BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 一条くんと名取くん
- 日時: 2017/05/04 11:42
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
学園もののオリジナルBL小説です。
α、β、Ω等が出てきますので、苦手な方はUターンしてください。
一条くんと名取くんの恋を一条くん目線で載せて行きたいと思います。
お互いの特性を知らないで惹かれあった二人がバタバタしながらも恋愛を成就させていくお話です。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.12 )
- 日時: 2017/05/09 20:36
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
昼下がりの授業が眠たいのは分かるが、俺の隣で寝ているコイツは授業を真面目に受けようという気がないようだ。教材、ノートを開くまでは良かった。開いて机に置けばその上にうつ伏せになり、顔を両腕で包み、隠すようにして眠っている。寝息も聞こえないほど静かだ。
まだ教師には気づいていない。折角なら俺の方を向いて寝ろと思うが、他の生徒にコイツの寝顔を見られるのも納得いかない。
だから、起こせずにいるが、さっきから見てても寝てる時に無防備になりすぎだ。隙がありすぎる。名取の前の席へ目を向ければ、黒髪で細身の青年。この生徒もパッと名前が上がるほど目立つような存在じゃないのが見て分かる。真面目そうで素直そうで騙されやすそうな、小柄生徒。確か名前は、井原和樹。
急に振り返った井原が俺の視線にも気付かず、後ろの席である名取を見て、腕を揺する。
「ち、ちあき!千秋っ!授業中だよ!」
千秋。名取の名前だ。名前を呼ぶ程親しい人、という事か?それなら、井原が名取の友という訳か。小声で名取を起こそうとする、井原は正しいと感心する。井原はαには見えないから安心だな。
揺すられた名取は無反応。この間は額にキスしても起きなかったぐらいだからな、相当深く眠ってるのかもしれないと思っていると、名取の後ろの席の武田がシャーペンの芯を押し出す部分を名取の背中に向かって近づくのが見えた、あ、と思った時には遅かった。
「いってえぇえ!!」
シャーペンの芯を押し出す部分が名取の背中に刺さればビクッと仰け反った背中に左手をあてて、ガタッと大きな音を立て、声を上げて席を立つ。
クラスメイトと担当の教師の目線までもが名取に向く。
少し涙目で後ろの席の武田を睨みつけるその顔が、可愛く思えた。
「どうしたんだー?名取」
「い、え・・・なんでも、ありません」
教師からの問いかけに、ホントに謝罪するように答えれば大人しく席につく。この行為をもしクラスのムードメーカーしたなら、教室内は生徒の笑いでドッと煩くなるだろうが、名取はクラスでのムードメーカーではない。現に教師が「そうか」と納得すれば教室は静かなまま、授業が再開する。
「お前なっ・・・!」
「おぉっと、お前が寝てるから悪いだろ?井原が困ってたんだぜー?」
授業が再開されれば、隣から聞こえる名取の声に耳を傾け、様子を伺う。名取は後ろの席の武田に文句を小声でぶつける。武田は俺は悪くないと両手を上げる。後ろを振り向いたままで名取の様子を見ている井原も「ごめんね、千秋」と名取に両手を合わせて謝罪する。それを見て名取も起こされた事については許すようだが、何か納得してない表情ですぐにまた武田の方を見ると文句を小声でぶつける。
「でも、刺すことねーだろっ!?入ったっつの!完全に!痛かったんだからなっ!」
発言に気をつけろ名取、としか言いようが無い。名取と関わっていくうちに知ったが、名取は無自覚に出てくる言葉が、エロいと言うか、別の意識にさせられるというか、勘違いされても可笑しくないものばかりなのだ。呆れと焦りに片眉をピクッと動かしてしまう。
「えー?そんなに勢いよくやってねぇんだけどなぁー?」
武田も気づいたのか知ってるのか、悪ノリする。それにニヤリと企む表情をした名取が「お前にもやってやろうか?あ?」と言えば、二人がイチャつくと思った俺は、二人の方を見て、小声で告げた。
「名取君に武田君、そういうのは休み時間にでもやってくれないかな。今は授業中だ」
メガネを押し上げてクールさと副会長っぽさを出しながら言えば、武田は「あ、はい」と軽く頭を下げる。名取を見れば、俺の裏の顔を知っているからか、オエッと舌を出して苦虫を食べたような表情をしている。
こういう表情をさせているのが俺だという優越感に口角を僅かに上げた。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.13 )
- 日時: 2017/05/10 13:50
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
休み時間になれば、名取はまた机に伏せて寝始めた。次の授業も出席することがそれを見て確認出来ると、俺は席を立って担任の佐伯の元へと行った。
職員室に居ないことが分かると、別の教室へ授業に出ていたのかもしれないと思い、次の休み時間に出直そうと教室へ戻る途中、空き教室の側で不自然に声が聞こえて足を止める。
俺以外誰も通っていない廊下で声がするのは可笑しい。それにこの空き教室は鍵がかけられていて入れないはずだ。鍵はー・・・佐伯が持っている。
ガラッと空き教室の扉が開く音にハッとして壁を背に隠れる。コソッと様子を伺えば、佐伯の声と、何処かで聞いたことのある声。
「気をつけてね!」
「大丈夫、ただの遠征だし、すぐに戻ってくるからね」
「はい!待ってます!」
「はい、いい子いい子」
後ろ姿で分かった。佐伯と話しているのは井原だ。名取の前の席の小柄な青年。会話を聞けば、そういえば担任の佐伯は弓道部の顧問でもあった、と思い出す。弓道部は明日から遠征で帰ってきてすぐに休日に入る為、一週間程学校に来ない。顧問の佐伯は教師であるから、金曜には帰ってくるが・・・。それより、二人の会話がまるで恋人同士のようなやりとりで気になる。
暫く離れる間をわかりやすく寂しいと言う井原を慰めるように頭を撫でている佐伯。教師と生徒にしては距離が近いな。
少し長めに見れば、俺は衝撃的なものを目にした。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.14 )
- 日時: 2017/05/10 20:50
- 名前: あまのはし (ID: v8ApgZI3)
「・・・歯形」
「ん?」
「!」
井原の首、項の少し下に見てわかる人の付けたと思われる歯形。声が漏れて佐伯が反応したのが分かり慌てて壁にまた隠れる。
「なに?どうしたの?」
「・・いや、なんでもないよ。さっ、そろそろ授業が始まっちゃう。戻った戻った!」
「むぅー、僕といる時は先生らしくしないでって約束したでしょ!」
「ここは一応学校だよ?」
「そーだけどー・・・」
「よしよし、さっ、教室戻って」
俺だって教室に戻りたい。こんな風にわかりやすくイチャつかれると腹が立つものだな。誰にでも真摯な対応の佐伯がスキンシップをとり、あんなに甘い口調なのは初めて見た。人見知りの井原があそこまで甘えて、まるで女子の様な素振りに、二人に深い関係が無いわけはないと察した。
恐らく井原のものと思える足音が廊下に響いて遠のいて行くのがわかる。
暫くすれば、一息ついた佐伯は元の声で俺に向かって声をかけた。
「盗み聞きと覗き見は良くないよ?副会長の一条君」
- Re: 一条くんと名取くん ( No.15 )
- 日時: 2017/05/12 12:31
- 名前: あまのはし (ID: v8ApgZI3)
「すみません、物音につい隠れてしまって。もちろん、聞くつもりも見るつもりもありませんでしたよ」
フッと怪しい笑みを浮かべて佐伯を見れば、頭を抱えて呆れたため息をついた。それに眉を寄せれば佐伯は勝手に語り出した。
「はぁー・・・キミもαだから知ってると思うけど、αとΩは番で繋がることが出来る」
「そうですね」
「繋がる方法なんていくつかあるけど、手っ取り早いのが首を噛む事、なんだよ」
そう言うと佐伯は自分の項の下辺りを指差す。先程の井原の首に残っていた歯形を思い出す。
「そうしなければ、Ωはヒートを自制することが出来ない。自分に最適な相手であるαを見つけて繋がらないとΩは大変だからねー」
「繋がってない状態のΩが発情期を抑えるためにしてる事って教えていただけますか?」
「学校が許可しているのは薬だけだよ」
「誰から貰っているんですか?」
「クラス担任、生徒指導、保健医ぐらいかな?特別枠組の生徒は基本的にΩだよ」
指折りに数えてみせた佐伯は「それじゃあそろそろホントに授業始まっちゃうから」と種を返す。歩いて行く途中、振り返った佐伯が思い出したように下記を述べた。
「あ、くれぐれも他言無用で頼むよ。たまにヤらかす子たちもいるから」
佐伯の言う〝ヤらかす子たち〟とは〝Ωを利用する生徒達〟と言う意味なのだろう。口は笑っていたが、佐伯の目は笑っていなかった。
佐伯はα、井原がΩ、なかなか良い情報が入った。
佐伯の後ろ姿が見えなくなって、俺も教室へ戻った。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.16 )
- 日時: 2017/05/14 17:33
- 名前: あまのはし (ID: v8ApgZI3)
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名取千秋side
「和樹、次なに?」
昼食後、5限目は何の科目か前の席の井原和樹が駆け足で席に戻ってきたタイミングで聞けば息を整えながらも応えてくれる。
「次は体育だよ?体操服に着替えなきゃ」
体育か・・・。
体力に自信が無いわけじゃない。ただ持久性が無いだけ。そもそも運動すると薬の効果が切れるのが早まる。
ああ、そういえば航貴に俺がβだって嘘ついちゃったこと忘れてたなー。ま、出来るだけαには避けてもらいたいからな。くっつきたい訳でもないのにくっついちまって、一生一緒とか無理だろ。以前に男とは無理だし。なんで俺はΩなんだろうなー・・・。
最近は発情期がきだして、1日1錠の抑制剤を毎日服用してるっつうのに。
「ち・・・きっ・・・あき!・・ちあき!」
「!ぁあー!はい!?なに?」
やっべー、和樹が呼んでるのに全然気づかなかった。うわー、頬膨らませて怒ってるなー。和樹は言動がいちいち女子っぽいなとつくづく思う。
「早く着替えよ?」
「・・・へーい」
正直運動系は避けたい。休む事も出来るけど、和樹の「一緒に体育行こ?」的な甘えた上目遣いは苦手なんだよ。なんつーか、凄い期待の眼差しだから、裏切れないって言うか、後々罪悪感とかに押し潰されそうだ。実際、キッパリ「体育?あー、休むわ」って言った日には「えー!?なんでっ?!一緒に行こうよぉー!」なんて駄々こねて最終的には泣きやがったからな。もう高校2年生だぞ?ガキかっつの!
「相変わらず細いなー、千秋くんは」
「キャー武田くんセ・ク・ハ・ラー!」
後ろから伸びてきた手に気づかなかった。体操服に着替え終わった直後、急に抱きしめられて服に入ってきた手が腹から胸を撫で回すから声で誰か分かったけど首だけ振り返れば予想通り、悪ノリ大好きな俺の後ろの席の武田がニマニマ笑みを浮かべてる。
俺もそれにノるように笑顔を作って女子みたいに高い声出しながらふざけて上記を言いながら服の中の腕を掴んで押し出すようにすれば、一部の女子と男子からはフーフー!と歓声が上がるが、いつも通り武田はスッと離れて行った。和樹は顔を真っ赤にさせて顔を手で覆っておきながら指をたまに退けてチラチラ見てたし、この一瞬の盛り上がりの反応が武田は好きだって言うから、全くマニアックだと思うぜ。