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想い人
日時: 2017/03/01 23:29
名前: カニエ (ID: XWukg9h6)

【※完全オリジナル作品です。BL作品です。】

2016/11/27 投稿開始
2017/03/01 閲覧数100!

ーーーーーー

俺の曾祖父さんが亡くなって12年。

俺は17歳になった。

曾祖父さんは俺が5歳になるまで、色んな話をしてくれた。

曾祖父さんはこの世に超能力があるだとか、超能力者がいるんだとか、そういう話が好きだったみたいで、その話が中心だった。

『大事なものは忘れてはいけない』

無口な曾祖父さんはこの言葉だけは何度も俺に言っていた。

17歳になった俺は初めて知ることになる。
本物の超能力者というものを……

Re: 想い人 ( No.9 )
日時: 2016/12/05 23:11
名前: カニエ (ID: tOQn8xnp)


「うーん…個人の意見としては会わせなくないなー」

「え?どうしてですか?」

「さっきの話に戻っていいかな?元々身につけている能力、発揮できる能力の両方が強い者は何故か容姿端麗なんだよ。キミの曾祖父さんである坂下君もそうだったでしょ?」

確かに。思えば、曾祖父さんは凄くイケメンで、若い頃は男優でも出来たんじゃないかと思えるほどの容姿だった。ガタイが良くて短髪が似合ってて、肌も小麦色。でも、それがどうしたんだろ。

「キミは、坂下君が亡くなっているのに、どうしてナオちゃんが生きているんだと思う?」

「…え?このノートに死んでないとだけ沢山書かれていたので…」

俺は曾祖父さんが亡くなったことは話してないけど、この人は何でも知っているような感じで…素直に応えると、車を用意して車に乗りこんだ後、言った。

「ナオちゃんもね、その両方を備えた子なんだよ」

「…はあ…あの、それがどうしたんですか?」

「…ナオちゃんはね、超能力者では最も必要とされる治癒能力者なんだ」

「治癒能力者…じゃあ、元々身についているのは何ですか?」

松尾さんは車のハンドルを握る手に力を込める。額には暑いわけでもないのに汗が伝う。
俺の問に更に気まずそうに複雑といった表情をした松尾さんは言った。

「ナオちゃんは……不死身なんだよ。だから生きられるんだ」

Re: 想い人 ( No.10 )
日時: 2016/12/06 13:43
名前: カニエ (ID: 1QppuERs)

「不死身…?」

「そう。身体が死ぬ事はない」

「でも、今は生き返れない状態?なんですよね?このノートによれば」

「…そうだね。身体は死なないけど、心はどうなんだろうね…。中身が空っぽに近い状態なんだよ。全く目を覚ましてくれない」

松尾さんが眉を八の字にして辛そうにしながらも笑って上記を言った。
きっと、曾祖父さんと同じように松尾さんにとってもそのナオって人は大事な人だったんだろう。

暫く沈黙が続いた。それを先に破ったのはそれを作り出した松尾さんだった。

「ナオちゃんは、今棺桶に入れられて、孤島の洞窟に居るんだよ」

「え!?何でそんな所に!?生きられるからって酷くないですか!!?」

「うん。勿論そう思ったけど、ナオちゃんの能力の副作用みたいなものが酷くてね…そうするしかないんだ」

「…どういう事ですか?」

「治癒能力ってのは、他人の傷を癒すことが出来るでしょ?坂下君やこの松尾でさえ、他人を自分の思い通りに動かしたり、自分の為に使う。要は自分より他人に被害が大きい能力だけど、治癒能力の場合は、他人に被害が一切ないんだ。逆に他人には嬉しい能力。それなだけにリスクもデカイ」

「……」

「ナオちゃんはね、特別強い能力者だったんだよー?肌が触れれば触れたものは忽ち治癒能力で修復する。自分では制御の出来ない能力。それに加えて不死身だから負担がかかってもすぐ回復する。他人から見ればそれこそチート人間や化け物と同じ。ナオちゃんは、事故で亡くなる人だって心臓が動いていれば傷を癒し、生き返らせることも出来る」

「……それのリスクが高いってことは…」

「人でいうところの寿命がナオちゃんの場合は生気だったんだよ」

「…え?」

「ナオちゃんは不死身だったし、疲れなんて感じてなさそうだったから……誰も気づかないよね〜?…でも、やっぱり本人はわかってたみたい。突然倒れて目を覚まさなくなったあの日は忘れられないよ」

ナオって人の話をする松尾さんはとても悲しそうで、今にも泣きそうな表情なのに陽気に振舞って笑ってみせるそれが無理してるように見えて、見ていられなくて顔を逸らした。

Re: 想い人 ( No.11 )
日時: 2016/12/07 22:13
名前: カニエ (ID: 1QppuERs)


「あの、曾祖父さんが、そのナオって人を生き返らせる方法を見つけたってノートに書かれてるんですけど、それって分かりますか?」

「…うん。ナオちゃんの身体は心を戻そうと、無意識に目に見えないそれを発動しているんだよ」

「それ?」

「うん…癒しを与える側から、与えられる側へ。生気を与えて心が無くなれば、正気を溜めて心を取り戻せばいい。それだけの話なんだよ」

「それ、じゃあ…今、会うと正気を取られて死ぬってことですか?」

「ううん、そんな一気に大量に摂る事はしないんだ。少しずつとって、寿命を短くしていく。でも、キミが坂下君の曾孫っていうから会わせたくないんだ」

「え?どうしてですか?」

「…きっと、ナオちゃんは怒るから」

「え?でも、ナオって人は曾祖父さんから好かれてたのに…?あ、曾祖父さんのこと、好きじゃなかったんですか?!」

「いやいや、そうじゃなくてね…ナオちゃんが、生き返ることを望まなかったから。勝手な事したら起きた時に怒られちゃうよ」

ナオって人を思い浮かべているのか、少し嬉しそうに松尾さんは笑った。初めて見る笑顔に、そんな笑顔をさせられるナオって人がどんな人物か目で見て確かめたくなった。

Re: 想い人 ( No.12 )
日時: 2016/12/14 09:33
名前: カニエ (ID: 1QppuERs)

「あっ!でもナオさんより先に会わないといけない人がいます」

「誰だい?」

「えっと……石田、さんの曾孫…さん?」

ノートの最後のページを捲って言う。

「石田?誰それ?あー!石井君かな?坂下君は人の名前覚えるの嫌いだったからねー」

一度首をかしげた松尾さんは思い出したように名前を訂正して笑った。何でも出来るイメージの堅い感じの曾祖父さんを見てた俺からすればそういうミスをする曾祖父さんの過去も少し気になった。もう少しでナオって人に会える。ワクワクしていた。

「えー、でも確か、石井君には曾孫さんは居なかったと思うけどねー?」

「えっ?」

思いがけない松尾さんの言葉に想像していたナオさんを遮断して現実に戻る。
曾孫が居ないっていうなら誰のことを曾祖父さんは言っているんだ?
俺は仕切り直しをするのだけは嫌だった。折角関係者と接点を掴めたんだから、きっとナオって人はもうすぐ!こうなったら、ナオって人がいるところを知ってる松尾さんにそこまで連れて行ってもらうしかない!

「それなら、松尾さんはナオって人の居場所は分かるんですよね?」

「うん、知ってるよー?」

「なら、そこまで連れて行って貰えませんか?!」

「…近づくこともその孤島に着くこともきっと出来ないと思うよ?それでも行くかい?」

「え?」

海もビーチも見える所に車を止めた松尾さんは太平洋の方を指さして言った。

「あれがその孤島だよ」

指先を目で辿れば孤島はあった。でも、船やヘリを使えば行けない距離ではないはずだ。それもハッキリ見えてるから船でも一時間から二時間程度で着く距離だろう。何で行けないんだろうと考えていると、松尾さんが話を続けた。

「結界が張られているんだよ、能力者によって。だから、そこには人も能力者も入れない。その結界を破れるのはその結界を作った能力者と、能力を無効化する能力者の石井君と、ナオちゃんだけなんだよ」

「え?じゃあ石井さんとは別に結界を作った能力者が居るってことなんですか?」

「うん、そうだね。その結界が破れないと、俺達は中に入れないし、ここから孤島は見えても、実際船で近づいたりヘリで近づいたりすればあの孤島は霧に隠れて姿を消すんだよ。いくら波が穏やかで快晴の日に行ったとしても近づけば波が荒れたり霧が出る事は当たり前なんだ」

手を打つ手段がなくなり悩んでいると、一息で空気を変えた松尾さんが下記を述べれば、また車を動かした。

「ふぅ、それじゃあ、まずは石井君のところに行ってみようか」

「はい!」

Re: 想い人 ( No.13 )
日時: 2016/12/18 23:36
名前: カニエ (ID: 1QppuERs)

それから丸1日と数時間後、石井さんという人に会って話をした。

「貴様らは人の都合というものを考えないのか!アイツの居場所は何故あの時に教えなかった?アイツの意識を戻すというなら何でも協力してやると数年前にも言ったはずだが?何も言わなかった挙句、姿を晦まし、顔も忘れてた頃にノコノコとよく顔が出せたものだな」

会ってナオさんの意識を戻す協力をお願いしたところ、説教とも言える質問攻めが始まった。
石井さんも容姿が美しく、年齢が大体20代後半から30代といったところで止まっていた。
車での移動中、松尾さんから聞いた。
能力者には、幼少期から使えてある程度の歳になると容姿が止まる先天性の人と、比較的強くなった頃に能力者だと気づいたその時から容姿が止まってしまう後天性の人の二種類に別れるらしい。
松尾さんは先天性。石井さんは後天性らしい。
因みに、ナオさんは先天性、俺の曾祖父さんは後天性だったらしい。
そして、先天性の能力者はいつでも強い能力を引き出せる。後天性の能力者は、短時間に先天性の能力者より強い力を出せるが、そんなに長くは持たない。

他にも能力のことについて語る事は沢山あるらしいけど、俺の頭が整理できないだろうから、と気遣ってくれた。

「僕は今忙しいんだ!アイツの意識が戻る方法を知ったのならそれを僕に教えてさっさと立ち去れ。アイツの意識は僕が戻してやる」

「えっ!?そ、それは」

「それは無理だよ〜」

「なんだと?何故だ、理由を話してみろ」

「キミはナオちゃんの意識が戻ったらまた何するかわからないし、ナオちゃんも、キミとは会いたくないだろうから…ねェ?」

石井さんの話し方や一人称、住んでいる所などを見てなんとなくだけど、高貴な人なんだと思う。少しぼーっとしていると話が石井さんの都合の良いように持っていかれそうになってハッとして、それはダメだと言おうと声を上げると、横からきれいに松尾さんに言葉を被せられた。
松尾さんの否定の言葉に眉を寄せて顔を歪めた石井さんが怒声で話の続きを促すと、松尾さんはそれに応えて怪しい笑みを浮かべた。

そうすれば、石井さんは少し悔しそうにそっぽを向いて歯を食いしばり、数秒後「わかった。だが今日はもう遅い。宿が無いなら泊まることは許可してやる。明日、出発するぞ」と了承の言葉を預かった。

嬉しくて、この嬉しさを共感しようと隣にいる松尾さんを見れば、松尾さんは俺を見て口元は笑っていたけど……なんだか、目が悲しそうにしていた。


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