複雑・ファジー小説
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- 星ノ魔法使イ
- 日時: 2017/05/06 00:20
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)
人間が、“魔法民”と“普通民”に分けられるようになった近い未来の話——
× × × × × × × ×
はじめまして、綾原ぬえです。
初投稿作品ですが、どうぞよろしくお願い致します。
更新が遅れることが多くなります。週1掲載を目指します。
2017/05/03 イラスト投稿の「小説イラスト掲示板」に登場するキャラクターたちのイメージを貼りました。良かったら、見てみてください!
目次
序章 (1)>>01 (2・3)>>02-03 (4)>>04 (5)>>05 (6)>>06 (7)>>07 (8)>>08
章間 世界史(1)>>09
1章「幼き星々たちよ」
(1)>>10 (2)>>11 (3・4)>>12-13 (5)>>14-15-16
(6)>>17-18-19 (7)>>20-21 (8)>>22
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.5 )
- 日時: 2017/01/02 22:31
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
(5)
校舎へ入ると、まだあまり人気がなかった。みんな、クラス分けを見ているのであろう。
「2年のSクラスは——、こっちね」
楓が指差した方向には、一つしか教室がなかった。
教室の前まで行くと、まず驚いた。
「なんだこりゃ、めちゃくちゃ広いな」
一年生の時の倍はあろうとんでもなく広い教室だった。
その教室にポツンとたたずんでいる一人の少女。楓たちに気付くと、パタパタと駆け寄ってきた。
「みなさん! 今年も同じクラスですね」
少女——柚木 夢華(ゆうき ゆめか)は小柄な体全身で喜びを表している。可愛げな顔をして、夢華自身もSクラス生——上位15名と特待生に含まれており、かなり強い。
「ほかの奴らは?」
湊がポケットに手を突っ込みながら尋ねた。
「まだ来ていないようなのです。教室を間違えたかと思って焦ってたのですが、ここで正しいのでしょうか?」
「ああ、ここで正しいぞ」
教室に入ってくるまだ若い男性教師。
「お前たちの担任だ。とりあえず好きな席座っとけ」
広い教室のため、楓は座る席を迷ったが、窓際の一番後ろに荷物を置いた。
ちらりと男性教師で2−S担任の名前を確認した。
——2−S担任 箱柳 逸樹(はこやなぎ いつき)
去年3−Sの副担任をしていた先生だと、楓は思い出した。
学生時代も優秀で、主席の座を譲ったことはなかったとか、素行に問題があるとか、いろいろな噂をよく耳にする。
「あの先生って結構有名だよね? 去年の先輩たちが召喚したドラゴンを片手でねじ伏せたとか」
「あー、そういえばそんな事故もあったわね……」
去年の3年生が授業中に呼び出したドラゴン。しかしそれが暴れだしたため、逸樹が叩きのめしたという“事故”があった。
「箱柳先生なら、今年の新入生のSクラスになると思ったのですが——」
「本来なら持ち上がりのはずだった前1−S担任の授業を5分で終了させて、担任の自尊心やらなんやらをズタズタにした奴らがいるから、担任が変わった」
「ってうわ御室!! 驚かせるなよ……」
発言するまで誰にも気づかれなかった彼——御室 日向(みむろ ひなた)は名前から想像できるような明るく女子っぽい男子、とはかけ離れた男である。伸ばしっぱなしの前髪、根暗な性格。何より、
「相変わらず、影うすいな」
「今に始まったことじゃない」
影がものすごく薄い。
「今、日向君のことを指摘して話をそらそうとしましたけど、1年生の時の担任の先生をイジメてたのって……」
楓を含む3人(湊と知広)は、ヒョイと視線を泳がす。
「とぼけても無駄ですよ!! 3人ですよ、元凶は!」
「夢華、そういうあんただって先生困らせてたでしょ!?」
「知広ちゃんほどではありませんよ!!」
「やっぱり、私が一番まとも——」
「「「「なわけない」」」」
「4人そろって、ひどい……」
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.6 )
- 日時: 2016/12/14 22:23
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
(6)
楓の周りには、4人が座っている。ぞくぞくとほかのクラスメイト達も教室に入ってくるが、やはり人数は少ない。
「今年のSクラスは25人と聞きましたが……」
「毎年よりは、少ねーな」
「誰かさんのせいよ」
知広が、湊の言葉に頬杖をつきながら答えた
「誰かさんって、誰のことかしら?」
「アンタ以外にいるとでも、楓?」
ガタリと音を立てて椅子から立ち上がる楓。知広も立ち上がり、肩をゆっくりと回す。今にも一戦始まるのではないかという二人の気迫に、押され気味の湊達。
「まあ、落ち着け」
たしなめようと、日向が声をかけるが全く耳に届いていないようだった。そこへ、
「お前らそろそろ席に着けー」
担任、逸樹の声が教室に広がった。
「とりあえず、いったん休戦ってことで」
「あとで、覚えてなさい」
不敵な笑みを浮かべる二人。
二人が席に座るのを見ると、逸樹が話し始めた。
「じきに始業式が始まる。本来なら担任である俺がお前らを連れて行かなきゃならんが、そこはSクラス生だ。言わなくても分かるだろうが、各自講堂へ向かってくれ」
夢華がぼそりと、
「要するに、めんどいから自分たちで行けってことですね」
「柚木ー、聞こえてるからなー。まあ、結局言うとおりだけどな」
逸樹は、自身の足元に魔法陣を展開させる。
「俺は、後で行くから。じゃあな」
その言葉を残すと、魔法陣と共に消えてしまった。
「すっごい自由な先生」
「本当、もっと自覚を持つべきよ」
愚痴をこぼしながらも、足を行動へ向けるのだった。
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.7 )
- 日時: 2017/06/04 00:09
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)
(7)
講堂は校舎から少し離れたところにある。ステージを中心とした円を真っ二つにしたような形をしており、広さは2000人を収容できるほどらしい。ところどころにステンドグラスがはめ込まれてあったり、緻密なアイアンワークや彫刻など、とても美しい。
そんな講堂だが、一階と二階からなる座席はまばらにしか埋まっていない。
現在、この高校の生徒数は784人、明日新入生を迎えると984人となる。五年制で、4年生からは大学生のような生活を送っている。そのため、この始業式に参加しているのは2、3年生と物好きな一部の4、5年生だけだ。
壇上には長身で金髪碧眼の女性——校長、エリト=フルネミアが立っていた。
「本日から皆さんは、新しい学年に——」
長々と語り始めた。
「ふぁー、あぁ眠い。てか、だるい」
「だめですよ湊君! あくびなんてしたら」
楓の横の座席で大きくあくびをする湊。それを注意する夢華。
瞬間、校長の視線がピクリとわずかに動いた。
「——特に、2-Sは優秀ぞろいだと聞いております。皆さんも、彼らを目標とし——」
ビシッと背をただす湊。
「俺さ、最近気づいたんだけど、校長ってすごい人だよな……」
「あら、今頃? 最初からすごい人よ。誰もあの人の実年齢を知らない時点で」
楓の頬を氷の針が掠める。トスっ、と座席に突き刺さる。
5人が壇上にゆっくりと視線を戻すと
「わ、笑ってる?」
「いいや、あれは笑ってないだろ。目が、目が違う」
知広と日向が分析する。
「……この話はやめましょ。死にたい人がいれば別だけど」
その後、エリト=フルネミアの話は20分余り続いたのだった。
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.8 )
- 日時: 2016/12/18 23:31
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
(8)
教室に帰る楓らはぐったりとしていた。
「長い、長すぎるわ……」
「俺さ、途中寝てたんだけどバレたかな」
湊の一言に、空気が凍り付いた。
「あーんーたーのーせーいーよー!!」
知広がぐわんぐわん湊を揺さぶる。
「アンタのせいで、話10分は伸びた! 校長の目の色が変わった瞬間何かおかしいと思ったけど!!」
少し涙目で訴える。よほど苦痛の時間だったのだろう。
「まあまあ、落ち着いてください」
やんわりととめに入る夢華。
「もう終わったことだし、もう忘れよう」
日向はそういうと、目の前まで来ていた教室に足を踏み入れた。
教室を見渡すと、ある光景が目に入った——担任が堂々教卓に突っ伏しながら寝ている光景が。
「…………。“聖なる光を纏いし守護者よ、我は——”」
「あ、ああああああ! だめです楓ちゃん! 先生が寝てたからって、普通に起こしてあげてください! それ撃つと死にますよ、先生が!」
途中まで構築した魔法を解除すると、夢華に分かるように指差した。
「残念だったね夢華。もう手遅れ」
「えっ」
瞬間、二つの魔法陣が交差した。
「“疾風一刃(はやてひとは)”」
——風属性中級魔法“疾風一刃”——
「“業火滅鬼(ごうかめっき)”」
——火属性中級魔法“業火滅鬼”——
ズザザザァア!! という音と共に緑と赤の光が逸樹に向かっていく。
「——ったく、人さまが気持ちよく寝てんだから、そのまんまにしといてくれよっと」
腕を軽く薙ぐとぱかっと時空の狭間ができた。
——無属性上級魔法“永遠と絶対(エタニティ)”
目をこすり、さも当たり前と言わんばかりにその切れ目は放たれた魔法を吸収した。
“永遠と絶対”は上級魔法でも上位の魔法。普通なら詠唱破棄での発動は難しいはずだ。
「あれ、きかなかったのか?」
「わぁお、逸樹先生あれ流しちゃうか……」
湊と知広は落胆した、というよりも唖然とした感じだった。
「……ん?」
楓は教室内に不穏何にかを感じた。
——さっき、一瞬だけど殺気が……。気のせいかしら?
教室内で魔法をぶっ放す&人に向けて魔法を撃ったことに関して2人は注意を受けているようだ。
この二人以外の誰かが?
「なにぼーっとしてるんだ?」
「え、あぁ何でもないの」
日向の言葉で思考世界から引き戻された楓。
学校生活を純粋に楽しむのはまだまだ先なのかもしれないと思うのであった。
- Re: 星ノ魔法使イ ( No.9 )
- 日時: 2016/12/21 23:00
- 名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)
章間
世界史年表〜中世期より(1)〜
西暦2210年 1月20日 第三次世界大戦開戦。
しかし、同日に異世界“ローラン”が侵略を開始。
第三次世界大戦停戦。
21日 第三次世界大戦終戦。
“ローラン”によって、一日で全世界の人々が共通言語を得る。
それに伴い、体調不良者続出。
世界暦元年 22日 “ローラン”によって新暦制定、世界暦元年となる。
太陽暦はそのまま使用され続ける。
23日 “ローラン”主要7か国と地球主要20か国の首脳会談が行われる。
2月 4日 異能力を持つ人類が現れる。その数地球総人口の35%あまり。
“ローラン”ではそれを魔法と呼ぶ。
また、この異能力は“共通言語取得”に伴う副作用的なものと考えられ、以後遺
伝性となる。
10日 各地ににて、魔法を使う者——魔法民——の反乱が起こる。
原因は、各国政府が魔法民の拘束および殺害を行ったからと考えられる。