複雑・ファジー小説

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星ノ魔法使イ
日時: 2017/05/06 00:20
名前: 綾原 ぬえ (ID: N2Ja7nM7)

人間が、“魔法民”と“普通民”に分けられるようになった近い未来の話——

× × × × × × × ×

はじめまして、綾原ぬえです。
初投稿作品ですが、どうぞよろしくお願い致します。
更新が遅れることが多くなります。週1掲載を目指します。

2017/05/03 イラスト投稿の「小説イラスト掲示板」に登場するキャラクターたちのイメージを貼りました。良かったら、見てみてください!

目次
 序章 (1)>>01 (2・3)>>02-03 (4)>>04 (5)>>05 (6)>>06 (7)>>07 (8)>>08

 章間 世界史(1)>>09

 1章「幼き星々たちよ」
    (1)>>10 (2)>>11 (3・4)>>12-13 (5)>>14-15-16
    (6)>>17-18-19 (7)>>20-21 (8)>>22

Re: 星ノ魔法使イ ( No.1 )
日時: 2016/12/09 23:45
名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)

序章 
(1)

 木々のざわめく音が響いた。
「そこ!!」
 木の葉の隙間から半液状化したどろどろとの物体が姿を現した。
 声の主が、素早く銃口をそれに向けると、紅と黄金の魔法陣が浮かび上がった。
「“紅光烈火(こうこうれっか)”」
 魔法陣を突き破り飛び出した弾は、どろどろとした物体を散らすには十分すぎるほどの威力を持っていた。

≪レベルBクリア レベルBクリア≫

 そんな機械アナウンスと共にこれまでそこにあった風景が崩れた。
 真っ白になってしまった空間に残っているのは、先ほど銃をぶっ放した人物——大和 楓(やまと かえで)と愛銃“紅姫”だけだった。
「紅(こう)、来ていいよ」
 銃に向かって優しく声をかける楓。傍から見れば、ただ独り言を言っているだけの不思議な人だ。しかし——
「っほい! やっほーかえちゃん、この姿ではひさしぶりー!」
 真っ黒なハンドガンが、6、7歳くらいの女児に変化した。
「久しぶりって言ったって、毎日話しかけているでしょ?」
 楓が、紅にそう言うが、
「僕は寂しかったの! かえちゃんなかなかこっちの形にしてくれないんだもん」
 長い長い燃えるような赤髪、鱗のついているしっぽ、そして黄金色の瞳を持つ幼女は、少し拗ねたようにそっぽを向く。
「はいはい、ごめんなさい。今、時間があったから呼んだのだけど……、お昼ごはんでも一緒にどうかしら」
「食べる!!」
 一転、機嫌を直す紅。飛び跳ねて喜びを全身で表している。
 どんなに怒ったり、拗ねたりしていても、食事で機嫌をうかがう。これが、紅とのうまい付き合い方だと楓は確信した。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.2 )
日時: 2016/12/10 23:52
名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)

(2)

 自宅の中にある訓練室を後にした楓と紅。訓練室に楓が入ったのが昼過ぎだったが、時計を見るとすでに六時を回っていた。
 紅にだっこをせがまれ、抱きながら長い長い廊下を歩く。
「今日の晩御飯は何かしら?」
「くんくん……、あ! 今日は親子丼だね!」
 紅に言われて、楓もにおいを探った。
「ぜんっぜん分からないわ。紅は鼻がいいわね、台所まで結構距離があるのに」
「えっへん、僕をなめてもらっちゃこまるよ」
 そこから少し歩くと、二十畳ほどの和室に入った。
 大和家は平屋造りなうえに、すべて和室のため一見してどの部屋がどの部屋かよく分からない。しかし、彼女たちが入った部屋は妙に生活感あふれる部屋である。
 「お嬢様、お疲れ様でございます。本日は、紅様もご一緒なのですね」
 部屋で待っていたのは、二十代後半の美しい女性——春咲 千影(はるさき ちかげ)だった。彼女は、大和家に住み込みで働いていて、炊事に洗濯、その他いろいろをそつなくこなす使用人である。
「まあ、本当に親子丼だったのね」
 千影が部屋に用意していた夕飯は、親子丼とお吸い物に小鉢だった。
「はい、良い鶏肉と卵が手に入りましたので」
 柔らかく微笑む千影。
「申し訳ないわね、突然紅を連れてきてしまって。紅には、私の分を分けるから、用意しなくていいわ」
「やったー! かえちゃんといっしょだー!」
「静かにしてないと、渡さないよ」
「うぅ、静かにしてる……」
「よろしい」
 楓は紅を降ろして座布団の上に座ると、自分の膝の上に乗せた。
「はい、あーん」
 そっと親子丼をすくいあげると、紅の口元に運ぶ。
「んー!! おいしい!」
「そう、それはよかった」
 楓も一口。
「千影、これすごくおいしいわ」
「ありがとうございます」
 千影はそう口にすると、楓に質問を投げかけた。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.3 )
日時: 2016/12/11 21:37
名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)

(3)
「そういえば、お嬢様」
「もぐもぐ……、なに?」
「明日から新学期ですのでお部屋のほうに制服をかけておきました」
「あー、そういえば明日からだったわね。うーん、もう高校二年かぁ。クラス誰と同じかしら」
「クラス分け、今からでもご覧になられますか?」
 千影は、すでに楓のクラスを知っているようだった。
「僕気になるぅー!!」
「はいはい」
 紅の頭をポンポンすると、
「遠慮してく。明日の楽しみに取っておきたいし」
 笑顔で言うと、千影は「さようででございますか」と同じく笑った。
「お嬢様らしいです。明日からは寮での生活に戻りますし、必要なものがあれば何なりと申し付けください」
「ええ、分かったわ」
「かえちゃん! もっとごはん食べたいよー!!」
「はいはい、分かった分かった」
 千影との会話は中断。楓は先に、紅の食事を終わらせることにした。

Re: 星ノ魔法使イ ( No.4 )
日時: 2016/12/11 22:24
名前: 綾原 ぬえ (ID: V.0hQJQJ)

(4)
 ——翌日——
「それじゃあ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
 学校のそばまで車で寄せてもらい、車から降りた楓。
 木々が生い茂っている“国立楸原魔法高校(こくりつひさぎはらまほうこうこう)”は、東京の郊外にある山の一部を切り開いてつくられた学校である。魔法実習用の土地から校舎、寮まであるためとんでもなく敷地の広い学校だ。
 そんな学校は、校門から校舎の昇降口までも離れている。生徒数に対して敷地が広いため、普段ならめったに混みあわない通りだが、今日は新学期——四月であり、みんなクラス分け表を見て一喜一憂していた。
 楓も少し駆け足で貼りだしてある場所までいそぐ。
「きゃー、大和様よ!!」
「あれが噂の1年……てか、もう2年生か」
「うわ、すっげー美人」
「あれで、頭もよくて魔法もできて、天才よね」
 早速頭が痛い。新学期早々目立ってしまった楓だが、知らぬふりをする。
 楓が表の前まで行くと、サァーと道が開く。
「ふーん、まあそっか、Sクラスか」

『2年生 クラス分け
  1位  大和 楓  1574点/1500点
  2位  菱形 湊  1497点/1500点
  3位  三ヶ瀬知広 1494点/1500点
         ・
         ・
         ・             』
 我ながら素晴らしい点数だと思う。1500点満点で1574点って、どうしてだろ?
 考え事をしていると後ろから、バンっ、と背中をたたかれた。
「あーら、朝から元気ね菱形」
「なんで1500オーバーなんだよ。常識的に考えろって」
 菱形 湊(ひしがた みなと)——去年から同じクラスで、魔法民ではない普通民のはずなのにめちゃくちゃ強い奴——が楓の背後にいた。
「普通に解答欄埋めたはずなのだけど……、世の中って不思議ね♪」
「はぁ……」
 ひとのコメントに対してため息とは失礼な、と思っていると
「はーいお二人さん、そこ邪魔だからいったん教室行きましょうねー」
 三ヶ瀬知広(みかせ ちひろ)が二人に声をかけてきた。
 人混みからは「2年のトップ3だぜ」という声がちらほら聞こえる。
「あたし達がこんなトコにいたらほかの人の邪魔でしょ? 二人とも頭いいんだから考えなって」
 やれやれと、腰と額に手を当てた。


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