複雑・ファジー小説

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Re:童話姫たちの殺し合いゲーム<群像劇/子ブタと子ヤギ>
日時: 2017/09/03 08:47
名前: 雪姫 (ID: hmF5PELO)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=5004

ある使命の為 ツギハギの物語を旅する少年


ある目的の為 姉妹を殺す赤い頭巾を被った少女


己の願いの為 姉妹を殺す五人の姉妹と使徒




個々に存在する物語はクロスする——



◇ご挨拶◇
おはこんばんわんこ(。´・ω・)
知っている人は知っているかもしれない雪姫(ユキヒメ)でございます。
最近とあるゲームにはまりまして…で、思い付きで書き始めたのがコレ。
ネットで童話の原作色々探すんですが…どれも怖いですねー( ;∀;)
そんな怖い童話をサクサクスナック菓子感覚で楽しめるようにしたのがこの作品デッス?

コメント・お友達なろう大歓迎です♪←とゆうか言われたらヒャッハー♪って大喜びです(*ノωノ)


◆attention◆
※タイトル通り、童話の登場人物の名前をした人物達が殺し合いをしています。
※グロ・残酷描写あります。スレ主がそうゆうの苦手なので軽めになってる…とは思う……ちとせとら。
※童話の原作は噂通りの内容です。苦手な方はスルーをお勧めします。
※貴方様の好きな人物のイメージが崩壊するかもしれません。
 基本全員 狂気に狂っています。ご了承くださいませ。
※荒らし、チェンメ、中傷はお帰りください。
※誤字、脱字、多々見受けられると思います。お知らせいただけると幸いです。
※スレ主の心はガラス製です。皆さま大切に扱いましょう笑
※スレ主は社会人なので亀さんと蝸牛さんが競争しているようなものです(つまり亀更)
※この作品は本編とは別物です(一応。でもまとめようか悩み中)
※群像劇ですので、好きなお話から/だけ読んで頂いても大丈夫なようになっています。
 でも両方/全部 読んで頂けると物語がより一層楽しめるようになっています。


†登場人物・用語紹介†
+序章>>01+一節>>17+二節>>35

◇story◇

序章<ツギハギ>&没<序章>>>16
一節<末の妹と双子>
(原作)ラプンツェル(アレンジ少々アリ)>>04
お菓子な国の物語>>05 >>08-12…END
Яお菓子な塔の物語>>23-26…END
(原作)ヘンゼルとグレーテル(アレンジ少々アリ)>>13-15
お菓子な双子の物語>>18-22END
二節<四女と七番の山羊>
(現代語訳)竹取物語(口語訳)>>27-34
竹林の国の物語>>36-39…END
К竹林の賭博の物語
三匹の子ブタ>>40
オオカミと七匹の子ヤギ…執筆中
竹林の七の物語


◆information◆
スレ設立日2017/7/26(水)


【宣伝】
Re:童話姫たちの殺し合い<鮮血に染まった赤き頭巾の少女編>*ダークファ板*
本編/本軸。記憶の無い少年と"暴力”赤い頭巾の少女と"依存”木の人形達がある目的のため姉妹を殺す物語。
こちらと本編両方を読むことで物語がより一層楽しめるようになっております。

<俺のペットはアホガール>*新コメライ板*
空前絶後のアホな女の子とその友達が巻き起こすハチャメチャな事件を飼い主的存在の男の子がズバァァと解決? する日常風景を切り取った物語。
オリキャラ&リクエスト絶賛募集中でございます!


□comment□
・sol様

(現代語訳)竹取物語(口語訳) ( No.33 )
日時: 2017/08/26 06:54
名前: 雪姫 (ID: HSAwT2Pg)

<御狩の御行>



かぐや姫の美しさは、ミカドというとても偉い人の耳にも入ったそうな。
ミカドは側近のふさ子に『いろんな人が身を滅ぼすほど恋焦がれたかぐや姫はどんな女なのだろうか。ちょっとその目で見てきてくれないか』と頼んだ。


ふさ子はかぐや姫の家を訪れた。爺さまの妻である、嫗(おうな)が出迎えた。


『かぐや姫はとても美しいといううわさです。ミカドが気にしてらしたので、私が代わりに見に来たというわけです』

『そうなんですか。では、ちょっとお待ちくださいね』


嫗はかぐや姫に部屋から出てくるように言った。しかしかぐや姫は「私はぜんぜんきれいじゃありませんわ。お目にかかるなんて、恥ずかしい」と気の進まない様子だ。


『そうは言ってもね、ミカドの使いの方なんですから。このまま帰れとも言えないでしょう』

「ミカドなんて、私、怖くもなんともないわ」


嫗は、そう強気になることもできず、ふさ子のところへ戻ってきた。

『すみません。がんこな娘なのです。お会いできそうにないです』


これを聞いてふさ子は強い調子で言った。


『見て来いと言われて私はここまで参ったのです。どうしてこのまま帰ることができるでしょうか。ミカドはこの国の王さまのようなお方ですよ。あなた方はこの国に住んでいるのでしょう。平和に暮らせているのは、誰のおかげだと思っているのですか!』


とても激しくどなっていたので、かぐや姫の部屋まで声は届いた。


「そんなに見たいのなら、殺してからひきずりだせばよろしいのですわ」 誰に言うでもなく彼女はつぶやいた。


結局ふさ子はこのまま帰り、ミカドに報告をした。


『そうか。仕方がない。深入りすると、今までの人びとのように命を落としかねないし。あきらめようか』


そう言っていったんは納得したが、時間が経つと、やはりまた気になってくる。
悪女だとしても、私は負けんぞと思って爺さまを呼び出した。


『お前の家のかぐや姫を、私の近くに仕えさせたい。スカウトの使者を送ったが、そのかいなくただ帰ってきただけだ。どういう風に育てたら、私ミカドの命令を断るようになるのだ』


爺さまは背筋を正して答えた。


『わが娘は、とてもミカドのおそばにいられるような性格ではありません。わがままで、やんちゃで、私も妻も困っているほどです。しかし、せっかくのお話なのですから、帰ってまた私から話してみましょう』

『頼むぞ。もし仕えることになったのなら、お前にすごい地位を与えてやろう』


爺さまは喜んで家に帰った。かぐや姫に言います。


『こんな風にミカドがおっしゃってくださったのだ。どうしてもお仕えする気にはなれないか」


「もしそうなったとしても、私はきっと逃げ出してしまうでしょう。そんなに位が欲しいのですか。それならば、私はお仕えしますけど、すぐに消えるか死ぬかしますわ」


かぐや姫の真剣な目つきに、爺さまはあわてた。


『そんなことを言わないでくれ。たとえりっぱな地位をいただいたとしても、自分の娘を失っては、生きる意味がない。そこまでして、位など欲しくはないのだ』 


爺さまは必死に否定した。


『それにしても、どうしてそんなに嫌がるのだ。死ぬような苦しみを味わう仕事でもないだろうに』

「そもそも男の方のそばにいるというのが、いやなのです。これまでたくさんの人のご好意を断ってきたので、それはおわかりでしょう」

『それはそうだ』


「それに、ミカドのお話はついこの間持ちかけられたばかり。ここで『はいミカドなので喜んで』とほいほい行ってしまっては、いままでのお方に申し訳がありません。恥ずかしさで、私は死ぬより苦しむでしょう』


爺さまは納得した。『わかった。私としては、あなたが生きていることが一番なのだ。世間にはどう言われてもかまわない。では、ミカドにお断りしに行ってくる』


ミカドの元に参上してこう述べた。


『おおせのままに、わが娘を説得しようといろいろ手を尽くしましたが、"お仕えしたら私はきっと死ぬ”とのこと。そのそも彼女は、私が竹の中から見つけた女の子。ふつうの人とは考え方が違うことをお許しください』


ミカドはウムとうなった。


『そこまで言うなら仕方がない。それでは別の頼みごとをしてもよろしいか』


『なんでしょう』


『お前の家は山のふもとだったな。そのあたりで狩りをするふりをして、ちらっとかぐや姫の姿を見てみたいのだが』


『はい』 爺さまは頷いた。『あの娘がぼーっとしている時にでもいらっしゃったらよいでしょう』


二人はその場で、細かいところまで相談をした。


後日、ミカドは計画どおり外出し、家の近くまでやって来た。
門のところからちらっとのぞくと、身体じゅうから光があふれているような、たいへん美しい人が座っていた。


『あの人に違いない』とミカドは気分が高まって、かぐや姫に近づいた。もちろんかぐや姫は逃げる。そでを捕まえたが、顔だけはしっかり隠してじっとしている。


『放しはしない』


ミカドはすっかり興奮して、連れて帰ろうとぐいぐい引っ張った。かぐや姫は抵抗する。


「私はこの国に生まれた人間ではありません。ご一緒できませんわ」


ミカドにはそんな言葉も耳に入らない様子で、『おい、乗り物を持ってこい』と家来に言ったりなどしている。
ここでふと、かぐや姫の姿が消えてしまった。


着物をつかんでいたはずなのに、急に目の前からいなくなったので、ミカドはびっくりした。
『やはりただものではなかった』となぜか感心している。


そして頭が冷えたようで『悪いことをした。もう連れて帰ろうとはおもわない。どうか最後にまた姿を現してくれないか。ひと目見たらすぐ帰る』と辺りに呼びかけた。かぐや姫はふたたび現れた。


ミカド爺さまにお礼をのべて帰った。
帰り道でミカドは和歌を詠んだ。かぐや姫を残してきたことがなごり惜しかったのだろう。


<帰りながら、ついつい後ろを振り返ってしまうのは、私に背を向けて留まった、あなたのことが気になるからだろう>


かぐや姫も返事の和歌を詠んだ。


<草木が生いしげる家で育った私が、今さらどうして豪華な家で暮らすことができるでしょうか>


これを読んでミカドはいっそう恋の炎が燃え上がった。

このまま帰りたくないと思うけれども、お供がたくさんいるので、そんなわがままも言っていられない。大人しく宮中に帰った。


さて、ふだんミカドの周りにいる女性たちは、美人ばかりのはずであるが、あらためて見てみると、かぐや姫の美しさにはとうてい及ばない。

ミカドはかぐや姫のことばかりを考えて毎日を過ごした。何度か手紙のやり取りもしたそうな。




***感想

「恋は盲目」って奴ですね。っていうかミカド、強引すぎ。

押すばかりじゃなくて、たまには引いてみるのもいいんじゃ?って思いました。

 

(現代語訳)竹取物語(口語訳) ( No.34 )
日時: 2017/08/27 08:37
名前: 雪姫 (ID: ru6kJfJs)

<天の羽衣>




—というわけで、ミカドとかぐや姫の文通は3年ほど続いたそうな。


春のはじめの頃から、かぐや姫が月を見ながら何かを考えているような顔をすることが多くなったそうな。


お付きの人が『あんまり月を眺めていると、よくない事が起きますよ』と忠告したが、誰からも隠れて、そうして月を見て泣いている、ということもあったそうな。

満月のときなどは特に深刻そうな表情をするのであった。お付きの人びとは心配して爺さまに相談した。


『かぐや姫はふだんから月を眺めることがあったのですが、このごろは何か様子がおかしいです。なにか心配ごとがあるのかもしれません』


そうは言われてもよくわからないので、爺さまは直接訊ねてみることにした。


『どんな気持ちで、何に悩んで、そんなに月をじっと見つめているのか。生活に不安があるわけではないだろう』

 「べつに、理由はありませんわ。月を見ていますと、なんだかこの世に生きているのが不思議に感じられるだけです。悩みなど、ございません」


こうは言ったものの、かぐや姫は何かを隠している様子だったので、爺さまはねばり強くそれを聞き出そうとしたが、なかなかはっきりした答えをしてくれない。じれったくなり『もう、月を見てはだめだ。そうしたなら、わけもわからず悲しい気持ちになることもなくなるから』と強く言った。


「そうは言いましても、自然と目に入ってしまうものですから……」

かぐや姫は言い訳するように言った。


結局、月が出るとそれを見て涙を光らせるのは、やめさせることができなかった。お付きの人たちの間にも心配が広がっていく。親ですら涙の理由はわからないまま、日は過ぎていった。
 
 秋の"十五夜”という、月がたいへん大きく、また美しく見える夜が近づいてきた。


かぐや姫は外へ出て、もはや人目を気にすることなく、思う存分泣いている。家中の者が『何事だ』と騒ぎ始める。かぐや姫がとうとう口を開いた。


「前から話そう、話してしまおう、と思っていたのですが、きっとたいへん驚かれるだろうと心配で、黙っていたことがあります。隠したままで日々を過ごすのは、もう限界です」


『どういうことだ』と爺さまが訊きます。

「実は、私はこの国の者ではないのです。月から来た人間なのです。前世で、あることをしてしまったので、今回はこの世界に生まれることになりました。

 そして今、帰らなければいけない時が来ました。十五夜に、その国から私を迎えに人々が訪れます。これはどうしようもないことなので、私はとても悲しいのです。

 それを、今年の春のころからずっと悩んでいました」


言い終えると、かぐや姫はさらに激しく涙を流しました。


『これは一体……そんな話は信じられない。竹の中から種のような大きさのあなたを見つけてから、私たち夫婦は今まで、こんなに立派になるまで育ててきたのだ。それを今さら迎えに来る人がいるとは。許せない』


爺さまも涙を流して怒りをあらわにした。かぐや姫はさらに話を続ける。


「月の都にもきっと、私の両親のような人がいるのだと思いますが、まったく記憶にございません。私はこの国に長く楽しく暮らすことができました。迎えが来るとわかっても、ちっとも嬉しくありません。悲しいばかりです。でも私の気持ちに関わらず、戻らねばならないのですわ」


二人は抱き合って泣いた。家に使えている者たちも、かぐや姫を小さいころからよく知っているので、同じように悔しがって泣いた。


噂はミカドにも伝わった。すぐにかぐや姫の家へ使いを送る。
使者は、悲しみのあまりヒゲがすっかり白くなり、腰も曲がり、たいそう老いたような爺さまに会った。涙のあとがくっきり残っている。


『なにか、ひどく悩んでいることがあるとうかがったのですが、本当ですか』と訊ねた。

『はい。次の十五夜のときに、月の都からかぐや姫の迎えが来るようなのです。それが残念で、悔しくて、泣いておりました。とても失礼なお願いだとは思いますが、どうかミカドのところから兵士をよこしていただき、そいつらを捕らえてはいただけないでしょうか』


爺さまは涙を流しながら頭を下げた。使者がその様子と言葉を伝えると、ミカドは真面目な表情でこう言った。


『たった一目見ただけの私ですらかぐや姫のことを忘れることができないのだ。かぐや姫と長年暮らしてきた翁の悲しみは相当なものだろう』


十五夜になった。ミカドは高野大国(たかのおおくに)に命令して、かぐや姫の家を守らせた。軍隊は二千名ほどである。周りの塀に千名、屋根の上に千名を配置した。かぐや姫の家の使用人たちも武器を持ち、がっちり守りを固めた。かぐや姫は厚い壁の部屋に、婆さまと一緒に座っていた。


爺さまは安心して外で腕を組んでいる。『これだけの守りだ。けっして天から攻めてくる人にも負けないだろう』
屋根の上にいる人とは『なにかが見えたら、すぐ矢を撃ってくださいね』『こうもり一匹でも逃がしはしません』と会話を交わした。爺さまは満足そうに笑った。


しかし、かぐや姫は喜ぶどころかため息をついた。


「しっかり守って戦おうとしても、むこうの人々とは戦うことすらできないでしょう。弓矢だって役には立ちません。どんなにガードを固くしていても、あの人たちはたやすく開けてしまうでしょう。どんなに戦う勇敢な心を持っていたとしても、月の人たちが目の前に現れたなら、戦う気持ちがすっかり消えてしまうでしょう」


爺さまはその言葉に答えてこう言った。


『私はやるぞ。月のやつらの、目を爪で突いてやる。髪をつかんでふりまわしてやる。尻を出させて、恥をかかせてやる』


かぐや姫は暗い顔のまま。「大きな声を出さないでください。みっともない。私たちのお別れの時なのですから」


そして思い出をふりかえる。


「これまで私がいただいた愛情に、とても感謝しております。この世界で長く一緒に暮らすことができない運命だったことが悲しくてなりません。育ててもらった恩返しの、親孝行もできずに去ることになってしまい残念に思います。

 この数日、月に向かって『どうかあと一年だけここにいさせてください』と願いをかけていたのですが、どうやら叶えられなかったようです。お心を乱したままで帰ることをお許しください」


かぐや姫は泣いていた。


「月の都では、年を取ることなく、そして何事にも悩むことなく暮らしていけるそうです。でも、そんなところへ行けるのだと知っても、ちっとも嬉しくありません。できれば、お父さんとお母さんと、一緒に年を重ねたかった」


爺さまは『胸をいためるようなことを言わないでくれ、きっと大丈夫だから』と彼女をなぐさめた。
夜が更けた。


しかし、深夜だというのに、家の周りが昼かと思うくらい明るくなった。満月の明るさを十倍にしたくらいの光で、毛穴すら見えそうなほどの明るさ。


空からぞろぞろと雲に乗った人間が降りてきて、地面からすこし浮き上がったところに整列した。
これを見た誰もが、わけのわからぬ力で押さえつけられたように、戦う気持ちをすっかり無くしてしまった。


なんとか『やるぞ』と思い立って弓を構えようとした人もいたけれど、すぐに手の力が抜けてしまった。
いちばん勇敢な兵士がやっとのことで撃つことができたが、ぜんぜん違う方向へちょっと飛んだだけだった。


そんなわけで、かぐや姫を守るために集まっていたはずの人々は、ただぼうっとして、お互いの顔を眺めているだけであった。


月の人たちは、見たこともないような清らかな衣装を着ていた。空を飛ぶ乗り物を持ってきており、そこには大切な人を乗せるための飾りつけがしてあった。


『造麻呂(みやつこまろ)、出てこい』とその中のトップだと思われる人が言った。
爺さまは先ほどまでけんか腰だったが、自分の本名を呼ばれ、ふわふわした気持ちでひれ伏した。


『貴様はつまらない人間だが、つつましく、真面目に生きていたので、かぐや姫を少しの間預けていた。そのおかげで貴様は、別人のように金持ちになれただろう。

 かぐや姫はこちらの世界で罪をおかしてしまったので、しばしの間、この世界に降りてきていたのだ。貧しい貴様のもとへだ。だが、罪をつぐなう期間は今日でおしまいだ。私たちが迎えに来たのだから、貴様がいくら泣き叫んでもむだだ。さっさとかぐや姫をここへ連れて来い』


思ってもいなかった話を聞かされ、爺さまは驚いた。


『私はかぐや姫を二十年間も育ててきました。それを"少しの間”とおっしゃることはどういうことでしょうか。別のかぐや姫と間違えていらっしゃるのではありませんか』

言い訳を並べる。


『それに、私のところのかぐや姫は、たいへん重い病気にかかっておりまして、外出などできる状態ではないのです』


天の人は爺さまの言葉を無視して、空飛ぶ乗り物を近くに寄せた。そして『さあ、かぐや姫。こんな汚らしいところから、早く旅立ちましょう』と家に向かって叫んだ。


その言葉を合図にしたかのように、家じゅうの戸や窓が、次々と開き始めた。誰も手を触れていないのに、すべてが開け放たれた状態になった。

婆さまに抱きしめられていたかぐや姫も外へ出てきた。爺さまはどうしようもなくて、ただ涙を流すばかりであった。

そんな爺さまにかぐや姫は声をかける。


「私としても、行きたくて行くのではないのです。同じように悲しい。せめて、お見送りだけでもしてください」

『こんなに悲しいのに、見送りなんて、できるはずもない。どうしてそんなひどいことを言うのか。私も一緒に連れて行ってはくれないか』


爺さまが泣く姿を見て、かぐや姫の心は揺れ動いた。


「手紙を置いていきましょう。私を思ってつらいときは、それを眺められるように」


手紙の内容は、以下のようであった。


<もし私がこの国に生まれていたのであれば、このように悲しませることもなく、ずっとおそばにいられたでしょうに。お別れしてしまうこと、繰り返しになりますが、残念でなりません。

 私が身につけていたものを置いていきます。形見だと思ってください。月が出た夜は、見上げてください。ああ、両親を置いてゆくなんて、空から落ちるような気分です。>


天の人が持ってきた箱の中には"天の羽衣"という着物と、不死の薬が入っていた。

ある天の人が『こちらのお薬をなめてください。汚いところにいてすさんでいた気持ちが、すっきりしますので』と言ってかぐや姫に壺をさし出した。
 
かぐや姫はそれを少しなめ、残りは置いていくために脱いだ服に包もうとしたが、止められた。

天の羽衣を着せられそうになったかぐや姫は「ちょっと待ってください」と言った。「これを着てしまうと、記憶が書き換わってしまうと聞きます。一言書き忘れたことがあります」とまた手紙を書き始めた。
 
 天の人は『早くしてください』とせかしたが、かぐや姫は「最後なのですから、大目に見てください」とミカドに対する文章を静かに、落ち着いた様子で書いた。


<とても多くの人たちをお借りしましたけれど、月からの迎えを防ぐことはできませんでした。残念で悲しいことです。いつかお仕えしないかと誘われたのを断ったのも、このような面倒な事情があったためです。お断りしたときにわがままにふるまってしまったこと、おわび申し上げます。無礼な女だと思われたままなことが、心残りです。>


手紙の最後に和歌をそえた。

<天の羽衣を着る今まさにこの瞬間、あなたへの想いがあふれてきました>


書き終えると壺に入った薬とともに、高野大国へ渡した。
そしてかぐや姫は天の羽衣を身につけた。

そでを通した瞬間、さまざまな悲しい気持ちや、名残り惜しいといった感情が、すっと頭から消えた。

"天の羽衣を着た人"は、迷うことなく空飛ぶ乗り物に乗った。そばの天の人たちも乗り込み、浮き上がり、空へ昇っていった。



—その後。


爺さまと婆さまは、血がすべて涙に変わったかと思うほど泣き、苦しんだ。かぐや姫の残した手紙を見ても『何のために生きるのか。誰のために。何をする気にもなれない』と言って、病気になっても薬すら飲まずに、寝たままで毎日を過ごした。

軍隊を率いていた高野大国は帰り、かぐや姫を引き止めることができなかったことをミカドに詳しく報告した。不死の薬が入った壺と手紙も渡した。

ミカドは手紙を広げ、とても残念な表情をした。それからあまり食べ物も食べず、好きだった狩りにも行かなくなった。



ある日大臣たちを集めて『この辺りで、天に一番近い山はどこか』と訊ねた。ある人が『駿河(するが)にある山でしょう。ここからも天からも近いです』と答えた。

これを聞き、ミカドは壺に和歌をそえて調の岩笠(つきのいわがさ)にたくした。彼が選ばれたのは"月"にも"竹"にも関連した名前だったからである。ちなみに和歌はこのようなものであった。


<もう会えないと思うだけで涙が流れる。その悲しみの海に浮かぶような気持ちです。いただいた不死の薬も、使う気になれません>


調の岩笠は駿河にある山の頂上で、指示されたとおりに薬を燃やした。


彼はたくさんの武士を連れていったので、その山は『武士がいっぱいいる山』 『武士に富む山』 『富士山』と呼ばれることになった。

それは不死(ふじ)の薬を燃やした不二(ふじ)の『不死山』でもある。

薬を焼いた煙は、今でも山の頂上に雲になって見えることがあるという。





***感想
これで、かぐや姫の物語はおしまいです。
これまでもこれからも、月は空で輝いています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

†登場人物・用語紹介† ( No.35 )
日時: 2017/08/29 15:22
名前: 雪姫 (ID: 46h1u6ru)

二節



†主な登場人物†


かぐや姫

"被虐”

齢十五の少女。
誰かに虐められたい、誰かに自分のことを支配してもらいたい願望を持っている。


(三匹の)子ブタ

餓鬼大将のような長男 イル
    のような次男 アール
チンピラのような三男 サム

(オオカミと)七匹の子ヤギ
長男アインス
頭脳派の次男 ツヴァイ
三男ドライ
下品な四男    フィーア
お馬鹿な五男   フュンフ
ナルシスト六男  ゼクス
虐められっの七男 ナナ

(塔の上の)ラプンツェル

"暴食”

かぐや姫が弱愛している末の妹。
無邪気で損得無しに悪戯をして、かぐや姫を虐めてくれる都合のいい相手。



†用語紹介†


「竹美姫/チクビヒメ」

かぐや姫の新らたな名前。竹林の城に住まう美しいお姫様からとったものだ。


「千年魔京」

竹林の中にあるかぐや姫のお城/王国。
ネオンでライトアップされた入口には黒い羊達が沢山群がる、この世の娯楽が全て用意されているという、桃源郷。
一度迷い込めば、快楽に溺れ、もう二度と出られない。


「投票じゃんけん」

かぐや姫が考案したゲーム。


「拷問/処刑」

ゲームで負けた者は、お金を支払う代わりに、己の魂(命)を支払う。
拷問好きのかぐや姫のためだけに作られたシステム。







竹林の国の物語 ( No.36 )
日時: 2017/08/28 11:19
名前: 雪姫 (ID: iTqIkZmq)

ここまでは原作での物語(アレンジ少々アリ)



これから始まる物語は 平和で楽しい生活を地上で送り 



やげて月へと帰っていった



かぐや姫とは また別のかぐや姫の物語である——







[『おおおおおお』とあがる歓声と『ふぬぅぅぅ!!』と叫び声をあげ、剣を刀やハンマーなどの武器を振り回す屈強な男達。
蒸し風呂ような熱しられたここは闘技場、屈強な戦士達が己の命を奪い合う戦場だ。

「うふふふ」

戦う男達に熱い視線を送る少女が一人。長い黒髪に胸元をはだけ露わにした着物の少女。
大人びた見た目のため勘違いされやすいが彼女はまだ齢十五の娘]





『随分と楽しそうじゃないか、かぐや』


闘技場の男達を見て楽しんでいましたら、誰かに声をかけられました。誰でしょうと振り返ると、いやらしい言動ばかりの???お姉さまでした。
『火照った肉と肉が汗を飛び散らせながらぶつかり合う姿はそんなに好きなのかイヒヒッ』と嘲る、???お姉さま。
嗚呼—なんて破廉恥お人なのでしょう。こんな人が私(わたくし)の姉だなんて…認めたくないですわ。


「はしたないですよ、お姉さま。私はそんな下品な趣味は持ち合わせておりません」

『ヒヒッ。強がんなって、口でいくら言ったところで体は正直なんだ、ほら?』

「んぐっ!!」


お姉さまに胸をつつかれると、体にビクンッと電流がはしります。キッとお姉さまを睨んでみますが効果はありません、むしろそれは逆効果でした。
お姉さまは『イヒヒッ』と嘲り、私を見下し罵倒します。なんていやらしく、最低で


「最高の姉なのでしょう」

『キヒヒッほらぁ、次はどこをツツいて欲しいんだい? おねだりしないとツツいてやらないぜ?』

「お預けだなんて…酷い。…でもそれも素敵ですわ」


私は誰かに虐めて欲しいのです。
人々はそんな私の事を『変態』だと言いますがそれは間違いです、私はそんなはしたない者ではありません。私はただ、私の全てを支配してくれるご主人さまが欲しいだけなのです—






ある晩のことでした、この世界の支配者であられる???お姉さまに呼び出されました。
???お姉さまはとても利己的で無駄な事がお嫌いな方。私とはあまり趣味の合わないお方ですが


「今日も素敵な緊縛ですわね、お姉さま。羨ましい限りです。いったいどなたが縛ってくれたんです?」


お姉さまのお体を固く、きつく縛りあげるあの緊縛。あれは素敵です。芸術作品とも言っていい見事な緊縛、嗚呼—私もあの緊縛で縛りあげられたい…。


『かぐや姫、貴女を東の領主に任命します』


ですが???お姉さまは利己的なお方、無駄話なんて興味ありません。用件だけ伝えたら、終わり。遊びもお茶もありません。
いえ、今日はお茶菓子がありましたね。


『ブヒー』


ブタ鼻がヒクヒクして可愛らしい三匹の子ブタちゃん


『メェー』


プリッとしたお尻が愛らしい七匹の子ヤギちゃん


「…じゅるり」


嗚呼—なんて美味しいそうな お茶菓子達なのでしょう。いっそこの場で食べてしまいたいですわ。
ですがそれは止めておきましょう。???お姉さまを怒らせばナニが起こるかわかりません。もしかしたら、世界が壊れてしまうかもしれません。
世界の支配者はそれほどに、恐ろしいお方なのですわ。面白みのないお方とも言いますけど、うふふっ。





竹林の国の物語 ( No.37 )
日時: 2017/08/29 15:03
名前: 雪姫 (ID: 46h1u6ru)

私はいつからこんな淫らな体になってしまったのでしょう—




光る竹から生まれた時—?




村でお爺さんとお婆さんと暮らしていた時—?




五人の殿方に求婚を求められた時—?




嗚呼 そうですあの時だったのです



あの 殿方の私を欲する獣のような瞳



あの 熱い視線に焼き焦がれた私は



—あの時の快感をもう一度味わいたくなったのですわ
















「ここが私の国の領地…」



???お姉さまに任命された東の領地は、青々と竹が生い茂る竹林でした。



—どこかお爺さんとお婆さんと暮らしたあの村を思い出す場所でした。



『姫様! これからどーするゼ』


いばりんぼうの長男子ブタがいいます。『ふんっ、そんなこと聞くまでもないでしょう。我らの姫様はもう次のステージを実行済みなのだ』サングラスをかけた次男の子ヤギが続けて言います。


子ブタと子ヤギ、合わせて十匹いる私の可愛い使徒。

—とても美味しそうなお茶菓子達



「もちろんです。ここに城を建てましょう」

『シロでやんす? 材料は?』



三男の子ヤギがそろばんを片手に言います。だから私は「材料ならここに沢山あるではないですか」と言ってあげました。



『あはは、竹ってこと〜?』
『現地調達っ! くぅー、クールだねぇ!!』

五男と六男の子ヤギが言います。五男ヤギはいつもお馬鹿な顔をしているのがとても面白いです、六男は常にギターを常備し変な音をならしています。


『城を建ててなにするっす?』

「ゲヘナで一番の娯楽地を作ろうと思っています。誰もが魅了されもう二度と現世に帰りたいとは思わないような、桃源郷を作りましょう—」

『げへへっ、さすがはオレ達の姫さまってことだ』


三男の子ブタと四男の子ヤギ達がゲラゲラと笑っています。


「さあ作りましょう、私達の王国を—」

『メェェェェ!!』『ブヒィィィィ!!』と私の使徒達は大きな鳴き声をあげました。














城は百年程で建てられました。さあ次は娯楽スポット造りです。


まずは…やはりお酒は外せません。


幸いにもここ水はとても清らかで美味しい、お酒にするのにもってこいでした。
お酒造りは長男次男子ヤギ達に任せました。



次はそうですわ! 女です、私以上の女性はいないでしょうけど、ゲヘナ中の美女をかき集めて遊郭を造りましょう。

美味しいお酒にはつまみに、美味しいお料理…つまり女が必要です。

女だけではつまらない、そうです、遊男も集めましょう。男性客だけではなく、女性客も満足させられないようでは、桃源郷とは言えないのです。
美男美女集めは三匹の子ブタ達に任せました。


酒…女…次はお金です。お金を回すならやはり、賭博がいいでしょう。
賭博では大きなお金が動きます。遊戯もどんなものがいいでしょうか、ありきたりなものでは客が飽きてしまいます。

さて どうしたものでしょう—か。


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