複雑・ファジー小説
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- Re Becca外伝『Footsteps of death』
- 日時： 2014/04/16 23:32
- 名前： ポンタ （ID: WeBG0ydb）
- 参照： http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=14982
初めまして、ポンタです。
今回はしゃもじさんの小説『Re Becca』の外伝として
私が投稿したオリジナルキャラクター『ヘルガ・ヴァーミリオン』を主人公にした
物語を書いていきます。
しゃもじさんにＯＫを貰っていますので、力尽きずに頑張って続けられるようにしたいと思います。
なお、この外伝はあくまで私、ポンタが執筆するものです。
『Re Becca』に登場する他の方のオリキャラは無断で使用しませんのでご安心下さい。
（というか、この話だけのオリキャラが結構出てくるのでそっちでイッパイッパイです……）
『Re Becca』本編へは↑
※注意
・本編の世界設定を可能な限り遵守しますが、執筆者が違いますので本編と食い違いなどが発生する場合があります。
（主にしゃもじさん、そうなったらすみません……）
短編に——と思いつつ書いているとどんどん文章が長くなっていき、
長編になるのが、私の作品の良くないところ……
未熟者ですので、読んでくれた方は出来ればアドバイスやコメント頂けると嬉しいです。
よろしく、お願い致します。
※※※※※※※※※※※※
——それはある国。ある場所で、
法外な金銭と引き換えにどんな相手でも、どんな病も治療する
裏の世界では『死の足音』と呼ばれ恐れられる女医者の物語。
三人の助手と共に今日もお仕事。
「私との約束さえ守ってくれれば、誰の命でも助けてあげる。ただし、もし破ったら……」
このメスはただ命を狩る為だけの道具になる——
キャラクター紹介>>27
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.10 )
- 日時： 2013/07/27 13:30
- 名前： ポンタ （ID: WiTA9hxw）
マダムの家を後にして、再び車での移動。
レオンは運転の合間に隣を盗み見る。
ヘルガは変わらず窓の外に顔を向けていたが、ずっと上の空だ。
「マダムに何か言われましたか？」
「…………『星が流れる』と言われたわ」
「？星、ですか？」
レオンは思わず首を傾げた。
* * * * * * *
「近いうちにお前の周りで『星が流れる』」
マダムと別れる直前、そう告げられた。
ヘルガは微かに目を見開き、そして睨むように細めた。
「ま、用心することだね」
「……不吉な忠告をどうも」
眉間にシワを寄せて苛立ちを隠す事無く、ヘルガは家を出た。
マダムの表の顔は占い師。
ジャンルは問わず、四柱推命・占星術・ルーン・タロット・人相、あらゆる面を組み合わせて人を視る。
それも高い的中率を誇り、政財界のトップからマフィアのカポまで彼女の占いを当てに訪れるのだ。
そして、ヘルガにとってマダムの『星が流れる』という結果は、必ずと言っていいほど当たる。
あの広く大きな背中が目の前で崩れ落ちたときのように………
* * * * * * *
（他の結果はまちまちなクセに……）
思い出してヘルガの眉間の皺はさらに深くなる。
レオンもそれを察してそれ以上触れようとはしなかった。
軽い食事を終えて、次はレベッカの往診だ。
車がゆっくりと停車する。ヘルガは白衣に袖を通し黒鞄を持って外へ出ると運転席を覗き込む。
「で、アンタは今日もここで留守番なワケ？」
「はい、ここで待ってます」
またか、とヘルガは軽くため息をついた。
レオンはレベッカに決して会おうとしない。
今回みたいに車で送ってくれる事はあっても、ヘルガが戻るまで車から出ることは無い。
まるで、この先からは別の領域があると線引きがされているかのように。
昔、レベッカの世話をするようになってしばらくして、レオンとレベッカを会わせようとした事がある。
しかし、門から敷地内に入ったところで、レオンは足を止めてジッと上を向いていた。
不思議に思ったヘルガはその視線の先をたどると、家の窓からレベッカがこちらを見ていた。
いや、正確にはレオンを見ていたのだ。
お互いしばらく動かないまま見詰め合っていたので、ヘルガが彼女がレベッカだと教えると、途端にレオンは踵を返して門の前に止めた車まで戻ってしまった。
慌てて追いかけたヘルガはレオンに聞くと、彼はただ静かに首を振って「この先へは入れない」とだけ言った。
レベッカも同じだった。ヘルガが家に入ることは許しても、車の中にいるレオンを酷く気にしていた。もちろん、敵意ある意味で。
それ以来、まるで磁石の同じ極を向き合わせようにレオンもレベッカも頑としてお互いに会おうとしなかった。
ヘルガがその話に触れようとしても、2人はあいまいに返すのだ。
本当に当人達も良く分かっていないのかもしれない。
ただ本能的に互い同じタイプの人間であることを察し、その領域を侵すまいとしているだけ、とか。
現に今だって、触診の最中だと言うのにレベッカは窓の外を向いたまま。レオンが外にいる時はいつもこんな感じだ。
そんなに気になるなら家に入れればいいのにと以前言ったことがあるが、「イヤ」の一言で突っぱねられてしまった。
（ん？待てよ）
ここで1つの考えが浮かぶ。
——まさか、レベッカが検診に来ないのはレオンがいるからか！？
いつもは「忘れてた」「面倒だ」などと言ってはいるが、レオンとレベッカが互いの家に侵入しようとしないということは、医院の一部を住居として使っているあの場所にはレベッカは決して近づかない。
つまり、いくら待てどもレベッカが医院に訪れることは無いのだ。
頭を抱えたくなった。
……と言うか、この状態になってから早数年。今更その考えにいたった自分がとんでもなく阿呆過ぎて恥ずかしい。
「ナに、1人で百面相しテいるノ？」
「……何でもない……」
この居た堪れなさを目の前にいる少女に読まれたくない。
今この瞬間だけ、彼女が殺し屋であってエスパーでないことを喜んでおこう。
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.11 )
- 日時： 2013/07/29 19:19
- 名前： ポンタ （ID: t3n5DtaJ）
「新シイ診察法？」
「んな訳ないでしょ。それより——」
この胸の内の羞恥心をどうにかして隠したくて、無理やりに話題を換える。
「また傷が増えてるじゃない。しかも自分で縫ったりして……」
前回診た時よりも明らかに傷が増えている。しかも、白い肌に傷口の周辺が赤くなってしまっているのが痛々しい。
これは治療とは言わない、無理やり塞いだのだ。
ヘルガはまだしも、これをイヤでも見ることになる彼女の同居人にはさぞ辛かろう。
「怪我したなら呼びなさいよ」
ヘルガならもっと上手く縫える。
傷を無くす事は出来ないが、限り無く見えない様にすることが出来る。
年頃の女の子なのに。
「小サい傷だシ、気になラなイワ」
自分の体なのだし別段気にすることではないとレベッカはさも平然と口にする。
（こりゃ、分かってないな……）
「レベッカ」
良く聞けと真顔で言うと、レベッカは珍しくキョトンとした顔をした。
ヘルガはレベッカとの距離を詰めて、緑の瞳が黒い瞳を覗き込む。
「その傷が直ろうと塞がろうと、それを見て『ココ』が傷付くのは、アンタじゃない別の誰がいるって事。忘れないように」
『ココ』と言ってヘルガが指差したのは、レベッカの胸。強いてはその奥にあるもの。
——心だ。
もちろんレベッカのではなく、彼女のこと案じている少女のことである。
「…………」
レベッカは指された胸をそっと撫でて、俯いて黙り込んでしまった。
その後、数十秒ぐらいだろうか。俯いていたレベッカが少しだけ頭を上げた。
それでも顔を見ることは出来ない。
どんな顔をしているのだろうと、ヘルガが覗き込もうとした瞬間、レベッカの手がヘルガの両脇に伸び白いブラウスの裾を掴んだ。
そして一気に胸下までブラウスを持ち上げたのだ。
「うひゃぁ！」
「色気ガ無イ」
「この状況で色気を求めるな！」
と、突っ込んだものの、想定外の行動にヘルガは混乱する。
一方のレベッカは曝け出されたヘルガの白く括れた腹部をジッと観察するように見ていた。
「…………」
「レ、レベッカ？」
良く見ると、どうやらレベッカはヘルガの古傷を見ているようだ。
レベッカほどでは無いにせよ、ヘルガも人を殺し殺される側の人間だ。多少なりとも傷の1つや2つは持っている。
「あンマり、なイのネ」
「そりゃ、私とアンタじゃ根本的に殺り方が違うし」
「……コれハ？」
レベッカが指差したのは、ヘルガの左下腹部にある大きな傷跡。
それは他のものとは明らかに違う。
——至近距離から撃たれた銃創。
「ん？ああ、昔助手に撃たれたのよ」
そう言ってヘルガは窓の外を見た。
窓の外……。外の車……。レオンだ。
「……ソウ」
返事もそこそこにレベッカは傷跡を指先でなぞる。銃創の出来た理由については追求するつもりは無いらしい。
こそばゆい感覚に身を捩りたくなるが、何かに興味を持つ彼女が新鮮でしばらく好きにさせてみる。
「ネェ」
「今度は何？」
「人ノ肉っテ美味しイの？」
「！？！？！？」
何を言い出すんだ。このお子サマは——
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.12 )
- 日時： 2013/07/29 21:45
- 名前： しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ （ID: 1/l/Iy6H）
やだ、何このレベッカ可愛い……！（謎
他の方が持つレベッカの印象とはこんな感じなのですね。これはいい天然キャラ。私が書いてる、基本畜生なレベッカ像にもいくらか影響が出てきそうです。
あ、事務連絡（？）なのですが今後についてお話したいことがありますので、差し支えなければ上記のアドレスにご連絡下さいまし。
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.13 )
- 日時： 2013/08/02 17:14
- 名前： ポンタ （ID: WiTA9hxw）
ダッダッダッダッダッダッ———。
レベッカの寝室から飛び出して、ヘルガは階段を駆け下りる。
リビングを抜けて、キッチンに辿り着く。
「フレデリカ！！」
「あ！先生。今、先生が持ってきてくれた紅茶が入ったの。診察は——」
フレデリカ・ジョイナー——デリィの言葉を遮って、ヘルガはその小さな両肩を掴んだ。
デリィが見上げると深刻な表情。いつもはキリッとした緑色の瞳が悲しげに揺れている。
先程玄関口で会った時と明らかに様子の変わったヘルガにデリィはただただ困惑するばかり。
「……せ、先生？」
「……デリィ」
搾り出すような擦れた声。肩から感じる震えた手。デリィにも、ただ事ではないと言うことだけは分かる。
（もしかして、レベッカに何か……？）
咄嗟に身構えるデリィ。
ヘルガは小さな体を抱きしめて、肩に顔をうずめる。
「デリィ、ごめんなさい」
「先生、レベッカがなにか——」
「私もレベッカも頭のネジどころか、ボルトやら配線がダース単位でイカれてるのは分かってる。けど……」
「そうネジ……って、え？ネジ？ボルト？一体何の話を……」
予想に全く無い単語が次々と飛び出す。
デリィは必死に理解しようと、それを頭の中でレベッカに当て嵌めて行くと最終的に脳内のレベッカはブリキの人形に変身していた。
「アンタまでコッチ側に、いや、さらに明後日の方向に飛び越えた所に興味なんて持っちゃ……」
自分のイメージとヘルガの言葉が全く噛み合わないまま脳内の許容量を超えてしまいオーバーヒートする。
首を巡らせると、視線の端——キッチンの入り口に人影が映る。
振り返るとそこにはキッチンの入り口に寄りかかって、愉しそうに唇の端を吊り上げて哂う同居人がいた。
「ええ〜〜〜！！！わ、私が人の肉を食べたいって！？！？！？」
落ち着きを取り戻したヘルガから事情を聞くと、突拍子もない答えが返ってきたことに思わず大きな声を上げてしまった。
ヘルガも取り乱してしまった自分が恥ずかしく、椅子に座ったまま顔を赤くして小さくなっていた。
「昨日言ってタじゃナイ。今朝モ」
「私……そんな事言った覚えなんて……」
レベッカの顔を見ればデリィには分かる。彼女はからかっているのだ。
でも、何の前触れも無くいきなり自分が人肉に興味があるなんて事を彼女が言うはずは……
「…………っああ！！」
1つだけ思い当たる節があった、でも——
「違うの！アレはそんな意味で言ったんじゃなくって！」
デリィは慌てて事の原因を話し始めた
* * * * * * *
昨日・深夜
ベッドに入って眠っていたはずのデリィはパッチリ目が開いていた。
何度寝返りを打っても一向に眠くならない。目を閉じて羊を数えて見ても効果が無い。
昼間に干したての布団が気持ちよくて、その中で昼寝をしたのが良くなかった。
枕元の時計を見るとまだ午前2時を回った位。
仕方なく、デリィはベッドから降りてガウンを羽織るとキッチンへと向かった。
ホットミルクでも飲めばきっと眠れる。
部屋を出るとリビングに明かりが付いていた。リビングに着くと案の定、レベッカがソファに座ってテレビを見ていた。
「ずっと起きてたの？」
「エエ」
デリィの問いにレベッカは特に振り返ることなく答える。
レベッカが見ているのは、一昔前のホラー映画。今ではCGで本物と変わらない映像が作れるが、コレは見るからに作り物だと分かる造り。
内容はデリィも少し知っている。確か、ある島でツアーに参加した男女が次々に消えて、見つかった時にはその肉や内臓を食べられて発見される。と言うものだ。
確か犯人はこのツアーに参加している男で、この島には人を食べる化け物がいて、先祖代々その化け物を崇めている彼の一族はその生贄に人間を連れてくるのだ。
決定的なシーンや映像が無いので、R指定になっていないが結構グロテスクな話だ。
「それ面白い？」
「別ニ普通ネ」
「そう」
その割にはこの映画を熱心に見ている気がする。
デリィはそのままキッチンへと進み、ホットミルクにはちみつを入れたものを2つ作って、リビングで眠くなるまでレベッカと一緒に映画を見ていた。
* * * * * * *
今朝
珍しくレベッカがいつもより早く起きてきた。
昨日の晩は夜更かししていたから、お昼ぐらいまで寝ていると思った。
デリィも朝食はまだ取っていなかったので、今日はレベッカと一緒だ。
その小さな事がとても嬉しくて、ほんの少しだけ朝食も頑張ってみた。
キツネ色のトーストにバターを塗って、フライパンでカリカリに焼いたベーコンに卵を落としたハムエッグ、レタスとトマトのミニサラダにオレンジジュースで完成。
顔が緩んでいたのかレベッカに「何カあっタ？」と聞かれて「ヒミツ！」と答えてやった。
そんな感じで朝食を口に運んでいると、レベッカがテレビを付けた。
見たい番組でもあるのかと思い、黙って見ているとニュース番組でチャンネルを止めた。
内容はここ最近、近隣の町で多発している婦女子の連続殺人だ。
被害者にこれと言った共通点は無く、年齢は20〜30代の女性ばかり。
皆、人気の無い路地裏で殺されており、死体からは臓器の一部が奪われているというおぞましいもの。
しかも、1つの町でならまだしも離れた場所でほぼ同時刻に犯行が行われている。
行動範囲が広すぎる為、複数犯として警察も総動員の捜査もむなしく進展は無い。
この事件についてキャスターやコメンテーターがそれぞれ好き勝手な事を話している。
「これは快楽殺人集団の仕業だ」「いや、食人鬼だ」なんて、無責任なことを話すコメンテーター。
彼に賛同するわけではないが、世の中には『そーゆー人』もいる。
理由は十人十色。必ずしも全員が同じではない。でも確かにいることをデリィは知っている。
目の前の同居人は眉1つ動かさない。
折角の嬉しい朝食。少しの間、味が無くなった気がした。
* * * * * * *
確かに双方でポツリと「人のお肉ってそんなに美味しいの？」と言ったのは覚えている。
「だから、その、人の肉を食べるなんて考えるヒトの気が知れないって意味で……」
怒りたいのに恥ずかしい。そんな歯痒い感じだ。
「こめんね、デリィ。勝手に勘違いして……」
「うんん。先生は心配してくれたんだもん。ありがとうございます」
「人騒がセネ」
「レベッカがからかったせいでしょ」
デリィはプクーっと頬を膨らませてレベッカを睨む。しかし、いつもの事ながら当の本人は全く反省の色は無い。
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.14 )
- 日時： 2013/08/08 10:46
- 名前： ポンタ （ID: WiTA9hxw）
※内容がグロいです！！要注意！！
（無理な人はすっ飛ばして読んでください）
「——デ、結局人ノ肉ってドんナ味がスルの？」
「え？まだそのネタで行くの？」
「ダッて、気ニなるジャなイ」
あくまで好奇心から来るものなのだろうが、せっかくマダムの所から失敬してきた焼き菓子と紅茶が一気に不味くなった。
「食べタことアるんデショ？」
「あるかそんなもん！」
それは何か！闇医者だからか！？とんでもない偏見だ。
幾ら契約の遵守で人を殺してはいるが、人間を捨てるようなクソ外道に堕ちた覚えは無い。
キッパリ否定してやると、レベッカはさもつまらなそうな顔をした。
断じて私が悪いんじゃない。
「あー、もう！分かったわよ！少しだけなら話して上げる！」
断っておくが、私に人肉を好む趣味は皆無だ。
これは至極一般的な常識の範疇での話だ。パソコンでも簡単に検索できるものだ。
ある者はこう表現する。
「それは、よく成長、成熟した仔牛の肉に似ていた。ステーキは極上の仔牛肉よりも少し固く、少し筋があったが、それによって質がそこなわれるというものではなかった。ローストはまさしく色も仔牛肉にそっくりだった」
またある者はこう言った。
「人肉はポークに似ているが、少し固いく、少し苦い」
さらにある者はこう遺している。
「強い匂いも味も無く、簡単に口の中でとけていった。匂いの無い、マグロのとろのようなものだ」
いずれも人の肉を食す理由、その評価はバラバラではあるが、いずれも若い女性の胸が高く評価されていると言う。
「「女性の……胸……」」
「どこ見てんのよ！」
少女2人の視線から胸を隠す。
だが、自分で言っておいて何だが、実際いかに美味なものであろうとその原型を想像してしまうと胸焼けしてくる。
デリィは若干青い顔をしているし、レベッカだって——ナチュラルに焼き菓子を頬張り紅茶で流し込んでいた。
少しは反応があってもいいと思う。可愛げがない。
「これで満足？」
「チョっと、拍子抜けネ」
「そーかい」
どんな話を期待していたのかはあえて聞くまい。
いつか誰かが言っていた。種の繁栄以外の理由で同族を殺し、同族の死を喜び楽しむ悪癖持ちは人間だけだと。
デリィの言うとおり、己の快楽で人の肉なんざ食べようとするヤツの気が知れない。
人殺しが何を言う——綺麗な手の人間にならそう言われるかも知れない。だが、ヘルガもレベッカも己のルールに従って人の命を奪うのだ。
そこらの快楽殺人者と同じ扱いをされるのは不愉快極まりない。
（でも、人の命を奪って生きる私達は、ある意味ではその命を喰らっているって事になるのかしら）
道徳や尊厳の境界線を人は何処まで越えれば人でなくなるのだろうか。
チラリと少女達を盗み見るとレベッカが青くなったデリィの頬を突付いている。
微笑ましい在り来たりな日常。
私もレベッカも忘れてはいけない。
何時だって自分達が堕ちて行くのを引き止めるのは、汚れていない、私達の行いを間違っていると、哀しいと理解している存在なのだ。