複雑・ファジー小説
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- 1/2
- 日時: 2013/06/01 18:56
- 名前: トー (ID: gwrG8cb2)
トー、と申します。
短い物語になると思いますが、地道に書いていきたいと思います。
読んでいただければ嬉しいです。どうぞ、よろしくお願いします。
登場人物
・僕(ぼく)
この物語の主人公。僕目線で書いていきたいと思います。
・彼(かれ)
僕が行きつく建物の持ち主。ブロンドの長髪に青い目。左目に眼帯。
書き始め
2013/05/11
- Re: 2/1 ( No.1 )
- 日時: 2013/05/11 21:35
- 名前: トー (ID: gwrG8cb2)
このドアを開けますか?
ドアを開けない。
ドアを開ける。
ぼんやりと曇った僕の頭の中に浮かんできたのは、この二つの選択肢だった。
僕は無意識のうちにその文字に触ろうと腕を伸ばした。でも、それは僕の頭の中にあるだけだと本当は分かっていたから、文字があるはずの場所に指が伸びる前に諦めて腕を下ろした。
目玉を動かすと僕が見つめた選択肢の文字が白く光った。
まるでゲームみたいだな、と僕は思った。ゆっくりと慎重に目玉を動かして考えた。
僕の周りは黒で塗りつぶされていた。ただ一つ、僕の前には木のドアが、取り残されたようにぽつんと突っ立っているだけ。
このドアが可哀そうだな。そう思うと、灰色の木目が泣いている人に見えてきた。そっと触ってあげるけど、その子の表情は変えられなかった。当然だけど、悲しい気持ちになる。
また、あの文字が浮かび上がった。
その時の僕は嫌そうな顔になっていたと思う。しつこいと思ってそのことを考えないようにしていたからだ。でも、どんなに考えないようにと思っていても、見えてしまうから嫌な顔になってしまう。僕は表情が顔に出やすい。
今、僕は、僕が立っている場所からは左にも右にも、後ろにも行けない。だから、このドアを開けないと、何処にも行けない。なら、このドアを開けるしかないんだと思う。
すると、見つめてもいないのに『ドアを開ける。』の文字が白く光ってどんっと言う嫌な音が鳴った。
僕はドアを開ける。急がされるように肩を誰かに叩かれたからだ。急に怖くなって、後ろも振り向けずにドアの中に逃げ込んだ。
「いらっしゃいませ」
目を開けると、目の前には髪の長い男の人がいた。
気がつくと、僕は何処かのお店のようなところの椅子に座っていた。僕は白い小さな紙を持っていて、鉛筆で文字が書いてあった。
この男の人とお話ししますか?
お話ししない。
お話しする。
僕と同じ年ぐらいの子供が書いているんだと思う、『し』が反対になったり、文字の大きさがばらばらだったりする。でも、ちゃんと僕が見つめると、文字が白く光るようになっていた。もう一度男の人を見ると、優しそうな顔で笑っていた。僕を待ってくれているんだと思う。
そしてもう一度、僕は紙を見つめて、『お話しする。』に指を置いた。すると、その文字は白く光ってはじけ飛んで、長い机の上につぅーっと滑っていった。
「お客様は、初めてのご来店ですよね?」
男の人は優しそうな声でそう僕に話しかけた。
でも、僕には何も答えられなかった。僕は此処を知らないけど、此処に来たことがないかも分からない。首を縦にも横にも触れなくて、僕はもじもじと自分の足を動かすことしかできなかった。
すると、男の人はまた笑って、僕の頭に手を置いた。
「君は正直な子だね。偉い子だよ」
そう言って、その人はまた笑った。黄色の髪が揺れて綺麗な青い目が隠れるのを僕は何も考えないで見ていた。この人は優しい人だな。そう思ってにっこりと僕も笑った。
でも、男の人の顔を見ていて、僕は急に怖くなった。なんでだろう? そう思って、机に膝をついて男の人の顔を見た。丁度、その人の顔が、よく見えるところまで背伸びする。
「何で、目が一つなの?」
久しぶりに話したから、僕はちょっとだけ言葉がおかしくなってしまった。
それでも男の人は小さく笑って、僕の手を取って、其処に目があるはずのところに触らせた。
白い布みたいなものが、男の人の左目を塞いでいた。
「生まれつきだよ」
その布が外れても、その人の右目のような青い目は見えなかった。男の人の左の目は空っぽで、瞼がだらんとぶら下がっているだけだった。
「生まれたときから、左目はないんだ」
初めて、男の人の顔が悲しそうになった。急に僕も悲しくなって、白い布を取ってまたさっきの場所に当てた。「もういいよ」って言うと、男の人は元通りに笑って、また僕の頭に手を置いてくれた。
「僕はなんでここにいるの?」って聞いたけど、それはその人にも分からないんだと言った。でも、これまでもたくさんの子供が此処に来たことを教えてくれた。「その子たちはどうしたの?」そう聞くと、その人はちょっとだけ嫌そうな顔をした。僕は人から嫌われたくないから、「言わなくていいよ」って言った。あんまりにも慌てて言ったから、途中でつまってしまった。
僕がいる部屋は大きくて、僕が座っている長い机と椅子以外は、真四角の机に椅子だった。それが左も右もずっと続いていて、奥は黒くなって見えなかった。時々、人みたいな黒い何かが歩いていって、目みたいな赤い丸がぱちぱちと瞬きしているみたいに光っていた。
「私は此処の持ち主だよ」と、男の人が笑いながら言った。「此処は本を売ったり、買ったりする場所なんだよ」と、また言った。僕は驚いて、「僕は本はいらないよ」と言うと、笑って「分かっているよ」と言ってくれた。
僕は簡単な文字は読めるけれど、難しい字は読めなかった。だから本は嫌いだった。でも、この人は本を売ったり買ったりするくらいだから本が好きなんだろうな、と思った。僕はこの人が好きだ。優しいし、ちゃんと僕の言うことを聞いてくれるから。
だから僕はこの人に好かれたいと思っている。だから僕は本が好き、と言うことにしておいた。分からない文字は、教えてくれるから嬉しい。
今日から、僕はこの部屋、「コンラッド・モーガン」と言う本屋、あの人がいる此処にいることになった。
- Re: 2/1 ( No.2 )
- 日時: 2013/05/12 01:05
- 名前: トー (ID: gwrG8cb2)
部屋の外に出た。
周りはとても暗かったけど、遠くの方に小さな明かりが見えた。誰かいるのかな、と思ってドアから離れたら、彼がすごく強く僕の手をつかんで部屋に引っ張り込んだ。
「痛い」って言うと、彼は少しだけ笑って「危ないから」と言った。
それから、彼は僕の手を引いたまま、いつものように椅子に座らせて、たくさんの絵本の中の一つを開いて僕に見せてくれた。僕は一生懸命音読して、分からないところがあったら彼に教えてもらった。
いつもおんなじところが分からないから、おんなじことを聞くけど、彼は怒ったりしないから何でも聞ける。いつも笑ってるから、僕も嬉しい。
でも、何でいつも笑ってるんだろう? と思う。
僕は怒ったり、泣いたり、心配になったりして顔が変わるけど、彼は変わらない。いつも笑ってて、時々ちょっとだけ変わるときがあるぐらいだ。僕がこの部屋から出ようとしたり、生まれたときからないって言う左目の布を触ってたりした時にだけ。悲しそうにするから、僕も悲しくなって彼に抱きつく。そうするといつも嬉しそうにしてくれるから、僕も楽しくなるけど、やっぱり変だと思う。
僕のせいなのかな、って時々思うから、今度聞いてみよう。でも、また悲しそうにするかもしれない。それは嫌だから怖い。
ゆっくり、文字を指で確かめながら読んでいくと、彼は頷いてくれる。僕が正解を言っているんだって分かるからとっても嬉しい。色々な動物とか人とかが出てくる。文字を読みながら分かんないところは教えてもらう。
「……ねぇ」
ちっちゃな声でそう言ったら、彼は驚いたように僕を見た。
「……あーちゃんには名前があるのに、なんでうさぎさんとか、かえるさんには名前がないの?」
僕は変なことばっかり聞くんだと思う。彼はまだ驚いているように目をぱちぱちしている。でも、しばらくしたら僕とおんなじように絵本を見て、首をひねった。
「……どうしてだろうね。気づかなかったな」
「うさぎさんはたくさんいるし、かえるさんもたくさんいるから、ちゃんとこの子だって分かるように名前があった方がいいと思うの」
僕の話をちゃんと聞いてくれる。彼は頷いて、僕の話を考えてくれる。なんで? って言ったら、ちゃんと返事はしてくれる。
ちゃんと、僕を見てくれると思う。
「……そうだよね。そうしないと、うさぎさんもかえるさんも困っちゃうよね」
「どうしたらいいかなぁ? みんな、迷子になっちゃうのかなぁ?」
うさぎさんやかえるさんが泣きだしそうになってるところを考えたら、僕が泣き出しそうになった。心臓がどきどきして、目が熱くなった。彼は優しく笑って、僕の頭を撫でてくれた。
「大丈夫だよ、みんなちゃんと一緒だから……。そうだね、だったらこの子たちに君が名前をつけてあげたらいいよ」
「僕……?」
「そう」
彼が話してくれた。本の中に書かれている物語は一つ一つ生きているから、忘れないように名前をつけて、時々思い出してくれるだけで喜ぶんだって。だから僕はこのうさぎさんやかえるさんや、あーちゃんのことをずっとずっと覚えておこうと思う。そうしたらみんなが嬉しいし、僕もずっと此処にいて、彼と一緒にいれるから。
僕は「あの人」とか「男の人」とか言ってたけど、「彼」って言った方が短いし、覚えやすいから、って彼が言ってたから彼って言うようにしてる。今、テープレコーダーって言うのに、声で日記をつけてるけど、ちゃんと文字を勉強して、書けるようになったら文字で日記をつけていきたい。
僕は彼が好きだから、彼に好かれたい。そのために本も読んでるし、文字も勉強している。そうしたら彼も嬉しいはずだし、僕も嬉しい。
僕がうさぎさんとかえるさんに名前をつけるところも、彼は一緒にいて考えてくれた。一緒に考えて、うさぎさんはラビちゃん、かえるさんはクロくんにした。みんな笑っているように見えて嬉しかった。
すると、僕は、絵本の中にいるうさぎさん、ラビちゃんが何かを持っているのに気がついた。さっきまで持ってなかったのに、って思いながらその中に書いてある文字を読んだ。
また二択の選択だった。読みづらい、小さな文字。
彼に名前を聞きますか?
彼に名前を聞かない。
彼に名前を聞く。
目玉を動かすと、ちゃんと文字は白く光った。
僕は少し迷った。そう言えば、僕は彼の名前も知らないし、僕の名前も知らないから、もし彼に名前を聞いても、僕も名前を言えないから、変じゃないかなって思った。
でも、彼の名前は知りたかった。名前を知ったら、きっと僕は彼のことを今よりもたくさん知れるから。
『彼に名前を聞く。』を見つめた。その文字が白く光った。僕は嬉しくなって、思わず彼を見た。
見て、僕は、何も言えなかった。
彼が、絵本を僕から奪ってびりびりにして破いてしまったから。僕は驚いて、何も言えなかった。彼は笑わないで、でも泣かないで、ずっとずっと何も言わないで絵本をびりびりにしていた。その音がラビちゃんの、クロくんの悲鳴に聞こえて、彼の手を掴もうと思って手を伸ばしたら、彼が僕の顔を強く叩いた。椅子から落ちて、僕が泣いても、彼は僕を見てくれなかった。もう絵も、文字も見えなくなった紙を、もっともっと細かく破いていく彼の顔は、とても怖かった。
彼は、僕に名前を教えてはくれなかった。
- Re: 2/1 ( No.3 )
- 日時: 2013/05/13 12:30
- 名前: トー (ID: gwrG8cb2)
彼は、また笑っている。
あれから、僕は彼に近づけなかった。怖かった。僕の頭の中にはまだあの二択が浮かんでくるから。それに気付かれたら、今度は僕が、彼に引き裂かれてぐちゃぐちゃにされちゃうかもしれないから。それはきっと痛いだろうし、僕は死んでしまうだろうし。
あの後、彼は僕を慰めて、頭を撫でてくれた。怪我もしてなかった。
けど、まだほっぺたが痛い。彼を見ると、怖くなって逃げ出したくなる。彼は僕に笑いかけるけど、僕は前みたいに笑えない。
怖い。どうすればいいのかな、誰も僕を守ってくれない。
怖い。此処から逃げられるのかな、僕はいつか彼に殺されるのかな。
此処で殺されたら僕はどうなるんだろう。あの選択肢がまだ頭の中から出て行ってくれない。彼が気づいたら、今度は殴られるだけじゃすまされない。もっと痛い目に遭う、もっと苦しい目に遭う。
顔を上げる。僕の周りをふらふらと行ったり来たりする黒い影は、僕に気がついていないみたいに何処かに行ってしまう。声をかけたのに、何も返事してくれない。遠くの方で彼が言う。
「それに、私たちの言葉は通じないよ」
誰か助けてよ。彼が笑ってる。今度は僕が殺されるのかな。悲しそうな表情をする。僕の方に手を伸ばして、悲しそうに言う。
「何でこっちに来てくれないの?」
僕は何も言わなかった。言えなかった。あの時みたいに体が動かなくなって、怖くなって、泣きだしそうになったから。此処で泣いたら、絶対に、殺されると思ったから、声は出さなかった。
彼は、泣きだしそうな顔になる。僕は、もっと泣きそうになって、彼を見ないようにする。そうしないと、僕は泣いてしまう。彼のそばに行けない、寂しさで、死んでしまう。
……けど、なんで死にたくないんだろう?
怖いから? 痛いから? だったら、気づかない間に死んでしまったら、彼を怖がることもなくなるのかな? 幽霊になったら、また、彼のそばに行って笑えるかな?
部屋の外に出た。
彼は何も言わないから、そのまま遠くの、ずっと遠くの明かりのところまで走って行った。後ろを振り向いたら、彼がドアのところに立って、こっちを見ていた。僕がいた部屋の外側は、縦長い木の建物で、「コンラッド・モーガン」って書かいてある看板が、ちょっとだけ斜めに傾いていた。
誰かいないかな、って周りを探した。明かりは、小さな電灯だった。そのあたりをくるくる回ってみたけど、誰もいなかった。それで、また遠くに明かりを見つけたから、其処に向かって走った。
どんどん僕の部屋が遠くなっていく。ちょっと怖くなって振り返ったら、もう何も見えなかった。其処に止まって、目を凝らして見ても、彼は見えなかった。
彼は、僕がいなくなって、泣いているかな。急に悲しくなったけど、頑張って走った。鉄の味がしたけど、息が苦しくなったけど、一生懸命走った。このまま、走っているうちにぼんやりと死んだら良いのにな、って思ってた。そうしたら、彼に、怖がらずに、会いに行けるから。また、前みたいに彼を抱きしめたら、きっとまた笑ってくれるだろうから。
すると、いきなり周りがぱっと明るくなった。驚いて止まって後ろを向くと、大きなピンク色の四角形があって、僕は知らない間に其処をくぐったらしい。前を向くと、たくさんの家があった。どれもばらばらな大きさで、長細かったり、横長かったり、真四角なのもあって、どれにも電気がついていた。
端っこから数えてみたら、十個の家があった。僕は、ピンク色の四角形の前にあった、オレンジ色の、縦長の家に入ってみた。中は電気がついていて、とても明るかった。
でも、誰もいなかった。大きなテレビがつけっぱなしで、台所の水が流しっぱなしだったけど、誰もいなかった。階段があったから上にも行ってみたけど、やっぱり誰もいない。机が二つあって、真っ白なノートが一つだけ置いてあった。
その右の隣にある、真四角の、緑色の家にも、誰もいなかった。何もなくて、赤いクッションが一つだけ、真ん中にぽつんと置いてあった。
緑色の家から出てくると、なんだか周りが暗くなっているように見えた。気のせいかな、って思って、次のピンク色の、横長の家に入った。
其処は、全部ピンク色で、机とか椅子とか壁とかも全部ピンク色だった。そして、ピンク色の絨毯に、女の子が座っていた。僕と同じくらいの女の子。
僕は嬉しくなって、女の子に近づいた。初めて見つけた人だったから、僕はどきどきしながら話しかけた。
「ねぇ、すみません」
女の子は何も言わなかった。僕は話を続けた。
「僕、此処、初めて来たんです。こんにちは。あなたの名前は何ですか?」
女の子は何も言わなかった。僕は首をひねった。寝てるのかな、って思って女の子の顔を覗き込んだ。
茶色の髪の毛で、くるくるしてて、二つに結んであった。服までピンクで、レースがたくさんついたスカートだった。女の子は大きく目を見開いていて、茶色の目玉が、少しだけきょろきょろしていた。
「起きてるんだったら、返事してください」
僕は、ちょっと怒って強く言った。けど、女の子は何も言わなかった。僕はもう怒って、怒鳴り散らしたけど、それでも女の子は何も言わないし、動かなかった。僕は、腹を立てていたから、その部屋の電気を消してやって、その部屋を出た。後から、女の子の泣き声が聞こえたけど、僕を無視した罰だから、放っておいた。
その右にあった、青色と水色の家も、何もなかった。天井がすっごく高くて、青色の家の天井にはお月様、水色の天井にはお天道様が笑っていた。
其処から右は何もなかったから、ピンク色の四角の家のところまで戻った。あの女の子の家の電気がまた点いていたから、また電気を消してやった。
ちっちゃな、紫色の真四角の家に入った。でも、しゃがまないと、天井に頭がついてしまうくらいの小ささだ。誰もいなかったけど、ベッドとか机とか、開けてある窓からはいってくる風とか、とっても気持のいい匂いがした。
その左にある黄色い、縦長の家は何もなかった。上から誰か話すような声も聞こえたけど、誰もいなかったから諦めた。
その左にある茶色の、大きな真四角の家に入った。長い廊下が続いていて、茶色い廊下だった。いっぱいドアがついていて、その中の部屋にはたくさんの机が並んでいた。
たくさんの人が廊下にいた。走ってる人や歩いている人がたくさんいた。だけど、みんな頭がない。頭がなかったら喋られないから、僕は声をかけないようにしていた。結局、三階まで見てみたけど、頭がある人はいなかった。
その左にある、黒色の、縦長の家に入った。其処は全部白と黒で、床が白、壁が黒、天井が黒だった。けど、何もなかった。階段を上って上に行くと、またおんなじような部屋だった。諦めて帰ろうと思ったら、階段のところに赤い、鍵が落ちていた。さっきは落ちてなかったのにな、と思いながら、その鍵を拾った。
彼のことをちょっとだけ思い出した。家はあと一つだった。これを見たら、彼のところに帰ってみようかな、って、ちょっとだけ思った。