複雑・ファジー小説
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- BAR『ポストの墓場』
- 日時: 2017/02/22 03:00
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 0L8qbQbH)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=685
【店内に掲示された看板より】
ご来店のお客様へ
大変お待たせ致しました。BAR『ポストの墓場』は16/9/20より新装開店となります。諸般の事情により前倒しの開店となり、何かと準備不足の目立つ開店となったことを此処にお詫び申し上げます。
保管されたログを閲覧される場合は付近のフロアスタッフにお申し付け下さい。該当のログをお客様の元までお持ち致します。
上記URL内にて行っていた、当店フロアスタッフ・バーテンダーの募集は16/9/22を以て一旦締め切りとさせて頂きます。ご応募ありがとうございました。
現在ログとして保管してほしい文書・データの受付準備を進めております。しばらくお待ちください。
BAR『ポストの墓場』 店長
***
【店内に掲示された注意書き】
・ あるログについて「前後の話はないのか」とお尋ねされることが時折ありますが、当店で閲覧できるログは店長の能力で回収・解読が完了したもののみです。当該時系列以外の時間におけるログの回収・解読について努力は続けておりますが、保証は致しかねます。ご了承ください。
・ 基準世界線以外のログは、原則として基準世界線(1-1-1)の言語に翻訳されています。翻訳には細心の注意を払っておりますが、時折意図した文意と齟齬する/翻訳時に誤字や脱字する等のミスが生じることがあります。そのような文を発見した場合は御申しつけ下さい。速やかに訂正させていただきます。
・ 売名としてのログ保管は受け付けておりません。また、喧嘩/誹謗中傷/あまりにも長時間の雑談等、他のお客様の迷惑となるような行為が見られた場合、退店して頂く場合がございます。
***
【ログ保管庫】
※はじめにお読みください。
Log 00000-N 『店内情報一般』★
>>1
Log 00001-N 『前身:繰り返された歴史の遺物』★
>>2 >>3 >>4 *>>5
Log 00002-N 『第一種警戒令:iso-ha関連文書』★
>>14 >>15 >>24
Log 00008-N 『個人宛の手紙(譲渡予定なし)』★
N/A
Log 00009-N 『個人宛の手紙(譲渡予定あり)』★
N/A
Log 00010-N 『一時預かり記録』★
N/A
Log 00287-N 『門出』 《→8》
*>>6 >>7 *>>8 *>>9 >>10
Log 00489-N 『暗澹』 《→6000》
>>16 *>>17
Log 06000-N 『自戒:回避可能な崩壊について』★
>>18 >>19 *>>20
Log 09956-N 『名にし負う:『神曲』関連文書』☆
>>11 >>12 *>>13
Log 26588-N 『光輝:回避された崩壊について』★
>>21 >>22 >>23
***
- Re: BAR『ポストの墓場』 ( No.21 )
- 日時: 2017/02/23 07:24
- 名前: 月白鳥 ◆8LxakMYDtc (ID: 0L8qbQbH)
【Log 26588 : 世界線1*-5*-6*で回収された魔導書-序文】
親愛なる師と、友と、家族に、これを捧ぐ。
かつてこの世界が『ヤミ』なるもので溢れていたことを、我々はまだ憶えていることだろう。昼も夜もヤミに怯え、様々な灯りに依存して暮らしていた頃を、先の見えぬ暗闇を四六時中覗かねばならぬ恐怖を、我々はまだその身に思い出せることだろう。
そのヤミに再び怯え暮らす者が、これから先全く消えてなくなることを、またあの恐ろしさがいつか伝承や単なるお伽噺に語られる教訓としてのみ残っていくことを願い、私はこの書を記すこととする。
この書に記した魔法は、かつて——ヤミが世界を覆う前——利用価値なしとして忘れ去られていったものである。しかし、今からこの書を読む諸氏には、これら魔法が利用されなくなった理由がいささか想像しがたいものであろう。
何故、この書に記された魔法が利用価値を喪っていたのか。その最も大きな理由が、その単純さにある。
これらはあまりに基礎的なものだ。それは行使が簡単である代わりに、著しく応用力に欠け、殺傷力など望むべくもないことを示している。こうした応用力、殺傷力の欠如は、これらが制定された時代に於いては致命的な弱点であった。
当時の世界は戦争と闘争に塗れており、より簡便に、より残虐に、相手を圧倒する手段として魔法が求められていたのである。此処に示されたものにそれがないことは、これから明らかになるだろう。
激烈さを求めた果てにこの世界があり、かつて捨ててきたものが世界を救う。
これを私は皮肉と言わざるを得ない。
私は失われたものを拾い上げ、寄せ集め、誰にでも扱えるようにいくつかの再編を行った。殺傷力は依然皆無に等しく、しかりより応用性に富むよう、種々改変を施している。この論書を読み終わるとき、得られた知識は、必ずやその身を助けるものとなるだろう。
しかし、忘れてはならない。この書に示した魔法は、極めて広い応用が可能である。生活を豊かにすることも、人々から豊かさを奪ってしまうことも、果てはこの世界に再びヤミを撒くことも、論書の“応用”で出来てしまう。
それでも私が応用の幅を持たせたのは、諸氏に考えてほしいからだ。
かつてヤミで世界を覆った者のように、自分のため、自分の豊かさの為だけに使うか。或いは、自分を助け、誰かを助けるための抵抗として使うか。
全ては諸氏の意志と良心に掛かっているのだと。
願わくば、この論書に記された魔法が、諸氏を援ける灯火となるよう。
黎明歴一年 二月 “光売りの弟子” 著
〔-aから-ghまでの文書は機密性保持のため一部非公開〕
〔世界線保持、及び世界線崩壊に関わる重大な情報を含むことが確認されたため、第二六五八八ログは永久保管扱いへ変更されました。ログの無断複製・持ち出し・損壊を厳に禁じ、これら行為が認められた場合重大なペナルティが課されます。 :マスター〕
〔簡単な魔法しか載ってないのに、第二ログより厳重なセキュリティが掛かってるんですが…… :御坂〕
〔『誰にでも扱える』からこそです。応用性の高さは悪用されやすいことと同値と認識します。 :マスター〕
- Re: BAR『ポストの墓場』 ( No.22 )
- 日時: 2017/02/23 07:00
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: 0L8qbQbH)
【Log 26588-gi : 世界線1*-5*-6*から回収した手紙】
匆々、色んな人たちへ。
これが読まれたってことは、多分僕はこの世界にいません。消したんじゃないでしょうかね。何がどうとは言いませんが、多分君達はその現場を見たんじゃないでしょうか。もしかしたら必死で止めたかもしれないし、その過程で心身ともに幾分傷付いた人も居ると予想してます。イントさんとか、めっちゃ傷付いてそう。
とりあえず、そのことについて最初に謝っときましょう。ごめんなさい。本当は君達の前で土下座でもすべきだったんでしょうが、そこまで時間はなかったようです。
おっと、丸めて投げ捨てるのは勘弁。僕はただ謝罪する為だけにこんなチンケなもの書いたんじゃないんです。
僕は此処へ言い訳しに来ました。懺悔と言うにはあまりにもしょっぱい、そうとてもつまらなくて下らないものです。しかしこの世界の成り立ちと存続を知るに重要なことだと思ってます。とりあえずこれを破り捨てるか否かは、全部読んでからってことでお願いしますね。
色んなこと書きます。長いです。途中で飽きたら、それはそれで良いでしょう。棄てて下さい。
僕は人間でした。ニードも元々人間です。
……もう知ってるかもしれないですね、チャンバラごっこのネタはいつもその時の話だったし。ええ、ニードと僕は人間だった頃からの付き合いです。そうには見えないって? でしょうね。今から話しますよ。
僕らは人間だった頃、とある研究所にいました。施設の名前は、もう言っても意味ないので割愛しますけど、その中身は能力開発所——めっちゃ端的に言うと、超能力人間を製造する場所だったんですね。「何だよその中二病な設定はよ」ってツッコミ入りそうな話ですけど、マジ。
で。彼は開発所の研究部長で、僕はその補佐でした。年の差ニ十歳くらいです。彼は最初、土壌の毒を抜ける植物や菌類の開発で結構成績が良くて、その時の業績が買われて人間の能力開発に回されたんですね。今にして思えばヤバい転属じゃないかと思いますが、その当時は確かに名誉なことで、僕らはノリノリでした。
潤沢な資金と人材のおかげで、研究は順調でした。植物の時に培われた技術を使って、人間をあれこれ改造していました。植物が出来たことを人間にもさせることが目標で、その目標は割とすぐに達成可能な域に到達していました。例えば光合成で生きられる人間とか、植物みたいに足から水と毒を吸い上げて体内浄化する人間とかね。もうそんな実験体は全部破棄されてますけど。
でも、僕らが本当に目指したのはそこじゃなかった。資金稼ぎのための業績集めであり、児戯でした。
本当に僕らの研究チームがやっていたのは、魔法の復権です。
その頃の世界は科学が隆盛していて、不可解な現象の多くに科学という名前のレッテルが貼られていました。今の世界では魔法として知られる奇跡が、陳腐な科学用語の羅列の枠に押し込められていました。僕らはそれがどうもいけ好かなくて、科学なんかで説明できないような、素敵な素敵な「奇跡」の端緒を探して研究してたんです。真面目に。科学者が科学でないことを探してたんですよ。馬鹿みたいでしょ。
でも、そんなクソの端緒を僕らは掴んでしまいました。その産物があのヤミです。
どうやって出来たかって?……知らない。いつの間にか出来てしまった。そう言えば君の気は済みますか。
残念ですが、今でもやろうと思えば再現可能です。適当な超能力人間を適量ミンチにして混ぜ合わせるだけです。その時の実験記録は、とても信頼のおける筋に託してあります。破棄はしてません。……何で捨ててないかって? 明らかにしとかないと、好奇心が同じものを作るかもしれないでしょ。バカの探求心は留まることを知らないんです。
さて。僕らがヤミを作ったって言うだけでも大分腸煮えくり返ってると思うんですがね。もっと付き合ってください。
ファッキンな奇跡を何の間違いか現世に引っ張り込んでしまったわけですが、その時のヤミはもっと大人しいものでした。光が常に照射されている状況だったからでしょう。ほんの数センチの球体をした靄みたいもので、そのモヤの一番濃い所に物を投げ込むと、消えて二度と戻ってこなくなる。それだけのものです。
しかし、靄そのものの正体や意味、消える方法や消えたものの行方は、あらゆる既存の科学で説明することが出来ませんでした。僕らはとても科学的に、科学では理解不能なものを口寄せしちゃったんですね。ウケるでしょ。
ああ、学会が荒れたのは無論のことです。当然「こんなもんはありえん!」って意見が物凄く寄せられましたけど、作り方を説明したらすぐに実証され肯定されました。僕らはたちまち「魔法の復権者」としてクローズアップされ、大々的に僕らの業績は取り上げられることになりました。問題は此処からです。
発見したての頃に持っていたヤミの性質は「濃い部分に何かが来るとそこにあったものが消える」こと。
……何となく察しがついたかもしれませんね。材質のロスは多少あれど、そいつはノーリスクであらゆる材質のあらゆる形状のものを断裁できると。僕らより後にヤミを再現した科学者がそう解釈し、その学説はどんどん学会で有力なものになってしまいました。
行き着いた先は商業利用。お分かりですね。
とても微小なヤミが、その科学者の元から世界中に搬出されてしまった。粗大ゴミの断裁機、効率のいい輪転機、果ては家庭用のフードプロセッサーにまで。ヤミを組み込んだ機械や家庭用品が横溢していきました。その科学者は巨万の富を築いた時点で、「ヤミについてこれ以上分かることはない」として研究を止めました。今にすれば、多分これは都合の悪いことを隠していたんじゃないかと僕は睨んでます。
何しろ僕ら、そいつの研究停止宣言の直後に、ヤミの本当の性質について知ったわけですから。
ヤミは取り込んだものの容積の約〇.〇〇一パーセント分だけ——後に分かった条件として、光を照射されない時間分だけ——その容積を増大させる。増大する面積の比率にブレはありましたが、ものを放り込めば放り込むほど、灯りを消している時間が長ければ長いほど、ヤミが大きくなっていくことだけは確かでした。それを最初に知ったのは、ヤミに対する長期実験の担当をしていた僕です。
すぐに気づきました。このまま微小なヤミが使われ続け、切削誤差の大きくなったヤミが廃棄され続ければ、いずれ世界はヤミだらけになってしまうと。ヤミは生み出されても消えることはないと。
でも僕は、一度だけこの結果を見なかったフリしました。その頃の世界は既に、ヤミがあること前提で成り立つようになってしまってたんです。僕の出した結論が世界情勢をまるごとぶち壊すほど重大なことだと分かって、だからこそ僕は恐ろしくなった。だから握り潰しました(握り潰した分僕が取り返せば何とかなると、そんな甘いことを考えてたってのもあります)。
しかし、どれだけ懸命にあれこれと研究しても、僕の気付いた真実を覆すものは見つかりませんでした。その頃になると、使われなくなって廃棄されたヤミが廃棄場一帯を覆いつくし、真っ黒いイキモノめいた物体を作るまでになっていました。僕がニードにそれを報告したのがその頃です。
僕の提出した研究報告書を見て、彼は何か悟ったのかもしれません。それまで彼が進めていた研究は全てストップし、僕を除く全ての研究員は暇か別の研究所への紹介状、そしていくらかの謝礼を出され、次々に出ていきました。誰もいなくなり、薄暗くなった研究室で一人頭を抱える彼の姿はよく覚えていますよ。
→Next page
- Re: BAR『ポストの墓場』 ( No.23 )
- 日時: 2017/02/23 07:19
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: 0L8qbQbH)
僕らが人間でなくなったのは、頭を抱え始めてから二週間くらい経った頃でしょうか。
夜は恐ろしい。ヤミが勢力を増す時間です。事実、ヤミは夜ごとにその範囲を広げ、たった二週間で全世界のあらゆるシチュエーションに潜り込んでいきました。世界中大パニックに陥っていました。テレビやラジオは何処のチャンネルも昼が訪れないことを喧伝し、人々は外に出ることさえ恐れるようになっていました。社会のあらゆるインフラが麻痺し、直に送電網も止まりました。
たわけたヒッピーが夢にまで見たであろう、原始時代の始まりですよ。人々は這いずりまわるように火を探し求め、それに縋りついて生活しました。獣は火を畏れなくなり、人に迎合して暮らし始めました。
こんな生活が外で始まったのだから、研究所だって当然ヤミだらけです。浸食を受けていなかったのは、非常電源装置によって光源を稼いでいた、六畳一間ほどの小さな実験室だけだったでしょう。そこは普段彼だけが入れる特別な実験室で、僕が立ち入ったのはそれが最初で最後です。
「ヤミを打倒する手段は今やない」
彼はそう言いました。僕も同意見でした。魔法の復権者なんて誉めそやされておきながら、僕らはヤミ以外の何も見つけてなかったわけですし。しかし彼はこうも言いました。
「だがヤミに順応する手段は今講じた。我々の魂を削って燃える光だ」
滑稽ですよねぇ。科学者が魂なんてスピリチュアルなこと言ってるんですもんね。でも、僕らはそんな実体も根拠もないものに縋る他、あのパニックを沈静する手段を知らなかったんです。どんな慰めを尽くしても、民衆はおろか僕らの心だって落ち着くはずがありませんでした。だから僕は黙って頷いた。
そして彼は僕に、実験室の隅に置かれたガラスの円筒へ入るよう指示しました。黙って入りました。……
ぶっちゃけ、ガラスの円筒に入ってから出るまでの詳細な記憶は持ってません。
ただ恐ろしく苦しい思いを何度かして、全身の血管をしごいたように血を吐き、出ていった血の分だけ何か別の液体を体中に取り込んだことくらいでしょうか。それ以外にも色々なものを吐き出したり吹き込まれたりした気がしましたが、全部忘れちゃいました。ごめんちょ。
で。気付けば僕は、透明な液体まみれになって床に突っ伏していました。頭がギイギイと金属みたいに軋るものだから、何事かと思って水鏡をしてみれば、そこには人でなくなった僕が映っていた。このバカみたいな電気スタンド頭です。自分自身が光るから頭を電灯にすげ替えたって、どんな冗談なんでしょうね全く。
嗚呼。僕が気付いた時、彼は居ませんでした。ただ、脱ぎ捨てられたびしょびしょの白衣やシャツやズボンと、僕用なのか喪服みたいなスーツ一式と、置手紙が残っていました。手紙の内容は僕の取り扱い説明書です。敢えてここで言おうとは思いません。僕の研究書類と一緒に信頼のおける筋へ託したので、読みたきゃ読んでください。
手紙を読み終わった僕は、濡れた衣服を全部着替えて——すぐにあの円筒をぶち壊しました。椅子や机や、今までの僕だったら絶対に持ち上げられなかっただろう薬品棚まで引っこ抜いて、手あたり次第にぶん投げました。
だって、嫌でしょ? 光に困らなくなる代わりに人間じゃなくなって、その上そうなるために記憶がすっぽ抜けるほど凄絶な思いをしなきゃならないなんて。少なくとも僕はそんなのゴメンだし、他の人にその役目を押し付けるのだって断じてお断りです。その点に於いて、僕はアイツが心底大嫌いです。
僕が人間を辞めさせられてから後は、きっと誰もが知る通りです。僕は『光売り』として、只人に光を譲り歩き続けました。いつも配り歩いている懐中電灯と電池は、何故だか知りませんが、僕が望めばいつでもいくらでもスーツのポケットから出てきました。
この理論を解明する気は今や僕にはありません。理屈をつけることに疲れてしまいました。
僕らは何百年もヤミの中で生きてきました。それが償いになると思い込んで生きてきました。
そう。思いこんでいただけです。今まで僕やニードが光売りとしてやってきたことが、僕らの罪過に対する償いになると本当に思っているわけじゃありません。それでも僕らは、光を譲り歩いて人を救う行為が贖罪になると信じ込もうとしました。
でも僕には無理でした。矛盾を抱えながら生きることにも、この行為が正しいと信じ切ってしまった人を見ることにも、嫌気が差してしまいました。いつ終わるか分からない一生を、償えるはずのない罪の精算に費やすなんて不毛だと。心の底からそう思ってしまったんです。
だから、ヤミが打破された記念すべきこの日に、僕は僕自身とアイツの人生を精算してやろうと思いました。見送りは嫌でもしたと思いますけど(してなかった? なら今更必要ありません)、そこに続くお悔みやお叱りや、ありとあらゆる君達の感情は無用の長物です。そんなものはこれから生きていく君達の中に仕舞っとけばいいんです。
ただ、僕がある筋に託した研究書類のことはちゃんと憶えといて、ちゃんと探して下さい。これから光の中を生きる君達が、またヤミの中に戻って来たりしないように。ヤミを生み出した元凶の元凶は、いつでも君達の傍に置いといてください。こればっかりはお伽噺にも笑い話にもできませんから。
そんな超大事もの何でわざわざ探させるんだって絶対思ったでしょ。思いますよね。
ええ。大事なものだからですよ。大事なものほど内に隠したくなるのが人の性ってものです。
それに、託した人はアブないプロトコールの取り扱いにめっちゃ慣れた人ですから。ネクロノミコンはむき身のまま段ボール箱に入れてるより、何だかヤバそうな魔術師の手元にあった方がやっぱり安全だし、それっぽく見えるものなんです。そういう事。察して。
さて。こんな長ったらしい文章を読んでくれてありがとうございます。
読み終わったら、これは捨てて構わないので。もし僕の知り合いの筋を見つけたなら、その人に預けてもいいかもしれませんね。
じゃね。ありがと。
——Rad
〔手紙の回収地点には、恐らく手紙の執筆者である男性ともう一人の男性遺体が折り重なるように倒れていました。遺体は頭部が欠損しており、また双方の遺体からは血液ではなく、それと同程度の粘性を持つ透明な液体が流出していました。
状況を考慮すると、男性二人の直接の死因は頭部欠損ではありません(一方は刃渡り五十センチメートルほどの刃物で主要な動脈を切り付けられたことによる失血死、一方は肺を貫かれたことによる窒息死と考えられます)。
男性の遺体の周囲には、少なくとも百年以上前に製造されたガラスの破片と、黒色塗料で錆止め加工された鉄製の電気スタンド用と思しき枠、及びガラスの製造年代とほぼ同時期に製造されたと思われる白い蝋が散乱していました。
尚、筆跡鑑定をした結果、当テキストの執筆者は-faから-ffのログと同一です。 :マスター〕
〔最近行燈みたいな頭の人と、四角いランプ頭の人が熱心にこのログを読んでました。お茶を出そうとしたら凄い声で断られたんですけど、僕が悪かったんですかね。 :ヒナタ〕
〔そっとしておいてください。 :マスター〕
〔追記:手紙の執筆者の意向を反映し、-faから-ffログについては全文を公開しています。ただし、ログの内容に従って実際に操作を行った場合、直ちに重大なペナルティが課されます。 :マスター〕
〔どうやってペナルティ付けるんです? :御坂〕
〔模倣される可能性があるため、お教えできません。 :マスター〕
→Which the log will you choose?
- Re: BAR『ポストの墓場』 ( No.24 )
- 日時: 2017/02/23 07:27
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: 0L8qbQbH)
【Log 00002-vh : 世界線3-3-5内の個人PCから送付された音声データ】
〔注意:このテキストは聞き取りが可能であった部分について、未知の言語を基準世界線の言語に翻訳したものです。本来の文意とは異なる可能性があります。また、聞き取れなかった部分の文意は喪失しています〕
〔詳細不明の雑音が数秒続く。不定期に四回の発砲音〕
〔悲鳴と罵倒が十数秒繰り返される〕
〔ドアの開閉音。何かの引っ掻くような音と足音が同時に聞き取れる〕
〔三回スイッチの動作音。スイッチ音は全て別々の場所から聞こえる〕
〔聞き取り不能〕何とか……逃げて、来れたか……録音機は……〔聞き取り不能〕か?
〔数回の咳〕
〔何かを引きずるような音〕
〔聞き取り不能〕……えているな。……録音を、開始する。
私は……生物災害隔離施設HA支部〔iso-ha〕総合監督官のDr.Glim。現在iso-ha内総合指令室に居る。もしも、この音声メッセージが届いて、データを回収しに来てくれたなら……参考にしてほしい。どこまでこのバイオハザードで破壊されるか分からないから、あくまで参考になるが。
〔数十秒の喘鳴。スイッチ音が三回聞き取れる〕
〔ドアの閉まる音が三回聞き取れる。詳細不明の雑音〕
〔数回の咳〕
〔聞き取り不能〕……聞き苦しい音声で、すまない。喉が爛れて上手く話せん。
〔激しい咳〕あぁ、察せられるだろう……我々はまたしてもやってしまった。かのDr.Andersenを犠牲にしたあの日〔メイデイ〕のような——否、それよりも更に凄惨な〔嘆かわしい〕事故が、起きてしまった。……全く恥ずべき失態だ。Dr.Andersenにも、貴方にも、詫びの言葉さえ出て来ない。
だが、こうなってしまった以上、私は貴方の力を借りねばならないだろう。〔軽い咳払い〕我々は嘗て貴方の手に渡った時よりも遥かに多くの研究を重ねてきた。そして……その全てについて、後世に残し伝えていかなくてはならない。その理念を忘れたことは片時もないし、今さえそのことで頭が一杯だ。
しかしだ、私はさっきも言った通り……〔聞き取り不能〕……〔激しい咳と喀血〕 嗚呼、そうだ、脚に溶解液〔消化液〕をぶちまけられて骨ごと溶けた。これを記録している今も〔聞き取り不能〕気がおかしくなりそうだ。神経ブロックが効いたのは不幸中の幸いだった。
要するに、私は、この総合指令室から外に出られない。しかし、総合指令室からアクセスできる資料の数には限界がある。まだ研究途中で、デジタル化されていない研究資料は……恐らく山ほど〔無数に〕あるだろう。おまけに……今の私は、腕がへし折れている。全くあの馬鹿力どもには〔聞き取り不能〕
〔激しい咳と喀血〕そ、こで、だ。店長殿。貴方に、資料を探して頂きたい。資料の場所は記憶している。今からそれを全て話そう。貴方には、私の話した場所から、話した通りの資料が出てくることを確認して頂きたい。面倒ごとだと思うが、ここに収められた研究資料は、それだけの価値があると信じている。
〔機密情報のため割愛。途中二十回以上咳と喀血を繰り返した〕
……私の憶えている限り、デジタル媒体に保存されていない資料の置き場は以上になる。此処以外に保存されているとすれば、それは恐らく博士たちの個人的な忘備録か、或いは処罰の対象になり得る後ろ暗い研究記録だ。その辺りのものがもし出てきたら、それはそれで保管してくれ。
後のことは——後任のiso-ha総合監督官に、全て託す。後任に指定した博士は、私が知る限り最も信頼のおける〔優秀な〕女性だ。きっと……私の遺志〔意志〕を汲んでくれるだろう。
私からは以上だ。これ以上は……〔聞き取り不能〕 どうか、届いてくれ……〔激しい咳〕
〔詳細不明の雑音。呻き声のような音声が聞き取れる〕
〔連続した発砲音〕
〔五-六名前後のものと思われる足音〕
〔聞き取り不能〕生体の排除を確認。〔編集済〕区画オールクリア。確か、此処が最後だろう? Dr.Glimが中にまだ居たはずだが。
そのはずだがな。博士、御無事ですか。……〔息を呑む音〕 博士、博士!? 応答願います、博士!
〔罵倒〕! 俺達のレベルじゃこの扉は開けられない。強行突破を図るか?
待て待て。ここら一帯はPigweedの花粉が充満してる。下手に開けたりしたら——〔長い沈黙〕 とにかく、レベル五のBC装備を持ってきた方が良さそうだ。それも可及的速やかに。
だが、最後に連絡を取った際の咳と喘鳴は……もう曝露しているんじゃないだろうか? それだったらここをぶち破って救出した方が早いだろう。此処から入口まで、俺達なら一分も掛からん。
その一分が命取りなんなんだろうが! エア・シャワーで花粉を落とすのが一体どれだけ手間だと思ってるんだ! 良いからさっさと持ってこい、今すぐ! それこそお前なら一分も掛からないだろ!
わ、分かった……〔一人分の足音が遠ざかる〕
〔録音終了までドアを叩く音と呼びかけが続く〕
〔データの送信地点(音声中の総合指令室と思われる)には、Dr.Glimのものと思われる血痕が多数付着していました。また、総合指令室に設けられた扉は熱によって焼き切られており、Dr.Glim本人はデータ回収時総合指令室には居らず、彼のものと思われる眼鏡が落ちていました。眼鏡は第十ログとして保管しています。
PCに損傷はなく、約二十のデータをPC内から回収し第二ログとして保管しています。
尚、この録音は自動送信機能によって送られているものと考えられます。 :マスター〕
〔Dr.Glimと言うと、しょっちゅう飲み会してる眼鏡の人ですよね? ご無事でしょうか。 :カイ〕
〔音声で指示された場所からのデータ回収と併せ調査中です。 :マスター〕
〔追記:全てのデータを回収しました。情報保護の観点より、データの全文は公開されません。 :マスター〕
〔追記2:Dr.Glimからの貸し切り予約が入っています。車椅子で来店されるとのことですので、この日シフトに入っているスタッフは【Log00000-ff】を参考に店内の配置を変更してください。 :マスター〕
〔車椅子で来るんですか? :ケイ〕
〔そう言うことでしょう。喉を随分と傷めた様子でしたので、頼まれてもスピリタスは出さないようにしてください。アブサンもウォッカも駄目です。 :マスター〕
〔あの博士にそれはちょっと酷じゃないですかね。 :ケイ〕
→Which the log will you choose?
- Re: BAR『ポストの墓場』 ( No.25 )
- 日時: 2017/04/12 09:19
- 名前: 北大路さくら ◆ACiNmI6Dxs (ID: QS66SoEi)
そら「フフ…貴方も消し墨にしてあげるわ」ゴウゥゥ…
おとめ「ううぅ、でもやっぱりあの炎がある限りキャワワリオンにはちかづけないのですぅ」
戦慄する隊員たち
さくら「クッこんなのどうしたらいいのでしょう!?」PURURURURU♪
そこにしおん博士からの通信が入る
しおん「わたしだ!戦況はどうだ?」
さくら「それが、怪人の炎が強すぎて攻撃どころか。…近づけません」
しおん「やはりそうか。デ−タでキャワワリオンの炎には我々のパワ−ドス−ツの性能を無効化する能力があることは分かっていた」
しおん「だが今の君たちは大丈夫だ!おとめ。さくら。変身リングの青いボタンを押したまえ」
さくらおとめ「「これ、ですか(なのです)?」」ヴゥゥゥン
しおん「こんなこともあろうかとリングに手動のアンチフレイム機能をつけておいた。これで炎を無効化できる」
しおん「さらに二人の両手を合わせれば相手の炎を無効かし倍にして返すトライアングルぽわぷりライトが放てる!!」
さくら・おとめ「な?!なんだって-!?!」
そら「なにをごちゃごちゃいっているの?終りよ!!」ゴウウゥゥゥ!!!
今までの数倍の大きさの炎のリングを成形するそら
そら「消えなさい!!綺羅破光炎輪!!」シュゴウゥ!!
おとめ・さくら「「手と手を合わせてポップな世界!トライアングルシぽわぷりライト」」ペカ−
そら「そんな私の炎が押し返されて!?!きゃあああああ」
そら「あ、熱い風を感じる…」ドカ−ン
おとめ「はあはあ…なんとか」
さくら「勝ちましね…」
あおい「二人ともだいじょうぶか?ひどい怪我だ 水瓶宮の癒し(アクアテラリウム)」キュワワ−ン
あおい「私は攻撃には参戦できないが、対象が生きている限り完全に再生させる回復能力がある。みんな、いつもすまない…」
ユリカ「何を言っているの?貴方がいなければみんなみんないつも無事でいられなくもなくはなくてよ?さあ、帰りましょ?」
みんな「ああ」
無事怪人を倒し新たな仲間も見つけたバイオレン
しかし戦いはまだはじまったばかりであった