複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました！使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例）鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- Re Becca外伝『Footsteps of death』
- 日時： 2014/04/16 23:32
- 名前： ポンタ （ID: WeBG0ydb）
- 参照： http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=14982
初めまして、ポンタです。
今回はしゃもじさんの小説『Re Becca』の外伝として
私が投稿したオリジナルキャラクター『ヘルガ・ヴァーミリオン』を主人公にした
物語を書いていきます。
しゃもじさんにＯＫを貰っていますので、力尽きずに頑張って続けられるようにしたいと思います。
なお、この外伝はあくまで私、ポンタが執筆するものです。
『Re Becca』に登場する他の方のオリキャラは無断で使用しませんのでご安心下さい。
（というか、この話だけのオリキャラが結構出てくるのでそっちでイッパイッパイです……）
『Re Becca』本編へは↑
※注意
・本編の世界設定を可能な限り遵守しますが、執筆者が違いますので本編と食い違いなどが発生する場合があります。
（主にしゃもじさん、そうなったらすみません……）
短編に——と思いつつ書いているとどんどん文章が長くなっていき、
長編になるのが、私の作品の良くないところ……
未熟者ですので、読んでくれた方は出来ればアドバイスやコメント頂けると嬉しいです。
よろしく、お願い致します。
※※※※※※※※※※※※
——それはある国。ある場所で、
法外な金銭と引き換えにどんな相手でも、どんな病も治療する
裏の世界では『死の足音』と呼ばれ恐れられる女医者の物語。
三人の助手と共に今日もお仕事。
「私との約束さえ守ってくれれば、誰の命でも助けてあげる。ただし、もし破ったら……」
このメスはただ命を狩る為だけの道具になる——
キャラクター紹介>>27
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.1 )
- 日時： 2013/09/21 11:46
- 名前： ポンタ （ID: WiTA9hxw）
- 参照： http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
カビと埃のニオイが鼻につく地下室。
天井から釣り下がる裸の電球が頼りなく部屋を照らす。
木製の無機質な壁に響くBGMは野太い男の懇願の声。
中央にぽつんと置かれた古く安っぽい木製の椅子に腰掛ける男——ゴードン・ザレッグの悲鳴だ。
ゴードンは思い返す。今日まで……いや、つい数時間前まで自分は幸運の絶頂だった。
大きな取引を成功させ、カジノでも大儲け。いい女も抱いて、うまい酒も飲んで、仲間で大騒ぎ。数日前の大事故で死に掛けていたなんて嘘みたいだった。
これならクソみたいな神様の足にでも接吻してやろうかと思えるくらいイイ気分だった。
それが今では、どこかも分からない部屋で椅子に手と足を括り付けられ、目隠しをされ、さらに…………血を抜かれている。
「1.4リットル」
目の前にいるであろう方から女の声が聞こえる。
何故だ！？死んだはずなのに、殺したはずなのに、何で生きていやがる！？
「もっ、もうよせ！ヘルガ！！」
目隠しをされた瞼の裏に映るのは、忌々しい女医者の姿。
最後に見たあの女の姿は腰まで届く黒髪をバレッタで纏めて残りを垂らし。前髪の一房だけ白髪。瞳は緑。
服装はブラウスにジーンズ、ハイヒールと白衣。
——ヘルガ・ヴァーミリオン。
数日前、酔って対向車と正面衝突という大きな事故を起こした。
辛うじて命は取り留めたが意識不明、延命は出来ても治せないと、どんな医者もさじを投げた自分を法外な治療費と引き換えに地獄のふちから引き上げた女。
これまで稼いできた金が一瞬でパァになりそうな程の法外な金額の治療費。
ヘルガのこの世界での知名度は知っているし、腕の程も自分の体で実証済みだ。
女としてもゴードンの守備範囲に十分入る。
出来ればこの先も懇意にしたい相手だ。
仕方なく売れば同額以上になる『物品』で払ってやるとヘルガは怒り出した。
「ふざけるな！」「なめているのか！」と。
ヘルガは『金銭』で治療費を払わなければ、自分たちのことを警察にバラすとまで言って立ち去っていった。
こっちもそれで頭に来た。下出に出ていればいい気になりやがって。
ヘルガの乗った車に爆弾を仕掛け、その助手には手下を向かわせて殺した…………はずだった。
全てが上手くいったと最高な気分で眠ったはずなのに、目が覚めると拘束されて目の前にヘルガがいた。
状況が掴めない中、楽しそうに口元を歪めたこの女はいきなり銀色のメスで足を切りつけてきた。
その後、すぐに目隠しをされてからずっとこの状態だ。
「お、お前っ。医者だろ！」
「ええ。だからアンタの血をどれぐらい抜けば死ぬか、良く知ってるわ」
血——そう、今自分の足から血がゆっくりととめどなく流れている。生暖かいものが足を伝って流れ、下の方でピチャリピチャリと音を立てているのだ。
ヘルガは言った「お前の体重なら、このまま3リットル。血が無くなれば死ぬ」と。
「1.5リットル。あと半分」
「やめろっ！ふざけるなっ！！」
まるで遊んでいるかのように楽しそうなヘルガの声。
この状況から脱すべく、体を揺すりガタガタと椅子を動かす。
どうにかしてここから逃げ出したい。それだけだった。
だが、いきなり胸に何かを乱暴に押し付けられる。強く胸を圧迫され一瞬呼吸が出来なくなった。
この固い感触はヘルガのハイヒールだ。
「……私。言ったわよね？」
唐突に楽しそうなものから氷の様な冷たい声色に変わり、ゴードンはびくりと肩を震わせる。
「金さえ払えば誰であろうと治療はする。死体でなければきっちり治す。ただし——」
足が離れ、ギシリと椅子に座る音がする。
「報酬はコチラが指定した支払方法を厳守すること。治療や私に関する一切には手を出さないこと」
「アンタ等は見事に契約違反してくれたわ」。その言葉で背中に冷たいものが走り、心臓の鼓動が煩い程に高まる。
「即払いできるなんて息巻いていたわりには、アタッシュケースの中身が札束の替わりに袋詰めの覚せい剤」
また椅子がギシリと音を立てる。
今度は何をするんだ！？
「ちょっと小突いた程度で私の車に爆弾を仕掛けてくるわ。挙句の果てには私の助手にまで手を出してくれて……」
生唾を飲み込む。汗が首筋を流れる。顎が震えて歯がかち合うのを止められない。
何でもいい！死にたくない！
「頼む！金も払う！何でもする！だから、たす」
「助けない。アンタをこの場から開放する理由が無い。……おっ、もう直ぐ2リットル」
体中の血の気が一気に下がって行くのを感じた。
なのに心臓の鼓動はさらに脈打つ間隔狭めて、口から出てきそうな勢いだ。
呼吸を繰り返しているのに、すればするほど息苦しくてたまらない。
何も考えられない………。
「ちくしょーーーーーーーーーーーー！！！！！！！」
咆哮するゴードン。この叫びもまた誰にも届かない。
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.2 )
- 日時： 2013/12/12 21:47
- 名前： ポンタ （ID: WnNKWaJ3）
- 参照： http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「…………………………………………………………………………………………ん？」
いつの間にか静かになったことに気付き、ヘルガは雑誌から顔を上げる。
先程までガタガタ喚いていたゴードンが、ぐったりと項垂れて大人しくなっていた。
しばらくそのまま様子を見る。
全く動かないのを確認すると、椅子から立ち上がり静かに近づく。
髪を掴み上げて乱暴に引き上げると、白目を剥いて口から泡を吐いていた。
首筋に指を当てて脈を計るとピクリともしない。死んでいる。
ピチャリ……、ピチャリ……
ふと足元を見ると無情にも水音が等間隔で流れ続けている。
（いや、コレに情も無情も無いか）
しゃがんで始めに切りつけたゴードンの足を探る。
ズボンを捲ると既に血の止まっている切り傷とその近くにテープで止められた細いチューブ。
剥ぎ取ったチューブから流れ出るのは赤でもなければ鉄くさくも無い、言ってしまえば透明でカルキ臭いもの。
つまり、これは水道水。
否、ただの水道水ではない。バレないようにご丁寧に人肌温度にしたものを使ったのだ。
ゴードンのつま先付近には、彼が自分の血が溜まっていると信じていた——このなんちゃって血液を溜めた容器。
目盛りを覗き込むと2.2リットルまで溜まっていた。
「まっ、この程度か」
特に何かを期待していた訳でもない。
この男の死に関しても何も感じない。
次に考えるのは後始末だ。
ヘルガはチューブも容器もそのままに、床に置いた黒鞄を持って部屋を後にする。
部屋を出て歩く廊下は無駄に長く、だだっ広い。
ゴードンはパニックで自分が何処にいるか分かっていなかった様だが、なんて事は無い、ここは彼が所有する屋敷のひとつだ。
廊下が廊下なだけあって屋敷も相当広く、使用人や部下も随分な数がいた。
全く関係の無い使用人たちを屋敷の外に出す面倒な役を助手に任せていたが、床に転がって息絶えている連中を見る限り上手く言ったようだ。
ふと廊下の大窓の前で足を止める。
窓の外は静かな夜の帳が下りて、月が薄笑いを浮かべた唇の形をしていた。
（一体誰を見て笑ってんだか）
そんな馬鹿なことを考えていると、ツンとガソリンの匂いが鼻を突く。
どうやら助手が手筈の最終段階へ移った様だ。
待たせてはいけないと足早に玄関に向かい、これまた無駄にデカイ扉を開けると全てを終えた助手がレンタカーと一緒に待っていてくれた。
「先生」
「ごめんね。待った？」
「いえ」
「仕上げはやるから。先に乗ってて」
「分かりました」
淡々と話す助手は大人しく車に乗り込み、エンジンをかける。
ヘルガは振り返り、ポケットから紙マッチを取り出す。
そして、屋敷を見上げて一言。
「趣味は悪いけど、眺めは合格かな」
指先でマッチに火をつけるとそのままエントランスへ放り込んだ。
床に付いた小さな火は屋敷中に撒かれたガソリンの力を借りて、瞬く間に燃え広がる。
取り合えず目の前がある程度炎に呑まれたあたりでヘルガは身を翻し、助手の待つ車へ乗り込む。
屋敷を後にする車の中で小さく欠伸をすると、明日の朝食の献立は何にしようかとヘルガは考えるのだった。
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.3 )
- 日時： 2013/07/19 00:17
- 名前： しゃもじ ◆QJtCXBfUuQ （ID: FvJ38Rf9）
うわお！ もうサイドストーリーが！ 圧倒的感謝・・・・！
作風もなかなかブラックでいいですね。先生のハイヒールを食らいたいです（変態
設定の矛盾なんかは崩壊しない程度でいいかと。ちなみに私の脳内設定ではヘルガ姉さんは表向きは時々しか開かない耳鼻咽頭科の先生やってます（←
- Re: Re Becca外伝『Footsteps of death』 ( No.4 )
- 日時： 2013/07/19 21:43
- 名前： ポンタ （ID: t3n5DtaJ）
おお！！
しゃもじさん、来てくれてありがとうございます！
他にも見に来てくれた方もいますし、さすが「Re Becca」人気ありますね！
私も皆さんに楽しんでもらえる様にがんまります！！