BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 想い人
- 日時: 2017/03/01 23:29
- 名前: カニエ (ID: XWukg9h6)
【※完全オリジナル作品です。BL作品です。】
2016/11/27 投稿開始
2017/03/01 閲覧数100!
ーーーーーー
俺の曾祖父さんが亡くなって12年。
俺は17歳になった。
曾祖父さんは俺が5歳になるまで、色んな話をしてくれた。
曾祖父さんはこの世に超能力があるだとか、超能力者がいるんだとか、そういう話が好きだったみたいで、その話が中心だった。
『大事なものは忘れてはいけない』
無口な曾祖父さんはこの言葉だけは何度も俺に言っていた。
17歳になった俺は初めて知ることになる。
本物の超能力者というものを……
- Re: 想い人 ( No.4 )
- 日時: 2016/11/28 20:41
- 名前: カニエ (ID: caCkurzS)
日記を読み続けると、複数の人物の名がでてきていることに気づく。
また、この日記は、自分が見返す為のものって意味もあるだろうけど、他人に見せる為のものでもあるのかもしれないと思った。
人の住所まで書かれていた。
俺はそれを参考に調べて行こうと思った。きっと何か聞けるかもしれない。曾祖父さんの謎を解きたい。
初めはそんな気持ちが強くて、課題で出された難問を解きたい気持ちだった。
数日が経過して、夏休みになった。待ちに待った長期休暇だ。
母には適当に嘘を並べて、夏休み終わりには戻ると告げて家を出た。
母は少し心配そうな表情をしていたけれど、気にしていたら計画していたことを進めることは出来なくなるから、振り返らずに歩いた。
- Re: 想い人 ( No.5 )
- 日時: 2016/11/28 20:51
- 名前: カニエ (ID: caCkurzS)
初めに、松尾という人物に会った。
浴衣を着て麦わら帽子を被った無精髭の叔父さんのようだけど、話してみると、その人が変わり者だと気づく。
「あの、坂下玲二って人の名前に聞き覚えはありませんか?」
「ん〜、知ってるよー?キミはあれかい?曾孫?」
「え……」
「なんで分かるのって顔だね」
俺の事は一言も話していないのに、初対面の彼はおかしな者を見るようにゲラゲラ体を揺らしながら笑った。
「場所を変えようか、キミに危害は加えないよ〜?坂下君の曾孫さんなんだから、ね?」
ゆらゆらとガニ股歩きをしながら愉しそうに話していた彼は文末には低い声で怪しい笑みをしていた。その表情にゾッとした。
- Re: 想い人 ( No.6 )
- 日時: 2016/12/01 00:08
- 名前: カニエ (ID: caCkurzS)
〝朝倉壮〟と書かれたアパートのような場所に着いた。
1回の受付のような場所に入って行く無精髭の叔父さんの後について俺も入った。
室内は静かで、外でも物音は聞こえない。このアパートのような場所に住んでいる人の気配もしない。少し怖かった。持っていたリュックを前で抱えるように持つ手に力を込める。
「あーそんなに怖がんないでよォ〜、叔父さん傷つく〜」
ケラケラ笑って、畳のある床に胡座をかいた彼は隣を軽く叩いて俺に座るように促した。大人しくそこへ座ると、彼は煙草を出して口に咥えるとライターで火をつけ一つ吸ってため息混じりに吐き出せば、軽い口調が、真剣な口調へと変わった。
「それじゃあ、話そうか」
「…はい」
「何処から聞きたいかな?キミになら何だって話すよ?坂下君の曾孫さんなんだからね?」
「あの、何で…曾祖父さんの曾孫ってだけで、そんなに…」
「うん、キミは坂下君に似てるよ。坂下君はバカ正直だったからね。怖い部分もあったけど、いい子だったから。」
「……あの、松尾さん、でしたっけ?」
「うん、そうだよー?なにかなー?」
「松尾さんは、曾祖父さんより、歳上?なんですか?」
松尾さんの話し方は曾祖父さんより目上だった場合の人の話し方で不思議に思った。曾祖父さんを知ってたというより、曾祖父さんと関わった人間の話し方。もし、歳上なら、今、その姿を維持して生き続けているのはおかしい。
「そうだよ。この松尾も、能力者の一人なんだ。よろしくね?坂下君の曾孫君♪」
カンはあたったようだ。でも、曾祖父さんは容姿は若かったけど、流石にこの松尾さんのように30代後半か40代のような容姿ではなかった。何でこんなに若さを保って生きていけているのだろう。
松尾さんは、俺の考えていることがわかるかのように、ニコッと笑って下記を告げた。
「不老不死、なんだよ」
- Re: 想い人 ( No.7 )
- 日時: 2016/12/05 22:24
- 名前: カニエ (ID: tOQn8xnp)
「キミが坂下君の曾孫ってことだから、この松尾、細部まで話すのは苦手だけどキミが気になることは1から10まで何だって話してあげるよー?」
「…え、えっと…ふ、不老不死って」
困惑してその言葉しか頭にない。笑って両手を広げて見せた松尾さんに、何か質問を高速で考えた。
「不老不死は不老不死だよ。老けもしなければ死にもしない」
「それは、能力者、でも強い方じゃないですか?」
「たははっ、それだけじゃ弱いよ。第一、元々身についているものと発揮する能力とは違うんだよね。」
「?はい?どういう事ですか?」
「うーん。目の前に、80kgの重りがあるとするよ?」
「…はい」
「それをキミは今持てるかと聞かれると持つ事は出来ないでしょ?」
「…はい、まあ」
「でも、毎日重いものを持って鍛えている人なら持ち上げることは可能。だよね?」
「…そうですね」
「それが能力だとすると、この地球で独りぼっちになった時、酸素さえあれば呼吸が出来るから人間は生きられる。元々身についている呼吸の方法。つまり、それがこの松尾からすれば不老不死っていうだけなんだよね。能力は天から授かったリスクの高い力を引き出すものってだけなんだよ」
「……じゃあ、松尾さんは元々不老不死ってことなんですか?」
「うん、そういうこと。この松尾は選ばれし者だから、能力も持ってるけどね?」
「は?…あ?え?」
「能力者ってのは、この世の人間なら全てに当てはまるけど、その力を100%発揮することは出来ない。それが出来るのが選ばれし者。超能力者ってわけだよ。」
「はぁ…じゃあ、松尾さんは何の能力者なんですか?」
「誘導能力。目に入れた人や動物、生き物を意のままに操れる能力。短時間だけどね。リスクは、操る範囲が広ければ広いほど…視力が少しずつ低下していくんだ」
自信満々に自分の能力を語った松尾さんは、後に悲しそうな顔をした。
フォローしたいけど思い当たる言葉がなくて、声をかけずらい。
それでも、誘導能力なんて凄いな…。あ、曾祖父さんのノートに書かれたやつだ、と、思い出してノートを開くと松尾さんの陽気な声が聞こえた。
「あ!それ!坂下君、しっかりノートつけてたんだね」
- Re: 想い人 ( No.8 )
- 日時: 2016/12/05 22:54
- 名前: カニエ (ID: tOQn8xnp)
「あ、これは曾祖父さんの部屋で見つけて…」
「うん。坂下君に書けって言ったのはこの松尾だよ?」
ニコッと笑って言う松尾さんから嘘のような気配は無くて、そうなんだと信じる。そこで、本題を思い出した。
「あ!あの、このノートに沢山書かれてるナオって人!この人は!どんな人なんですか!?」
「え?…ックク、坂下君、自分の事について日記つけてるんじゃないのォー?」
俺の問にキョトンとした松尾さんはノートをチラリと一度見ると笑って上記を述べた。
俺も初めは曾祖父さんの日頃の事が書かれているかと思ったけど、ページを捲れば捲るほどナオという人物に会いたいと綴られていた。
どんな女性なんだろう。曾祖父さんの好きな人?でも、曾祖母さんの名前じゃない。てことは、曾祖父さんの片想いの相手?とか、とにかく色々考えたんだ。だから、俺は笑っている松尾さんほど冗談でも表情を崩せずにいた。
「うん。ナオちゃんはね、カッコよくて、可愛くて、綺麗だったよ」
「み、見た目じゃなくて!中身!」
「ああ、中身?面白くて、優しくて、面倒見良くて正義感の強い子だよ」
「…完璧ですね」
「うん。キミも気づいてるだろうけど、坂下君はそんなナオちゃんが好きだったんだよ」
「…」
懐かしそうに表情を崩しながら話す松尾さんを見て、きっとナオって女性は、そんなにも曾祖父さんの癒しになっていたんだと思えた。
まだ、想像の中だけど、そんな人物が居るなら、俺も好きになっていたのかもしれない。なんてことを心で呟いた。
「…今、そのナオって人は?」
「……眠っているよ。誰もいないところで」
「あ、の…その人に会うことって…出来ますか?」
「うん、出来なくはないけど、何でかな?」
ナオって人に会ってみたくて、場所を聞くと、誰もいないところで眠っていると返ってくる。眠っているということは、やっぱり植物状態ということなんだろう。それでも会ってみたい。会うことは出来るか聞くと、逆に問われた。少し警戒心のある問いかけに、何か取引条件はないか探し、持っていたノートを目の前に出した。
「これ!このノート、その人にも読ませてあげたくて…」