複雑・ファジー小説

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星ノ魔法使イ
日時: 2017/05/06 00:20
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

人間が、“魔法民”と“普通民”に分けられるようになった近い未来の話——

× × × × × × × ×

はじめまして、綾原ぬえです。
初投稿作品ですが、どうぞよろしくお願い致します。
更新が遅れることが多くなります。週1掲載を目指します。

2017/05/03 イラスト投稿の「小説イラスト掲示板」に登場するキャラクターたちのイメージを貼りました。良かったら、見てみてください!

目次
 序章 (1)>>01 (2・3)>>02-03 (4)>>04 (5)>>05 (6)>>06 (7)>>07 (8)>>08

 章間 世界史(1)>>09

 1章「幼き星々たちよ」
    (1)>>10 (2)>>11 (3・4)>>12-13 (5)>>14-15-16
    (6)>>17-18-19 (7)>>20-21 (8)>>22

Re: 星ノ魔法使イ ( No.15 )
日時: 2017/04/22 12:28
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

「大和楓です。光とか、火とか、明るいのが得意です。部活は入ってません。よろしく〜」
 若干引き気味のクラスメイト達が、ぱちぱちとまばらに拍手を送る。
「はぁ、前とあんま変わってねーが仕方ないか。よし、座れ。じゃあ次、菱形」
「うぃっす、俺の名前は菱形湊(ひしがたみなと)。得意な魔法は、火属性と、地属性だけど、ほかにもいろいろ使えます。あと、魔法民じゃないですが、仲良くしてもらえると嬉しいかなーって思います。一年間よろしくお願いします」
 いたってまじめに自己紹介をした湊。後ろやら前やら、近くの席のいつものメンツが文句を垂れていた。
「面白くなー、菱形。ほんと面白くないわー」
「うっせ三ヶ瀬、黙ってろ。じゃ、お前は面白い自己紹介するんだよな?」
「もちろん! アンタみたいに面白くない自己紹介なんてありえないから」
 自己紹介が次の知広は、勢いよく立ち上がった。
 知広の短く切りそろえられたボブヘアーが軽く揺れた。
「あたしの名前は三ヶ瀬知広でーす。よろしく!得意な魔法は——」
 知広は得意げに指を鳴らす。
「こういうやつです」
——水属性初級魔法 水羽(みずは)
 突如、透明な蝶がひらひらと知広の周りを飛び回り始めた。どうやら知広の魔法らしい。
「おい三ヶ瀬、勝手に魔法使うなよ」
「先生には言われたくありませせーん」
 シュッと手でその蝶を消し去ると笑顔で言った。
「こんな感じでーす。一年間よろしくねー、皆」
 自分の席に腰を下ろす。そして、横の席に座っている湊に問いかけた。
「どう、面白かった?」
「全然。てか、魔法ショボいわ」
 湊の言葉にがっくり肩を落とす知広。
「そんなことありませんよ! すごかったです! わたし、驚いちゃいました!」
「ぐすん、そんなこと言ってくれるのは夢華だけよぉー!」
 自分の斜め後ろに座る夢華に抱き着かんばかりの勢いで叫ぶ知広。
「後ろうるせーよ! 次、御室」
 逸樹からの注意が入った。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.16 )
日時: 2017/04/27 22:26
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

「御室日向(みむろひなた)だ。光と闇。一年間よろしく」
 暗ーいオーラを放ちながら、自己紹介を済ませた日向。影が薄く、暗っぽい性格だが、光属性と闇属性という対の魔法を操るなかなか侮れないやつだ。
「御室、暗ぁー。そんなんじゃ友達出来ないよ?」
「別に。友達は、生きるために必ず必要なものではないわけだし」
 知広の問いかけに対しても、端的に、すっぱりと言い切った。
「あと、俺には湊がいるから」
 日向と湊は幼いころからの仲で、いわゆる幼馴染、竹馬の友といったところ。どこに行くにしても、兄弟のようにいつも一緒にいる。
「素敵ですねー、幼馴染って」
 月並みな言葉を発する夢華。自身に、幼馴染や兄妹がいないこともあり、そういった二人の関係には憧れを抱く。
「いや、きもいわ。さっさと菱形以外に話せるやつ探したほうがいいね。こいつはこいつでいろいろ人気みたいだし」
 知広の辛辣なコメントを聞き、楓は手にしていたノートや本から目を離し、教室内へと目を向けた。
 何人かの生徒がこちらをじろじろと見、なにやら話し込んでいるようだった。確かに、うるさくしているし、目立つことこの上ないグループではある。しかし、そういった雰囲気で見てくるわけではないようだった。
 楓は、担任や周りに気付かれないようにそっと魔法を発動させた。

——風属性中級魔法 遠聞の風(えんぶんのかぜ)

『あんな奴ら、よく「大和」の姫と話せるよな』
『菱形は“普通民”、御室は、あの「御室家」のくせ闇を使う』
『極めつけは“特別民”のチビだろ——』

「おし、じゃあ全員自己紹介終わったな! えーっとこの後の予定だが——」
 逸樹の言葉ではっと現実に引き戻される楓。
 さっきまで盗聴まがいな行為の対象となっていた何人かは、会話をやめ、逸樹の話を聞き始めている。
 面倒なことになりそう、と楓は心の中で呟く。そういう芽は早めに摘んでおいたほうがベストかも、とも。
「これから、入学式の準備だ。可愛い後輩の入学だ、全員気合い入れろよ」
 逸樹の話の内容は、右から左へ、ただ流れてゆくだけだった。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.17 )
日時: 2017/06/04 00:10
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

(6)

 どうしてこうなったッ、と三國時子(みくにときこ)は頭を抱えた。美しい黒髪がぐしゃぐしゃになるほどに。
 今、時子の目の前で展開されている魔法陣は、とんでもなく巨大だった。それこそ、二トントラック2、3台を丸ごと包み込むくらいの。
「おい、夢華、日向、私は何をしろと言った?」
「え、えへへ……」
「すまない、会長。俺には止められなかった」

 国立楸原(ひさぎはら)魔法高校大広場——入学式当日は新入生のクラス割りなどが張り出される場所だ。
 今年は、ここにそれなりに目立つ魔法のオブジェ、または可動式魔法を作る予定になっていた。それを企画・立案したのが楸原魔法高校生徒会長三國時子だった。
 時子は、その企画を生徒会役員である夢華と日向に相談していたのだが、
「あはははは! ここ、もっと盛り上げましょう!!」
「おう! てか、この文字式だと、爆発するんじゃ?」
「大丈夫! あたしがここに抑えるの描いてるから」
 二人がこの魔法の依頼をしたのが楓、知広、湊の三バカだったのだ。
 夢華と湊は、時子に必死に弁解、もとい説明をしていた。
「魔法についてはピカイチですし、問題ないと思って依頼したんです。まじめにやってくれるとも約束してくれましたし」
「あの時は、3人とも、真剣に考えていたんだ。これは嘘じゃない」
「じゃあ、何が嘘なのよ!」
「「まじめにやるといったことです」」
 やられた、とがっくり肩を落とす。
 こんなことなら、三年生のクラスメイト達に頼めばよかった、と後悔する。
「ま、まぁ会長、まだ完成したわけではないので、今ならまだ間に合うかと……」
「じゃあ、さっさと止めてきて!」
 涙目で、懇願する時子。しかし、時は無情にも過ぎていっていた。
「よし、完成ー!!」
「これは、この高校の歴史に名を残すわね」
 自慢げに、時子たちのほうに歩みを進める楓と知広。
 かなりの自信作と見える。湊は後方で最終チェックを行っているが、それもお構いなしだ。
「おい、お前ら! ホント、余計なことしないで……!」
「センパーイ、そんな情けない顔しないでくださいよー」
「そうですよ、会長。私たち何もまずいことなんかしてませんよ」
「お前らの存在そのものがまずいよ!」
 ぎゃあぎゃあと言い争いをしていると、時子達の背後から数人の大人が現れた。
「あらあら、当初の予定よりも、ずいぶんと立派になったようですね」
 金髪の麗人、エリト=フルネミア校長と、
「こんなアホみたいに大きい魔法陣、誰が発動させるのかのぅ」
 顎鬚を撫でる老人、千神礼八郎(ちがみれいはちろう)元帥だった。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.18 )
日時: 2017/04/30 15:10
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

 時子は、驚きと恐れ、それから敬意の入り混じった不思議な感情を味わった。目の前にいる老人、その人に対してだ。
 やっとの思いで、言葉を絞り出す。
「ち、千神元帥!! なぜ、こんなところに——」
「やめい、その呼び方は。ここにいるときの儂は、ただのジジイじゃ」
 はっはっは、と豪快に笑う老人——その正体は、この国の防衛軍元帥にして、世界に二十人といない“星ノ継承者”。ゆうに70を超えたその老体から繰り出される魔法は、経験と実力からなる超攻撃型。普通のものであれば、近くによるだけで、その覇気に押され、話すことさえままならなくなってしまう。
「わぁ、千神のおじさま、どうして今日こちらに? 本来なら、明日なのでは?」
「おお、貴様は緋信んところのガキか。おおきくなったのぉ」
「はい、楓です。で、どうして?」
「それは私から説明します」
 エリトが楓と千神の間に割って入った。
「元帥は、先ほどまで私の部屋に来ていらしたの。近くまで来たとか言って。で、その時に、この魔法の展示のことを話したら、見てみたいって」
「あぁ、なるほど」
 楓は、猫被りな笑みを浮かべた。
「で、どんなかんじですか? 進み具合は」
「ただいま完成しました!」
 知広が敬礼して千神にアピールする。
「そうかそうか、それはよかった。じゃがの、お嬢さん、こんなおっきい魔法陣にどうやって魔力を供給するつもりじゃ?」
 確かに、二トントラック2・3台を丸ごと包み込めるくらいの大きさの魔法陣を発動させるには大人の魔法使い5・6人は必要になってくるはず。時子も、そこが気がかりで仕方なかった。当初の予定では普通車一台分ほどの大きさの魔法陣の予定だったから、そこまで大きな魔力供給機械は用意していない。
「いや、俺が供給するんで問題ないっス」
 手をあげたのは湊だった。
「ほう、貴様がか?」
「うす!」
 湊は早速両手の指を鳴らし始めた。制服のブレザーを脱ぎ捨て、白色のカッターシャツの腕をまくる。
 魔法陣の描かれた地面に両手を付けると、大きく叫んだ。
「母なる大地へ力を送らん——流動!!」
 突如、巨大な魔法陣が青紫色の鈍い光を発し、粒子を巻き上げながら展開した。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.19 )
日時: 2017/05/01 21:54
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

 氷の骨組み、それに巻き付く青々と茂る蔦や草、太陽に向かって力強く開いた花々、光と影で形作られた蝶や鳥、天使に妖精。火の粉と水の粒子、雪の結晶がふわふわと舞い、土や石で建てられているミニチュアサイズの城や塔に明かりを射す。

「すごい……、きれい」
 時子の口から思わず言葉が出た。
 形容するならば、まさに異世界。そんな可動式魔法が出来上がった。
「ほう、これはまた見事な」
「あの三人にしては、繊細な仕事ですね」
 千神とエリトも、感想を述べる。
 当の製作陣は「まさかこんなものが出来上がっていたとは」と、ある意味の驚きをもっていた。
「まーさかこんなになっちゃうとは」
「俺ら、結構すげーもん作ってたんだな」
 ほー、と見上げる知広と湊。二人のつぶやきを聞いた夢華が、仰天した。
「え! これ、設計とかしてないんですか!?」
「まさか。そんなめんどいこと、私たちがするとでも?」
「普通はしますよ!!」
 さも当然といった風な楓の言葉に、ツッコミを入れる夢華。
「でも、柚木の言うとおりだ。こんなのどうやって作ったんだ?」
「えーっと、魔法陣にいろいろ描いてたらこうなったとしか……」
 えへへ、と頭をかきながらおどけた感じで答える知広。
 千神は、知広に近づくと、
「お嬢さん、もしこれが君の言うように“適当に作った”とするならば、それは大したことだぞ?」
「お嬢さんはよしてよ、お爺さん。あたしの名前は三ヶ瀬知広」
 知広って呼んでね、というと、さらに付け加えた。
「それに、完璧偶然ってわけじゃないしね。あたしたち三人で一応テーマ、決めてたから」
 三ヶ瀬さすがに元帥にお爺さんはダメだろ、とみんなが言いたげな中、知広は一人堂々として、さらに続けた。
「“新しい世界”、この作品にピッタリでしょ?」
「うむ、そうじゃな。良いと思う」
 はっはっはっと、快活に笑いながら千神は言った。
 お茶目な知広ちゃん、ではすまされないほどの無礼をはたらいているが、それに対して動じないそぶりを見せる千神。彼にとって、ここまではっきりとモノを言い、遠慮なしに“お爺さん”と言ってくる若者は稀だった。そのため、寛容な気持ちでいられたのだ。
 そんな会話をしていると、タッタッタと走り寄ってくる一人の男性が現れた。
「元帥、こんなところにいらしたんですね。我々、校内を探し回っていたのですよ! 勝手にうろうろされては困ります」
 スーツ姿のその男は、立ち方からしてかなりの手練れだということが伝わってくる。
「では、私たちはそろそろお暇させてもらいます。あなた達、明日もこの調子で頑張ってくださいな」
 エリトも、この流れで帰るようだった。
「はい、任せてください」
 時子が、責任をもって答える。その姿は先ほどまでの慌てふためいていたり、緊張で硬直していたりした姿とは違い、凛とした、生徒会長三國時子の姿だった。


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