱり乗る!」
「ハハッ、変なの。やっぱり伊月は面白いなぁ。でも……」
木吉は中腰になり、俺の頬を両手で包んだ。まるで小さな子供をなだめるような、酷く優しい手つきだった。けれど、目が笑っていなかった。それがどうしようもなく怖いと思った。慌てて手を振りほどこうとする、が、どんなに力を込めても木吉の腕はビクともしなかった。悪戦苦闘している俺を見て木吉はようやく口を開いた。
「随分と嫌そうな顔だな。傷つくなぁ。」
全く傷ついていないような風に木吉は言う。俺は今どんな顔をしていたんだろう。木吉は実際はどう思っているんだろう。
「ごめん……。」
取り敢えずの謝罪の言葉を告げる。が———、
「なんちゃって。」
「……は?」
木吉は俺の肩に顔を埋め、全力で笑いをこらえながら、可笑しくて堪らないというように言葉を繋げた。
「ねえ、伊月。取り乱した?」
ピーッという笛の音がしたと思うと、目の前に停まっていた電車がゆっくりと動き始めた。
- Re: 黒子のバスケ ( No.15 )
- 日時: 2016/04/10 15:52
- 名前: ビニール袋 (ID: KVMT5Kt8)
日向side
架空の落し物を探しに戻った伊月の背中を見送りながら、心の中では感謝の言葉を告げる。
ただ、何を話そう。
前までは自然に話せてたのに、ほんの少し意識するだけでこれなのだから情けない。
ふと、隣りにいる木吉を見ると、今だに伊月の去って行った方向をじっと見つめている。
————なんで
悔しさと惨めさに無意識に拳を握りしめていた。
この恨めしい感情を嫉妬というのだろう。
なあ、伊月。俺は、この視線の先を分かってて、お前に相談したんだよ。優しいお前ならきっと、何も考えずに協力してくれるんだろうと思ったから。最低だろう?
自分がどんな目で見られているかも分からないお前が、俺がどんな気持ちでお前と接しているか、分かるはずが無いもんな。
やっぱりお前に相談するんじゃなかったよ。
ずっと黙っていた木吉が口を開いた。
「この前伊月がさ、駅で迷ってた視覚障害の方を乗り場まで案内してて学校遅刻してた。」
「……そうか。」
「降旗にガードのナンバープレー教えるために、学校締め出されるまで残ってた。」
「……。」
「伊月はさ————」
そこで木吉は一度言葉を切った。
「やっぱり探しに行かないか?ネタ帳。」
予想していたはずの言葉なのに、胸が締め付けられるのを感じた。
「いや、でもさ、3人バラバラになるのは不味いだろ。伊月が戻って来るかもしれないし。」
取られる、このままでは。木吉が伊月に。
「見つかりそうになかったら戻ってくればいい。連絡は取り合えるだろ?」
「でも————」
俺が口を開く前に木吉は言葉を繋げた。
「じゃあ俺、向こう探してくるな。」
「!!待ってくれ!」
俺の言葉に耳をかさないまま、木吉は改札の方へと走り去っていった。
行き場のない感情が、まるで形があるかのように俺の気孔を塞いだ。
何でだよ。
俺の方が木吉のことを好きなのに。
二人でいる時間だって、俺の方がすっと長いのに。 それなのに—————
お前がもっと、最高に悪い奴だったら良かったよ。
あいつの心が最初から俺に向いていないことくらい分かってた。人の感情が絡む以上、誰かが傷付くことくらい分かってた。
「全部、分かってたよ。」
つぶやいた言葉は、人混みに掻き消された。
- Re: 黒子のバスケ ( No.16 )
- 日時: 2016/05/19 18:32
- 名前: ビニール袋 (ID: qvpAEkAG)
伊月side
電車の過ぎ去っていく音が、頭の中で不協和音の様に鳴り響く。
この不思議な感覚が、嫌いではなかった。
焦点の合わない視線を左右に動かし黙りこくっている俺を見て、木吉がいつもの調子で口を開いた。
「電車行っちゃったなぁー。次の分、何分後っだっけ?」
「……。」
「伊月?」
「うるさい。」
知ってるくせに、そんなことなんで俺に聞くんだよ。いつもはこんなんじゃないのに。こんな、人のことを嘲笑うような奴じゃない筈なのに。木吉は————
「なんで……」
ほんの少し冷静になるだけで、思考ががすぅっと纏まるのが分かった。
「わざとなのか?それだったら、俺はお前を許さない。」
思っていたよりもすんなりと出た声に驚きつつも、今出来る限りの精一杯で木吉を睨みつけた。
そんな俺の様子を見て木吉は驚いたように、でもそれ以上に本当に嬉しそうに目を見開かせた。
「やっぱり伊月だなぁ。俺、伊月のそういうところが好きなんだ。
あ、それと————」
大袈裟な素振りを見せると、思い出したかのように言葉を付け加えた。
「うん。そうだよ。」
聞くまでもない答だったのに、腹の底が冷えていくのを感じた。