複雑・ファジー小説
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- 【吸血鬼】Into the DARK【毎週日曜更新】
- 日時: 2016/05/14 21:06
- 名前: ヒュー(元鈴香) (ID: m.v883sb)
ひゅーです。
二年くらい前まで天緋とか鈴香とか言う名前で小説を書かせてもらっていました。
ふたつの小説が未完結にも関わらず、いなくなったこと本当に申し訳ありません。時期は未定ですが、他ふたつの小説についても書き直しを考えています(もう一度言いますが時期は未定です。もしかすると書かないかもしれません、すみません)。
ということで再び、カキコで小説を書こうと思います。
読んでいただけるとすごく嬉しいです。感想を残していただけると、調子に乗ってPCの前で踊り狂います。
完結目指して頑張りますので、よろしくお願いします。
○この小説は基本毎週日曜日更新です(調子に乗って週に複数回投稿する可能性あり)
〜目次〜
登場人物・用語解説(必読ではないです、随時更新) >>02
Prologue >>01
序章 -sunset-
†第一話 暗雲の街† >>03>>06
○第二話 ネグル○ >>07-08
†第三話 聖軍† >>09-13
〇第四話 ヴェルジュ〇 >>14-15
第二章 -twilight-
†第一話 兄の剣† >>18>>21-22
†第二話 遭遇† >>25-27
†第三話 交差† >>28
第三章 -dusk-
○第一話 スパイ○
〜お客様〜
・ろろさん
・風死さん
・囚人Dさん
・コッコさん
- Re: 【吸血鬼】Into the DARK ( No.12 )
- 日時: 2016/03/20 20:24
- 名前: ヒュー ◆.GfDNITtF2 (ID: m.v883sb)
聖軍の朝は早い。ハルがベッドの中で動き出した頃にはもう、テーブルの上の朝食は冷めきっていた。
お世辞にも豪華とはいえないそれをかじるように食べていると、部屋のドアが乱暴に開け放たれた。将軍のラドルフだ。
「いつまで朝飯食ってんだ新入りィ、立て。俺についてこい」
「これはどうすれば」
ハルが食べかけのパンを指さすと、ラドルフはあ゛ぁ? と不満げな声を出した。
「……歩きながら食べろ。服はそのままでいい」
言われて改めて見れば、ハルは汚れた白のシャツとよれよれのズボンを着ていた。ハルのものではないし、サイズがかなり大きい。シャツなどは、まるでワンピースのようだ。
「何やってる。早く来い」
不機嫌そうな声に、ハルは慌てて部屋を出た。右を向くと、ラドルフが片足を踏み鳴らしている。そちらへ駆けていくと、ラドルフはすぐに曲がり角へ消えた。
必死に追いかけるハルに対して、ラドルフは煙草をふかしながらすいすいと廊下を進む。
壁に所々青い十字架が描かれていることや聖軍の《将軍》がいることから見て、ここは聖軍の施設なのだろう。しばらく走ったハルは、あることに気づいた。
(窓が無い)
今までにひとつも、窓が無いのだ。歩きざまに壁紙に触れてみれば、ひんやりとして湿っている。
(地下なのか……?)
ハルが考えを巡らせていると、ラドルフの足が止まった。簡素な木の扉の向こうには、複数の人影が見える。
「探せば見つかるものねん、結構新しい服ねん」
「仕事は終わった。俺は部屋に戻る」
「ラルムはいつも退屈な人ねん。もっと楽しくやればいいのに」
「お前とは違う」
ラドルフが部屋に入ろうとしたとき、同時に背の低い男が部屋から出てきた。
「将軍」
「済まんなラルム、王都から帰ったばかりだってのに」
「いい。あの馬鹿ひとりには任せられない」
無表情のまま言った男は、ふとハルを見上げた。その目は態度と裏腹に丸く、幼い子供の様だ。
「誰?」
そう言った割には興味がなさそうな男に、ラドルフは親指でハルを指す。
「昨日言った新入りだ。ハルという」
ふうん、と呟いた男は再びハルを見上げた。ハルは決して長身ではないが、男の金髪はハルの顎あたりにある。
「俺の名前はラルム。聖軍の死神」
「死神……?」
ハルは首を傾げたが、ラルムは構わずその場を後にした。
- Re: 【吸血鬼】Into the DARK ( No.13 )
- 日時: 2016/03/23 00:15
- 名前: ヒュー ◆.GfDNITtF2 (ID: m.v883sb)
「……あいつは可愛げがねえなァ」
ラドルフが白く濁った息を吐くと、部屋の奥から明るい声が響いた。
「そんなことないのん!ラルムはよく見たら可愛い顔してるのん!」
その舌足らずな声の主は、部屋の奥に立つ小柄な少女だった。髪は奇抜な桃色で、顔の横でふたつにまとめられている。
(この子は……)
確か、ハルが吸血鬼に捕まった時、ハルを助けて『投げた』少女。
見れば見るほど、あの時のことが夢のように思えてくるくらいに細い手足だ。ラドルフやラルムの着ている制服ではなく、派手なミニドレスを着ている。人形の様に愛らしく幼い顔は、装飾過多な服によく合っていた。
「あ、新入りくん起きたのねん!」
少女はハルに目を向けると、天真爛漫な笑顔を見せる。花が咲いたような笑顔にハルが見惚れていると、少女は甲高い声で言った。
「パネはパネって言うのん!聖軍の副将軍なのん!」
「……え?」
思いがけない言葉に、ハルは意表を突かれた。吸血鬼と戦っていたから聖軍であることは分かっていたが、副将軍だなんて。
ハルがラドルフを見上げると、彼はひとつ頷いて頭を掻く。
「こいつは正真正銘副将軍だ。お前も見ただろ、こいつが戦うところ」
「まあ……」
確かに見たのだが、あのときの記憶は少々曖昧になっている。しかし、パネの桃色の髪ははっきりと印象に残っていた。
「こいつはなァ、聖軍で一番強いんだ」
少し自慢げなラドルフの言葉に、ハルは再び驚かされた。
思わず、目の前の華奢な少女を見つめてしまう。リスの様に丸い目は、髪と同じ桃色をしている。どう見ても13歳か14歳くらいの派手好きな少女にしか見えない。
ハルがよほど分かりやすい表情をしていたのか、パネはひゃひゃひゃ!と笑った。
「新入りくん面白いのん!パネ気にいったのん!」
パネはそう言うと、いきなりハルへ飛びついた。その動きは信じられないほど速く、ハルの体はバランスを崩す。ハルが倒れそうになった時、パネはハルを両手で軽々と持ち上げた。
「……え!?」
戸惑うハルをよそに、パネはハルを頭上に持ち上げる。
「パネは新入りくんがお世話役で嬉しいのん!」
ハルを持ち上げたまま、パネは明るく笑う。
「これからよろしくなのん!」
今度は心底嬉しそうに、ひゃひゃひゃ!と笑ったパネを見て、ハルは目を瞬かせた。
(この人の、世話役か……)
何だかとんでもない仕事を任せられた気がするが、それでもいいかとハルは思う。聖軍で最強の人の近くに居られるのだから、すぐに強くなることができるかもしれない。
(まあ、飽きることはないだろ)
「あ、新入りくんやっと笑ったのん!」
言われてみて、ハルは自分の口角が上がっていることに気がついた。演技ではない笑いは、久しぶりかも知れない。
また笑った!という、パネの楽しげな声が部屋に響いた。
- Re: 【吸血鬼】Into the DARK ( No.14 )
- 日時: 2016/03/25 16:02
- 名前: ヒュー ◆.GfDNITtF2 (ID: m.v883sb)
○第四話 ヴェルジュ○
ヴェルジュの態度は豪奢な自室に入っても変わらず、言葉遣いも丁寧だった。
リッダは目の前に置かれた紅茶を睨む。
「毒は入っていないわよ?」
ヴェルジュは困った様に微笑んだ。その野良猫を労わる様な視線に、リッダはいらついた。優しい人は昔から苦手だ。絶対に裏の顔を持っているような気がするし、もしも持っていなくとも、疑ってしまう自分が嫌になるから。
リッダは改めてヴェルジュを見た。紅茶をすする動作は優美で、作法をよく知らないリッダでも、正しい作法に則っていることがなんとなく分かる。
「紅茶は嫌いなの?」
「……いいえ」
リッダが首を横に振ったとき、広い部屋の奥からひとりの少年が現れた。小さな体を高級そうな燕尾服で包んだ少年は、片眼鏡をかけている。幼い外見と服装には大きな差異があるが、何故かそれが似合っていた。
少年は、ソファに座ったリッダを、たれ目ぎみの三白眼で見下ろす。
「私の淹れた紅茶が飲めないとでも?」
その高圧的な態度から、リッダは察した。
(この子も、吸血鬼だ)
少年を見つめ続けるリッダをくすりと笑い、ヴェルジュが少年を指す。
「この子はラーフ。私の直属の部下よ」
ラーフは恭しい態度で頭を下げるが、その口はへの字に歪んでおり、唇の隙間からぎざぎざした歯が露わになっていた。今にも唾を吐きそうな苦々しい顔だが、ヴェルジュに言われるまで此処を去る気は無いようだ。
「ラーフ、今、リリーはいるかしら?」
「リリーですか」
ラーフは呟くと、少し考え込む。
「確か、先程まで吸血をしておりました。しばらくすれば戻ってくるでしょう」
「分かったわ、ありがとうね。下がって」
ヴェルジュの笑顔に、ラーフは心底嬉しそうに微笑んだ。それを見て、リッダはこんな顔もできるのかと、少し驚く。ラーフが表情を緩めたのは一瞬で、その童顔はすぐにしかめられた。
「ふん、ヴェルジュ様のお心遣いに感謝するのだな、小娘。だが忘れるな、私はお前を見ているぞ」
「……?」
リッダがその言葉の意味を図りかねていると、ラーフは踵を返して立ち去った。
その小さな後ろ姿に、ヴェルジュは微笑む。まるで自分の家族を見ているような、穏やかな顔だ。
- Re: 【吸血鬼】Into the DARK ( No.15 )
- 日時: 2016/03/27 18:04
- 名前: ヒュー ◆.GfDNITtF2 (ID: m.v883sb)
「早く、話してくれる?」
リッダが急かすと、ヴェルジュはごめんなさいと笑った。
「そうね。貴方を此処に連れてきた訳を、話さなくてはね」
唾を飲んだリッダは、静かに彼女の言葉を待つ。
「貴方には……聖軍の、偵察をして欲しい」
「……」
思いがけない言葉に、リッダは沈黙した。そして、絞り出すように問う。
「……どういう、こと」
リッダの息が、冷めた紅茶に波を立てた。
呆然としたリッダに、ヴェルジュは優しく答える。
「まずは前提から説明しましょう。私達吸血鬼には、3つの掟があるの」
「……」
「1つめは、皇帝の意思に反した行動をとってはいけない。2つめは、ネグルにある《奥ノ間》に立ち入ってはいけない。そして3つめが———異性の人間の血を吸ってはいけない」
「それがどうしたっていうの?」
リッダが聞くと、ヴェルジュは厳しい顔でリッダを見つめた。その顔に先程までのような穏やかな微笑みはない。
「ここから話すことを聞けば、貴方は引き返せなくなるわ」
リッダはヴェルジュの美しい顔の裏に隠れたものを読み取る様に、青い瞳を見つめ返す。しかし、切れ長の目は宝石の様で何の感情も映していない。
「私がこれを引き受けて、報酬はあるの?」
「あるわ」
ヴェルジュが即答したので、リッダは不意を突かれる。
「これからの貴方の生活を保障する。貴方が飢えることも苦しむことも、絶対にない生活をあげるわ」
「……それだけ?それだけのために、人類を裏切れと?」
冗談じゃない、とリッダは吐き捨てる。
「私は貴方達に頼らなくても生きていける」
「じゃあ、貴方に力をあげるわ。そこらの人間や、獣や、下等な怪物には負けない力」
ヴェルジュの返答に、リッダは目を見開き体を震わせた。
改めて、この得体の知れない美女に恐怖を感じる。
「私の事を知っているの?」
微かに震えるリッダの声に、ヴェルジュは微笑んだ。それは獲物を見つけた獣の顔だ。
「どこまで知っているかは、分からないけど。少なくとも、貴方の故郷の秘密は知っているわ」
「……!」
「貴方は、復讐したくないの?」
「何、に」
もう、リッダはかすれた声しか出すことが出来ずにいた。
(何で、この人が、知っているの……)
まさか情報が流出したとは思えない。馬鹿馬鹿しいほどの秘密主義だった彼等が、秘密を守るためだけに山奥に閉じこもっていた彼等が、あの事を他言するとは思えない。もしかすると、ヴェルジュは鎌をかけているだけかも知れない。
それでも、リッダはヴェルジュの誘いに魅力を感じざるを得なかった。
そんなリッダの心情を見抜いたように、ヴェルジュは言葉を紡ぐ。
「醜い、憎い、怪物に」
- Re: 【吸血鬼】Into the DARK ( No.16 )
- 日時: 2016/03/27 20:51
- 名前: 風死 ◆Z1iQc90X/A (ID: g8eYpaXV)
初めまして、風死にと申します。一度や二度頓挫した程度でそこまで根に持たずとも良いですよ?
30も40も頓挫している人だっているのですから(私だ)
まぁ、完結させるというのはそれだけ、重要だし素晴らしいことですがね。
吸血鬼物良いですね♪
扇情的かつ黒々とした展開、好きです。今の所パネちゃんが好きかな。
これからも頑張ってください。