複雑・ファジー小説

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本当のわたし
日時: 2012/10/21 11:32
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: nOUiEPDW)
参照: http://blog.goo.ne.jp/lily-wingmoon




※この小説は打ち切りました※

 >>42 



   ◇◆◇



 本当のわたしは、どれ——?
 誰か、本当のわたしを見つけて——。



   ◇◆◇



   ◇◆◇first◇◆◇

 初めましてな方は、初めまして!
 そうでない方は、こんにちは!
 羽月リリです。
 よろしくお願いします。

 読んでいただいたら、コメほしいです。
 読者様のコメが、私の原動力です!
 なので、気軽に書いてください。
 好きなキャラを書いていただけると嬉しいです。
 


   ◇◆◇attention◇◆◇

・更新遅いです
・バトルシーン、グロシーンあります
・一話一話が長いです
・荒し禁止です
・中傷禁止です
・その他、最低限のルールは守ってください

 一つでもムリって思った方は、帰ってください。



   ◇◆◇news◇◆◇

・小説大会が始まりましたね。
 こんな小説で良ければ投票お願いします!

・参照URLは私羽月のブログです。
 玲音さんのプロフィール載せてます。



   ◇◆◇guest◇◆◇

・sara.様
・美鈴様
・さな様
・璃夢様

          Thanks!!



   ◇◆◇record◇◆◇

・2012/5/26
 スレ設立

・2012/6/2
 参照100突破◇ありがとうございます!

・2012/6/16
 参照200突破◇嬉しいです!

・2012/6/30
 参照300突破◇皆様に感謝です!

・2012/7/15
 参照400突破◇やっと400ですね。

・2012/10/21
 小説打ち切り決定、小説ロック
 参照550突破してました。ありがとうございました。



   ◇◆◇table of contents◇◆◇

・prologue>>2

・No.01>>007 ◇ No.11>>028 ◇ 
・No.02>>010 ◇ No.12>>029 ◇ 
・No.03>>012 ◇ No.13>>030 ◇ 
・No.04>>014 ◇ No.14>>032 ◇ 
・No.05>>017 ◇ No.15>>033 ◇ 
・No.06>>019 ◇ No.16>>034 ◇ 
・No.07>>020 ◇ No.17>>036 ◇ 
・No.08>>021 ◇ No.18>>037 ◇ 
・No.09>>023 ◇ No.19>>038 ◇ 
・No.10>>026 ◇ No.20>>039 ◇ 

・参照100突破記念ラジオ>>11
・参照200突破記念ラジオ>>18
・参照300突破記念ラジオ>>27
・参照400突破記念ラジオ>>35

・ほのか様作 永久真白>>40

Re: 本当のわたし◇No.11 ( No.28 )
日時: 2012/07/01 09:24
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: aMIPEMQ3)
参照: プチバトルシーンあります。

No.11◇名前

「連れてきましたよ。赤井龍生」
 連れてこられたのは、一つの部屋。そこに、一人の青年がいた。
「ありがとう、真白。…もう、行って良い」
「はい」
 真白と呼ばれた少女は部屋から出ていく。
(そんな名前だったっけな?)
 無言でそんなことを考える赤井龍生である。
「初めまして。赤井龍生くん」
 その青年はこちらを向いて言う。しかし、青年の後ろはガラス張りで、そこから光が差し込んでいるので、逆光になって顔がよく見えない。
「お前、誰なんだよ。…つか、ここは何なんだよ」
 そう訊くと、青年は言った。
「ここは秘密組織。そして、僕はそのボスだ」
「秘密組織って、何だよ」
 すると、ここのボスだと言う青年は机に頬杖をついて、笑った。
「それには、答えられないな」
「…なら、何で俺をここに連れてきた?」
 その質問には答えてくれた。
「僕が君をここへ呼んだ理由はただ一つ」
 そこで一旦区切ってから言った。
「君にもこの秘密組織に入ってほしいんだ」
 赤井龍生は目を見張った。
「君のチカラはとても強い。君がいてくれれば必ず役に立つ」
「チカラのこと、知ってんのかよ」
 低い声で問うと、青年は頷いた。
「あぁ。勿論だ」
 そして、青年はその場に立ち上がった。
「そのチカラを使って、実験体を始末してほしい」
「実験体を、始末——?」
 赤井龍生はぼんやりと呟いた。
「だから、ここへ入ってほしい。…どうかな?」
 青年が右手を差し出してきた。
 この手を取れば、ここに入るということか。
 赤井龍生はそれまでずっとズボンのポケットに突っ込んでいた手を出し、ゆっくりと差し出した。
 そして。
 パシッと音をたてて青年が差し出していた手を払った。
「…な——」
 愕然と目を見開いた青年に、赤井龍生は言った。
「何だか知らねーけど、俺はこんな怪しいところに入る気なんてさらさらねーよ」
 そのまま部屋を出ようとする赤井龍生に、青年は声をかけた。
「金も、やる」
「…は?」
「入ったら、金もやる! だから——」
「いらねー」
 青年の言葉を赤井龍生は遮った。
「とにかく、俺は入らねーから」
 扉を開け、赤井龍生はその部屋から出ていった。
 一人残された青年は、小さく呟いた。
「何故…、何故、断った——?」



 部屋を出ると、先程の少女と青年が待っていた。
「なんて?」
 少女が訊いてきたので、赤井龍生は簡潔に話の内容を教えた。
「断ったけどな」
 最後にそう言うと、二人は目を見開いた。
「断ったの !? 折角イケメンが増えると思ってたのに——」
「だから、きもいって」
 少女が半眼で突っ込んで、それから赤井龍生に向かって言った。
「なら、外まで案内するわ」
 さっさと歩く少女のあとを、赤井龍生はついていく。ちらりと振り返ると、青年はその場で壁にもたれて立っていたのでついてこないようだ。
 二人っきりで広い廊下を歩く。
「ほんと、広いなぁ——」
 歩きながら、小さく呟いた。
 前を歩く少女は、一度こちらを振り返ったが、また前を向いてしまった。
「…それでさぁ、お前の名前、何だっけ?」
 そう訊くと、少女は立ち止まった。真後ろを歩いていた赤井龍生は、危うく少女にぶつかりそうになった。
 少女は身体ごとこちらを向いて、腕組をした。
「久遠純歌よ! くーおーん、すーみーか!」
 ずいっと顔を寄せて言ってくるので、赤井龍生は一歩後ろへ下がった。
「覚えた? 久遠純歌よ、忘れたら許さないから!」
 それだけ言うと、久遠純歌は再び歩き始めた。
「…なら、久遠」
「何で名字で呼ぶのよ」
 久遠純歌の言葉に龍生は半眼になった。
「は? じゃあ、久遠純歌」
「何でフルネームなのよ」
「………じゃ、純歌」
 前を歩く少女の後ろ姿を見つめながら、赤井龍生は言った。
「なぁ、お前もチカラ使えんだろ?」
「…——」
 久遠純歌は何も答えない。
「ここの秘密組織は何なんだよ」
「…——」
 ただ黙って歩き続ける。
「…教えてくれねーのかよ」
 赤井龍生はぼそりと呟いて、溜め息をついた。
 それから、彼はふと思い付いた。
「——マシロ」
「…っ !?」
 久遠純歌は目を見開いて、こちらを振り返った。
「そ…の、名前、何で知ってんのよ!」
「え、さっきの奴が、言ってたし——」
「その名前で呼ばないでよね !!」
 久遠純歌はそう言うと、ずんずん進んでいく。それについていきながら、赤井龍生は口を開いた。
「なー、何で名前、二つあんの?」
「あんたには関係ないでしょ!」
 そのとき、後ろから足音が聞こえた。
「お前を殺ーす !!」
 ブンッと風を切る音が聞こえ、反射的に身を躱すと、そのすぐ横に刀が振り下ろされた。
「避けたな、お前!」
 続いて横一線に薙ぎ払われる。
「う、わっ !!」
 赤井龍生はギリギリのところでそれを避ける。
「月乃さん」
 久遠純歌が彼女の名前を呼ぶ。
「止めるなよ! 真白の敵は私が討つ!」
「そうですね。やっちゃってください」
 さらりと言った久遠純歌の言葉に、月乃は目を輝かせる。
「まじか!」
「はい!」
「ちょっと、待ったぁ !!」
 赤井龍生の言葉は二人には届かない。
「さぁさぁ、殺してやるぞ。赤井龍生!」
「ふざけんなよ !!」
 赤井龍生は急いでその場から逃げ出す。
「ははぁ! この建物は全て把握しているこっちが有利なんだよ!」
 後ろでそんな声が聞こえてくる。
 何だか分からないが、昨日から自分は命を狙われるらしい。色んな人に。
 取り敢えずは逃げなくてはと思い、適当に走っていたが。
「だから、何で行き止まりなんだよ!」
 あぁ、そうか。きっと自分は方向音痴なんだ。行き止まりがラッキースポットかもしれない。
 乱れた呼吸を整えながら、赤井龍生は刀を持った女性を見据えた。
 女性はこちらへ勢いよく走ってくる。
「…って、どうするよ」
 こっちには武器がない。どう考えても不利だ。
「死ねぇっ !!」
 刀が振り上げられる。
(おい、まじでヤバくねぇ?)
 振り下ろされる刀。
「あぶなっ!」
 左に避けると、刀は壁を切り裂いただけだった。
「うっわ。怖… 」
 傷付いた壁を見ながら呟くと、女性は笑った。
「余裕だな。まぁ、次で殺してやる」
「……………そうですか」
(何か、他人事のように思えてきたぞ)
 そう思いながら、刀をひらりと避ける。しかし、右腕に熱さを感じた。
「うっわ、血、出た」
 昨日から生傷が絶えないなぁ、と思いながら、刀を躱す。
「ちょこまかと逃げやがって… !」
 舌打ちをして、刀を持った女性は、その刀を赤井龍生の顔に突き刺そうとした。
「危ね… !」
 壁に突き刺さって揺れる刀を見て、赤井龍生は青ざめた。
 あんなのが本当に顔に刺さっていたら、どうなっていたのか。
「 …おらぁ!」
 そのとき、一瞬の隙があった。その隙に、女性は赤井龍生の鳩尾にその拳を滑り込ませた。
「——かは… っ!」
 その場に座り込んだ赤井龍生を見て、女性は満足げに笑った。
「私を舐めんなよ」
「月乃さん、お見事」
 いつの間にかやってきた真白が笑顔でパチパチと拍手をする。
「あ… 、お前、なぁ——」
 赤井龍生が腹部を押さえながら、月乃を睨む。しかし、月乃はしゃがんで赤井龍生を睨み返した。
「餓鬼が調子乗んなよ。また真白を危険なめに会わせてみろ。次こそぶっ殺すぞ」
「 …——」
 フッと不敵に笑った月乃は、壁に突き刺さった刀を抜いた。
「じゃあ、この少年は私が外まで連れていくから」
「 …は」
「真白は戻ってて良いぞ」
 そして、月乃は赤井龍生の腕を掴んで、強引に連れていった。
 左腕を引っ張られながら、赤井龍生はチラリと後ろを振り返った。すると、あの少女がこちらを据わった目で見ていた。
「あ… の、あなた、何ですか」
 赤井龍生は前を歩く月乃に訊いた。
「『何ですか』とは何だ?」
 月乃の言葉に、赤井龍生は半眼になった。
「だから、何で俺を殺そうとしたんですか」
「そりゃあ、真白を危険な目にあわせたから」
「……………そうですか」
 あれは自分のせいと言うよりは、あの追ってきた奴のせいだと思うが。しかし、それを言うと、また何かされそうだと思ったので、何も言わなかった。
「ほら、帰れ」
 外に出た二人は、赤井龍生を置いて、さっさと建物の中へ入っていった。
「——って、どうやって帰れば良いんだよ」
 行きはリムジンで来たというのに、帰りはなんだ。リムジンどころか、この扱い。酷すぎる。
「…くそぉ。こんなとこ絶対入んねーぞ」
 そう誓って、赤井龍生は帰っていった。

Re: 本当のわたし【参照300突破感謝!】 ( No.29 )
日時: 2012/07/01 17:08
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: 7H/tVqhn)
参照: 明日から期末テストです→更新出来ません。申し訳ない。

No.12◇秘密組織の楽しい会議

『今から赤井龍生についての会議を行う!』
 秘密組織の建物全体に響き渡る青年の声。
『今すぐ会議室に集まれ!』
 どこか自棄になったような言い方。
「あー、なんでそんなことしないといけないのよ」
 真白は溜め息をついて、会議室へ向かって歩き出した。



「…ったく、さっきは暴れまわったから、眠いっていうのに——」
 細長い机にイスが何個も置かれている一つに座った月乃は盛大に欠伸をした。
「一眠りするか…」
 そう呟いて机に突っ伏す月乃の隣に座った真白は溜め息をついた。
「何で玲音さんがわたしの目の前の席に座ってるんですか!?」
「だって、真白チャンの顔がよく見えるし!」
 ヘラヘラと笑う玲音を疎ましげに見たあと、真白は腕組みをした。
「全員そろったか!?」
 会議室に現れるなりそう言ってくる。
「見ればわかるでしょ」
 しれっと返すと、青は真白を睨んだ。
「黙れ! 点呼を取る!」
「点呼って、必要ですかー?」
 玲音が手を挙げて質問する。
「黙れ!」
 玲音を睨み付けてから、点呼を始める。
「真白!」
「……………はい」
 ムッとして、返事をする。
「玲音!」
「ほーい」
 間の抜けた返事をした玲音を再び睨み、点呼を続ける。
「月乃!」
「………」
「寝るな!!」
 バンッと机を叩くと、月乃は目を開けた。
「何で寝てるんだ!?」
「眠いから」
 そう言って、また目を閉じる月乃に青は怒鳴った。
「寝ーるーなー!」
「良いから早くしてください」
 真白が言うと、青は不満げに彼女を見たあとに点呼を再開する。
「風太郎! ——風太郎はどこだ!?」
 青が再び机を叩いたとき、会議室の扉が開くと同時に甘い香りが広がった。
「クッキーを焼きましたよー!」
 ニコニコと笑った風太郎が、皿にてんこ盛りに積まれているクッキーを机に置いた。
「お召し上がりください!」
「こんなもの良いから、とっとと席に着け!!」
 怒鳴る青を見た風太郎は席に着くと口を開いた。
「カルシウムが足りてないから、牛乳飲みますか?」
「牛乳はキライだ!」
「そんなんだからチビなんだよ」
 玲音の言葉に青は異常に反応した。
「『チビ』って言うな! 銀髪チャラチャラ男!!」
「ネーミングセンスないですね!」
「黙れ黙れ黙れ!」
 三度青が机を叩くと、皿にてんこ盛りに積まれたクッキーが幾つか落ちた。それを見た真白は落ちていないクッキーを口に運んだ。
「…あ、おいしいですね」
「そうでしょー?」
「あぁ、ホントだ!」
 クッキーを食べ始めた真白と玲音を見て、青は怒鳴り散らす。
「お前らいい加減にしろぉ! 僕を何だと思ってる!?」
「チビでイマイチ頼りないけど、まぁ一応この秘密組織のボスっぽい位置についてる、まだまだお子ちゃまなジョー君」
「玲音! お前——」
 しかし、その言葉を机を叩く固い音が遮った。
「青。とっととしろ。こっちは眠いんだよ」
「……………」
 それまで騒がしかった会議室が一瞬にして静かになる。
「……………じゃあ、会議を始める」
 ごほんと咳払いをした青は、ここのボスは一体誰なんだ、と思った。
「赤井龍生をこの秘密組織に引き込もうと思う」
「何でですか?」
 真白の問いに、青は少々苛立ちを見せながら答える。
「彼のチカラは発火能力、Burnist〔燃やす者〕だ。そのチカラならあの実験体は簡単に倒せるからだ」
 「実験体」とは、普通の狼の倍程は大きい狼のような生物のことだ。
 昔、超能力を作り出した科学者が狼で動物実験を行った。そして、その狼たちは実験室を逃げ出し、今もどこかで生きている。それを全て殺すのがこの秘密組織の仕事なのだ。
「何の為にこんなチカラを作り出したのかしら——」
 真白の小さな呟きは、しかし誰にも聞こえなかった。
「でも、実験体は最近弱くなってきてます——って、真白チャンが言ってました!」
 玲音の発言に、青は眉をひそめた。
「それは本当か?」
 真白に向かっての問いに、彼女は薄ら笑いを浮かべた。
「ボスだっていうのに、そんなことも知らないんですか?」
「——…」
 青は怒ったように目を見開いたが、何も言ってこない。それは、真白が言っていることが正しいからであろう。
「だから、赤井龍生は必要ないと思います」
 好い気味だ、と思いながら真白は言った。
「それとも、そこまで赤井龍生に執着する理由があるんですか?」
「イケメン君、欲しい!」
 玲音の言葉に、彼を除いた全員が半眼になる。
「…赤井龍生は置いといて、実験体が弱くなっているというのは気になるな」
 青が目を伏せる。
「少し、調べてみる」
「じゃ、会議はお開きだ!」
 それまでずっと黙って話を聴いていた月乃がさっさと会議室をあとにする。真白もそれに続いて会議室から出る。
「いやー、会議はいつも面白いねー♪」
 にっこりと笑って玲音も会議室から出ていった。
 風太郎は青を見て、にっこりと笑った。
「紅茶、飲みますか? 淹れてきますね」
 そう言って、会議室から出ていく。
 一人残された青は頭を抱えた。
「僕は、——っ…」

Re: 本当のわたし◇No.13 ( No.30 )
日時: 2012/07/06 16:28
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
参照: テストは月曜までですが、久々の更新。

No.13◇年下のボス

「月乃!」
 名前を呼ばれた月乃は、しかし何の反応も示さずに歩き続ける。
「おい、月乃」
 再び名前を呼ばれる。半分、苛立ったような声で。
「聞こえてるだろ」
 肩に手を置かれた。
「…年上を呼び捨てすな。あと、敬語を使え」
 自分よりも若いボスにさらりと言うと、彼は無言になった。
「…じゃあ」
 自分の部屋に入ろうとした月乃は、そのボスに呼び止められた。
「——ちょっと待て」
 しかし、月乃は部屋へ入り、ドアを閉めた。
「おい、開けろって」
 ガチャガチャとドアノブを回すが、月乃が内側から鍵をかけたので開くことはない。彼は苛立ったようにドンドンとドアを叩いた。
「月乃! 開けろ!」
 月乃のドアに凭れて腕組みをし、それを黙って聞いている。
「開けろって!」
 ドンドンとドアを叩き続ける。
「月乃!」
 それでも月乃はドアを開けない。
「月乃、——月乃…さん」
 ドアを叩くのを止めて、実に不満たらたらな小さな声でそう言ってきた。
「何の用だ?」
 ようやく月乃が返事をした。
「話がある。開けてくれ」
「…『開けてくれ』?」
 言葉を鸚鵡返しに言うと、不満たっぷりな声で言ってきた。
「——開けてください!」
 面白いなぁ、と苦笑しながら月乃は鍵を開け、ドアを開いた。
「…何の用だ? 青」
 口元に笑みを浮かべて訊くと、青はやはり不満気な表情をして言った。
「さっき、赤井龍生と遣り合ってたな」
「…あぁ」
 遣り合うという表現が正しいのかは微妙だが、月乃は頷いた。
「赤井龍生は、お前の攻撃を全て躱したな」
「…鳩尾に一発、決めてやったけどな」
 月乃の言葉は無視して青は続けた。
「僕は、お前の剣術の腕前はよく知っている」
「…そうか?」
 冗談半分で訊くと、「そうだ」と半眼で返してきた。
「そのお前の刀を避けるとは、赤井龍生はただ者ではないと思う」
 至って真剣な眼差しの青に、月乃は苦笑いした。
「私はそこまで凄い奴ではないよ」
 すると、青は静かに首を振った。
「お前は凄いよ。…少なくとも、僕には勝てる相手ではない」
「だったら、私を『お前』呼ばわりすな。で、敬語を使え」
 「何度もそう言っているのに」とぼやくと青は渋面を作った。
「とにかく、赤井龍生についてだが——」
「話を逸らしたな」
 月乃の指摘に、青は更に渋面を作って続けた。
「僕は、やはり赤井龍生が必要だと思う。今の、この秘密組織には——」
 思慮深げな瞳で青を見詰めたあと、月乃は彼の頭をくしゃりと撫でた。
「そうだな」
「…あのな、子供扱いをするな」
 頭を撫でている手をパシリと払って、月乃の顔を見ると、彼女は静かに微笑んでいた。
「私に出来ることがあるならば、力を貸すよ」
 月乃はそれだけ言うと、部屋へと入った。
 閉じたドアを見詰めた青が小さく呟いた言葉は、彼女に届いたのか——。

Re: 本当のわたし ( No.31 )
日時: 2012/07/08 13:08
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: 7H/tVqhn)
参照: http://blog.goo.ne.jp/lily-wingmoon

どうも。羽月です。

更新しないで何をやってんだ、って感じですが。
ブログを始めました!

そこに、真白ちゃんのイラスト載せてますので、興味のある方はゼヒご覧ください!
ま、私の駄絵なんですけどね。

プロフィールもちょこっと載せてます。
興味のある方はゼヒ。

これから、他のキャラも載せてきたいと思ってます。
あと、番外編なども書けたらいいな。

参照URLでいける、はずです!

ではでは。
更新頑張ります。

Re: 本当のわたし ( No.32 )
日時: 2012/07/11 20:41
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: KTH/C8PK)
参照: 数学のテスト、8点でした。えぇ、100点満点ですけど、何か?

No.14◇奇襲

 翌日。
 その日の朝は、いつもと何一つ変わりのない朝だった。
 風太郎が朝早くに起き、掃除をしていると、玲音が目覚め、みんなが集まる部屋へとやって来る。
 風太郎と玲音が雑談をしていると、次にパジャマを着たままの真白が部屋へやって来る。それを合図に、風太郎は朝食の準備に取りかかる。
 真白は新聞を開き、玲音はテレビでニュースを見ている。
 暫くすると、美味しそうな香りが辺りに漂い、朝食が始められる。
 風太郎の作った料理をゆっくりと堪能する真白と玲音。それを見た風太郎は、嬉しそうににっこりと笑う。
 朝食を食べ終わった真白は服を着替えに自分の部屋へ戻り、玲音は歯磨きをしに行く。風太郎は二人が使っていた食器の後片付けをする。
 風太郎が食器を洗い終わると、制服に身をつつんだ真白と歯磨きを終えた玲音がほぼ同時に戻ってくる。
 学校まで少し時間がある真白と、家事に一段落がついた風太郎と、暇な玲音は、ソファに腰をかけると、雑談を始める。
 そこまでは何一つ変わらなかった。
「…じゃあ、そろそろ学校に——」
 時間を確認した真白が立ち上がるのと、ほぼ同時。
 ドォンと、何かの爆発音のようなものがどこからか聞こえた。
「何——?」
「…爆発?」
 すると、再び爆発音が聞こえてきた。
 聞こえてくるのは、階下のほうだ。
「少し様子を見てきます」
 一番速く動ける風太郎はそう言うなり姿を消した。
「…一体、何が——」
 真白が訝しげに呟くと、玲音は呑気ににっこりと笑った。
「大丈夫。真白チャンはオレが守るから安心して——」
「………」
 呆れ半分で玲音を睨むと、三度爆発音がした。
「…わたし、ちょっと見てきますね」
 戦力である自分がいた方が良いかもしれないと考えた真白は爆発音が聞こえてくる方へと向かう。
「オレも行くよ」
 真白の後ろを歩きながら玲音は言った。
「お姫様を守る騎士〔ナイト〕だしね」
 「はぁ」と溜め息をついて、エレベーターへ乗り込む。
 真白は一階のボタンを押す。
 落ちるような、独特の感覚がしたあと、ポーンと音がしてドアが開く。
 すると、そこは。
「…うっわ、酷い」
 このビルの入り口の扉があったはずの場所は、爆発が起きたかのような状態で、そこが入り口だとは到底思えなかった。
「何が——?」
 呆然と呟いた真白は、しかし風太郎の姿が見えないことに気付き、B1のボタンを押した。
 再びエレベーターのドアが閉まり、落ちる感覚のあと、ドアが開く。
「…わ——」
 エレベーターのすぐ前に、青と風太郎がこちらに背を向けて立っていた。そして、その奥にあったはずの牢屋はボロボロになっていたが、鉄格子はついたままで、中にいる太郎は唖然としていた。
 牢屋の向かい側には、二人の姿。
 少年と少女のようで、少年は少女よりも頭一つ分ほど背が高い。
 少年は、肩につくかつかないかの黒髪で、黒のスーツのようなものを着ている。
「……あ! あの子、一昨日の——!」
 真白が指差す先にいるのは、ひとりの少女。
 金色に近い茶髪を腰のあたりまで伸ばしていて、黒色のワンピースを着た少女。瞳は、静かな紫色をしている。
「ルーテア・カルツ!」
 名前を大声で言うと、彼女は目を見張った。
「あなた誰よ! ——って言うか、なぜあたしの名前を知ってるの!?」
 そう言われて、真白は気が付いた。あのときは、隠れて見ていたんだっけ。
 しかし、真白は口許に笑みを浮かべて言った。
「わたしに知らないことなんてないのよ!」
「なんですってぇ!?」
 少女二人を交互に見詰めた玲音はぼんやりと口を開いた。
「真白チャン、あの子のこと知ってるの?」
「む、本当か、真白」
 玲音の言葉に青が反応する。
「えぇ! 知ってます!」
 真白は捲し立てるように言った。
「赤井龍生を襲おうとしたけど何か失敗したっぽい感じの、金色オッドアイゴスロリ少女です!!」
「………何か凄いね」
 玲音がポカンと口を開け、風太郎はいつものようにニコニコと笑う。
「なら、その金色オッドアイゴスロリ少女!」
 真白の言った通りに言った青がその少女を睨むと、少女は怒ったように金切り声をあげた。
「あたしの名前は、ルーテア・カルツよ!」
 ギッと青を睨み返す金色オッドアイゴスロリ少女——ルーテア・カルツ。
「……ルー、少し黙れ」
 それまでずっと黙って彼女の横に立っていた少年がようやく発した声は、少し呆れた感じのものだった。
「あたしの名前はルーテアよ」
 頭一つ分ほど背の高い少年を一瞥したルーテアは、腕組みをしてこちらを睨む。
 一方の少年は、無表情にこちらを見てきた。
「さっさと蒼を返せ」
「アオイって、誰?」
 真白の言葉に、その少年はついと指差した。
「そいつだ」
 その先にいるのは。
「太郎さん!」
 真白は目を見開いた。
「太郎さんって、アオイって名前だったんですか!」
「タロウ? アオイ?」
 胡乱気に呟いた玲音は、じっと牢屋に閉じ込められている者を見詰めた。
 そんな玲音は気にも留めずに青は言った。
「そう簡単にこいつを返すと思うか!」
「思う!」
 少年の言葉に青はずっこけた。
「思うのかよ!」
 ムスッとして少年を睨む青。
(けど、青さんとあの人、同じくらいの年かも…)
 ぼんやりと考える真白。
「交換条件だ! お前たちは何故、赤井龍生を狙っている!?」
 張り上げた青の声に、少年は静かに答える。
「そんなことは教えられない…」
 少年はすっと右手を太郎がいる牢屋に向けて差し出した。
「…壊せ」
「玲音——」
 青の言葉と同時に、少年の差し出された右手から白い閃光が解き放たれた。
 ドォンと、あの爆発音が響く。
「———っ…!」
 真白は咄嗟に顔を両手で覆った。その直後、爆風が叩き付けられる。
 なんとか堪えて目を開けると、牢屋の前には白銀に光る大きな壁が創られていた。
「…玲音さん——」
「——な…っ」
 少年はその壁を見て、目を見張った。
「オレのこと嘗めないでよね」
 玲音を口端を吊り上げた。
「このDefendist〔護る者〕をな!」


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