複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Re Becca外伝『Footsteps of death』
日時: 2014/04/16 23:32
名前: ポンタ (ID: WeBG0ydb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=14982

初めまして、ポンタです。

今回はしゃもじさんの小説『Re Becca』の外伝として
私が投稿したオリジナルキャラクター『ヘルガ・ヴァーミリオン』を主人公にした
物語を書いていきます。

しゃもじさんにOKを貰っていますので、力尽きずに頑張って続けられるようにしたいと思います。

なお、この外伝はあくまで私、ポンタが執筆するものです。
『Re Becca』に登場する他の方のオリキャラは無断で使用しませんのでご安心下さい。
(というか、この話だけのオリキャラが結構出てくるのでそっちでイッパイッパイです……)


『Re Becca』本編へは↑


※注意
・本編の世界設定を可能な限り遵守しますが、執筆者が違いますので本編と食い違いなどが発生する場合があります。
(主にしゃもじさん、そうなったらすみません……)


短編に——と思いつつ書いているとどんどん文章が長くなっていき、
長編になるのが、私の作品の良くないところ……

未熟者ですので、読んでくれた方は出来ればアドバイスやコメント頂けると嬉しいです。
よろしく、お願い致します。


※※※※※※※※※※※※


——それはある国。ある場所で、
法外な金銭と引き換えにどんな相手でも、どんな病も治療する
裏の世界では『死の足音』と呼ばれ恐れられる女医者の物語。

三人の助手と共に今日もお仕事。
「私との約束さえ守ってくれれば、誰の命でも助けてあげる。ただし、もし破ったら……」

このメスはただ命を狩る為だけの道具になる——


キャラクター紹介>>27

Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.5 )
日時: 2013/12/12 21:52
名前: ポンタ (ID: WnNKWaJ3)

「はい、ジョニー君。あ〜ん」
「……あ〜ん」

 ヘルガが口を開くよう促すと、目の前に座る小さな男の子——ジョニーは熱に浮かされながらも、小さな口を出来るだけ大きく開いた。
 ペンライトを片手に咥内を覗き込む。
 案の定、喉の奥が真っ赤に腫れていた。

「あぁ、やっぱり扁桃腺(へんとうせん)が腫れる。咳はヒドイ?」
「はい。最初は咳だけで、だんだん熱が出てきてしまって……」

 喉を照らしていたペンライトを消す。
 答えたのはジョニーの母親だ。息子の直ぐ後ろに座って心配そうにこちらを伺っている。
 机の上に置かれたカルテに視線を移す。
 カルテには診察前の待ち時間に熱を測らせた結果が記載されていた。
 37度5分——微熱ではあるが、この年頃の子供にはキツかろう。

「ふむ。ジョニー君、シャツ捲って」

 今度は心音を聞く。聴診器を耳に付けて準備する。
 そして、今までヘルガの後に黙って控えていた助手が動いた。
 シャツを胸元まで捲るのを手伝い、手に持っていた玩具をジョニーの目の前にチラつかせる。

「コレに向かって、フーッって吹いてね」

 コレ、とは風車だった。
 風車に息を吹きかけて、その時の心音を聞くのだ。
 普通の紙でも構わないが、こちらの方が子供も喜ぶ。
 「ちょっと冷たいよ〜」と声を掛けながら胸に金属部分を付けた瞬間、ビクリと小さな身を震わせた。

(分かってても冷やっこいよねぇ、コレ。)

 分かる分かると思いつつ、耳は小さな心音に集中する。

「はい、ジョニー君。フーッ」
「フーッ!」

 風車を回すために大きく吸って力一杯息を吹きつける。
 カラカラと乾いた音を立てて回る風車。上手く風を当てないとキチンと回らないのだ。
 胸と背中から心音を聞き終わるとカルテと処方箋にそれぞれペンを走らせて、助手に手渡す。

「ただの風邪ね。薬を出して置くから、それで様子見て」
「ありがとうございます」
「ニガイおくすり、やぁだぁ」

 深々と頭を下げる母親と駄々を捏ねる子供。見慣れた光景だ。
 もちろん、対処方法も心得ている。
 ジョニーの前にしゃがみ、視線の高さ合わせる。
 
「おや、いいのかなぁ?もう直ぐお兄ちゃんになるのに、そんなかっこ悪い事言って」
「??」

 視線を奥へずらすと彼の母親が立っている。
 そのお腹は大きく膨らんでいる。妊婦だ。
 膨らみ具合からして、そろそろ臨月を迎える頃だろう。

「妹か弟が生まれたら、お兄ちゃんはニガイおくすり飲めないんですって、先生言っちゃおうカナ?」

 意地悪く笑って見せる。
 ジョニーは少しの間俯いて顔を上げると元気良く——
 
「おくすり、のむ!」
「よく言った。さすが、お兄ちゃん!」

 頭を撫でてやると、母親の方へ駆けていく。
 まあ、処方したのはさすがに大人と同じ薬ではなく、飲みやすい粉薬とトローチだ。

「せんせい、バイバ〜イ」
「バイバ〜イ」

 診察室を出て行く親子を手を振って見送る、しばらくすると助手が戻ってきた。

「お疲れ様です。先生」
「お疲れ様。レオン」

 彼の名前はレオン・カーティス。
 薄茶色の短髪に前髪で左目を隠し、ハーフフレームの眼鏡の奥には鳶色の知的な瞳。高身長で物静かな青年である。
 ヘルガの元で医学を学び助手として働いている。
 
「この次は?」
「午前中はこれで終わりです」
「終わり?」
「はい」

 淡々と答えるレオンにヘルガの声のトーンは段々下がっていく。

「本当に?」
「本当です」
「……………………………………………………………………………………………………そう」

 最後は力無く机に突っ伏した。
 
「今回も来ませんでしたね。彼女」
「あんの我侭娘……また定期健診サボって」

 我侭娘——レベッカ・L・シャンクリー。16歳。
 血は繋がらないもののヘルガの遠縁に当たる。
 両親は共に亡くなっており、レベッカは法律的に年齢基準を満たさないため残された遺産を自由に出来ない。
 ヘルガはそんな哀れな少女の後見人。そして、主治医として健康状態の一切を知る義務がある。

(いや、哀れってのは語弊があるわね)

 根暗・陰気・毒舌・金の亡者・人間不信と人格的に大いに問題ありな人間を『哀れ』の一言で片付けるには少々言葉不足だ。
 幸福と言える人生を送っているとも言いがたいが……

「先生も諦めて、往診にすればいいのに」
「いや。ここまで来たら意地になるって言うか……」
「子供ですか」
「五月蝿い」
 
 何にせよ、これ以上外来の患者はいないのだからと机の上の書類を片付ける。
 今日はこれから用事があり、午後の診察は休みにしてある。レベッカの往診は用事が済んだ後だ。

「子供と言えば」

 ふと思い出したようにレオンが口を開く。

「先生は子供の相手が上手いですね」
「ん?そう?」
「はい。診察中、一緒になって口を開けたり息を吹いたり……」
「う゛っ!」

 何だか改めて言われると恥ずかしい。
 
「年上をからかわないの」
「純粋な感想です」

 だとしたら、なおのことタチが悪い。
 ヘルガがイマイチ納得がいかないと顔をしかめていると、レオンはくすりと笑って「コーヒーを入れてきます」と診察室を出て行った。
 これじゃどっちが年上か分からない。

「ああ、もう!」

 発散されないモヤモヤ感をどうにかしたくて近くにあった新聞を掴み取る。

 地元紙、朝刊
『14日未明、警察官のガブリエル・ロハス氏(47)が自宅で遺体で発見された事件について。警察はこれを心臓発作による事故死と断定。捜査を打ち切り……』
『同日深夜に郊外で起きた屋敷の火災。全焼した家屋からは暴力団の幹部を初め十数名の遺体が発見された事件について。暴力団は出火前に全員死亡していたことから、警察はロハス氏死亡の件との関連性も視野に入れ捜査を行ったが、証拠は未だ上がらず進展は困難を極め……』


 この日、ヘルガ・ヴァーミリオンの秘密口座にどこぞから振り込まれた600万フリントの内、一部が新車購入(一括払い)と高級ワインの代金に使われた。


Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.6 )
日時: 2013/07/20 12:53
名前: ポンタ (ID: WiTA9hxw)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode



 真新しく汚れの無い新車の助手席に揺られながら、ヘルガは窓から外を眺めていた。
 診療所から車で移動すること約1時間。
 都心から離れて、ある田舎町に来ている。
 目の前には大きな畑が広がり、鼻に届くのは土と草の青臭さ。
 車も人も片手で数えられるほどにしか通らない、舗装されていない農道。
 砂利の凹凸で車が揺らされないようにレオンが丁寧に運転してくれている。
 ちらりと横目で運転席を伺えば、背筋を伸ばして真っ直ぐ前を向いて運転している。
 
(イイコに育ったなぁ)

 恋人でもいるならこういう姿に胸を高鳴らせるのだろう。
 しかし、レオンについて浮いた話やそれを連想させる行動を見たことが無い。
 隠しているのか……。興味が無いのか……。

(いるなら紹介ぐらいしてくれてもいいのに)

 付き合いもずいぶん長くなる。あのレベッカよりも長いはずだ。
 レオンも年頃だし、年上の——それも異性では話したくないことの1つや2つあるとは思う。
 でも、育ての親としてはちょっと淋しい。

(男の方がもっと話せるのかな……)

「……せ…。……ん……せい。先生!」
「え?あ、うん」

 1人で勝手に考えてほんのちょっとブルーになっていたら、レオンが呼んでいるのに気が付かなかった。

「酔いましたか、先生。何か飲み物でも」
「ううん、大丈夫。平気。それより、何?」
「見えてきましたよ」

 流石に本当のことは言えなかったので慌てて話をそらすと、いつの間にやら目的地が見えていた。
 目的地に着き、車から降りるとそこはどこにでもありそうなログハウス調の小さな家。
 そして、敷地に入る前にヘルガたちを迎えてくれたのは季節の花がいっぱいに咲き誇っている庭だった。
 ヘルガは庭の入り口から覗き込むと、庭の端の花壇から大きな人影が現れた。
 麦藁帽子を被り、オーバーオールを着た2メートル以上はあろうかという大男。

「マーキス!!」

 ヘルガは巨体に驚くことなく、大男——マーキスに声を掛けた。
 マーキスは初めは誰か分からず首を傾げたが、近づいてよくよくヘルガとレオンを見ると日に焼けた顔に人懐っこい笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

「おお!ヘルガ!それにレオンも!!」
「はぁい、マーキス。久しぶり」
「ご無沙汰しています」
「レオン大きくなったな!前に会った時はこ〜んなにちっこかったのに」
 
 園芸用の手袋に包まれた太く大きな人差し指と親指の先を、付く付かないかという位にして表現するマーキス。
 入道雲のような巨体には当時のレオンは相当小さく見えたらしい。

「マダムはいる?」
「ああ、今は中に……」



「五月蝿いね!マーキス!静かにしな!!」



 家の中からしわがれた怒号が響く。
 マーキスの巨体の向こう、庭を見渡せるテラスへ首を巡らせれば老婆が1人。
 
「マダム!ヘルガたちが来てくれたぞ!」
「はんっ!みりゃ分かるさ、私が呼んだんだ。そんなところに突っ立ってないでさっさと上がりな!」

 そう言うとマダムと呼ばれた老婆は厳しい顔つきのまま部屋の中に入っていった。

「ごめんなぁ。あれでも、今日はそんなに機嫌悪くない方なんだ」

 自分が悪いわけでもないのに申し訳なさそうに謝るマーキス。
 ヘルガも別に気にしていない、彼女に会いに来るのにこの程度でイチイチ怒るようでは話にならない。
 マーキスと庭にいると言うレオンを置いて、ヘルガは家へと向かう。
 ノックは必要ないのでそのままドアノブを回す。これでまたノックをして入ろうものなら「さっさと入りな!」とお叱りを受ける。
 家の中も木製であることを活かした作りで、雰囲気を壊さないように木彫りの可愛らしい小物が綺麗に並べられ、庭の花壇から摘み取った花が花瓶に飾られている。
 リビングの中心に置かれた年季の入ったソファには先程の老婆が座っており、ヘルガも遠慮なく向かいに腰を下ろす。

「久しぶりね、マダム。その様子からすると、あの世からのお迎えはまだまだ先かしら」
「ふん。ずいぶんな口を利くようになったじゃないか。アバズレ小娘」

 不敵な笑みを浮かべて向き合う女二人。
 その間には火花が散っているとかいないとか……

Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.7 )
日時: 2013/07/21 13:26
名前: ポンタ (ID: WiTA9hxw)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode




「はい。お土産」

 そう言ってヘルガがテーブルの上へ置いたのは1本のワイン。

「どういう風の吹き回しだい」
「強いて言えば『この間のお礼』ってことで」

 マダムはフンッと鼻を鳴らすとワインを手に取り、そのラベルを指でなぞる。 

「ほう、ラ・ターシュ。1988年ものかい」
「当たり年よ。好きでしょ?」
「お前は医術の腕と酒の趣味だけはイイからね」

 だけとは何だ。だけとは。
 この不満を言ってやりたいが、言わない。口に出せばそれが数倍になって返ってくるのを良く知っている。
 マダムはワインを片手にキャビネットへ向かう。
 持っていたワインを仕舞い、さらに奥へと足を運ぶ。。
 その先はキッチン。
 シュンシュンと薬缶から湯の沸いた音がする。茶を入れてくれるようだ。
 ヘルガも勝手は知っているので、手伝いにキッチンへ入る。
 食器棚からティーカップを取り出す時、ふと棚の端に目を留める。
 木彫りの動物人形だ。

「また増えたんじゃない?」

 人形をひとつ、手の平に置く。
 小鹿の人形。軽くて小さいにもかかわらず、細かい部分まで丁寧に掘られ、ニス塗りにもムラがない。今にも動き出しそうだ。
 この家に飾られている木彫りの小物、花や花瓶にいたるまで全てマーキスのが作ったり育てたりしたものだと言ったら驚くだろうか。

「近所のガキ共に褒められたのが、嬉しかったらしい。最近じゃ、お前の所の助手等と一緒になったお蔭でさらに数が増えた」

(なるほど、うちにも似たようなのは……まあ、あるわね)
 ただし、完成度はここまでではないし、たまに地球外生命体を思わせる造形も混じっている。
 今回連れて来ていない残りの2人助手の腕はまだまだ遠く及ばない。 

「このままじゃ人間じゃなくて木彫りの住処になっちまう。マーキスには今度まとめてフリーマーケットに出すように言ってある」
「普通に売り物になわよ。コレ」
「欲しけりゃ、幾らでも持っていきな」
「遠慮しておく。うちの助手の成長を気長に待つわ」

 小鹿を元の場所に戻して、必要な物を用意すると「邪魔だ」の一言でリビングに追い返された。
 その数分後、マダムが戻って来てテーブルへとハーブティーと焼き菓子が並べられれば、これでようやく落ち着いて話が出来る。

 それでは、この老婆——マダムと呼ばれる彼女の紹介をしておこう。

 彼女は、ローザリンデ・アッヘンバッハ——通称マダム・ローズ。
 この道50年以上のベテランの情報屋である。



Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.8 )
日時: 2013/07/24 20:57
名前: ポンタ (ID: t3n5DtaJ)



 湯気の立つ紅茶に小さく息を吹きかける。
 鼻腔をくすぐるミントの良い香りに誘われてカップに口を付けたいのをグッと我慢して、湯気を吹き消すように息をかける。
 ヘルガ・ヴァーミリオン——少々猫舌である。

「どうした。飲まないのかい?」

 自分だけ美味しそうに紅茶を堪能する。
 この意地の悪い老婆はヘルガが猫舌なのを知っていて熱い茶を入れたのだ。

(くっそ!)
 
 このまま挑発に乗って口を付けたら確実に舌を火傷するのは目に見えている。
 湯気越しに睨んでいても涼しい顔をして交わされてしまう。
 単純に遊ばれていると分かっていてもムカツク事には変わらない。

「まだまだ子供だね」
「60を超えるバァサンからすればそうでしょうよ」

 仕方なく紅茶の攻略は時間に任せて、焼き菓子へ手を伸ばす。
 香ばしい香り、サクサクとした食感、程よい甘さが口内に広がる。
 くやしい……けど、おいしい。

「で。いい加減、私を呼びつけた理由を話してもらえる?まさか、ワインを期待していたわけじゃないでしょう」
「そうさね」

 マダムはカップを静かにソーサーに戻して、ソファに深く腰掛けた。

「ヘルガ。お前、赤いドラッグを知っているかい?」
「赤いドラッグ?」
「こいつさ」

 袖から小さなビニールの小袋を取り出し、テーブルに置いく。
 ヘツガはそれを摘んで目の前に持ち上げる。
 ビニールの中には薄桃色の粉末が少量入っていた。

「名は『ブラッディ・マリア』。最近出回り始めた新種さ」
「血濡れの聖母、ねぇ。ドラッグにしてはシュールなネーミングね」

 赤いドラッグことブラッディ・マリア——うわさには聞いている。出回る数が極少で値段が高い。しかし、その希少に見合うだけの効果は高いらしい。
 少し前に、このドラッグをヘルガ持っているなどと言うガセ情報に踊らされた阿呆もとい中毒者がいた。
 病院に乗り込んできたその阿呆には、もちろん丁重にお帰り頂いた。明後日の方を向いて刃物を振り回し、「薬をだぁせぇ」とか叫びながら暴れるものだから虫の息になるまで抵抗させてもらったが。

「一度に出回るのはせいぜい5つ、多くて6つ。粉末1袋で0.2グラム。金額は相場の5倍」
「ごばっ、マジ!?」

 あまりにも高すぎる。
 純度が高いのか、はたまた原材料からしてよほど特殊なものを使っているのか。
 理由はなんにせよ、ロクなものではない事は確かだ。  

「……お前にコイツの成分鑑定を頼みたい」
「な〜る。そゆことね」

 ブラッディ・マリアを懐へ仕舞うと、また焼き菓子に手を伸ばす。  

「結果報告は私と、それからビスマルクの子倅にしな」
「は?ヴォルフに?」

 焼き菓子を齧る手と口が止まる。
 ヘルガには聞き慣れた、しかしこれまで全く話に出てこなかった名前が浮上する。

「元々ヤツからの依頼だ」
「おわぁ……帰ってきてたんだ」

 脳裏にあまり思い出したくない顔が浮かぶ。
 ヘルガの住む町にブラッディ・マリアが出回ると言う事は、当然ヤツも絡んでくる。
 良く考えれば分かる事だ。

「ねえ、マダム。1つ聞いていい?」
「何だい」
「今回、わざわざ私を呼び出した本当の理由は?」

 裏の世界でのマダムは人嫌いでも有名である。
 滅多に人前には顔を出さないし、情報提供も基本は電話やメールだ。
 ヘルガの場合も例外ではなく、それでもこの家へ足を運ぶのは、こうしてマダムに呼びつけられたりする時だけだ。

「お前を呼べば、ワインが来るからに決まっているだろう」

 「最近口が寂しくてね」と、したり顔で嗤うマダムに対して、ヘルガは眉をへの字に曲げて湯気の消えた紅茶を流し込む。
 このバァサン、やはり食えない。

Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.9 )
日時: 2013/07/27 13:24
名前: ポンタ (ID: WiTA9hxw)

ちょっと遅くなりましたが、『参照100突破!!』ありがとうございます。
まだ更新10回もしてないのに、感謝感謝です。


さて、次回あたりからいよいよ『Re Becca』本編の主人公レベッカが出てきます。
今までで一番キンチョーしております。
(うまく書けるかな……;;)

まだまだこの話も駆け出しですが、コメントも募集しています。
「会話が面白くないぞー」とか「描写がわかりづらい」とか「キャラに個性が無い」など、辛口でも全然OKです。

ではでは、皆様これからもRe Becca外伝『Footsteps of death』をよろしくお願い致します。


Page:1 2 3 4 5 6 7



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。