複雑・ファジー小説
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- 死にゆく君に祝福を 〜超能力者バトル・ロイヤル〜
- 日時: 2016/05/06 16:20
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
「上戸 幸次(うえと こうじ)、23歳で……現在は……え〜と……これは?」
「今の職業は、自警団。つまり、リアルライフヒーローです!」
上戸は正義の味方のポーズを取る。
「……あ〜はいはい。分かりました。……履歴書にそれを書く勇気は認めます」
上戸は今、面接を受けていた。
子供の頃から、ヒーローになりたいと言う夢を持ち続け、大人になった彼は、アメコミのような格好をし、コスプレを楽しんでいた。
コスプレをしているだけでは無く、ちゃんと不審者等を見つける事にも力を入れていた。
しかし、職務質問されるのは、いつもコスプレをしている上戸の方である。
とはいえ、ちゃんと職に就かないと、お金を得る事が出来ない為、本屋のアルバイトの面接を受ける事を決意する。
面接は、すぐに終わった。
「……合格出来ていると良いな……」
ちなみに、上戸は良くも悪くも馬鹿である。他人を信じやすく、騙されやすい。
上戸は、築30年余りの木造アパートに帰る。番号は201号室。
上戸の部屋は玄関から、目の前には和室が一つ。和室には、窓があり、景色は電柱で良く見えない。和室の隣の部屋はキッチン。玄関のすぐ隣が、トイレと風呂、洗濯機がある。
上戸は和室に行き、テレビを見る。
テレビではニュースをやっていた。
「突如、一兆円を手に入れた芸能人の、バーランク吉田さん。彼は如何にして大金を手に入れたか」
「大金……?」
上戸は少なからず反応を見せる。
「どうも、バーランク吉田です。私は、ギャンブルが好きなんですが、まさかあんなに当たるなんて思ってもいませんでした」
「ギャンブルで大金、1,000,000,000,000円(一兆円)もの、お金を……」
「……ええ、奇跡としか言いようが有りませんよ。しかし、二年前の話を今さら掘り下げられても……」
上戸は、少年のように驚く。
「マジか……ギャンブルってスゲー!」
しかし、彼はまだ気付いていない。
そのお金は、沢山の人の死によって、得た金と言う事を。
コインには、表と裏があるように、世界にも表と裏がある。
上戸は、ギャンブルをしに行く。
「ギャンブルって何処で、すれば良いんだ……」
「やあ、君。何か叶えたい夢でもあるのかな?」
上戸の隣に、突如男性が現れ話しかける。
「……ビックリした……。誰ですか?」
「一兆円の夢を叶えた者だ」
「一兆円ってあの吉田さんの?」
「ああ……」
「凄いですね……是非とも、何か……ギャンブルのコツとかを!」
「私の話を信じるのか」
「ええ。そうですよ」
「……珍しいな君は」
「……?」
「能力を使わずに済むのはラッキーだったが……まあ良い。君の夢を吉田のように叶えてやる」
「……夢?世界平和です!」
「面白いな……君は。それでは……君の夢が叶えられるよう、期待する」
上戸は、気絶する。
「さて、バトル・ロイヤルの始まりだ」
上戸は、目覚める。
「……あれ?俺、家で寝てたっけ?……ん?俺の家なのに……何でこんなにボロボロなんだ?」
上戸は、崩壊寸前の部屋にいた。
上戸はすぐ近くに紙切れと地図があるのを、確認する。
「説明書……?」
ルール
ステージは、地図に載っている区域に限定する。
参加者は、あるモノを見つけるか、自分以外の参加者を殺した場合、夢が叶うモノとする。あるモノについては、途中経過が、リアルタイムでテレビ、パソコン、スマホ等で流れるので、その時にヒントを流す。だが、スマホ、パソコンでは、このゲームの途中経過しか見る事は出来ない。途中経過の内容は、死亡した人物である。名前が載らないように頑張れ。
途中棄権は厳禁。ステージの外に出た者は、ステージの中に引き戻される。自殺は可能。
このゲームでは、殺しは合法なので、犯罪にはならない。直、この世界での活動時間は、午前十二時から午後十二時まで。それ以外は、元の世界に戻る。ただし、このゲームの記憶は消える。
はっきり言って別に人を殺す必要は無い。ただ、永遠に死に怯えて生きる事になるだけである。
そして、此処からが大事な項目である。
君達は、このゲームに参加する時のみ超能力者になる。
そして、殺せば殺した者の超能力を扱う事が可能になる。ちなみに、拒否権は無い。
どうか、君が最後の生き残りになる事を祈る。
「ええ……!何これ……。と言うか、此処が何処なのかは説明しないんだ……。と言うか腹が減ったんだが……食料はどうするんだ!」
上戸は、自分の家だった物を詮索するが、何もなかった。
上戸は窓を見て景色を見る。
電柱は折られており、景色は見えた。
「……しかし、何もかも、崩壊しているな……。これは一体何なんだよ……。と言うかこれって夢だよね……」
窓から見た景色は、至る所に火が出ており、ほとんどの家のは保持していたが、とてもボロボロだった。
「訳が分からない……。何だよ、これ……」
上戸は目の前の景色に絶望した。
まえがき
名も無き世界と、両立出来たら嬉しいなと言う気持ちで執筆しています。
個人的に、執筆したかった小説だったので、頑張って行きたいです。
コメントをくれたお客様
ジューゴさん
- Re: 死にゆく君に祝福を ( No.21 )
- 日時: 2016/04/25 19:38
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
佐久間は、北見を圧縮しようとするが、北見は、コンクリートから槍を創り、佐久間に飛ばす。
佐久間と上戸と山本と藤井は逃げる。
三人の男女は、叫ぶ。
「どいつもこいつも裏切りやがって……。俺達は、食料の代わりに北見さんが危険から守ってくれるんだ!」
佐久間は三人の男女を能力で殺そうとする。
上戸は止める。
「駄目だ!人を殺しちゃ……!」
「何、言ってんだ。お前」
山本も佐久間を止める。
「そう……!何か別の方法が……!」
「俺だって……殺したく無い。だが、そんな物は最初の内だ。殺さないと殺されるんだよ。この世界は」
コンクリートの槍が、上戸達を襲う。
「もうすぐで、十二時かぁ……。夢の様な時間はあっという間だねぇ」
北見は志野の元へ行く。
「……元の世界では、俺と君は、出会っていない。……元の世界の俺はずっと、孤独だ。まあ、孤独が好きなんだけどね」
「……私は……」
「……さて」
佐久間は、三人の男女の元へ行き、殺そうとする。
「死ね」
北見は、コンクリートの槍を全て、佐久間の方へ向ける。
「俺は、約束は守る人間でね」
佐久間はコンクリートの槍を全て圧縮し崩壊させる。
「約束を破って、逃げるのかと思ったよ。お前にメリットは無いはずだしな」
「……タイムオーバー」
午後十二時。記憶を消され元の世界に戻る。
北見は、病院の中にいた。
「次の方、どーぞ」
様々な医師がアリのように、せかせか、動いている中、北見はベットの上にいた。
「退屈だね」
決して、サボっている訳ではない。
彼は、両足と、左手が無い状態で、病室にいた。
「……本当に、退屈だ」
- Re: 死にゆく君に祝福を ( No.22 )
- 日時: 2016/04/25 20:13
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
北見は動かない右手を見ていた。
「……畜生」
北見は、とても小さな声で呟く。
一方、志野は。
「……」
志野は、自分の家で遺影を見る。
遺影の写真は、夫だった。
「……貴方のいない生活はとても、つまらないわ。私にもう一度、潤いを。いや、私達か……」
志野は腹を擦る。
志野は、卒業アルバムを手に取る。
「あはは。懐かしいわね。……小学校の時の私ってこんな感じだったんだ。
懐かしいな。北見君。今、どうしているんだろ?
逢いたいな」
志野は昔を思い出す。
北見は、小学校から孤独だった。
この時の北見は、左手と両足はあった。
「……ねぇ。どうして友達をつくろうとしないの?」
志野は北見に質問をする。
「一人が好きだからだね。でも、人が嫌いな訳ではないから、勘違いはしないでね。俺は、他人と居る時だけギャーギャー喚く馬鹿と、いたくないだけだ」
北見は当時は社交的だったが、その分、自分に酔っていた。この性格は父親譲りらしい。
志野は、いつも北見の傍にいた。
志野は自分でも北見の傍にいる理由は分からなかった。
とはいえ、小学生だったので、分からなくて当然である。
志野は後に気付く。
自分は恋をしていたのだと。
北見は受け入れる訳でも無く、追い払う訳でも無かった。
北見は、一人でも困難を乗り越え解決していきながら、大人になった。
父親と同じ医者を目指していた。
志野は、北見とは違う道に進み、困難に悩み悩んで、先送りにしていきながら、大人になった。
だけど、それは当然で、その困難に対して助けてくれる人がいた。
それが、後に夫になった。
決して、仲が悪かった訳ではない。
むしろ、幸せだった。
だが、夫は交通事故で死んでしまった。
子供も生まれる予定だったから、尚更、辛くなってしまった。
決して、嫌いになった訳ではない。
むしろ、大好きだった。
だが、夫はいなくなった。
志野は、泣き始める。
「私は……どうすれば……」
志野は願う。
「夫を生き返らせて……」
届かぬ願いは、届く記憶に染み渡る。
- Re: 死にゆく君に祝福を ( No.23 )
- 日時: 2016/04/28 16:28
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
北見は、窓を見上げ何かを見つめていた。
「……我々は共存出来ない。当たり前の事だけど、悲しいねぇ」
「鬱陶しいよ。全く……」
暫く、時が経ち午前十二時。
北見達は、戻される。
佐久間は、即座に移動し三人の男女と北見に機械の部分が有る事を見破り質問する。
「……何故、体の一部が機械なんだ?」
「僕は、以前、殺されかけたんだよねぇ。左手、両足、切断されて」
「……え?」
上戸は気分が悪くなる。
光岡も驚く。
「まあ、犯人は現行犯逮捕されて刑務所に捕まっているけど。元の世界では、俺は病室で置き物状態。……でも、個性と思えば問題無い。まだ、慣れないけどねぇ」
「置物状態って……。それじゃ、その三人も……」
「……そうだよ。僕がいないと、生きていけないんだ。彼等は……」
佐久間は、躊躇する。
「全く、差別は嫌いだ」
「差別なんかしていない!」
「……そう言う気遣い、いらないよ。ちゃんと、僕を一人のクズ人間として見てくれよ。割れ物みたいに、目を逸らそうとしないでくれないかなぁ。……本当に、こんな機械を選択肢無しでつけられてさ〜。便利だけどね。個性死んじゃうじゃん。まあ、達が悪い差別よりマシだけどね」
三人の男女は、佐久間に怯える。
「……何か、白けちゃったな。上戸君なら、僕の気持ちも分かると思っていたんだけどなぁ」
「……!……俺は……」
「……君の超能力は、もしかして、この世界の景色を変えてくれるかもねぇ。行くよ、子羊ちゃん達と……志野」
「……亮介」
「そんな顔するなよ。今まで隠していた事は謝るからさ」
「……私もね。隠していた事があるの。私のお腹には……」
「知ってるよ。……さて、俺は優しいから、元の世界で同じ扱いを受けた者達には、食料だけで、助けてあげるよ」
北見は、志野と殴られて気絶していた光岡と三人の男女を連れていく。
佐久間は、北見を見る。
「……俺は、どうすればいいんだ。あのまま、北見を崩壊させるか、見逃すか」
「……見逃してくれ」
「……左手と両足が無いからか?」
「誰であろうと、殺人は犯罪だからだ」
「……悪人でもか?」
「そうだ」
「お前を洗脳させようとした奴でもか?」
「そうだって言っているだろうが!」
山本は二人を止める。
「もう何やってんのよ!上戸の言う通りよ!佐久間!」
「……そうだな」
一方、別のステージの案内所では。
「……私の能力は、未来予知。別のステージに移動した佐久間を未来予知して、案内所を見つける事が出来たわ……。さて、あいつの殺戮を止めないと。このゲームは無意味すぎる……!」
一人の女性が、佐久間を追い上戸達のステージに向かう。
- Re: 死にゆく君に祝福を ( No.24 )
- 日時: 2016/05/02 15:28
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
暫く、佐久間と上戸と山本と藤井の前に人は来なかった。
「……北見が何かしているのは間違いない」
「そんな事ないはず……!」
「恐らく、参加者を取引で仲間にしたか……殺したか……」
藤井は体の匂いを嗅ぐ。
「毎日、元の世界で風呂に入っているのに、何だこの匂いは……」
「藤井さん、体を拭くタオルが、あるのでこれで拭いて下さい」
「すまないね……。タダで提供してくれるなんて、理解出来ないけど、ありがたい!」
「……あいつが現地点でクズだよ」
山本はイライラしながら、病院のトイレに行く。
一方、北見は。
機械の身体を動かし、参加者を手当たり次第に探していた。
人数は数十人と大幅に増えていた。
北見は、一人の女性を見つける。
「……俺と同じ別のステージから来たのか?」
北見は女性の元へ行く。
「どうも」
「……貴方の未来は、どう足掻いても絶望。今をちゃんと生きるのよ。……後は、志野ちゃんか光岡ちゃんのどちらかをちゃんと選ぶ事ね」
女性は立ち去る。
「……へぇ。未来予知ね。これは随分と便利な能力」
「ただ、恐れないで。未来は変えられる。私はこの悲惨な未来を変える為に来たのだから」
「君の名前は?」
「丸神 美雪(まるがみ みゆき)」
「……この世界では珍しい善人だねぇ。遊びたいけど、俺は……同じ境遇の人間には手を出さない主義でね」
丸神の左手の小指は、無くなっていた。
「それじゃ、まためぐり逢えたらいいね」
丸神はその場から立ち去る。
「……上戸と、合いそうな人だね。まあ、今はこの世界を楽しむか」
- Re: 死にゆく君に祝福を ( No.25 )
- 日時: 2016/05/06 16:18
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
上戸と佐久間と山本と藤井は、食料を確保していた。
「よし……他の参加者や北見はいない。急いで、病院に戻り、食料の確認だ。今回は案内所の捜索は打ち切りとする」
佐久間は淡々と状況を説明する。
藤井が文句を言いながら、食料が入ったケースを運ぶ。
山本は佐久間と話す。
「何か不思議だね。本来は殺し合っていかないと駄目なのに、共存しあうなんて……」
「そうだな……。少なからず、上戸の影響が大きいかもな。しかし、俺達は、欲に負けた愚か者。本気で共存なんて考える訳が無い。上戸はその点から言えば、あまりにも甘すぎるな」
「……でも、彼についていけば、出来そうな気がしない?」
「……互いの欲望も語らずに、共存は不可だ」
「此処に来た……理由を話さない限り、共存出来ないって事?」
「ああ。所詮、我々は疑う事でしか生きる事が出来ないからな」
佐久間達の目の前に、丸神が現れる。
「佐久間」
「……丸神……?」
「其処の皆さんは、離れてね。佐久間は、凶暴な極悪犯だから」
「この世界では、犯罪も何も無いだろ?」
「この戦いは無意味。私はこのゲームを終わらせに来た。貴方だって分かっているはず。……奴が開催させたこのゲームの意味を」
上戸達は驚く。
「その上で、俺は……願いを叶えさせて貰う」
丸神は、腕を空に向ける。
すると、腕から草で出来ていてトゲがついている蔓が大量に現れる。
「君だって、人を殺しているじゃないか」
「……違うわ。これは、私の大切な人から頂いた最期のプレゼントよ」
佐久間は気まずい表情を見せる。
「言いなおした方が良いかしら?貴方に致命傷を負わされた人からの憎しみの籠ったプレゼント。私は貴方を憎んでいないけど、私のような人が現れないように……貴方を此処で封印してあげる……。
そして、運命を変えてやる」