BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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不器用なボクら 【創作BL】
日時: 2022/05/30 00:50
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

全寮制の学園ものBL小説です。

浄化の力を持つ先輩×幽霊がみえ祓えるイケメン後輩

の物語です。
―――――――――
・誤字脱字お許しください
・更新頻度はまちまちです
・荒らしはやめてください
・苦手な人はバックお願いします
―――――――――

~~登場人物と関係性~~
清水きよみず 聡志さとし  高3 305号室 上の階
特徴…橙色の髪、琥珀色の目、長さが均一で無いツンツンさらさらヘアー。ある程度筋肉のある標準体型。基本ポーカーフェイス。関西出身ということもあり独特な訛りがある。身長は178センチ。
性格…面倒くさがりなだけで素っ気なく対応してしまうことがあるが根は優しい。上手に嘘をつく。
幽霊…みえないし感じない、生まれつき近くの幽霊を浄化してしまう体質。体調不良になれば浄化の力が緩む。

相馬そうま 慧斗けいと  高2 205号室 上の階
特徴…藍色の髪に暗めの青目。爽やかで整った顔立ち。シュッとした体型で太りにくい。身長は173センチ。
性格…争いごとが嫌いで人の良い笑みを浮かべている。臆病で甘えん坊で消極的。
幽霊…みえるし祓える。小学校上級生頃に祓えるようになり、現在は式神も使える。

菊池きくち 俊介しゅんすけ  高2 205号室 下の階
特徴…白に近い金髪頭、前髪をあげて赤のカチューシャで止めてる。茶色い目は猫目。身長は175センチ。
性格…バカで直球。でもちゃんと考えてる。
幽霊…みえないし感じないけど信じてる。ホラーやミステリーが苦手。

木崎きざき れん  高3 305号室 下の階
特徴…短髪の黒髪黒目。筋トレが趣味な為、肉体美。身長は183センチ。
性格…ノリが良く、気前も良い。ほとんど自室に居ることが無く筋肉バカ、後輩を可愛がりからかうことが多い。
幽霊…みえないし感じない。幽霊は信じないが宇宙人は信じるしオカルトは結構好き。

来間くるま 昭彦あきひこ  高3 201号室 一人部屋
特徴…襟足が首筋まである茶髪に黒目。左の前髪をピンでとめてる。細身体型だが足の速さは校内でも有名。身長は177センチ。
性格…イベント大好き女子大好きなチャラ男。面倒見は良い方。頭はそんなによくない方。
幽霊…みえないが引き寄せ体質な為、よく怪奇現象にあう。幽霊は信じていてビビりだが自分の近くには居ないと思っている。

高橋たかはし あおい  高1 203号室 下の階
特徴…外ハネの赤髪に黒目、着痩せするタイプのムキムキボディ。身長は低そうにみえて175センチ。成長期中。
性格…いつも元気ハツラツ。怖い物知らずで喧嘩も強い。グロイ映画やゲームをするのが好き。
幽霊…モヤ程度にみえる。祓えないためみえないフリをしていたが今は相馬が居るため厄介な幽霊は祓ってもらっている。

ーーーー物語ーーーー
★再会または出会い?
【相馬慧斗 視点】
・これから始まる寮生活 …>>1
・ルームメイト …>>2
【清水聡志 視点】
・変わり者の転入生 …>>3,>>4
★関係性
【菊池俊介 視点】
・気になる関係 …>>7
【相馬慧斗 視点】
・ドライヤー …>>10,>>11
・相違点 …>>12,>>13
★約束
【相馬慧斗 視点】
・俊介に憑いてる>>14
【菊池俊介 視点】
・え、マジでデート? …>>15
★日曜日
【菊池俊介 視点】
・デートなんだから …>>16,>>17
・ファミレスにて …>>18,>>19
【相馬慧斗 視点】
・過去の話とサトシ兄ちゃんについて …>>20,>>21,>>22
【清水聡志 視点】
・過去の秘密 …>>23,>>24,>>25

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.16 )
日時: 2022/02/23 23:19
名前: みっつまめ (ID: CejVezoo)


 待ちに待った日曜日が来た。慧斗から誘われて二日後だが、俺は結構浮かれてたみたいでグラウンドで走りながら通りすがりの人に聞いてもいないのに言いふらしたみたいで、朝に「うつつを抜かすのは今日だけだ」なんて通知や応援メッセージまで十件以上来ていた。

「じゃあ、行こっか」
「おう!」

 ショルダーバッグを肩から斜めにかけた慧斗が二階から降りてくると扉のドアノブを掴んで俺に声をかけた。自然と綻ぶ顔が分かるほど大きな声で返事をして、扉を開けた慧斗の後ろを歩く。そんな俺を見ながら慧斗は首を傾げて笑いながら部屋を出る。

ガチャッ
「俊介、今日すごい元気だね、外も晴れてよかっ…」
「俺ってば晴れ男だか…わぶッ! …慧斗?」

 部屋を出た瞬間に慧斗が足を止めて、歩いていた勢いのまま俺は慧斗の頭に顔面をぶつけ、慧斗が足を止めた原因を探るために、慧斗を見る。
 正面を向いた慧斗に不思議に思い、体を左側にずらして慧斗の前に何があるのか見ようとすれば、すぐに左手を広げた慧斗が体も左側に少し傾けて俺を目の前の物から隠す動きを見せる。

ん?

 俺を見せないように動く慧斗の前にある物は一体何だろうかと顔を動かせば、聞き覚えのある声が聞こえた。

「こんな朝早くから買い物行くん?」
「いやいや、朝早いって、もう10時ですよ? いま起きたんですか? 長時間睡眠は脳細胞死にますよ?」
「自分、一言多いて言われへん?」

 関西地方を思わせる独特の訛り口調は、この学校に一人しかいない。けど、なぜ慧斗は俺を清水先輩から隠す必要があるんだ?俺と二人で買い物に行くこと、清水先輩には言ってないとか?だから、見られたくないとか?なんだよ、それ。
 なんだかモヤッとして、慧斗の肩に腕を回して慧斗の横に並ぶ。

「おはようございまっす!清水先輩」
「おん、おはようさん」
「ちょっ俊介、あぶなっ」

 思ったより清水先輩と慧斗の距離が近かったのもあって、驚いたが、慧斗が俺の腕から逃れようとモゾモゾ動くのを気にせず、笑顔で清水先輩に伝える。

「オレら今からデートなんスよ!」
「へぇ~どこ行くん?」
「俊介、ちょっと離れ」
「買い物ッス、慧斗から誘われたんで!」
「ほぉ~ん」

 んじゃ、と用件だけ伝えてなかば慧斗を引きずるようにして、清水先輩から離し、寮の出口へ向かう。何か言われるかと思ったが、清水先輩は何も言ってこない。

「……」

 ただ、後ろから清水先輩の視線を感じたけど知らないフリを押し通して、寮の出口を通った後に慧斗を放す。
 俺の膝辺りを見た慧斗は安堵のため息を吐きながら軽く屈んで「無事で良かった」と呟いた。

それはどういう意味だろうか、清水先輩って結構暴力振ってくるとか?え?慧斗は清水先輩に暴力振るわれるかもしれない俺を守ってたってこと?え?慧斗は常日頃、清水先輩から暴力を!?

 俺は慌てて慧斗の両手を握って、慧斗と目線を合わせる。

「慧斗!もしかして、いつも清水先輩から暴力を振られてんのか!?」
「へっ!? は?」
「気づいてやれなくてゴメン!今度は俺が守るから!」
「えぇ~? なんの話し?」
「え、そういう話じゃないの?」

 俺の予想は少し外れていたみたいで、俺も慧斗も上手い具合に話が噛み合わず二人して首を傾げる。空気を切り替えるようにいつもの笑みを浮かべた慧斗が言う。

「まぁ、この話はまた今度ってことで、そろそろ出発しないとバス乗り遅れちゃうから」
「ハッ!そうだった、何分のだっけ、走る?」
「35分発、走らなくても間に合うけど、ゆっくりはしてられなそう、早歩きで行こ?」
「慧斗、疲れたらぶってやっからな! 遠慮せずに言ってく」
「いや、それは遠慮する」
「遠慮すんなって!」
「あははっ」

 慧斗がいつも通りの笑みを浮かべて、いつも通りの会話が弾んで、心のどこかでホッとしてる俺がいた。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.17 )
日時: 2022/03/06 20:13
名前: みっつまめ (ID: SUkZz.Kh)

 連れて来られたのは文房具やら日用品の売られているお店。買い物というからてっきり洋服店とか靴屋かと思っていたため、シャーペンやノートといった消耗品を買うために同行してほしいというのは珍しい誘いだと思った。
 慧斗は結構一人行動が出来るタイプに見えるし、実際学校がある日の昼休憩に俺とご飯を共にしているわけでもないし、ひとりでに教室を出て行く姿をよく見る。以前行き先を聞いたら裏庭で子猫と一緒にご飯を食べてると言っていた。俺は猫アレルギーだから一緒に行けないと言ったら「寂しくないから平気だ」とも返されたぐらいだ。そこまでハッキリ言われると腑に落ちなかったが、そういうものかと割り切っていた。
 そんな慧斗が俺を誘ってまで一緒に行きたいと言って、連れてきた場所がココかと、何かが突っかかる。

「うん、これなんてどうかな…じゃぁこれは?」

 小声で独り言を呟く慧斗は棚の下段に置かれたノートや手帳、色々な形の消しゴムなど、手に取っては戻しを繰り返す。そのどれもが小さい子どもが好みそうな可愛らしいキャラクター入りの物だ。
 慧斗はこんな可愛いキャラクター入りの物が好きなのか?以外だな、イケメンが可愛いを集める…ギャップ萌えってやつ?…いや、ギャップでもないのかな?

「慧斗は、こういうのが好きなのか? 迷ってるなら俺が買うけど」
「いやいや、俺じゃなくて、この子…あぁ~」

 俺が声をかけると慧斗は言葉を濁らせる

「この子?」
「いやあ…この間お世話になった子、そう、その子のこと」
「?…うん、その子が?」
「うん…その子が、俊介にお世話になってたらしくて、そのお礼がしたいんだって」

 ずっと目を逸らして話す慧斗は何か隠しているようで、その何かが気になって、もう一つ質問をする。

「うんうん、なるほど…それで?」
「それで…?」
「なんで慧斗が選んでんの?」
「あぁ~……」

 俺の質問に慧斗はあからさまに目を泳がせる。
 それもそのはず、先日慧斗がお世話になった子が、以前に俺にお世話になったとしてお礼がしたい、との話なら、その子が俺にお礼の物を選んで持ってきてくれるだろうが、なぜか慧斗が俺にくれる物を選んでいるのだから。
 俺は何も見当違いな質問はしていないはずなんだ

「…その子、もう引っ越してこの辺いないから、俊介に直接渡せなくて、引っ越す前に偶然会ったとき俊介に渡してほしいって、一緒にここで選んでたんだ、よ、ねぇ~…あはは」

 苦し紛れの言い訳をしているように見える慧斗をそれ以上いじめる趣味は無い。聞きたいことなんて山ほど出てくるけど、慧斗の顔に「それ以上は追求しないでほしい」って書いてるから、いや、俺が単に雰囲気を読んだのかもしれないけど、なんとなく変な空気にもなりたくないし、この話を受け流すことにした。

「ふ~ん…んで、慧斗は、もしかしてその“俺に渡すお礼”って、その子と一緒に選んだ商品がどれだったか忘れちゃったとか?」

 この店に着いてから、色々と商品を手に取って吟味していた姿に、そう問いかければ八の字にした困り眉で苦笑いする慧斗は、まるで他人事みたいに言って別の箇所を指さす。

「うーん、そうみたい…あっちの方も見てみようかな。俊介は疲れてたら、近くで休んでていいよ」

 俺を見た青い瞳がチラリと俺の背後を見てから視線が戻ったことに、振り返れば店の出口から少し離れたところに休憩所としてソファーが置いてあった。慧斗の方へ顔を戻せば、もう慧斗は俺に背を向けて店内の奥へ足を進めていた。辺りをキョロキョロ見るでもなく、真っ直ぐ歩く姿は、まるで何かの後を追って歩んでいるように見えて、ブルッと震えた体を両手で抱いて、顔を左右に振る。

「そんなはず、ないよな…この間慧斗と見たホラー映画のせい、だよな?」

 俺自身も疲れているのかもしれないと思い、近くにあるクレープ店に目が留まった俺は「糖分でも摂取して疲れを癒やそう」と足を運んだ。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.18 )
日時: 2022/04/09 01:13
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

クレープを食べ終わって店に戻ると、丁度慧斗も店から出てきた所だった。小さなお店の名前が載った袋を手ににこやかに微笑むイケメンに周りの女性客だけでなく、男性客までもが釘付けになって頬を赤らめながらヒソヒソ会話してる。

「慧斗!」

そんな中、入りづらいが片手を上げて少し離れた所から声をかければ、顔を上げた慧斗がキョロキョロ辺りを見渡して俺を見つければ駆け寄ってくる。小動物に似た何かを感じて、慧斗の可愛さに胸が苦しくなる。胸元のシャツを握って前屈みに「くっ」と苦しさを表現すれば「俊介?どうしたの、気分悪い?」と慧斗は本気で心配してくる。

「いや、平気平気」
「ホントに?」
「ホントだって」
「…そう、何かあったらすぐ教えてね」
「?うん」

慧斗の真剣な顔に「そんなに心配することか?」と思いつつも返事をした。

その後、慧斗がプライベートで着る服を一緒に選んだり見たりして、俺の見たいと言ったスポーツ用品店にも寄って、色々見てまわり、昼少し過ぎた頃に近くのファミレスで昼食を摂る。

「慧斗パスタだけ!?しっかり食えよ、ここは俺が奢るし!」
「いやいや、奢らなくていいから…お金に困ってるとかじゃなくて…今日はそんなに、お腹空いてないっていうか…」
「…慧斗こそ、体調大丈夫かよ?」
「ふふっ、心配ありがとう…人混みが苦手なだけだから」
「…そっか。あ、ファミレスじゃなくてカフェとかが良かった?悪い、おれ全然気づかなく」
「いやいや、もう注文もしてるし、カフェもこの時間は混んでるから気にしなくていいよ」

なんだか、大人な対応の慧斗に、俺は気を遣わせてばかりだと落ち込む。
注文した品が運ばれてくるまでに、慧斗がドリンクバー所からセルフサービスとなっている水をコップに入れて運んでくる。

そういえば、ファミレスの向かい側はカフェだったな、と思い返し、窓ガラス越しにカフェの方を見れば、カフェに入ろうと並ぶ人で行列が出来ていてギョッとする。
慧斗は、あれを見て発言していたのかと納得する。テーブルにコップを置いた慧斗に、水を持ってきてくれた礼を言う。慧斗は気にする素振りを見せず、席に座るとスマホを弄り始めた。
それに、面白くないと思った俺は問いかける。

「…何してるの?」
「ん、ゲーム」

俺の問いかけに即答した慧斗は、スマホ画面を俺にも見えるようにテーブルに置く。
慧斗の言った通り、スマホ画面にはパズルゲームが表示されていた。画面左上に表示されたレベルは25。5色程ある色の中から並んだ同色のものを4つ以上なぞって消すゲームらしいが、慧斗の指の動きからも不慣れ感が出ている。

「最近始めたのか?レベル25って」
「うん、一昨日」
「そういうゲームよくやるのか?」
「いーや?気晴らしに出来るゲームないか探してたらあおいが勧めてくれて」
「ん?葵って誰だ?」
「ほら、1年の元気な子、赤髪で〜」
「慧斗もう1年の顔と名前覚えたの!?すげぇな!」
「いや、その子としか仲良くないし、皆は覚えてないよ」

ん?ちょっと待てよ、葵って女子?

ふと考えるために窓ガラスの方へ視線を向ける。カフェの行列は新しい客に変わっていて、その中に混じる、見知った顔に目が止まった。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.19 )
日時: 2022/04/14 22:00
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

それは、今朝も寮を出る前に顔を合わせたばかりの男で、退屈そうな顔をして空虚を見つめ毛量のある橙色の髪を風に揺らす男、清水聡志だった。
何故ここにいるか、という驚きよりも、別の驚きに俺は一瞬、声が出なくなる。

彼の隣には、女性がいた。茶色の長髪を頭の上で1つ結びした露出多めの女性が彼の片腕を抱きしめて楽しそうに笑っていた。

「え、彼女?」

あの人に、そういった噂を聞かないからこそ、目の当たりにしている光景に驚きが隠せず、気づいた時には言葉は零れていた。
それに、慧斗が「ん?」と聞き返して、俺の視線を辿って顔を向ける。

慧斗は清水先輩と最近仲がいいみたいだし、知ってるか。そう思って慧斗を見れば、慧斗は眉間に皺を寄せて、口を僅かに開けて、未知の生物を目の当たりにしている顔をしていた。
見たことがない慧斗の険しい顔に、俺は慧斗に見せちゃマズいものを見せてしまったような気がして、場を和ませるように苦笑いして続ける。

「あれ、人違いかな、きよ」
「清水先輩で間違いないよ」

いや、怖い!!俺まだ喋ってたんだけど!

真顔になった慧斗が窓ガラス越しに清水先輩達を見ながら即答する。少し伏せ目がちになった瞳は俺を見ようとせず、慧斗にしては珍しい隙のないオーラと真顔に、その表情が氷のように冷たく感じて、ブルっと震える体を両手で抱きしめる。
慧斗が見ても、アレが清水先輩で間違いないなら、隣の女性が恋人ではない可能性にかけようと声を出す。

「あっ、い、妹さんかな?似てなくてキレイな人だな〜」
「先輩に妹は居なかったはず…男兄弟って聞いたし」

墓穴掘った…いや、男兄弟なら、似てない弟の方が女装してるとか!

「お、弟なんじゃねっ? 女装してるとか!」
「先輩は2人兄弟の弟の方だったと思う」

しまった…!なら、ダメ押しで…!

「お、お兄さんが女装を…!」
「…ん〜…」

やっとのこと慧斗が清水先輩たちから視線を外して、スマホ画面を触り、何か考える仕草をとる。
俺は、なんとか慧斗を傷つけずに済んだのではないか、と内心とても安心していた。
「お待たせしました〜」と丁度注文していた料理も届き、慧斗を元気づけようと変顔したりクラスメイトを驚かせた時の成功話をしたりすれば、慧斗はクスクスと笑ってくれた。
慧斗のパスタも運ばれてくると、先程までの冷たい表情はどこへやら、穏やかに微笑む慧斗は、いつも通りに戻っていて、安心した。

その後は、会計を済ませたあとも慧斗がカフェの方へ視線を向けることはなく、最後に夕日が沈む前に行きたい場所があると言った慧斗の後を着いて歩いた。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.20 )
日時: 2022/04/22 14:28
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

相馬慧斗side

俊介とファミレスを出て、俊介と少女が出会った場所へ向かう。5mほど前を軽い足取りで歩く少女の後を歩きながら追いつつ、先程の清水先輩のことが脳裏に過ぎる。

メイクをして大人っぽく装っているが隣の女性の背後には心配そうに彼女を見つめる年配のお爺さんが居た。恐らく守護霊。清水先輩の隣にいた女性は、多分だけど未成年。守護霊とは別に制服を着た女子生徒が彼女の後ろに立って彼女の肩に両手を乗せて居るのが透けて見えたから。女子生徒は生きてる人、彼女を恨んでるわけでも妬んでるわけでもないけど、生霊いきりょうを彼女に飛ばしてるってことは、何か大事な願いを彼女にしているのかもしれない。

というか、それはどうでもいいとして!
問題は清水先輩と彼女…いや、女性…の関係性だ。清水先輩はオーラが強過ぎて守護霊が見えないし、何考えてるかも分からない…けど、隣に居たあの女性が清水先輩の腕にくっ付いても先輩は腕を振り払おうとはしなかった。

それって、先輩がスキンシップ多めでも気にしない人だから?それとも相手が女性だから?それとも彼女からされてるから?俺からスキンシップしても先輩は嫌がらない?

そもそも、先輩に彼女って居たの?俺と居る時ほとんど本読んでた先輩に彼女?俺に秘密で連絡取り合ってたとか?それなら何で俺に話してくれないの?

…俺が先輩のこと、サトシ兄ちゃんだと思ってること、気づいてるから…?
いやいや、そんな風には見えなかった、なら…話す必要が無いほど、俺とは近しい関係ではないから?
…もしかして、このショッピングモールに来たのも俺に見せるため?先輩は本当のところ、俺の事、嫌い…だったりして…?

「慧斗はさ、清水先輩と…」
「…えっ?な、なに?」

隣を歩いていた俊介の口から“清水先輩”と聞こえて我に返り、問い返す。俺を心配するような表情で俊介は改まって口を開く。

「慧斗はさ、清水先輩とサトシ兄ちゃんって人…同一人物だと思ってる?」
「えっ…ど、う、して?」

思わぬ俊介からの質問に緊張が走る。心を読まれたのかと冷や汗が背中を伝う。それに反して俊介は「あー…」と視線を逸らして考えながら話してくれた。

「ほら、慧斗がウチに入ってきた時、清水先輩を見間違えたって言っただろ?」
「…うん」
「そのサトシ兄ちゃんって人が清水先輩なんじゃないかって思うところがあるから、一緒に居るのかなー?とか思って」

俊介は頭はそれほど良くないけど、凄く勘の鋭い人だったようだ。俺の心をあっさり見抜いた。そんなに俺の行動は分かりやすかっただろうか、清水先輩にもそれが分かって、先輩は俺の事ハッキリ嫌いだとか言わないタイプだから、回りくどく俺に彼女といる所を見せたんだろうか。一度悩み始めたら深いところまで落ちていって、俊介は苦笑いしながら続ける。

「あくまでも勘だしさ、違うなら違うでいいし、清水先輩って、俺はちょっと苦手だけど、慧斗はどうやって親しくなったのかな〜とか色々気になって」
「…違わないよ」
「え?」
「…俺にもまだ分からないけど、サトシ兄ちゃんと清水先輩は、なんていうか…凄く似てて」
「慧斗…あ、あのさ、慧斗が良かったらなんだけど、そのサトシ兄ちゃんって人の話、聞かせてほしい」

そう言って俊介は足を止め、俺の様子を伺ってくる。俊介にサトシ兄ちゃんのことを話したくない訳じゃない。俺が視えるということを知っても、俺と友人で居てくれるか不安なだけ。

「うん、いいけど…二つだけ、約束してほしい」
「おう、なんでもいいぜ!一つ目は?」
「…サトシ兄ちゃんの話は、他言たごんしないでほしい」
「タゴンって?」
「他の人に話さないでほしいってこと」
「ああ、なるほど!わかった、任せろ!んで、二つ目は?」
「…俺が変わり者って知っても…俊介はこれまで通りに接してくれるって約束してほしい」
「?…何言ってんだ、当たり前だろ?」
「…どうしても普段通りに出来なかったら、教えてほしい…配慮するから」
「んな気遣うなって、慧斗はありのままで居てくれよ!」

俺の肩に腕を回して慰めの言葉を紡ぐ俊介だけど、俺がありのままで居ると、きっと俊介は困るだろうし疲れるだろうから苦笑いして誤魔化す。

そして、約束を交わした為、歩道で立ち話にはなってしまうが、俊介にも分かりやすいよう短めに話すことにした。


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