BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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想い人
日時: 2017/03/01 23:29
名前: カニエ (ID: XWukg9h6)

【※完全オリジナル作品です。BL作品です。】

2016/11/27 投稿開始
2017/03/01 閲覧数100!

ーーーーーー

俺の曾祖父さんが亡くなって12年。

俺は17歳になった。

曾祖父さんは俺が5歳になるまで、色んな話をしてくれた。

曾祖父さんはこの世に超能力があるだとか、超能力者がいるんだとか、そういう話が好きだったみたいで、その話が中心だった。

『大事なものは忘れてはいけない』

無口な曾祖父さんはこの言葉だけは何度も俺に言っていた。

17歳になった俺は初めて知ることになる。
本物の超能力者というものを……

Re: 想い人 ( No.14 )
日時: 2017/01/10 23:31
名前: カニエ (ID: FOqQFS6Q)

太陽の出る少し前、早朝に目が覚めてしまった俺は、トイレへ行こうと渡り廊下を歩いていれば庭で石井さんが家の敷地を囲うように出来た塀へ体を向けながら佇んでいた。

庭用のサンダルのような靴?が、俺の分は無くて、普段石井さんしかその庭を歩いていないのかもしれないと思ったけど、俺の思い違いかもしれなくて、そんにことは後回しにした。

「石井さん、何して」

「気安く僕に話しかけるな」

「あ、ごめんなさい…」

石井さんが何をしているのか聞こうとしたら振り向きもせずに高圧的な言葉が返ってきて思わず謝りながら萎縮する。
暫く沈黙が続く中、石井さんは塀の上を見つめたまま動かなかった。
時期に太陽が顔を出して辺りを照らせば、石井さんはそこへ背を向けてこちらに向かって歩いてきた。

「退け」

「え?」

「邪魔だと言っている」

「あ!ごっめんなさ」

「もう良い、謝るな。貴様の謝罪など鬱陶しいだけだ」

歩み寄ってきた石井さんは、俺と会話する為かと思って、場を離れずに居ると、邪魔だと言われる。
慌てて後ろに下がれば俺のいた場所の下に庭へ出ていく為の靴を置く石段があったことに気づき、先程まで考えていたことの恥ずかしさに顔を少し赤くしながら謝れば、謝っている途中で遮断される。
石井さんの言葉は丁寧なのかもしれないけど、一々俺のカンに障ってくる。

俺のことなど放って石井さんは背を向けて歩き出す。きっと自室に戻るんだろう。
そんな石井さんにどうしても聞きたいことがあって、呼び止めるように質問をすれば石井さんは足を止めた。

「あ、あの!…石井さんは、ナオさんのこと…どう思っているんですか?」

「…貴様に話す義理はない。アイツは僕のだ」

それだけ言って、また歩き出した石井さんを引き留めようとは思わなかった。まるでナオさんが物だというような言い方をする石井さん。言い方は違えど、きっと松尾さんや曾祖父さんのようにナオさんを大事にしてきた人なんだと思った。

色んな人から愛されているナオさんは、どうして生きる事を望まなかったんだろう。

考えながら俺は松尾さんと一緒の部屋で寝ていたあの部屋へ戻る足取りを進めた。

Re: 想い人 ( No.15 )
日時: 2017/01/27 21:53
名前: カニエ (ID: ddk2hi50)

二度目に目が覚めたら松尾さんは起きていて、出かける支度も整え終わっていた。部屋の出入口の襖に背を向けてもたれかかっている石井さんの姿もあって、慌てて飛び起きて準備をした。
松尾さんは「ゆっくりしちゃってよー」なんて呑気に言ってて、石井さんは何も言わなかった。

身支度を整えれば三人で松尾さんの運転する車に乗りこんで島へ向かう為に乗る船の出る港へ向かった。
その間松尾さんが俺と石井さんのやる事を指示してくれた。

「キミと石井君が船に乗って島へ向かってね」

「はい。…松尾さんはどうするんですか?」

「ここに残って君たちが無事帰還できることを祈ってるよ」

松尾さんの一言に他人事だなと感じつつも、ナオさんに会いたいと言い出したのは自分で松尾さんは一応引き止めもしたから行きたくないのかもしれない。今現在ナオさんの姿がどうなっているのかも分からないから見た時ショックを受けたくないのかもしれない。
曖昧な返事をすれば後部座席に座っていた石井さんが口を開く。

「僕が着いて行ってやれるのは島の岸壁までだぞ」

「え?岸壁?」

「ほら、よく見てご覧。あの孤島、緑がないでしょー?元々あった植物の生命もナオちゃんが吸収しちゃってるんだよ…」

港に着けば孤島を指差して言う松尾さん。言われるがままに孤島をしっかり見れば本当に岩だけのような灰色の島だった。ふと、石井さんの言葉を思い出して何故岸壁までしか行けないのか聞こうとすると石井さん自らが語った。

「僕一人であそこまで行ったことがある。僕やアイツが通れてもアレを創り出した奴が能力者はそこまでしか足を踏み入れてはならないように条件を決めているんじゃないか?普通の人間なら通れるかもしれんが…とにかく、着いて行ってやれるのは岸壁までだ、感謝しろ凡人」

話始めは謝ってくれるのかとも思えるトーンだったのに、最後の一言で台無しだ。何が凡人だ。凡人で悪かったな。偉く強く逞しい坂下玲二さんの曾孫だってのに、能力も宿していない1人じゃ何も出来ない弱い凡人以下の俺だ。普通なら、大切な人であるナオさんと会いたいのはきっと松尾さんや石井さん、曾祖父さんだったはずだ。
それでも行けないと言うなら、凡人でも行けるなら、俺が行かなきゃいけない。例え命を落としてもいい。
ナオさんに会うんだ。

その覚悟で石井さんの乗る小型の船へ乗り込んだ。

Re: 想い人 ( No.16 )
日時: 2017/02/13 08:59
名前: カニエ (ID: CjSVzq4t)

波は穏やかで、あの孤島までは普通に行けそうだとしか思えない。
石井さんが運転をしている。話す事が思い付かず空を眺めていると石井さんから声がかかる。

「アイツが目を覚ます時、何か起こるかもしれんが、それは貴様だけに起こる事じゃないことを覚えておけ」

「え?あ、はい?」

「二度は言わん」

孤島を見つめたまま言う石井さんの言葉に何を言いだすんだと思ったけど、石井さんの表情がふざけているようには見えなくて、二つ返事をしては、俺も孤島を見つめた。
ナオさんが目を覚ます時を想像してみるけど、何が起こるかは想像出来ない。
孤島まであと少し。

ふと、松尾さんの言葉を思い出す。

「今、俺達が普通に何事も無く島に近づけるってことは」

「そうだ。僕が能力を使っているから貴様は安全に生きていられるんだ、感謝するんだな」

「ありがとうございます。石井さんの能力って、能力を一時的に無能にする能力、であってるんですか?」

「そうだ」

「助かります」

それから少しだけ会話をする。石井さんはナオさんのことをアイツと言って、出てくる話題がナオさんのことばかりだった。それだけで石井さんがナオさんのことを好きだったんだろうな、なんて思えた。
そしてついに、孤島の岸壁に辿り着いた。
快晴だった空は曇天の雲に覆われ、風が吹き始める。波も少しずつ岸壁に波打っている。

Re: 想い人 ( No.17 )
日時: 2017/02/13 20:10
名前: カニエ (ID: CjSVzq4t)

見れば見る程岩だらけの灰色の島。
振り返れば船を岸壁に結びつけている石井さんがいる。その姿を見ていても、ハッキリとした事がわかるわけじゃない。俺がもし、ここへ戻って来れたとして、石井さんはまだここに居てくれるだろうか。
石井さんが居なければ俺は本島へ帰れない。そう思うと俺の弱い心では怖いとしか思えなかった。

「む?なんだ、まだ居たのか。さっさと行け。アイツはこの島の中心に居ると教えただろう」

「…あの、石井さんは、ここに居て…くれるんですよね?」

「何を女々しいことを言っている。女じゃあるまいし」

「俺は!坂下玲二さんのように…強くないです」

「言われなくてもそれぐらい知ってる。貴様はどこからどうみても凡人だからな」

船を岸壁と紐で結び終えて俺に気づいた石井さんは黙って動かない俺を見て、先を行くように促す。俺は怖いとはプライドが邪魔をして言えなかった。
勇気を振り絞って下記を問えば石井さんは真剣な顔で当然の事のように言った。

「いて、くれますか?」

「心配するな。僕は貴様がアイツを連れ戻すまで待っててやる」

その石井さんの言葉が今の俺には力になった。頭を下げて礼を言うと、石井さんに背を向けて、島の中央へ向かって走り出した。

Re: 想い人 ( No.18 )
日時: 2017/02/13 20:36
名前: カニエ (ID: CjSVzq4t)


振り返ってももう石井さんの姿が見えないほど先へ来た。岩を登って、川の流れる所は石を踏み台にして渡った。風が強くなって、髪が揺れる。汗も乾く。先の見えない岩だらけの周囲に自分が今島のどの辺にいるのかが不安になる。

「とにかく、早くナオさん見つけなきゃ!石井さんも待たせてられない!うわっ!」

意気込んで足を進めた次の瞬間、踏み台にした場所が悪く、丸型のグラついた岩が動いて足を滑らせた。運悪く丸型のグラついた岩の置かれている場所の下には穴があったようで、岩と岩の間に足が挟まる。時間を掛けて引き抜いたが、どうやら落ちた時は勢いと衝撃で気づかなかったけど、足首を捻ったようだ。

暫くは痛めた足を引きずるようにして歩いた。
そうしてるうちに多くの異変に気づく。
この島には虫がいない。そして、季節も時間すらわからない。風は吹いてて雲も流れてるようだけど一定の方向に流れてて、どこかに風が吸い込まれているような感じだ。
ふと上を見れば雲が1箇所に大きな渦を巻いているのが見えた。
船から島へ上がった時は見えていなかったソレにもしかしたら、その中心にナオさんがいるのかもしれないと思った。

衝動的にその中心へ向かって走り出す。風が援護してるみたいで足が痛いのも一時忘れられた。けど、石に躓いて転んだ時にまた痛みが襲ってきた。
両膝とぶつけた顎に傷ができて痛い。膝を見れば血が出てきていた。地面に傷が出来ないようにカバーしてくれる草や芝のようなものがあればこんな大怪我しなかったかもしれないと思った。
自分のどんくささに苛立って近くにある砂利を握りしめ歯を食いばる。

俺が岸壁より先に行けたことは、俺が能力者でない事を証明していて、曾祖父さんとは違うことを思い知らされる。曾祖父さんとは何もかも違う見知らぬ俺を見て目を覚ましたナオさんはなんて言うんだろう。

その時、頭をよぎったのは俺の肩に提げた鞄に入れてある曾祖父さんのノートの一言だった。

〝ナオに会いたい 〟

その夢をどうしても叶えたくて、痛みを耐えながら立ち上がってまた走り出した。


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