複雑・ファジー小説
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- Resistance of Destiny リメイク
- 日時: 2016/05/12 22:43
- 名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)
題名の通り以前書いていた作品のリメイクです。
前よりは上達している……と思いたいなぁ
以前募集をさせてもらっていたオリジナルキャラクターは勿論そのまま使用させていただきます。
- Re: Resistant of Destiny リメイク ( No.1 )
- 日時: 2016/05/14 10:25
- 名前: 黒陽 (ID: ncbR.D/v)
因みに訂正点は、
・主人公を超オールラウンダーなチートではなく一点特化のチート化
・主人公含む武装の変更
・主人公含む名前の変化、登場人物を一部なくしたり、増やしたり
etcetc……です。
西暦、2167年。エジプトに正体不明の化け物が出現した。その化け物は三体ながらも四日で、エジプト国民のおおよそ九割を鏖殺。その手はエジプト近隣の国家にまで延び始めていた。
それに対し、全世界の国家がこれを殺そうと、空爆、無数の戦車、ミサイル、そして放射線の無害化に成功し、それでいて破壊力を増した核爆弾にまで、傷の一つもつけることが出来なかった。
その間にも、最初は数匹であった化け物——神獣と名付けられたそれは、次第に数を増やし数千匹にまで数を増やしていた。
そんな、人類の歴史の終焉の時が訪れたと人々が嘆いていたそのときだった。
生存国の全チャンネルを乗っ取り、世界中にある放送をばらまいた浅黒い肌の男が現れたのは。
「君達が死ぬのはまだ早い。さぁ武器をとれ。反撃せよ。武器は既にある」
そう言い、男は消えたが、彼が消えた後に各国の軍事拠点には見たこともない武装の数々があったのだ。
それを使い、人類は反撃を始め、その10年後。
最初に出現した神獣及びその取り巻き達——神々の眷属達を次々と撃破していった。
しかし、それまでに払った犠牲は多大なものだった。
アフリカ、ヨーロッパ、日本を除くアジアの国々は神獣達によって国としての機能を完全に停止。
人口の八割が惨殺され、残りの二割は奴隷のような境遇になったという。
これにより、世界人口のおおよそ八割が神獣達の手に落ちた。
しかし、そのまま終わろうなどと人間達は大人しくはなかった。
2180年、残された人類は神獣に対抗すべく、Resistant・of・Destiny通称RoDを設立。
そして、この世界に潜む邪神達と交信をし、神獣を殺せる唯一の武具——滅神器を創造し、再び世界の覇権を握るべく行動を開始した。
そんなものは夢物語だと。八年前の俺は思っていたんだ。
- Re: Resistance of Destiny リメイク ( No.2 )
- 日時: 2016/05/15 14:53
- 名前: 黒陽 (ID: ncbR.D/v)
「ハァッ……ハァッ……!!」
燃える街中。魑魅魍魎が蔓延り、町を破壊していく最中、二人の、少年と少女はひたすらに走る。
走る途中には倒壊したビルや破壊された家。
もはや原型を残していない焼死体がゴロゴロと転がっている。
周りに漂う煙と鉄臭さで鼻がいかれていた頃に少女は涙を溢した。
「パパ……ママ……!」
「大丈夫だよ。おじさん達もちゃんと生き残ってる。今は自分達が生き残る事を考えよう。ちゃんとRoDの人達が助けに来てくれる。頑張ろう、こころ」
少女と少年は、涙を溢し、それを励ましながらも決して足は止めない。止まったら死が待っているだけだという事は幼いながらも分かっていたから。
そして、少年——白影志龍は自分がこんな励まししか言えない無力さを呪った。
少女——こころと合流する前に自分の両親は既に目の前で殺され、二人の親友は連れ去られた。
自分の眼前で起こったモノに対して無力だった自分が。果てしなく憎かった。
だからこそ、この幼馴染みだけは、必ず生き残らせると心に誓う。たとえ自分の命を犠牲にしてでも。
しかし、その決意を嘲り嗤らうかのように絶望の象徴は、運命は少年達の前に立ち塞がる。
五メートル程の巨体。それは蟷螂と蟻を醜悪にし、融合させたような姿だった。
全身に血管が浮き出ており、左胸にあるであろう心臓は絶えず脈動し続けている。
血色の目は少年達を食らえる、殺せると思ってか恐ろしいほどの歓喜を宿していた。
両腕の鎌をギチギチと鳴らせ、少年達に一歩一歩歩み寄ってくるその神獣が、鎌を振り上げたその時だった。
こころに向かって降り下ろされようとした腕が突如飛来してきた謎の大太刀によって弾かれた。
「え……」
志龍は呆然とする。死を覚悟しこころを庇ったのだから。目の前の光景が見えなくとも、覚悟したその痛みがないというのは驚くものだろう。
そんな彼だが、痛みが来ないとわかると、すぐに神獣に向き合い、逃げ出そうとするが。
己の身を救ってくれた大太刀にその道を阻まれた。
《運命を覆せ、白影志龍。お前にはそれを成せる力がある》
そう、隣にいるこころでもない。不思議と頭の中に直接響くような男性の声がした。
言っていることは、滅茶苦茶で、意味はわかりなどしないが、彼が今すべき事は分かる。
——さぁ剣を握れ、反撃を開始しろ。俺にはそれが出来る。成せるだけの力が眼前にあるのだから!!
彼は、本能的に目の前の漆黒の大太刀を握った。
そして、自然と言うべき言葉が分かる。それはさながら生物が生物を喰らうかのようにごく当たり前に。
「狂竜神の鎧《タイラント》ォオオォォオォオ!!!!」
そして、その言葉を切っ掛けにそれはどこからともなく現れた。
鎧と言うには、金属的ではなく生物に近く、それはさながら神話の存在——ドラゴンを思わせる。
その漆黒の装甲にはまるで血管のように、籠手、兜、足甲に蒼い筋が走っている。
兜はドラゴンの頭をイメージされているようで、十字に瞳孔が割れた瞳のようなものがデザインされている。
その鎧——狂竜神の鎧は瞬く間に志龍の小さな体に纏うべく自ら形状を変化させる。
そして、完全に纏うと志龍はこころを守るべく、神獣の前に立ち塞がる。
『ジャマヲォォオスルナァア!!』
虫型の神獣はそれがどうしたと言うように叫ぶと、鎌を降り下ろす。
が、それを志龍は真剣白羽取りをして防ぐと、鎌を腕ごと引き千切ると、跳躍し神獣の顔面に向かって拳を突き出す。
子供の筋力では逆に殴った方が重症を負うほどの装甲を持つ神獣だが、狂竜神の鎧は志龍の筋肉を数百倍に強化することで、その攻撃を神獣の装甲を打ち砕けるだけのパワーを引き出したのだ。
当然のごとく、それを受けた神獣の頭は吹き飛び、まるで噴水のように血が吹き出す。
「し……りゅう…?」
「大丈夫だから。早くいこう、こころ」
血塗れになっていない方の手を使い、こころを背負うと、一気に駆け出す。
数百倍にまで強化された筋肉にプラスされ狂竜神の鎧も、志龍の思いに答えるべく脚力を強化する。
そうやって、この殺戮現場を駆けること、数十分。いやもしかしたら一分やそこらの事だったのかもしれない。
志龍は、生存者の救出に来たのであろうRoDの軍事用ヘリコプターを見つけると、その中に駆け込む。
その中には、無数の屈強な男達がいたが、そこで一番に目を引いたのはその中にあった穢れ無き純白。
白銀の髪を持つ女性だった。彼女はこんな戦場には相応しくないであろう胸元が大きく開かれた純白の鎧を着ており、それは戦乙女を彷彿とさせる。
腰には、白銀の剣を二本引っ提げており、剣の事を全くと言って良いほど知らない志龍にもそれが、確かな業物であると分かるのと同時に、神聖な雰囲気を纏っている。
彼女のラピスラズリの瞳は驚愕によって見開かれており、その瞳は真っ直ぐに志龍を捉えていた。
「こいつをお願いします」
しかし、彼らの驚きを意に介する事もなく、志龍はおぶっていたこころを離すと、直ぐに外に向かおうとする志龍を、こころは呼び止めようとする。
「志龍……いっちゃやだよ……!」
彼女は、唯一の心の支えを失うことに、涙をこぼすが、志龍はそれに対して、優しげに言う。
「いいか、こころ。ここがたぶんこの町のなかで一番安全な場所なんだ。ここでお留守番してるだけだ。それにお前は、一人じゃなくここには頼もしいお兄さん達が居てくれるんだ。たった一人のお留守番なんかよりもずっと簡単だ。ここで俺が帰ってくるのを待ってろ。大丈夫だ。お前は偉い子だ。な?」
志龍は、狂竜神の鎧越しだが、こころの頭をくしゃくしゃと撫でる。
そして、外に行こうとする志龍の隣に穢れ無き純白が立った。
「手伝ってくれるのか?」
「ええ。あなたがなぜその鎧を纏っているのか等の質問は後にして、今は町に蔓延る魑魅魍魎共を駆除するのが先です。
私は《銀翼》のエーデルワイス。往きましょう少年。この町の仇をとりに」
穢れ無き純白——エーデルワイスは、腰に引っ提げた二振りの剣を抜刀し、志龍と共に化け物どもを駆り立てるべく、戦場に突っ込んでいった。
- Re: Resistance of Destiny リメイク ( No.3 )
- 日時: 2016/05/15 21:17
- 名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)
業火に包まれる、戦場を漆黒と純白の彗星は駆ける。
無数の神々の眷属を、白銀は二刀で切り裂いていき、漆黒は己の拳で、蹴りで打ち砕いていく。
どす黒い血潮が舞い、眷属は地に沈んでいく。
眷属を打ち倒しながらも、エーデルワイスは志龍の方を見る。
(これが、先程まではただの民間人だったというのですか……)
先程、数十分前まではただの無力さに嘆く少年が、狂竜神の鎧を手に入れてからはただ敵を打ち倒す暴力装置のように骨を砕く。
(おそろしい成長速度……否、これは最早進化だ)
この年ならば殴ったり蹴ったりするのは喧嘩だけだったのだろうし、何か武道を習っていたというわけではないのだろう。完全に竜の力を体現している。
それは、究極の暴力。
その間にも、志龍は眷属の心臓を抉り出し、握り潰す。
(これは、負けていられませんね)
エーデルワイスは、ギアをもうひとつ上げる。
すると、スピードは数倍にまで上がり、生身で狂竜神の鎧の身体能力強化のスピードについていけるほどに上がる。
「エーデルワイスさん。ちょっと跳んでくれ」
そう言うと、志龍は脚を思いっきり地面に叩きつけた。
「竜脚震撼《ドラゴンスタンプ》!!」
すると、地面が波打った。それはさながら湖に石を投げ込み水面が揺れるように。
そんな、馬鹿げた攻撃力によって地底に隠れていた神々の眷属が、飛び出してきた。
そこを、エーデルワイスが二刀を振るい、人間で言えば頸動脈にあたる部分を切り裂いた。
「グッキル」
「ナイスアシストです。少年。
——もう奴等はいないようです」
「そうか……あれ……?」
狂竜神の鎧が、解除されたとたんに志龍は意識が混濁していく。
まぁそれは当然と言える。この狂竜神の鎧はあらゆる能力を数百倍にまで強化する滅神器だ。
そんな無茶が十歳の体に耐えきれるはずがない。
むしろ、意識の消失程度ですむ方がおかしいのだろう。
それは、装着時間が短いからだろう。あと少しでも装着していれば全身骨折は免れなかったはずだ。
「ゆっくりお休みなさい。少年。……いや若き暴竜よ」
- Re: Resistance of Destiny リメイク ( No.4 )
- 日時: 2016/05/22 22:21
- 名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)
「ん……ここは……?」
「アメリカ……らしい……よ?」
見知らぬ白い天井を真っ直ぐに見つめ、病院にあるようなベッドに寝ていた志龍は横を見ると、そこにはもう見慣れた、そして安心できる桃色の神を持つ少女——神無月こころがパイプ椅子に座って足をプラプラさせながらお菓子を頬張っている姿はなんとも微笑ましい。
「お前……俺にも一個寄越せよ」
「しょうがないなぁ。口……開けて」
「いや、俺の見舞品だろうが」
こころはワッフルの様なものを取り出すと、志龍の口に運ぶ。それを躊躇いなくパクりとくわえる。
「美味いな……これ」
「でしょ〜?」
「何でお前が誇らしげな顔してんだよ。
……俺、何日ぐらい寝てた?」
「約一週間ですよ。シリュウ」
病室のドアを開け、入ってきたのは昨日——実際は一週間らしいが——とは違い、ジーパンに薄手のカーディガンを羽織ったエーデルワイスが、入室してくる。
その手には、志龍が見覚えがある漆黒の大太刀を持っていた。
「それは……たしか」
「ええ。貴方の滅神器……狂竜神の鎧の副武装。切断者《シュヴェーアト》です。直ぐに必要となるわけではありませんが、一応」
「ああ。ありがとうございます」
「あと、私達の元帥がお呼びです」
大太刀を受け取り、ワッフルを完全に食べきった志龍は次に言われた言葉にしばらく身を固めた。
「はい?それってつまり……?」
「Resistant of Destinyのトップが貴方を呼んでいます。シリュウ」
——おいおいおい。何がどうなってる?
あの後、ごっつい軍服を着た中年男性が志龍を抱えると、有無を言わさずこの豪奢な部屋につれてこられた。
冷や汗をダラダラ流しながら、自分が何を言われるかと待っていると。
「そこまで緊張しなくてもいいよ。白影志龍くん」
いつの間にか、白髪頭の優しげな老人が目の前のソファーに座っていた。
純白のローブに身を包み、横に置いてある杖から自分のイメージする年老いた人というのにピッタリと当てはまる人だ。
彼を真っ直ぐに見つめる黒色の瞳は果てしない叡智を感じさせる。
「何か飲むかい?」
「あっいえ、大丈夫です」
緊張のピークに達していた志龍は、なんとか言葉を捻り出すと、志龍も同じように彼を見つめる。
なんというか、Resistant of Destinyという所謂軍のような組織の長のようには見えはしない。
それこそ、近所にいたお年寄りと変わりはしない。
「私がこの組織の元帥には見えないかな?」
「!!……すみません」
「いや、別に怒っている訳じゃないんだよ。自分でも自覚はしているんだ。この私……ヴラド・ニューゲートは、元帥にしては優しすぎる顔をしている。私の娘にもよく言われるんだ」
そのような柔和な口調で語りかけてはくるものの、一度滅神器を纏い、邪神と正式ではないが契約を結んだ彼にはその奥深くに潜む暴虐な神格の存在を彼の第六感が告げている。
「そのような事はありませんよ。全盛期は串刺し伯爵とまで呼ばれた貴方が。顔は知りませんでしたが、貴方の奥から漂ってくる殺気の匂いは隠しきれませんよ?」
「さすが、あのニーズヘッグから選ばれただけはある。
邪神の方から契約者を選ぶケース自体稀だというのに、何人もの人間を狂気のどん底に叩き落としたあの竜が選んだのが齢十歳の少年だと聞いたときはひどく驚いたが……納得しようじゃないか。君は確かにあの竜に選ばれた戦士だ」
優しげな笑みから一転して、暴虐な笑みを浮かべる——恐らくこちらが本性なのだろう——ヴラドがさらに続ける。
「さて、話を本筋に戻すが……君はこちらの完全な誤算であったが、Resistant of Destiny内で最強クラスの力を持つニーズヘッグと契約を持ちかけられ、それを了承した。それがどのような形であったとしても、君は滅神器を得たわけだ。その時点で君にはこの組織に所属してもらう。残念ながら拒否権はないんだ。了承してくれるね?」
志龍は、黙って頷く。幼いながらも自身の手にした力の大きさは当然理解している。自身の奥深くから溢れ出す邪悪な力に飲まれそうなほどに。
「しかし、戦闘の素人が強大な力を持っていけば暴走させ、仲間を死なせる危険性がある。エーデに力の制御方法を教えてもらいなさい。戦場に出るのはそれからだ」
「……わかりました。ところでこころは……?」
「身の安全と身元は保証しよう。彼女自身が戦いたいと言えば別だがね」
「わかりました」
志龍は、取り敢えず聞きたいことは全部言ったと部屋を出ていく。
ドアを出た後、切断者を思い切り握りしめる。それは彼なりの決意だったのだろう。
そして、八年後——