複雑・ファジー小説
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- Vivo
- 日時: 2015/02/19 11:40
- 名前: 極秘事項 (ID: fd9gqfc4)
一匹の少女と二つの派閥を巡る小さな戦い。
/新着情報
最終話の更新
完結しました!ありがとうございました。
/こんにちは、極秘事項と申します。クリックありがとうございます。
普段は他の名前で同人関連で活動していますが、
ベースとしてる話の事情で本当の名前を晒すことが出来ないのです。
ごめんなさい。
楽しんでいただければと思います。
オリキャラ募集は終了しました。
ご協力ありがとうございました!
- Re: Vivo ( No.7 )
- 日時: 2015/01/25 12:12
- 名前: 極秘事項 (ID: QT5fUcT9)
第五話 バー『クロガネ』
「ヴァローニャ、結構有名だけどあれでもやらかしてるんだよ。
私の店で働いてた子はねえ、パーティ会場でワインを零しちゃったんだけど床の代金払わされたあげくに誘拐されちゃったからね。戻ってきたけど、傷だらけで。
でもまだパーティには行ってるみたいだ。」
ヴァローニャはとにかく色々なことを影でやっていたようだった。
新聞のインタビューでは機械のネジを作る工房で働いている弟を見下し、パーティが近所迷惑だといわれていても会場はいつまでもあの場所で行われている。
ナイトのようにヴァローニャはおかしい、と思っている人間はいるのだなと思った。
私やあの噴水にいた人達のように、おかしいと思っている人が。
「おお、ナイトじゃんか!どうした?今日は特別営業か?」
扉が開き、一人の男がやってきた。
「僕、休むときは休むんだけどな?どうしたんだい。
いつもは夜にしか来ないのに。」
「いやあ、それがさあ、ヴァローニャのことなんだがな。」
痩せ型の少し優しげな顔をした男が入ってきた。もう1人、無言なまま無表情な少年がやってきた。
どちらも常連さんのようでナイトは快く迎えてくれた。
周囲にはぷかぷかとクラゲのような物体が増えていた。
「ヴァローニャ?君、そういえばヴァローニャのパーティで運営を手伝っているって聞いたけど。どうしたんだい?坊ちゃんもこんにちは。君も同じような話をしに、かな?」
「アイツ、結構やらかしてるぞ。知り合いから聞いてな。」
ナイトはお酒はないけれどもと言いながら、2人にコーヒーを注いだ。
男は口を開く。
「ナイト、言うんじゃねえぞ。ヴァローニャは女癖悪くてなあ、実は結構二股とかしてるみたいだな。もう何度かヴァローニャは女を怒らせてるよ。俺、見たもん。別の国で女がアイツについて大声で愚痴ってたよ。」
「あーあ、やらかしてるねえ。坊ちゃんはどうだい?」
少年は衝撃的なことを言い出した。
「アイツら、殺し屋かもしれない。」
「えぇえっ!?」
「大げさな言い方をしてしまってごめんよ。今日、オリンって女が殺されかけた。結構重症みたいで……王国を抜け出そうとしたらしい。
でも、僕は見たんだよ。オリンが襲われているところを。」
「オリンちゃん!?」
私は休憩所から出てきてしまった。
男と少年は私にびっくりしていた。
しかし、少年は言葉を続ける。
「オリンはどうやら秘密を抱えていたようだね、それも血液に。
彼女、二匹の吸血蝙蝠に襲われていたんだ。だから見つかった頃にはもう体内にほとんど血液が残っていなかった。」
「まさか……。」
「何か気がかりでもあるのかな、お嬢さん。」
男の言うとおり私には気がかりが1つあった。
何故か秘密を知っていたヴァローニャが怪しいように思える。
そして、オリンの正体。
「彼女の正体だよ。ヴァローニャはそれを知っていたが故に、何かが気に入らなかったオリンちゃんを襲ったのよ。
彼女は……。」
「彼女は?」
心臓の鼓動が高まる。
あまり言いたくはなかったが、この人達は言わないだろう。言ったとしてもきっと良い意味で使ってくれると思った。信頼を感じていた。
「あまり言わないでね。オリンちゃんは不死身の姿をした人間なんだ。不死鳥とは違う。昔、薬品とかの影響でそうなったんだと思うんだ。」
「オリン……そうか、ミカラギちゃんの友達だったのかな?」
ナイトが問うと、私は頷いた。
その後もヴァローニャの話題が続いたが、ナイトは決して私のことを言わなかった。
オリンちゃんのことには泣きそうだったが、どうにも泣けなかった。
2人が出て行くと、ナイトは私に告げた。
「もしかすると、ミカラギちゃんを狙うかもしれない。ヴァローニャは思ったよりも嫌な奴だよ。」
「私を……。」
私は少しだけ考えた。このままではまた蝙蝠にやられてしまうかもしれない。ヴァローニャもきっとオリンちゃんと同じような秘密を抱えた私を狙う。
私はこの国から出て行くことを決意した。
ナイトもそれを聞き、手伝うことを約束してくれた。
「でも、私が捕まってしまえば、ナイトも捕らえられるかもしれません……。」
「もう、ヴァローニャには目をつけられててもおかしくはないよ。それにいいことがある。」
「いいこと?」
「お祭りだよ。」
続く
- Re: Vivo ( No.8 )
- 日時: 2015/01/25 16:23
- 名前: 極秘事項 (ID: QT5fUcT9)
第六話 マノン
「お祭りをやれば、ヴァローニャも誰も気がつきはしない。気づいたとしてもほんの少人数だからミカラギちゃんも逃げることができるよ。」
「でも、一体誰が主催をやるの?」
「僕にそこは任せて!おすすめの人がいるんだ。彼はヴァローニャよりもパーティの主催経験とかが多くてね。とてもいい人なんだ。」
私はナイトに色々と任せることにした。
次の日、また街へと向うとバー『クロガネ』は少し騒がしくなっていた。
どうやらヴァローニャやパーティのことについて話しているようだ。ほとんどの人の口調はかなり荒い。
「あいつ等、本当にうぜえんだけど!
ヴァローニャとワンのことをいいように言わないとパーティから追い出すとか言うんだぜ!」
「ヴァローニャの特製ジュースはみんな飲まないとダメみたいなこと言われて、私すごく戸惑っちゃったわ!」
「私なんかパーティの手伝いをしたらお金がもらえるとか言われて一銭も貰わずに、今じゃあ文句垂れてたことバレてパーティからは追放よ!?」
ナイトはその人達の言っていることに関しては冷静な態度をとっていた。
私はバーの隣の空き家に座り込んだ。ここはもう駄目なのかもしれない。『コロッセオ』はもう倒れかけているのかもしれない。内部はいつ崩れていてもおかしくはない。
「『コロッセオ』はもう駄目なのかもしれない。それに真正面からつっこまない国民も、気づかない国民も……もう全てが荒れているみたい。嗚呼、どうしよう。」
「何してるの?ミカラギちゃん?な、泣いてる……!?」
リンネが私に駆け寄ってきた。
どうしようもない状況に戸惑う私は、リンネに来ないでとだけ言った。
このまま慰められるなんて、弱弱しいマネはしたくない。
「来ちゃだめなら来ないけれども……私、いつでも味方になるわ。大丈夫よ。」
いつのまにかバーは落ち着きを取り戻していた。
私は店に入ると、ナイトに出入り口で止められた。
「お祭りのことは任せて。でも、ここには居ちゃいけないよ。会場に近いし、ミカラギちゃんはよく見ればまだ酒も飲めないっていうじゃないか。子供を入れることは出来ないよ。」
「そ、そうですか……。」
そういわれては仕方がない。私は翼を広げ、森へと戻った。
森ではヴァローニャに関して大変な騒ぎになっていた。
ヴァローニャの考えについて異議を唱える人が増えていたのだ。
もちろん、ミルキィもその1人であった。何故か、マノンだけはパーティについて悪いようには思えていなかったようだが。
「ミカラギ、私ね、いつかこの本を書き上げるわ。彼のこと、国で起きたことを、私は記していきたいの。」
「そう……。」
「どうしたの?」
私のいつもとは違うテンションの低い反応にミルキィは心配そうな表情をした。
マノンも私のほうを向いていた。これは言わなければいけないのだろうか。
「お祭りがあると思うんだけど……。」
「お祭り?ああ、知ってるよ。あの有名なパーティ『ダイヤモンド』運営者L・エリンギが主催のやつでしょ。あれなら、明日だけども……どうしたの?」
「明日!?」
私はお祭りをやると言われても日にちは聞いていなかった。
いつのまにかもうそんな日に決められていたのか。とても驚いた。
「私、明日になったらこの国を出るよ。」
2人は少し驚いたような表情をしたが、すぐにミルキィが私に問いかけた。
「どうして?どうかしちゃったの?この国はこんなにもすばらしいのに。」
「……疲れちゃった。他のところへ行きたいんだ。」
「確かに、たまには旅に出たくなるよね。私もいつか別の国に行ってみたいから、気持ちは分かるよ。」
私は2人に納得してもらい、このことを秘密にすることを約束した。
2人は明日がお祭りだというのに荷造りを手伝ってくれた。おかげで夜になる前に私は荷物を整理し終えることが出来た。
「ありがとう。夜にはこの国を出るよ。」
2人はパーティやヴァローニャのことを知っていたとしても、他のことは知らない。『コロッセオ』が本当に崩れかけていることをきっと知らない。
細かいことはあまり語らずに出て行こうと思った。
次の日になり、私とミルキィ、マノンは雇った小さな馬車に乗ってお祭りへと向った。
「おお、ようこそ!これはこれは、ミルキィさんではありませんか!いつも、貴方の本を読んでおります。私、ファンなのです。」
「ありがとうございます。」
ミルキィは時折呼び止められた。ファンは結構いるようで、私もマノンもそれを見て顔が綻びそうになっていた。
昼ごはんにはナイトが出店していたお店で伝統的な料理を食べ、歌や踊りに皆で楽しんでいた。楽しんでいると、この人達全員を憎むわけにはいかないと思えた。しかし、ヴァローニャが私の正体を知っているのならば、きっと狙われる。逃げなければいけないのは確かだった。
そして、夜になると来客者は全員ヒートアップしていた。外に店を出していた人達もお祭りに夢中だった。
「そろそろ、行かなくちゃいけないよ。」
「うん。分かった。気をつけて、ミカラギ。」
ミルキィに途中まで見送ってもらった。
お祭り会場の周囲は静けさを保っており、パーティ会場の近い路地裏のようだった。
走っていくと、国の出入り口が見えた。此処は国境であり、出入り口とも呼ばれる場所であった。
ここから出れば、きっと……。
翼を広げようとした時、一匹の蝙蝠がやってきた。
「ミカラギちゃん、生きてたんだね。また、吸われて気持ちよくなんない?
僕、この前はじめて君の血液を吸ってから、もう虜なんだ。君もそうなんだろう?」
「ライヒ……!?」
ライヒは私のほうへ飛んでいこうとした。しかし、それは拒まれる。
私の目の前にはナイトが立っていた。片手に持っているフライパンがふらふらと浮き上がり、ライヒの頭を叩きつけ始めた。
「い、痛い!やめろ!やめろおっ!」
「お前みたいな奴はこうなってればいいんだよ!クズ野郎!
……ミカラギ!早く逃げろッ!」
フライパンの他にも鏡や化粧道具などがライヒを取り囲む。
私は国の出入り口を抜けた。
「で、出れた!」
安堵の溜息をついた瞬間だった。
「そうかなあ?お前、本当に鈍感だな。」
どこかで聞いたことのあるような声に背後を振り向けば、1人の男が立っていた。
続く
- Re: Vivo ( No.9 )
- 日時: 2015/01/26 15:47
- 名前: 極秘事項 (ID: QT5fUcT9)
第七話 ヴァローニャ
「ヴァローニャ……!」
「俺はアイツみたいに吸ったりはしないよ?不死鳥の血液は酷く苦いと聞くからね。でも、お前が違うヤツだってことはもう知っている。だから、俺は……地獄に連れてってあげよう。」
ヴァローニャは怪しげな笑みを浮かべた。
私に向けての敵意が心を貫いた。後悔と怒りが私に涙を浮かばせた。
パーティに参加したばかりの頃はこんな感情ではなかったはずなのに。何故、自分がこんなところにいるのか、分からなくなりそうになった。
「地獄?」
「お前がどう思うか次第、だけどな……?」
ヴァローニャは笑い声を上げながら、私の前から消えてしまった。
暗くて何も見えない道をぼうっとしながら歩いていくと、小さな田舎町にたどり着いた。
かなり寂れており、誰もいないようだ。
私は地獄という言葉を気にしていたが、眠気がそれに勝っていた。
小さな小屋の扉をノックすると、誰もいない。
私は小屋の扉を開けてすぐにあったソファを借りて眠り込んでしまった。
しかし、それが地獄への道だとはまだ、分からなかった。
目覚めると、やけに体が重たい。
よく見ると、体中に血液が吸われた跡が残っていた。
さらに、吸われた快感の影響で涎が垂れているのにも気がついた。
すぐに冷静になろうとするものの、何処に蝙蝠が隠れているのかは分からない。
けれども、何だか気持ちいい。もう少し此処にいたいかもしれない。という感情がよぎった。
確かにここは地獄だろう。吸われる量が多いほどに私は死んでしまう確立が高まる。
「でも、快楽にハマってもいいのかもしれないね。」
私は小屋から出ると、木の実をたくさん食べた。
また眠ろうとすると、一匹の蝙蝠がやってきた。
「やあお嬢さん。君、変わった鳥だねえ。でも、とても美しいよ。君のを吸ってもいいかい?」
「……うん、いいよ。」
私はパーティではなく、蝙蝠に吸われる快楽にハマりこんでしまっていた。
毎日のように蝙蝠達に血液を吸われていく。
でも、そのほうがいいのかもしれないと思えた。
ミルキィは小説家、マノンも実は歌の神様の末裔として崇められている。けれども、私は秘密を抱え、何も出来ないままだった。
今では蝙蝠の役に立っている。誰も私の秘密に触れたりはしない。
私は気分がよくて仕方がなかった。毎日がまた楽しく思えた。
日が経つにつれて、私は蝙蝠の数が減っていくことに気がついた。
小屋から出ない毎日を過ごしたからだろうか、窓の外から異臭が漂ってくる。
窓を開けてみると、大量の蝙蝠の死骸があった。
「う、ウソ……!?」
この異臭には我慢が出来ず、私は飛び立とうとしたが、なかなか起き上がることが出来ない。血液不足の影響がもう生命に関わるほどのものになってしまった。
私はあまりのショックに力なく泣き出した。でも、まだ快楽がほしいとも思えた。
「どうすればいいんだろう……もう、ダメかもしれない。」
意識がだんだんと薄れていく。
あんな快楽に惑わされなければよかった。もうダメだ。しんでしまうのだろう。
後悔と悲しみに包まれながら、私は意識を失った。
起き上がると、またあの小屋……ではない場所にいた。
やけにぐらぐらと地面が揺れる。地震の国に来てしまったのだろうかと思えた。
しかし、どうやらそれは少し違うらしい。
「あれえ、起きたの。貴方、綺麗な鳥……しんでしまっていたのかと思ったよ。もうかなりの時間を眠りに使っていたのよ。」
「えっ……ここは?」
「ここは馬車の中だよ。私達、サーカスをやっているんだ。三人だけだけども、機械が全部やってくれるからね。貴方、一年も眠ってて……何かあったの?」
どうやらサーカスの移動中の馬車の中にいるらしい。
一年も眠ってしまうほどのリスクを背負ってしまっていたとは思わなかった。
私はその人に急いで、今までに起こったニュースなどを伝えてもらった。そして、どこで私を拾ったのかも言ってもらった。
「貴方のことは小さな小屋に倒れているのを見かけたんだけど……あそこ、やばいよ?あんな危険なところで寝ているとたいていは死ぬからね。」
「そうなのですか……。でも、一年間もありがとうございます。」
「いいの、いいの。これも何かの縁だからね。あ、私の名前はL・ヨツバっていうんだ。よろしくね。」
灰色に染められた髪の毛が一つに縛られており、とてもしっかりしたような見た目をしていた。
その反面、ふわふわとした感じの口調をしている。
「L……?貴方、クラウンキングダムにいたの?」
「そうなの。でも、今はたまにしかいないからよく分からないんだよね。あそこらへんのこと。」
ヨツバと話していると、扉が突然開いた。
2人の女の子が私を見て、びっくりしたような目をする。
2人ともとてもかわいらしい姿をしている。
「わああっ、起きたんだ!眠り姫でしょ!眠り姫!」
「こらっ、落ち着いてタイガー!びっくりしてるでしょ!って、貴方人間だったっけ!?」
いつのまにやら私は人間の姿をしていたようで、一緒に話していたはずのヨツバもびっくりしていた。
でも人間の姿でいるのはとても久しぶりのことだった。もしかすると、気が緩んだのかもしれない。
「はじめまして、あたしはL・タイガーだよ!眠り姫でしょ?とても素敵ね。」
元気そうな少女は私に微笑んだ。
短めに切られた髪の毛が元気さをより増してくれているような気がした。
「私はJ・リリアよ。どうぞ、よろしく。」
礼儀正しく、三人の中でも飛びぬけて可愛い少女は私と握手をしてくれた。化粧で肌は白く染められて、目が瞬きする度に星が出てきそうな感じがした。
にこやかな笑顔は男を何人殺すだろうか、と考えそうになるくらいだった。
「……よろしくお願いします。わ、私はL・ミカラギです。助けてくれてありがとうございます。」
「ねえ、ミカラギさんは眠り姫なの?ねえ?」
「こらっ、何言っているのよ。」
タイガーの発言を2人は止めようとするものの、いつまでももやもやさせても仕方がないと思えた。私は正体を言うことを決めた。
「私は……私は不死鳥なんです。
多分、一年間眠ったのは、普通の人間でいう『死』という現象だと思います。」
「へええ!凄いね、ミカラギさん!」
「死、かあ……。」
「ミカラギさんの正体を私達が知っちゃって大丈夫だったのかな?でも、悪い人が知ったら貴方の血液はいろんな人に狙われるのよね……私たちはあなたのことを悪いようにはしないわ。」
私は三人と約束として握手をした。
「私達、あなたのことを守ってあげる。ね?タイガー、リリア?」
「任せて!あたし達サーカス団『ウィンクキラー』にっ!」
その言葉に私はこくりと頷いた。
そうして、私と愉快なサーカス団『ウィンクキラー』の冒険がはじまったのだ……。
続く
- Re: Vivo ( No.10 )
- 日時: 2015/01/26 17:28
- 名前: 極秘事項 (ID: QT5fUcT9)
第八話 ヨツバ
サーカス団『ウィンクキラー』は三人だけでやっている小さな見世物小屋のようなもので、全てを機械がやっているらしい。
ほとんどの機械は三人で協力して作ったものであり、今でも複雑な技巧を凝らして演技用の機械を作っているようだ。
移動方法である馬車も機械の馬を作り、砂埃や水に負けない装置をつけている。馬車小屋は木製のものだが、機械を作るための工具や材料で底が抜けないような木を利用している。
私は小さな馬車小屋の揺れが止まったことに気がついた。どうやら休憩のようだ。外へ出ると、見知らぬ草原が広がっていた。リリアは大きな絨毯を広げると、タイガーはコーヒーを注ぎ始めた。
「リリアはとても美しいでしょう?でもね、こういう機械を作るのが元々大好きだったのはリリアなのよ。私も好きなんだけどね……でも、リリアには負けちゃう。」
「そんなことない!リリアもヨツバも上手だよ!でも、みんなで作った機械が一番好き。」
「まあまあ、タイガーったら。タイガーはね、元々もっと大きな町から来たんだけど、クラウンが大好きなの。それから……私達をたくさん守ってくれる。彼女は武器の名手なのよ。どうしてなのかは言ってくれないのだけど……。」
「タイガーはきっと貴方のことを守ってくれるわ。もちろん、私達も色々なところに行ったから、戦闘技術もまあまああるけども。貴方も何かできるの?」
そうリリアに問いかけられながら、コーヒーを貰った。
とても苦いコーヒーだったが、体にしみこむようだった。
「何も出来ないのです。武器を持ったことが全くないので。あ、でも、空は飛べます。」
私は久しぶりに翼を広げた。三人の看病のおかげが、翼には一つも吸われた跡がなかった。
三人は翼に唖然としていた。
翼を羽ばたかせると、私は空へと飛びだしていった。
「凄い!凄いね!」
「でも、それじゃあ、秘密を知っている人にはバレバレよ?」
タイガーは興奮したような口調だったが、リリアは冷静そうな目で私を見ていた。
「でもきっと何かに使えるはず。どんなボロボロの素材でも私達は生かしてきたじゃない?」
ヨツバに言われた一言で私は安堵した。
地面へと降りると、三人は拍手してくれた。
「いい能力を持っているのね。」
人間の姿に戻ると、タイガーは昼ごはんのパンをくれた。
長持ちしやすいように肉や魚はだいたい漬けてあるものや特別な調理方法をされているものがたくさん挟んであった。
三人は私のことを聞いてきた。家族のことや、不死鳥であることについて……他にも多くのことを質問してきた。
「とりあえず、今のところ、クラウンは少しだけ危ない場所になっているのね。」
「でも確かに私達、クラウンへ行ったとき、様子がおかしかったよね?」
「そうそう。なんかの……んー、ミカラギさんの言っていたパーティ会場について悪いことを言うと、黒い服の人達に乱暴されるって聞いたんだ。」
「そんなに酷くなってたの……!?」
私は驚いた。他にも、人を選ぶためなのかパーティへ出席しようとする人に黒い服の人達が襲撃をしかける、パーティの主催者が借りたお金は返されないまま音信不通、女性問題等など……。数々の問題が降り注いているパーティ会場『コロッセオ』はいまでもパーティを続けているようだ。
「多分これをクラウンで言ったら、私達は傷だらけになっちゃうわ。」
「でも、あの会場の近くのバーじゃあ、陰口ばっかりよ。私、気分悪くなっちゃったもん。」
「このままじゃ、パーティが壊れちゃう!楽しいことが嫌になるクラウンなんて嫌だ!」
「でも、私達で何か出来るのかしら?」
三人は少し考えて、一斉に頷いた。
ヴァローニャのように有名な男がすぐに消えるようなことはない。
ただ、三人は少し自信を持っていた。
「あんなに陰口言ってるもんねえ。協力してくれるって。」
「私達、いいこと思いついたの。また、クラウンへ向いましょう。サーカスをするのよ。」
「演技は私達にまかせて!ミカラギさんみたいに苦しんでいる人達を笑顔にしなくちゃ!」
「でも、武器は使えなきゃいけないわ。自己防衛は大切だもの。」
タイガーは自分のお古らしい大きな弓矢を差し出した。
草原の真ん中のほうへヨツバは連れて行った。どうやらここで練習をするらしい。
「私達には武器を使えるロボットはあるけれども、緊急用だからあまり使わないの。だから、ミカラギには弓矢の使い方を教えるよ。まずは構え方ね……。」
私はヨツバと弓矢の練習をはじめた。案外難しいが、ヨツバの教え方がいいのかすぐに分かることのほうが多かった。
2人はいつのまにやら小屋に戻り、何かをしているようだ……。
—クラウン某所にて。
赤いふかふかのソファがいくつかおいてあるだけの部屋。
周囲には数々の写真やCDがちりばめてあった。
そこに何人かがソファに座りはじめた。
中央に座る男はゆったりとくつろぎながら、天井を見つめた。
「いやあ、楽しいなあ。ここは俺の王国みたいで。」
「なあに言っているんですか。」
「ん、いや?」
1人の黒ずくめの男にワインを注がれた男は一気に飲み干した。
「ワンがいなくても、俺は生きていけるさ。そうだよな、フリージア?
君がいるから、ね。」
1人の黒ずくめの女が男にキスをすると、周囲は拍手とちいさな歓声に包まれた。
「今度の曲は俺と2人で歌うんだよ。
……ああ、そういえば。弟が借金しちゃって、もう金がほとんどないんだよ。貸してくれるかな、フリージア。」
女は黙って頷き、財布からお札を数枚抜き、男に渡した。
男の顔は歪んだ三日月のような目になった。
入り口の近くにいた1人の女が何かいいたげな顔をしたが、男は何も問わなかった。
「おお、これは……?」
1人の黒ずくめの少年が1枚の紙を渡した。
それには
「サーカス団『ウィンクキラー』……再び参上!
機械達のダンスや演技、キケンな綱渡り等!
きっと楽しい夜となるでしょう。
そして、三人の美女が貴方を迎えることでしょう。」
と書いてあった。
「ヴァローニャ、どうする?これ、行くかい。俺は面白そうだと思うが。」
中央に座っていた男、ヴァローニャは黙って頷いた。
「そうだな。行こう。あ、報告。報告はどうした?」
「忘れておりました。ヴァローニャ、L・リンネに怪我を負わせることが出来ました。それから、S・ナス L・ルードリヒ を殺害しました。」
よく見れば、男の持つ刃物には朱の跡が残ったままだった。
このグループは怪我をさせるだけではない異常な集団となっていた。
「ヴァローニャ……?」
「いや、なんでもない。ただ、このサーカスには気をつけろ。何か匂う。」
「何故でしょうか?」
先ほど紙を渡した黒ずくめの少年が問うた。
ヴァローニャはふっと鼻で笑った。
「このサーカスはこの前来たばかりだ。おかしいとは思わないか。しかも、サーカスのメンバーの1人 L・ヨツバが俺達を悪く言うバーにいたからね。
今回のサーカスで何かあれば、L・ヨツバを狙うんだ。いいな?」
黒服を纏った全員が一斉に立ち上がり、頷いた。
そして、ヴァローニャが解散、と一言だけ言うと数少ない照明が消された。
続く
- Re: Vivo ( No.11 )
- 日時: 2015/01/26 17:54
- 名前: 極秘事項 (ID: QT5fUcT9)
オリジナルキャラクターを募集します。
(このままだと、この話のベース通りに物語が進んでいきそうなので。)
多分、何もない限り(情報不足のキャラ以外)は採用すると思います。
ご協力、よろしくお願いします。
ここで、第九話からの設定を書いておきます。
>>002 以外の世界観
/「コロッセオ」側の集団 『F O X』(これ以降はフォックスと呼ぶ)
ヴァローニャがリーダーである過激派集団。
「コロッセオ」のことを悪く言えば、彼らに襲撃されるともいわれている。
/「コロッセオ」側ではない集団について
バーにいて彼らの陰口を言ったり、フォックスに追われていたりする者達。またはヴァローニャの言動で傷ついた者達。サーカス団『ウィンクキラー』もこれに含まれる。
/『F O X』に参加していないものの、「コロッセオ」で行われるパーティに参加する者達
「コロッセオ」側ではあるものの、過激な言動は起こさない。この中にはヴァローニャを崇拝する者も数人いる。登場人物であるマノンがその1人。
/サーカス団『ウィンクキラー』
機械でサーカスを行う。三人の美少女(?)だけがメンバーである。
今現在は誰も雇うつもりはないようす。
オリキャラ応募について。
・1人につき3人まで受け入れます。
・『ウィンクキラー』のメンバーは受け付けていません。
・必ず ●・△△△△ というような名前にしてください。(●は全角英字一つを入れるのみ。△△△△はカタカナの名前で、何文字でも構いません。)
オリキャラ募集用紙
名前【 】
性別【男・女】
大人か子供か【大人・子供】
性格【】
容姿【】
どのような立場であるのか(例:フォックスに所属)【】
持っている武器・能力【】
その他【】
サンプルボイス「」
「」
「」
よろしくお願いします……!