BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 一条くんと名取くん
- 日時: 2017/05/04 11:42
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
学園もののオリジナルBL小説です。
α、β、Ω等が出てきますので、苦手な方はUターンしてください。
一条くんと名取くんの恋を一条くん目線で載せて行きたいと思います。
お互いの特性を知らないで惹かれあった二人がバタバタしながらも恋愛を成就させていくお話です。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.7 )
- 日時: 2017/05/05 18:45
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
「今日は何を食べているんだ・・・?」
いつも通り、黄色い声の煩い女子から逃げるように副会長室に入れば、黒いソファーに座って何かを食べている名取。呆れたため息をついて、ネクタイを緩める。
「かしわ餅。旨いぜ?食う?」
口いっぱいに入れてるのか頬を膨らませてモゴモゴ動かしながら食べている。ハムスターみたいだと思う。俺に柏餅を食べないかと向けて来たが、生憎食欲は無い。
「毎度毎度、どこからそんなものを持ってくるんだ。学校では売店で売られている物以外の持ち込み、飲食は禁止されているぞ」
「貰ってんの」
「なんだと?・・・誰からだ」
「佐伯先生とか?神崎先生とかー?」
担任の佐伯に、男で保健医の神崎か。細い体で美味そうに間食をする名取を見て、物をあげたくなるのは分かるが、餌付けは良くないな。それに気になったことはもう一つ。
「お前、教師と仲が良いようだが、友達は居ないのか?」
「は?」
俺と一緒に居る時以外で、他人と話している名取を見たことが無い。もしかして、俺が友達だとか言うんじゃないだろうな。そうなれば、ただの片思いだ。俺は名取を友達だとは微塵も思っていない。
ポカーンと拍子抜けな顔をしている名取はすぐに顔を逸らして笑った。
「ぶっふぁはははっ!なになに?!もしかして、俺が友達居ないから、お前と友達になりたくてここに来てるとでも思ったの!?あはははは」
「・・・笑い過ぎだろ」
「え、図星!ぎゃはははっ!ずぼ、図星とか!あはははは!」
「黙れ」
「あーやべぇウケる!腹痛てぇ!」
「お前な・・・」
脚をばたつかせ、お腹を腕で抑えた名取はソファーでゴロゴロ体を左右に動かし大声で笑う。静かにならない名取に羞恥心を隠すために、名取を一発の拳で黙らせようと目の前に立てば、ソファーに横になっていた名取は起き上がり、俺の怒りを治める為に両手の平を向けてくる。
「やー!ごめんごめん!ジョーダンだってば、ジョーダンよ?ぶっ、ふふっ」
謝りながらも真っ赤な顔で目を潤ませ、顔は笑っている。反省の色は無い。最後に笑ったのが謝罪をする気の無い証拠だ。
鈍い音が一発副会長室に短く響き渡れば、室内は静かになった。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.8 )
- 日時: 2017/05/05 22:41
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
「いってぇーな、殴ることないだろ?」
「いつまでも大声を上げて笑っているお前が悪い」
「他人のことに興味無さそうにしてる航ちゃんに、他人に興味を持ってもらう為に俺から一つアドバイス!」
「必要ないが?」
「知りたいなら、調べて出直せ!」
人差し指を立てて自信満々に言う名取に、他人を知る気になんてなる訳がないだろう、馬鹿なのかコイツは。と思いつつも、名取のことは知りたいとどこかで思っていた。
次の週、副会長室のソファーに名取が、珍しく静かな寝息を立てていた。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.9 )
- 日時: 2017/05/06 02:43
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
「おい、寝てるのか?」
いつもより静かに声をかけても返答は無い。近づいて寝ている名取の顔を吟味する。
黙っていれば可愛いという言葉が合っているだろう。室内はそれ程温度が高いようには感じないが寝ているからか暑いのか少し頬が赤く、汗をかいているようだ。
ふと、首にある首輪に目が留まる。手を伸ばせば喉と首輪の間には人差し指一本入るぐらいの隙間がある。人差し指の第二関節に引っ掛けて引き寄せれば、喉仏のある首がさらけ出され、顎が上を向く。
「・・・邪魔だな」
ふと、首輪を見てそう思った。何故かは分からないがその時は深く考えなかった。見える白い綺麗な鎖骨にゴクリと喉を鳴らし、噛みつきたくなる衝動を抑える。
「・・・まさか、名取・・・お前、Ωじゃないだろうな?」
寝ている名取に問いかけても勿論返答は無い。αはΩと居る時にヒートを起こし、ヒートを起こせば理性を失う場合もある。その行為がαである俺を縛る唯一のものだった。
あれほど嫌だと感じていた行為を、今目の前に居る名取とするなら・・・悪くない、そう感じた。
第一、俺がαだから、名取がΩならどちらかと言えばホモには値しないんじゃないか?Ωは妊娠が出来るし、ただ男ってだけで。αとβなら完全にホモだ。そこは確認しなくちゃならないところだ。
片手で名取の小さな顎を掴む、健康そうな唇とは反対に目の下にはクマを作らせ、当分起きそうにはないと思い、短い前髪が露わにしている額へ触れるだけのキスをした。
- Re: 一条くんと名取くん ( No.10 )
- 日時: 2017/05/09 11:28
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
暫く顔を至近距離で見つめていたが、やはり起きる気配は無さそうだ。食べようと思えばぺろりと食えそうな気がするが食欲が出ない。先程までの欲が段々と薄れていくのが分かる。俺に人の寝込みを襲う気や趣味が無いからか、若しくはコイツがΩではないからか、その二択だろう。
「・・・まさか、な・・・」
そう呟きながら名取から離れたものの、頭では「お前がΩだったらな・・・」と神にでも願うようなことを考えていた。
それから、1時間経った頃に漸く名取は目を覚ました。静かにむくりと起き上がった上体が書類を書いていた俺の視界に入り目を向ければ、後頭部を掻いて軽く辺りを見渡す。「起きたか」と俺が問いかければ「んー」と曖昧に返ってくる。彼からの視線は感じない。
「こんな所で寝るな、俺が来なかったら一晩中、学校の中だぞ」
「でもお前来るじゃん」
俺が忠告するように言えば即答で返ってきた言葉に胸が鳴った。その言葉はまるで「お前が来るから俺はここにいる」と言っているようなものだ。人をどこまで勘違いさせれば気が済むんだ。
「・・・お前がいるかもしれないと思うから俺も来るんだろ」
「・・・は?」
「いや、なんでもない。それより、お前が起きたら聞こうと思っていた事があったんだが」
彼を見つめて呆れたため息をついてから、ボソッと言った言葉は静かな室内にたった2人しかいない中では聞こえないわけがなく、彼は俺を見て目を丸くし、ポカーンとあほ面をした。
即、無かった発言にし、動揺を隠すために書き終えた書類を机でトントンと音を鳴らし整えて話を切り替える。
「・・・あ!え?なに?」
名取も驚いたんだろう。急な告白とも取れる発言だからな。俺は告白したつもりだが。少しの沈黙の後、ハッとしたように名取の体がビクッと少しだけ上がり、俺の聞きたいことについて聞いてきた。
俺の告白がお前の記憶に残っているなら少しずつその幅を広げるのみだ。
俺は、名取が眠っている間に聞いておきたかったことを聞いてみた。
「お前は、Ωなのか・・・?」
- Re: 一条くんと名取くん ( No.11 )
- 日時: 2017/05/09 19:49
- 名前: あまのはし (ID: vstNT7v3)
さり気なく、俺の意図が分からないように、悟られないように軽く、を意識して言った言葉に一瞬静まる。
チラッと名取を見れば、訝しげな表情で俺を見ていた。それに疑問を抱いた俺が聞こうと口を開けば名取は顔を逸らした。
「お前、その顔なんd」
「お、Ω?なに馬鹿なこと言ってんだよ、俺はβだし・・・」
「・・・そうか、βか」
「おう・・・」
Ωかどうかの質問に名取の答えはNOだった。俺は少しだけだが、ショックは受けた。気まずい空気が流れる。俺は空気を変える為に、名取自身について聞く。
「そういえば、最近寝不足なようだが、睡眠はとれていないのか?」
「あー・・・ちょっと夜更かし?」
「体に悪いぞ、お前帰宅部だろう、時間があるんだ、さっさと帰って寝ろ」
「学生の時しか遊べねェじゃん?航ちゃんは女の子と遊ばないのォー?」
お調子者のいつもの様子に戻る名取に内心ホッとする。だが、油断は禁物。名取は目を離せば何処かへ行ってしまう。しっかり目をつけておかねばな。
「遊ぶ行為は好かん」
「うわ真面目ー」
俺が少なからず名取に好意があることをコイツは知らないんだろうな。ケラケラ笑っている。
「女はお前のように細くて弱々しく見える奴は好かないんじゃないか?」
フッと鼻で笑い貶すように、モテたい意思を諦めるように言い放てば、名取は俺の思考通りには動いてくれない。
「いやいや、俺がムッキムキになったらキモイっしょ?今の俺で充分イケメェン!じゃね?」
筋肉をつけることを拒んだ名取は自分の身が美しいことは自覚してるようだ。だが、所詮はΩ。
「お前の顔など良く言っても中の下。いや、下の上だろう」
「え、なにそれ。俺今貶されてんの?!」
「事実だろう」
「酷くね?!俺傷付いた!ガラスのハートにビビ入っちゃったよ!?」
そう言いながらもゲラゲラ笑う。俺の前で楽しそうに笑うお前が好きだ。そう自覚した。