複雑・ファジー小説
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- 先月の君に
- 日時: 2017/01/09 21:38
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
はい皆さんこんにちは!ひのりと言います!
今日からは、雑談掲示板の中で主に私の妄想力によってできちゃったお話を書きたいと思います
恋愛&ミステリーって感じで
どんな話になるのかは読んでからのおたのしみ!
ってことで、どうか暖かい目で見てやってください。
それではよろしくお願いします。
- Re: 先月の君に ( No.12 )
- 日時: 2017/01/16 22:06
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
「……金坂君。いや、かなとさん……」
ひのりの言葉に、波人……かなとは、目を見開く。
手に持っていた金属バットを地面に落とし、驚いた様子でひのりの目を見つめる。
「なんで……俺だって気付いた?」
「友達のゆきが、歴史を変えられるのは未来人だけじゃないかって。だから、調べてたら、かなとさんの……金坂波人の、名前が……」
「あぁ、そっか、インターネットに載るんだっけ……」
かなとは、そう言うと困ったように笑い、頭をポリポリと掻いた。
ひのりは、「それに……」と言って、目を逸らす。
「それ以外にも、今まで不審に思うことはありました」
「へぇ?例えば?」
「高校生にしては、少し、大人びてると思っていたし、僕が未来から来たって言ったり、タイムマシンの説明や、未来から来たときの反応も、霧島君に比べると、ほとんど無反応だったようにも感じます。斉藤さんの寿命に関しても、反応してなかった。あれは、斉藤さんの実際の寿命を知っていたから、ですよね?」
ひのりの問いに、かなとは反応しない。
それに構わず、続ける。
「それに、途中で、僕の成績の心配もしたでしょう?未来人じゃなかったら、歴史や過去の人間への干渉が成績に関わることに、普通、気付かないんじゃないかなって。未来人の存在を教えていいのか聞いたりしたのは……自分の頃は禁止されていたのに僕が教えたから、今は解除されてると思った、とかですか?」
「……あぁ」
かなとは、重々しくも、肯定した。
それに、ひのりは少し悲しそうな顔をして、続けた。
「タイムマシンを見た時も、質問とかもしなかったですよね。消され方については聞いてきたくせに」
「……昔とやり方が変わってるのか、少し見たかったんだよ」
そう言って、消え入りそうな笑みを浮かべるかなと。
ひのりは、悲しそうに顔を歪め、「どうして……」と言う。
「どうして、こんなことを……」
「……俺は、彩達が高校一年生になるのと同時に、タイムトラベラーとして送り込まれた。お前が実習の時に潜り込んだ時、校内の人間の記憶を弄って自分が一年生からいたように思わせただろ?それと同じで、情報収集をしやすいように、幼馴染である彩と大樹の記憶を弄って、俺と、三人で、昔から幼馴染だったと思わせたんだ。本当は、過去を知るためだけの関係だと思っていた。でも、どんどん親しくなっていく内に……」
「……斉藤さんのことを、好きになってしまった?」
その問いに、かなとは、しばらく迷った後で、小さく頷いた。
「ダメだって……無理だってことは分かっていたんだ。記憶を弄って、昔からいると思わせたところで、一緒にいた時間が違う。彩が、大樹を好きになるのも、無理ないさ。……俺は、大樹が憎かった。俺より、何もかもが劣っているくせに、俺が一番欲しいものを取っていくアイツが……ッ!」
「じゃあ、なんで、斉藤さんを殺した!その理由なら、霧島君を殺せば良いじゃないか!」
ひのりの言葉に、かなとは口を噤み、しばらく迷った後で「……大樹よりも、彩が憎かった……」と小さく呟いた。
「昔から、俺は、才能だけで色々なことを、物を、手に入れてきた。それなのに!俺のものにならない彩が憎かった!俺のものにならない奴なんかいらない!消えてしまえばいい!」
かなとは、そう叫ぶと金属バットを拾い、真横に生えていた木を思い切り殴った。
枝がガサガサと音を立て、葉っぱがハラハラと落ちる。
一瞬、大樹達がそちらを振り返ったが、暗闇のおかげで見えないため、すぐに前を見る。
「……でも、殺したら、後悔した」
小さく、囁くように、かなとは言った。
「いなくなったら、悲しくて、寂しくて。タイムトラベラーの力で戻ってやろうかと、本気で思った。そんな時、実習生のお前が来たんだ」
「……」
「一ヶ月前に戻ったら、俺は、その一ヶ月で、彩を、俺に好きにさせようと奮闘した。でも、どんなに頑張っても、彩は大樹が好きなままだった!そして、大樹も……ッ!耐えようと思ったが、憎くて、仕方がなかったんだ!」
「……だから、また殺そうとした?」
ひのりの言葉に、かなとは頷いた。
自身がなるために頑張ってきた職業に所属する人間の失態に、ひのりはしばらく言葉が出なかった。
「……未来に戻りましょうか」
やがて、その言葉だけが絞り出た。
それに、かなとは立ち上がり、金属バットを投げ捨てた。
- Re: 先月の君に ( No.13 )
- 日時: 2017/01/17 18:06
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
−−−時は少し遡り、多目的教室にて
「犯人は……金坂君だよ」
ひのりの言葉に、大樹は「……は?」と間抜けな声を出した。
「金坂君……って、波人のことか?」
「うん。彼のこと」
震えた声で聞かれた質問に、ひのりは淡々と答える。
それに、大樹は信じられない様子で、「は?……え?」と、しばらくキョトンとした表情をしていた。
やがて、唐突にひのりの胸倉を掴み、「そんなわけないだろ!」と激昂した。
「波人は!波人と彩は幼馴染だぞ!しかも、波人は彩のことが好きだ!だから、ありえねぇだろ!」
「……僕だって、信じたくない。でも、この時代を調査するタイムトラベラーの中に、彼の名前があった。もちろん、未来での本名は別でね。それに、少なくとも、金坂君は幼馴染じゃないよ。タイムトラベラーや、僕みたいな実習生が未来人がこの時代に馴染む時に、身近な人間の記憶を弄って、自分が昔からいたように思わせる。金坂君も、君たちにそれを使ったんだよ」
「そんなこと、信じられるわけねぇだろ!」
大樹は、そう叫ぶとひのりの顔を思い切りぶん殴った。
ひのりはその場に尻餅をつき、頬を押さえた。
常人なら腫れてもおかしくないが、無性別化に伴う人間の進化の賜物か、ひのりの頬には、傷一つついてなかった。
「ひのり……お前でも、言って良いことと悪いことがある……波人が、未来人で、彩を殺した犯人……?そんなわけねぇだろ……」
「……とにかく、君は、僕に出会ったことを金坂君に伝えないでくれれば良いよ。あとは、お好きなように」
ひのりは、そう言うと立ち上がり、多目的教室を出て行った。
大樹は、しばらくそれを見送ったあとで、壁に背中を預けた。
「ちげぇよな?波人……お前が、未来人なんて……」
−−−そして、現在
———ひのりの言うことなんて、信じてなかった。波人を信じていた。なのに……。
大樹は、昔から耳が良かった。だから、彩には聴こえていない、背後での二人のやり取りが、嫌でも聴こえてきた。
———波人……。
顔を手で覆い、大樹はため息をついた。
「どうしたの?大樹」
その時、彩がそう言って大樹の顔を覗き込んだ。
突然の急接近に戸惑いつつも、「なんでもねぇよ」と誤魔化した。
「それより……さっきの話、本当なのか?」
大樹の言葉に、彩はしばらく間を置いた後で、ゆっくりと頷いた。
「うん……。私……今度、引っ越すんだ」
彩の変わらない返答に、大樹は何も言わず、下を向いた。
その態度に、彩も堪らず目を逸らし、唇を噛みしめた。
「私だって、本当は引っ越しなんてしたくないよ?でも、お父さんの転勤だって……」
「そうか……それじゃあ、仕方ねぇ、よな……」
「……うん」
彩は小さく頷くと、空を見上げた。
満天の星空に、流星群。
大樹もそれを見上げ、それから、彩に視線を向けた。
「もしかして、この流星群に呼んだのは、それを言うため?」
「うん……」
「わざわざ、俺に?」
「……うん……」
大樹は、「そうか……」と言って、目を逸らした。
しばらく無言が続き、大樹は、どうすれば良いのか分からなくなる。
やがて、彩は「それもあるけどっ……」と言う。
「それも、あるけど……もう一つ、大樹に伝えたいことがあって……」
「……なんだよ?」
「私……大樹のことが好き」
彩の言葉に、大樹は目を丸くした。
そして、「俺も……彩が好きだ。彩が一番、大切だ」と言った。
「なんだ、てっきり栗原さんのことが好きなんだと思ってた」
「確かに、あの人の方が美人だとは思う。でも、一度彩を失って、彩が一番、大切だって気付いたんだ」
「私を……失った?」
「あー、いや、なんでもない。こっちの話だ」
大樹の言葉に、彩は「何それ」と言って笑い、しばらくした後で、悲しそうに微笑んだ。
「両想いだったんなら、もっと早く伝えれば良かった」
「……遅すぎたな。何もかも」
「そうだね」
彩は、そう言って空を見上げた。
そこで「あーっ!」と声を張り上げた。
「そうだ!流星群って!いわば、大量の流れ星じゃん!」
「お?おぉ、そうだな……」
「願い事しなくちゃ!大樹とまた一緒にいれますように!大樹とまた一緒にいれますように!大樹とまた一緒にいれますように!」
彩のそんな願い事に、大樹は笑いつつ、「金!金!金!」と言って、彩に頭を叩かれていた。
その光景を、未来に帰る直前のかなとは、呆然と見つめていた。
「……もっと一緒にいたかった、ですか?」
ひのりがそう聞くと、かなとは「俺にはもう、一緒にいる資格はないから」と言って、大樹達から目を逸らした。
「……正しい歴史では、彼らはどうなりますか?」
「八年後に、二人はこの公園で再会し、それから二ヶ月後に結婚する。……その未来に、俺はいない」
「でしょうね」
ひのりは、そう言って二人に目を向け、少しだけ微笑んだ。
「あの二人、僕達が未来に帰ったら、忘れちゃうんですよね?貴方のことも……霧島君は、僕のことも」
「あぁ……それが規則だからな。俺も、規則で罰せられる、か……」
かなとの言葉に、ひのりは何も言わず、腕に巻いたタイムマシンの操作をした。
やがて、二人の体を光が包み込み、消えていく。
「あ、れ……?」
それとほとんど同時に、大樹と彩の記憶から、二人との思い出は全て消えた。
大樹の場合、それだけでなく、繰り返した一ヶ月間と、彩が死んだ、間違いの歴史の記憶も全て、だ。
彩も波人の記憶を忘れたらしく、少し疑問に思いつつも、特に気にしなかった。
- Re: 先月の君に ( No.14 )
- 日時: 2017/01/17 22:50
- 名前: ひのり ◆GBbrT/URYg (ID: uLF5snsy)
「へぇ、昔の事件には、こんなことがあったのか」
3×××年。とある資料室にて、ゆきは、先ほど読み終えた友人の資料データを見つめながら、呟いた。
あれから、かなとは過去の人間を殺したことによりタイムトラベラーの仕事をクビにされ、罰として終身刑になり、牢獄で一生を過ごすハメになった。
ひのりは、ごく普通に勉強をして、タイムトラベラーの一人として、どこかの歴史の調査をしている。
ゆきも勿論タイムトラベラーで、今は、これから行く時代の資料を集めに来ていたところだ。
「まっ、資料なんて無くてもどうにでもなるかぁ」
そう言って伸びをして、ゆきは資料室を出た。
廊下をのんびり歩いてると、前から友人であるひのりが歩いてくるのが見えた。
「およ?昨日歴史の調査行ったばかりじゃん。早かったね?」
「ん?あぁ、今回は少し複雑そうな問題に出遭ってね。少し、僕が昔書いた資料を読みたくて」
「それってあれか?お前が実習生の時の」
「まーね。久々に間違った歴史の修正に行かないとだから。昔、どうやって戻したっけな〜って」
「ははっ、まぁ、頑張って探せよ」
「あぁ」
ひのりは頷き、資料室に向かう通路を歩いて行く。
ゆきは、それを見送りながら、懐から小さなUSBメモリを取り出し、フッと笑った。
「お前には、こんなものがなくてもやれるだろ」
そう言って、それを空中に一度放って、パシッと音を立てながらキャッチし、ポケットにしまった。
−−−
「未来から来たって、そんなことどうでもいいんだよ今更!そんなこと知ったところで、アイツはもう、戻ってこねぇんだ!」
男の怒声に、ひのりは「僕の話聞いてくださいよ」と言って困ったように微笑む。
「僕が未来から来たということは、貴方を過去に戻せるということです」
「じゃあ、さっさと戻してくれよ!早くしないと……彩が……ッ!」
「……彩?……あっ」
ひのりは、目の前にいる男の正体に気付くと、微かに口角を上げた。
そして、懐から時計のような機械を取り出し、男に見せる。
「……それは?」
「過去に、戻りましょうか」
その言葉と共に、男の体を光が包む。
伝えられなかったこと。
できなかったこと。
後悔しても、もう遅い。
でも、もしやり直せるなら……———伝えたい。
先月の君に……———。
- Re: 先月の君に ( No.15 )
- 日時: 2017/02/04 02:58
- 名前: 八雲餅 (ID: BL8fZ.Pl)
はじめまして、八雲餅です。先日ひのりさんの小説を拝見してすぐにファンになりました。
読んでいて思わずウトウトしてしまうような、こんな心地の良い文章、誰にでも書けるものではありません。これはひのりさんだけの才能だと思います。友達にもおすすめしちゃいました。更新楽しみにしてます。早く更新して下さい。
- Re: 先月の君に ( No.16 )
- 日時: 2017/02/04 11:58
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
返信ありがとうございます。読んでいてウトウトしてるのは私の小説が退屈だからです。そりゃこんな駄文私にしかかけませんよ。
お友達に宣伝ですか。では、お友達に人生の貴重な時間を無駄にする覚悟を持ってから読むように忠告しておいてください。
あと、完結とか書いてないので分かりにくいかもしれませんがこの作品はこれで終わりです。なので更新はできません。私の中ではもう終わっているので。
他の板で書いたり、またこの復ファにも書くと思いますので是非そちらを見ていただけたら幸いです。