複雑・ファジー小説
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- 俺の一年
- 日時: 2011/12/29 16:27
- 名前: 魔王666 (ID: 9wHf9u2B)
初めての、小説です。
俺、上手くかけないかもしれませんが、かるーい感じで読んでくれれば嬉しいです。
やっぱり、週一は不可能だということを(今頃)気付き、まぁ、のろのろとがんばって行きたいと思います。
〜登場人物〜
・澄田 辰巳 (すみた たつみ)
・桜田 悠妃 (さくらだ ゆうき)
〜お客様〜
・紫蝶様
・紅様
- Re: 俺の一年 ( No.13 )
- 日時: 2012/02/10 15:55
- 名前: 魔王666 (ID: 9wHf9u2B)
4時のチャイムがなる。
はえぇな、おい。と思いながら、桜田を待つ。
自分がなぜあいつを待とうと思ったのか、今思い返せば分からなかった。
ガチッ・・・
時計の針が1分動く。それと同時に、チャイムは鳴り止む。
行きかう人々は、俺のほうなんか見向きもしない。
俺も、知らないだけで、たくさん幽霊を見てきたのか・・・。
そこのとき、いい考えが思い浮かんだ。
俺、もしかして飛べるんじゃね?!
とりあえず、ジャンプしてみる。
しばらく跳び続ける。分かってると思うが、あえて言っておこう。ジャンプを繰り返しているだけだ。
〜報告書〜
幽霊となった墨田辰巳の「幽霊は飛べるのか?!」の実験
結果:やめときゃよかった。
- Re: 俺の一年 ( No.14 )
- 日時: 2012/03/30 17:37
- 名前: 魔王666 (ID: 9wHf9u2B)
4時半・・・
「うおおおい!辰巳ぃぃっ!」
例によって、桜田が坂道から駆け下りてくる。あぶねーぞ?
「大変なことが———ぎゃああっっ」
お決まりのパターンである。石に蹴躓き、派手にすっころんだ。
2、3秒の沈黙。
桜田は、いきなり起き上がると叫んだ。
「ちょっと!助けるでしょ、そこはぁ?!」
助けに行きたいのは山々だが、なにせ動けないもので。
どうやら顔がヘラヘラしていたらしく、「ふざけんな!」という憤怒の声が飛んでくる。元気あるし、いいだろ?放っておいても。
すると、足からだらだら血を流しながら(ついでといっちゃなんだが、目に涙を光らせながら)走ってきた。
「うわ、怖っ!」
「誰のせいよ!」
いや、あきらかに自分のせいだよな。・・・とは言わずに、「大丈夫か?」と心配しておく。
「大丈夫よっ!」
全然大丈夫そうに見えないんだが、本人がそういうなら・・・
「心配とかしない訳?」
「だって、大丈夫なんだろ?」
そういうと、桜田は「ダダ」をこねる子供のような顔をした。
なんなんだよ、こいつは。
- Re: 俺の一年 ( No.15 )
- 日時: 2012/04/06 09:27
- 名前: 魔王666 (ID: 9wHf9u2B)
「そういえば、さっきなんか叫んでたけど、なにかあったのか?」
「そう、そうなのよ!大変な事が分かったの!!」
ティッシュで血をふき取っていた桜田は顔を上げると、俺のあごに頭が直撃する。
俺をあいつは触れるわけで・・・あごが砕けるかと思った。
「いたた・・・って、こんな事やってる場合じゃない!あのね、学校に!死神がっ!」
わくわくした目で、暗号並みに意味不明な言葉を発する。
とりあえず聞いておこう。はぁ?
「あ〜もう、これだから理解力の無い奴は・・・。人がアンタの命運を左右するようなすごいニュースを持ってきてやったのに。」
もう、教えてあげないわよ。的なオーラを出す。
日は沈み始め、青かった空を赤く染めていく。はっきり言って、そんな変な事件が起こるような非日常とは思えないほど、平和である。
「のんきなやつ。
あのね、死神って言うのは、成仏しきってない魂を無理矢理「天」に逝かせるの。それでね・・・?」
あごに手をあて、考え込むそぶりを見せる桜田。
「どうなるんだよ。」
正直に思っていることを話しただけだが、殺気立たれる。
「アンタ、死む・・・死ぬよ。」
あ、噛んだ。
「うるさい、黙りなさい。自縛霊っていうのはぁ!まぁ、言ってしまえば悪霊の一種よ。冥界逝きの電車に乗ってもOKなのよ。でもさ、一応ヒトな訳で?しかも、私も「お情け」があるのよ。存在そのものが忘れかけられてるアンタを、助けてあげようと・・・そう思ってるわけ。それからぁ・・・」
「お情け」の部分を強調し、なにやらダラダラ言葉を並べる桜田。
赤い空に、カラスの影があった。
はっきりいって、平和だった。
「———というわけで・・・ておい、辰巳。聞いてる?」
「んお?ああ、聞いてない、と思う。」
今まで長々としゃべっていたらしく、いきなり俺にはなしかける。
「もういいや。私、帰る。詳しい話は明日ね。」
そう言って、さっさと帰ってしまった。
- Re: 俺の一年 ( No.16 )
- 日時: 2012/04/06 16:06
- 名前: 魔王666 (ID: 9wHf9u2B)
4
土曜日。
よりによって雨が降り、また人通りは少なくなる。たまに通る同級生が、違和感ナシに通り過ぎていく。たぶん、部活だろ。
桜の花はとっくに散り、茶色の花びらが、水溜りに浮かんでいた。
雨霧はでるわ、柳はゆれるわ、井戸でもあったら、幽霊が出そうな雰囲気だ。あ、その幽霊って俺か。
ガードレールに座って、桜田を待つ。・・・あいつ、「悠妃」って名前のくせに、へっぴり腰だったりするのか?
などと、本人が聞いたら激怒するような事をダラダラ考えている、俺。
「ヒマだな。」
誰にともなく、つぶやく。
まさか、この言葉に返事が返ってくるとは思わなかったな・・・うん。
「あ、同じだなぁ、幽霊。」
「はぁ?!」
驚いてあたりを見回す。
だが、誰もいない。まさか、幽霊?!・・・は俺か。なんか「実感」というものが湧かない。
もしや、上か!
大当たりだ。声を発した主は、俺の頭の上にいた。いや、正確には俺の頭の上で浮いていた。なんで?!俺飛べないのにっ
「はい、鈍感決定。いやぁ、気づくのに14秒?長くね?」
出会って早々、失礼すぎる奴。
黒で統一された格好。長いズボンに、背中側の裾がだら〜っと垂れている。たしか、燕尾服だっけ?そんな感じ。それプラス、かかとまであるフード付きの黒マント、つま先が尖っている黒い靴、黒い靴下!どこまで真っ黒なんだよ!フード被ってて、表情はよくわからない。とにかく、怪しい奴だ。
「初めまして〜。オレ、九十九 大助。九十九って書いて「つくも」な!ダイって呼んでくれ!」
どこかのソムリエ並みに優雅なおじぎをする大助・・・さん。てか、その前に下りてくれ、頼むから。
「じゃ、『下へ参りまぁ〜す』———とうっ」
大助さんは、高いところからジャンプするみたいに飛び降りる。
絶対、着地失敗するぞ、絶対に!
「———ギャスッ」
あーあ。
案の定、大助さんは足が変な方に曲がり、そのまま地面に倒れ伏す。はっきり言おう。バカじゃねぇの?
「いてぇ。」
はい、それがなんでしょう?
「いてぇっての。」
だから、なにかって・・・
「助けろよぉっ」
「はぁっ?!」
いきなり起き上がると、俺の胸ぐらを掴んで、わしわしと揺すった。桜田といい、大助さんといい、なんで助けてほしいんだよ。
そのとき、大助さんのフードがずり落ちる。
イケメンだった。美青年だった。かっこよかった。
絵の具で着色したかと思うくらい、鮮やかな赤毛。切れ長の目、白い肌。なにかっていっても、輪郭がヤバい。丸くない。細くもない。微妙な調整をして、完璧と言える形にした・・・ああ、わかりにくくなってきた。とにかく、人形みたいに綺麗な顔だ。だからと言って、感情が見えないわけじゃなく、生気に満ち溢れた表情。
しょうじき、うらやましい。
「あ・・・あの、大助さん?」
「ダイ。なんだよ?」
「じゃ、ダイ。あ、あんた、なんで俺が見える?触れる?」
俺が疑問を口にすると、ダイは掴んでいた襟を離す。んで、(芝居気たっぷりに)俺に背を向け両手を広げる。
「オレ様、学校でみんな———」
「ああああああああああああぁぁっっ!!!」
ダイがある重大発表をするって言うのに、誰かの叫び声がさえぎった。
おそらく、いや絶対桜田だ。
「ちょっとぉ、アンタ、死にたいわけ?!」
怒声を浴びせながら、俺から見て右の道から走ってくる。
ホームズがかぶっているような茶色のチェック柄帽子、茶色に近い微妙なクリーム色のトレンチコート、深緑のミニスカ・・・って、短すぎじゃないか?まあ、おいといて・・・よりによって、あの趣味悪い、大きくて枠が太い黒眼鏡をかけている。んで、いつものポニーテール。
「なんだ、その格好・・・」
なんか、初デートに行くような姿だ。似合わねぇ・・・
- Re: 俺の一年 ( No.17 )
- 日時: 2012/04/13 18:08
- 名前: 魔王666 (ID: 9wHf9u2B)
「なんだ、その格好・・・」
なんか、初デートに行くような姿だ。似合わねぇ・・・
「ちょっと急いでたの。なんか、嫌な予感がしたから・・・。なのに、なのにっ!あんたねぇ、マジで危ない人と話してるわね。」
「はぁ?!オレ危ない人ってか?」
やっぱり、ダイがつっかかる。
いつの間にかフードをかぶりなおしたらしく、口元しか見えない。
そういえば、俺ほったらかし?
「そうよっ、全身真っ黒の死神さん!」
「はっ、お前みたいな霊媒体質なんかに言われたくないね、オレはすげーんだよ。」
「何がすごいの?あぁ!怪しさだったらすごすぎるわ。」
「そんなんじゃねーよ、なぁ、幽霊。」
突然俺の方に向き直り、ダイが話しかけてきた。
「いや、どうっていうか・・・」
たじたじとなってしゃべる俺に、「はっきりしなさい!!」と桜田が怒鳴る。
合羽を着込んだおじさんが、自転車で通りかかった。あきらかに、変な奴を見る目で桜田をかがめていた。
100メートルくらいいくと、いきなりケータイを取り出した。
「ちょ、おじさんっ!あたし、変な人じゃないからっ、ちゃんと学校行ってるよっ」
冷たい眼を向けているおじさんも、まあ、なっとく(?)したらしく、そのままどこかへ行ってしまった。