複雑・ファジー小説

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本当のわたし
日時: 2012/10/21 11:32
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: nOUiEPDW)
参照: http://blog.goo.ne.jp/lily-wingmoon




※この小説は打ち切りました※

 >>42 



   ◇◆◇



 本当のわたしは、どれ——?
 誰か、本当のわたしを見つけて——。



   ◇◆◇



   ◇◆◇first◇◆◇

 初めましてな方は、初めまして!
 そうでない方は、こんにちは!
 羽月リリです。
 よろしくお願いします。

 読んでいただいたら、コメほしいです。
 読者様のコメが、私の原動力です!
 なので、気軽に書いてください。
 好きなキャラを書いていただけると嬉しいです。
 


   ◇◆◇attention◇◆◇

・更新遅いです
・バトルシーン、グロシーンあります
・一話一話が長いです
・荒し禁止です
・中傷禁止です
・その他、最低限のルールは守ってください

 一つでもムリって思った方は、帰ってください。



   ◇◆◇news◇◆◇

・小説大会が始まりましたね。
 こんな小説で良ければ投票お願いします!

・参照URLは私羽月のブログです。
 玲音さんのプロフィール載せてます。



   ◇◆◇guest◇◆◇

・sara.様
・美鈴様
・さな様
・璃夢様

          Thanks!!



   ◇◆◇record◇◆◇

・2012/5/26
 スレ設立

・2012/6/2
 参照100突破◇ありがとうございます!

・2012/6/16
 参照200突破◇嬉しいです!

・2012/6/30
 参照300突破◇皆様に感謝です!

・2012/7/15
 参照400突破◇やっと400ですね。

・2012/10/21
 小説打ち切り決定、小説ロック
 参照550突破してました。ありがとうございました。



   ◇◆◇table of contents◇◆◇

・prologue>>2

・No.01>>007 ◇ No.11>>028 ◇ 
・No.02>>010 ◇ No.12>>029 ◇ 
・No.03>>012 ◇ No.13>>030 ◇ 
・No.04>>014 ◇ No.14>>032 ◇ 
・No.05>>017 ◇ No.15>>033 ◇ 
・No.06>>019 ◇ No.16>>034 ◇ 
・No.07>>020 ◇ No.17>>036 ◇ 
・No.08>>021 ◇ No.18>>037 ◇ 
・No.09>>023 ◇ No.19>>038 ◇ 
・No.10>>026 ◇ No.20>>039 ◇ 

・参照100突破記念ラジオ>>11
・参照200突破記念ラジオ>>18
・参照300突破記念ラジオ>>27
・参照400突破記念ラジオ>>35

・ほのか様作 永久真白>>40

Re: 本当のわたし ( No.33 )
日時: 2012/07/16 07:58
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: LkHrxW/C)
参照: 明日、学校に行くと三連休です。嬉しすぎます。

No.15◇強くなった実験体

「このDefendist〔護る者〕をな!」
 玲音のその言葉に、しかし少年は無表情に言った。
「護る者、か。厄介だな…」
 すると、少年は横にいるルーテアをちらりと見た。
「——やれ」
 静かな命令に、少女は何も答えなかった。
「…ルー?」
 訝しげに少年が少女の顔を覗くと、彼女は頬を膨らませていた。
「チカラが効かなかったので、やりません」
「………はぁ?」
「だって! あの赤井龍生とかいう奴! あたしのチカラが効かなかったのよ! 宙波〔ひろは〕、どう思う!?」
 宙波と呼ばれた少年は、少し面食らったような表情をして、それから呆れたように言った。。
「ルー、お前、そんなこと気にしてんのか」
「『そんなこと』とは何よ! あたしにとっては一大事よ!」
 そのとき、真白は、あぁ、と思い出した。
 確か、ルーテアという少女は赤井龍生に何かチカラを使ったが、彼は何ともなかった。そう言えば、チカラが効かないだのなんだの言っていたような。
(しかし、変わった人だなぁ…)
 腕組みをして、半眼で少年宙波と少女ルーテアを見詰める。
 緊張感に欠けるというか、なんというか。仮にもここは敵地のはずだが。
 そんなことを考えている自分もダメだな、と思った真白は小さく溜め息をついた。
「あ! あなた、今、溜め息つきましたわね!?」
「はい…っ!?」
 突然、ルーテアに指を差された真白は目を見張った。
「あぁ!! あんな人に同情されるなんて…!」
「………何か盛大な勘違いをしていると思うんですが」
 半眼になった真白の呟きはルーテアの耳には入らない。
「もう、あたしこんなところ嫌だわ! とっとと帰るわよ!」
「…蒼は——」
 宙波の問いに即答するルーテア。
「あんな奴、どうでも良いわ! 帰るわよ!」
「おい、ルーテア! 宙波!」
 蒼は牢屋の中で怒鳴る。
「置いていく気か…!」
「えぇ! そうよ!」
 その瞬間、どこからか巨大な狼が一匹現れた。
「あれは…、実験体!?」
 目を見開く青。
「ここを壊したお詫びにこの子を置いていくわ!」
「…うっわー、嫌がらせ」
 真白が不満たっぷりで呟く。
 バリアを解いた玲音がヘラリと笑う。
「ホント、酷いね」
 狼はこちらに敵意を向けている。
「それでは、さようなら!」
 ルーテアと宙波は姿を消していた。
「……風太郎、追えるか?」
「…えぇ」
 風太郎が頷くと同時に風が吹き、二人の姿は掻き消える。
「…で、あの狼は——」
 残された真白と玲音はこちらを睨んでいる狼を見た。
 いつでも襲ってきそうな勢いだ。——そう、襲ってくる。
「———っ…!」
 牙を剥いて飛びかかってくる狼。
 すんでのところで玲音がバリアを張り、狼は白銀に輝く壁に激突した。しかし、狼は体勢を立て直すと、こちらを見て低く唸った。
「……これ、今までとは違う——?」
 真白が小さく言うと、玲音は軽く目を見開いた。
「…え——?」
 狼は再びバリアへ突進してくる。何度も何度も。
「——あー、ヤバい。バリア、もたないかもしれないっす」
 玲音の軽い口調に、真白は「はぁ?」と言って彼を見た。すると、彼の額には汗が浮かんで、苦しそうに顔を歪めていた。
「玲音さん——」
 ピシリと、小さな音がした。
 狼が突進する。
 ガシャンと、ガラスが割れるような音が響く。
「…な…っ!」
 バリアは砕け散り、狼がこちらに向かってくる。
 赤く輝く目には、強い殺意。
 狼は真っ直ぐに真白の方へ向かってくる。
 真白は目を見開いた。
「——っ!」
 咄嗟に空気中の水分を凍らせ、何も無かった空間に氷の壁を創る。
「———ッ!!」
 狼はそこに頭からぶつかる。それでも、戦意はまったく無くなっていない。
「…玲音さん、銃、持ってますか?」
 氷の壁を破られないように気を張りながら問うと、玲音は首を振った。
「ないね。絶対絶命——って、感じ?」
 真白は狼を氷の壁越しに睨んだ。
 狼は先程と同じように何度も繰り返し壁に突進してくる。
 玲音は護る者だ。戦う術は持っていない。
 真白は凍らす者。しかし、それはあまり強いチカラではない。そして、この目の前にいる狼は倒せそうにない。
「…っ——」
 真白の頬に脂汗が浮かぶ。
 破られる。そう思ったときだった。
「私の可愛い部下に何してんだ、この狼が」
 振りかざされた白刃は、狼の首を一閃した。
「————ッ!!」
 狼が断末魔の叫びをあげる。
「死ね」
 静かに言って、心臓がある場所に刀を突き刺した。
 狼は目を瞠って、そのままその場に倒れた。
「……月乃…さん——」
 真白が呆然とその名を呼ぶと、彼女はいつもと何一つ変わらないことを言った。
「大丈夫か? …私の眠りを邪魔したから、私は今、機嫌が悪いんだよ」
 狼に突き刺さった刀を引き抜くと、月乃は大きな欠伸をした。
「…じゃー、私はもう一回寝てくる」
 ひらりと右手を振って、その場から立ち去る月乃。
「……いやー、危なかった」
 玲音がその場にへたり込む。
「…玲音さん、銃は常備してるんじゃなかったんですか?」
 いささか疲れたような表情をした真白が半眼で玲音を睨む。
「………こんな朝早くから銃を持ち歩く人は、危険人物だと思うけど?」
「………そうですね」
 そう言うと、真白は残りのチカラを使って死んだ狼を凍らした。こうしないと、狼が腐ってしまうからだ。腐ってしまうと、後々の研究に支障が出てしまうのだ。
「…じゃ、わたし、部屋で休んできます」
「学校は?」
 玲音の問いに、真白は溜め息をついて答えた。
「…休みます」
 こんな状態で行っても、保健室で寝るか早退をするだけだろうから。
 そう言って、真白は自室へと戻っていく。
 残された玲音はぼんやりと自分の右手を見詰めた。
 護る者。それは、本当に護ることしか出来ない、脆弱なチカラ。
 銃が無ければ、実験台一匹を倒すことも出来ない。それ故に玲音は銃を使っているのだ。
 そして、月乃も同じだ。戦うチカラを持たないものは、武器を使う。
「…嫌だね、こんな中途半端なチカラは——」
 哀しげに笑うと、静かに問われた。
「もっと、強くなりたいか?」
「…え——?」
 見ると、牢屋に閉じ込められている蒼がこちらを見ていた。
「強く、なりたいか?」
 その静かな眼差しに、玲音はぼんやりと見入った。
「……強く、——ねぇ」



 蘇る、記憶。

 どしゃ降りの雨の中。
 伸ばした手は。

 ただ、虚空を掻いただけ。


Re: 本当のわたし ( No.34 )
日時: 2012/07/15 16:55
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: Km711df.)
参照: だから、話が詰まってきたんだよぉ。

No.16



   ◇◆◇


 死にたくない。
 死にたくなかった。

 だから。だから。

 ——だから。



   ◇◆◇



「…ん——?」
 真白はゆっくりと目を開けた。
 まばたきをすると、眦から暖かいものがこぼれ落ちた。
「……———」
 真白は両手で目をおおった。
「——あ…っ」
 涙が止まらずに、口から嗚咽がこぼれる。
 泣いちゃだめ。
 しかし、涙は止まらなかった。



 コンコンとドアをノックする音で目を覚ました彼女は、溜め息を一つつくとベッドから降り、ドアを開けた。
「何の用だ?」
 そこには、年下の青年——否、彼女からしてみれば、まだ少年かもしれない。
「青?」
 険しい表情をしている彼の名前を口に出すと、ゆっくりと口を開いた。
「…月乃、少し話があるんだ」
「——そう」
 無言で彼を部屋に招き入れ、椅子に座らせ、自分は身体を壁に持たれかけて腕組みをした。
 椅子に座った青は駿巡したのちに言った。
「今日現れた奴のことだが」
 月乃は黙然と頷く。
「…実験体を、更に強くしているらしいんだ」
「………そんなこと、知ってる」
 月乃は顰めっ面をした。
「今まで真白と玲音があんなに追い詰められたことはなかったよ。…まぁ、玲音が銃を持ってなかったというのもあると思うが——」
 チラリと窓の外の様子を伺う。特に異常はない。
「…だけど、それだけじゃない」
「——何?」
 月乃は軽く目を見開いて、青を見た。
「あいつらは、実験体を使って——」
 青はそこで一度言葉を止めた。そして、月乃を真っ直ぐに見詰めた。
「僕たちを殺そうとしている」

Re: 本当のわたし ( No.35 )
日時: 2012/07/15 21:02
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
参照: 参照400突破、ありがとうございます!

「さあさあ、記念ラジオも4回目ですね。今回のパーソナリティは俺、箱舟風太郎と——」
「私、月乃だ。よろしく」
「うん、月乃さん、もっと笑った方が良いですよ?」
「煩い。私は基本こんな顔だ」
「駄目ですよ。印象悪くなりますよ?」
「何のだ」
「この小説とか、月乃さん自身とか」
「別に、私の印象など関係無い」
「うわー、かっこいいですね。そういうの言うと」
「…どうでも良いから、とっととやらないか?」
「そうですねー、と言っても、特にすること無いんですよね」
「………なんだ、それは」
「まぁ、秘密組織と同じで、『明るく楽しく元気よく』マイペースでやっていけば良いんですよ」
「………うん、その明るく楽しく——ってのは何だ?」
「え? 秘密組織の社内スローガン——」
「社内スローガン!? そんなものあったのか!?」
「はい、俺があそこに入ってからすぐ決めました、自分で」
「お前がかよ!」
「だって、そういう感じですよね?」
「…まぁ、無駄に明るくて元気あるけどな」
「で、楽しいでしょ?」
「………楽しい、——まぁ、ね」
「何ですか? その、微妙な反応」
「いやいや、何でも無い。それより、なんで今回のパーソナリティは私なんだ?」
「わぁ、月乃さん、話反らすの下手ですね」
「………悪かったな。で?」
「まぁ、前回までの玲音さんは本編でも出番が多いので、出番が少ない月乃さんに」
「出番が少ない、だと?」
「はい。ちょこっと出てくるだけじゃないですか?」
「…だって、私は普段寝てるんだ」
「そうですね。夜型人間、駄目人間、夢も希望も無い残念な人」
「………何だ、その言い方は」
「いいえ、別に何でも」
「と言うか、秘密組織には変な名前をつける奴が多いな」
「そうですか?」
「あぁ。青が玲音に『銀髪チャラチャラ男』って言ってたし、それに対して玲音も『チビでイマイチ頼りないけど、まぁ一応この秘密組織のボスっぽい位置についてる、まだまだお子ちゃまなジョー君』って言ったし——」
「………それはちょっと違う気が」
「あぁ、それから、真白はルーテア・カルツに『金色オッドアイゴスロリ少女』って言ってたな」
「月乃さん、無駄に記憶力良いですね」
「いや、『小説★カキコ』に書かれてる——」
「あぁっ! いつの間にパソコンなんて! 没収です!」
「あ、何すんだよ!」
「今はラジオ中ですよ? まったく、月乃さんは——」
「…お前なぁ。私の方が年上だぞ?」
「はい、知ってます。月乃さんの方が年ですね」
「………だから、もっと年上を敬え」
「…その言葉、どっかでも聞いたことがあるような——」
「あぁ、青に言ったな。あいつも、全く敬語を使わない」
「ボスですから、月乃さんが敬語を使わないと」
「だからって、だいぶ年下に敬語なんて、私は使いたくないね。そう思うと、風太郎はいっつも青に敬語を使ってるよな」
「…そうですねぇ」
「でも、『ボスと呼べ』って言ってるのに『青様』って呼ぶのは——」
「だって、名前を呼ばないと、折角の名前ですから」
「まぁ、そうだな」
「そう言えば、月乃さんは誰にでも呼び捨てですよね?」
「…まぁな。風太郎は?」
「その人によって、ですね。月乃さん、青様、玲音君、真白ちゃん——」
「ふぅん。玲音は、変な名前で呼んでくるな」
「あぁ、『風チャン』って呼ばれてますよ、俺」
「私は『月チャン』か…」
「真白ちゃんは『真白チャン』ですよね」
「けど、青だけは『ジョー君』か」
「『青チャン』にしたら『嬢ちゃん』みたいになるからですかね?」
「………え、いや、知らないけど」
「それにしても、やっぱ月乃さんの言う通りネーミングセンスがないかもしれないですね、秘密組織の人たち」
「お前も含めてな」
「秘密組織の名前は『ノーネーミングセンスーズ』とかにしたら良いと思いません?」
「……………何だよ、それ…!」
「あ、月乃さん、笑ってます」
「いや、笑って…ない……www」
「じゃあ、次から『ノーネーミングセンスーズ』で——」
「お願いだから止めてくれ」
「…そうですか。けど、キャラのネーミングセンスの無さは駄作者から来てますね」
「………え、そうなのか?」
「えぇ、だって秘密組織なんて、本当はもっとかっこいい名前をつけようとしたけど思い付かなかったから秘密組織のままなんですよ」
「…それはしらなかったな」
「と言うわけで、俺らで秘密組織の名前、考えましょうか」
「え」
「何が良いですかねぇ…」
「…おい」
「『明るく楽しく元気よく』は、どうですか?」
「………何だよ、それ…!」
「あ、じゃあ最近流行りの『ATG』みたいなのどうですか?」
「…どっかのアイドルグループか」
「うーん、思い付きませんねぇ」
「そりゃあ、これ書いてるのは——」
「あー、それ以上言ったら夢が壊されます」
「何の夢だ!?」
「夢と言えば、夢の国!」
「どういう思考回路してるんだ!?」
「こんなです」
「わかんねぇよ!」
「…そりゃあ困った」
「………風太郎——」
「あー、そんなに睨まないでくださいよ。それでなくても月乃さん目付き悪いのに……」
「………悪かったな。視力低いから、目細めないと見えないんだよ」
「眼鏡したらどうですか?」
「嫌だよ。そんなキャラじゃないし」
「なら、コンタクトは?」
「…目に異物を入れるなんて、怖すぎるだろ」
「意外と怖がりですね」
「そんなんじゃないぞ!?」
「はいはい、わかってますって」
「…本当か?」
「はい。それより、残り少なくなってきたので、宣伝でもしますか」
「宣伝?」
「はい、小説大会が始まったので、ここを読んでる読者様にらゼヒ投票を——」
「まず、ここを読んでる読者とかいるのか?」
「………わあ」
「コメント最近全然来ないし」
「………わあ」
「こんな小説、誰も読んでないだろ」
「………でも、参照数、上がってますよ?」
「押し間違いじゃね?」
「………駄作者さん、泣きますよ」
「知るか」
「…まぁ、そんなわけで、投票お願いします」
「だから、こんな小説——」
「それから、コメントも絶賛受け付け中です!」
「コメントなんて——」
「コメントしてくれたら、駄作者が泣いて喜ぶから!」
「…本当か?」
「本当です!」
「…そう」
「では、これで終わります! パーソナリティは俺、箱舟風太郎と——」
「月乃でした」
「ありがとうございました!」
「さようならー」

Re: 本当のわたし ( No.36 )
日時: 2012/07/16 20:14
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: HjIs5c3i)
参照: 主人公の影が薄いのは気のせいだよね?

No.17◇秘密組織の楽しい会議、再び

『みんな! 会議だ、会議を行う! 今すぐ会議室に集まれーい!』
 スピーカーから大音量で流れてくるその声を聞いて真白は目を覚ました。
「……今、何時?」
 ベッドに置いてある時計は二時頃を指している。
「………寝過ぎだ」
 今朝はルーテア・カルツとヒロハという二人がこの秘密組織へやって来て、実験体と戦ったのだ。そのあとに二度寝をしたが、こんなに眠るとは。
「月乃さんみたくなる」
 それは嫌だな、と思いながら真白は洗面所で顔を洗う。
 冷たい水のお陰で、目が冴える。
「…それにしても、何で会議なんて——」
 大きな欠伸をしながら会議室へ入ると、そこにはまだ青と月乃しか来ていなかった。
「月乃さん、珍しいですね。こんなにはやいの」
「…真白は私を何だと思ってる?」
 渋い表情をして月乃が言う。
「ずっと寝てるダメ人間」
「………」
 月乃は沈黙した。
 そこに風太郎が入ってきた。
「お待たせしました」
 ニコニコと笑った風太郎が席に着く。
 青は会議室を見渡してから渋面を作った。
「…おい、玲音は?」
 思えば、まだ来ていない。
「サボリじゃないですか?」
「確かにそうかもしれないけど…」
 青が半眼になって唸る。
 すると、月乃が立ち上がった。
「私が様子を見てくるよ」
 青の返事も聞かずに彼女は会議室から出ていってしまった。
「………」
 二人いないので、会議を始めることも出来ない青は椅子に座ってカツカツと爪で机を叩き出した。
「静かにしてください」
 真白が言うと、青は手を止め、ムッとして彼女を睨んだ。対しての真白は、どこ吹く風といったふうに視線を窓の外へやった。
「まぁまぁ、二人とも仲良く、笑顔で」
 常に笑顔な風太郎がやはり笑顔で言ってくるが、二人は何も言わない。
「…はぁ、気まずいなぁ」
 風太郎が嘆息をついた。
「仲の悪い二人と一緒にいるなんて、俺、嫌だなぁ」
「だったら出ていけ」
 青がギロリと風太郎を睨む。
「…だから、さっきから笑顔って言ってるじゃないですか」
「黙れ」
 不機嫌度が増した声で青が言うのに対し、風太郎は再び嘆息をついた。
「口が悪いですよ。ボスともあろう方がそんな言葉遣い——」
「——風太郎」
「あぁ、ほら、そうやって年上を呼び捨てるのも——」
 風太郎はふと青を見て、首を傾げた。
「そんな物騒な表情をして…、眉間に皺が寄ってますよ? どうしてですか?」
 青は、我慢の限界、といったようにバンと机を叩いて立ち上がった。
「お前のせいだよ! 風太郎!!」

Re: 本当のわたし ( No.37 )
日時: 2012/07/17 18:30
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
参照: 暑い暑い暑い。今年に入って初めてクーラーつけました。

No.18◇笑顔

「玲音?」
 玲音の様子を見に来た月乃は、彼の部屋のドアをノックした。
「玲音、いるのか?」
 もう一度声をかけると、玲音がドアを開けた。
「…玲音——」
 月乃は玲音の表情を見て、目を見張った。
 酷い表情をしている。
「…玲音、大丈夫か?」
 自分よりも背の高い彼の頭を子供にするように撫でると、彼は静かに目を伏せた。
「…———!」
 そのとき、月乃は突然玲音に抱き締められた。
 一瞬目を見張ったが、月乃も彼を抱き締めてやった。
 よしよし、と慰めるように彼の背中をさする。
 あぁ、もう、このままじゃ、あのときから変わってないな、と月乃は思い、玲音に気づかれない程度に苦笑いした。
 暫くの間、そうしていると、彼は月乃から離れた。
「ごめん、———」
 そう謝ってくる彼は、先程よりはマシな表情をしているが、まだ酷い表情だった。
「——玲音」
 まるで、幼い子供のような表情をしている。大切なものをなくした、幼い子供——。
 本の少しでも衝撃を与えれば、壊れてしまいそうだ。
 壊したくない、と願ったのは。あれは、心からの願いで。
 それは今も変わっていない。
「玲音」
 出来るだけの優しい声音で彼の名を呼ぶと、彼は潤んだ瞳でこちらを見詰めてきた。
「会議、行くぞ。玲音がいないと、始められないんだから」
「……はい——」
 玲音はこくりと頷いた。
「ほら、いつまでもそんなカオしてたら、皆に何か言われるぞ!」
 パチンと両手で軽く玲音の頬を叩くと、彼は月乃の手に自分の手を重ねた。
「そうですね——」
 玲音はそう言って、哀しそうに笑った。



   ◇◆◇



 哀しそうに笑う顔はとても綺麗で。
 でも、やっぱりいつものあの笑顔の方が好きだから。
 だから、そんなふうに笑わないで。
 そんな哀しい笑顔にさせるものは、全て私が壊すから。
 だから、もっと笑って。嬉しそうな表情で。
 そしたら、私も笑顔になれるんだから。



   ◇◆◇



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