複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- シークレットガーデン-殺戮人形と呼ばれた少女の物語-
- 日時: 2019/09/08 08:51
- 名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 9nuUP99I)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16274
彼女の手は汚れていた。 彼女の身体は穢れていた。 彼女の心は——。
〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜
御観覧ありがとうございます。姫凛と申す者でございます。
こちらの作品は私は現在執筆中の《シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜》の本編に書ききれなかった零れ話ブルー様よりいただきました《ヒスイ》ちゃんの主人公と出会う前、半生を綴ったもの物語となっております。
※表層はトサカ君視点で贈る物語り
裏層はとある新米研究員の物語り
ネタバレ要素を含みます。グロ/残酷描写などござますので苦手な方はご注意くださいませ。
〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜
-殺戮人形と呼ばれた少女の物語-table of contents↓
prologue:血肉を啜る童女>>01
用語解説>>05
◆罪の花散る時>>06-09 >>12
[表層 旅の記録-モノローグ-]>>13-25
登場人物>>04
第一階層[ドラゴンとドラゴンネレイド] >>13-15
第二階層[ウサギとドラゴンネレイド] >>16
第三階層[カジノでのドラゴンネレイド] >>17
第四階層[ウラギリのドラゴンネレイド] >>18
第五階層[カイラクゾクとドラゴンネレイド] >>19-23
第六階層[ナミダを流すドラゴンネレイド] >>24
第七階層[アンサツ者ドラゴンネレイド] >>25
[breaktime-解説-]>>26-27
[裏層 死の秒読み段階-カウントダウンデス-]
登場人物>>28
第一階層[新米研究員の日常] >>29-32…執筆中
第二階層[特別なキャンディ] >>
第三階層[少年R] >>
第四階層[いなくなった実験動物] >>
第五階層[消え半減したモルモット] >>
第六階層[そして誰もいなくなった] >>
最下層 [堆く積まれた木偶人形] >>
-殺戮人形と呼ばれた少女の物語-Completion!
〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜
-感情のない少女の物語-table of contents↓
prologue:人形に感情は否か
登場人物
用語解説
◇人形に感情は応か >>
第一階層[売られてゆく娘] >>
第二階層[娘の品定め] >>
第三階層[光を失った娘] >>
第四階層[娘の決意] >>
第五階層[娘の犯した罪] >>
第六階層[娘の贖罪] >>
最下層 [娘に感情は] >>
-感情のない少女の物語-Completion!
〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜
[殺戮人形と呼ばれた少女の物語]
【第九章 荒くれ者の最期】で狂犬との熾烈な戦いを終えた主人公達。
依頼主である王に報告を済ませ仲間の実家で一休み、そして一晩明けた次の日、主人公が発見したのは眠るように冷たくなっている仲間の姿だったという。
[感情のない少女の物語]
【第六章 裏カジノ編】にてカジノオーナーとの熾烈な戦いを終え仮面の国にある宿で一休みしていると人形が主人公が泊る部屋に訪れこう言った「——人形に感情なんてないよ」と。
彼女は本当に人形なのだろうか——? 人形に感情はいるのだろうか——?
〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜
*その他作品*全て複ファ板です。
*シークレットガーデン 〜小さな箱庭〜
本編。ただの村人だった少年ルシアと愉快な? 仲間達の冒険ファンタジー。
*Secret Garden ~小さなの箱庭~
↑を新な登場人物、物語、設定など追加し始めから書き直したもの。
*シークレットガーデン -魔女と呼ばれた少女の物語
第一章〇〇の封じた過去編を選り抜きしたもの。完結済み。
*「シークレットガーデン-椿の牢獄-」
第四章 監禁・脱走を○○様目線で書いたもの。完結済み。
*美しき雌豚と呼ばれた少女とおくびょう兎と呼ばれた少年
第五章○○封じた過去編の続きを書いたもの。完結済み。
+シークレットガーデン-感情のない少女の物語-
三年前くらいに書いていた元ネタ。
+シークレットガーデン-殺戮人形と呼ばれた少女の物語-
新しく書き直した新ネタ。
執筆開始日2017/11/17〜
〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜*〇*〜
- --登場人物紹介- ( No.28 )
- 日時: 2019/08/29 07:36
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
……から……へ
……者たちを……日間観察した……報告書である
-研究員たち-
◇ドロティア・オッズ
最近付属された新米研究員。成人の儀を迎えたばかりのヒュムノスの女。
視力が悪く、この世界では珍しい視力補強器を身に着けている。
(とある使命持つ一族「オッズ」の生き残り。通称『オズの魔法使い』)
◇マザー
とある研究所の最高責任者である同時に"子供達”の母を名乗る老婆。
年齢不詳。だがヒュムノス=60代ともみえる。種族不明。身体的特徴が見受けられない為、ヒュムノスだと推測される。
◇シュヴァルツアー
灰のような濁った髪色の長身細身の男。レンズの入っていない黒色の四角い視力補強器を着用。
首には聴診器かかっており、着用している白衣はヤニ臭い。
◆その他の研究員たち
上記に記した者達以外にも数10名、30に満たない数の者たちが在籍している。
年齢種族は多種多様。皆一応に白衣を着用。
-子供たち-
研究所には沢山の子供たちが集められている。下は乳児から上は12歳まで。
種族は主にドラゴンネレイドが多いように思える。
(彼らは何の為に集められているのだ)
◇ユウ、カタリナ、エフォール
研究所のリーダー格たる子供たち。幼子たちは研究員よりも彼らの意見に従う者が多いように思える。
左からリリアン、壊楽族(カイラクゾク、ドラゴンネレイドの世界一般では忌み嫌うはずの3種のはずだが彼らはその傾向は無いように見受けられる。
◆"トクベツな子供"
その名の通り研究所にとって特別な意味を持つ子供のことだろう。
詳しい詳細は不明。だが探りを入れた同士からからの連絡はまだない……おそらく奴らの。
今——この報告書を読んでいるのが我が主である事を願う
もし違うとするならば、誰でもいい主に届けてくれ
そうでなければ死んで逝った同士たちの魂が報われない
私たちは近づき過ぎたのだ……の……は……あの童女は——
ここから先は垢黒い液体で汚れて読めないようだ。
貴方の目の前に扉があります。
——開けますか? ——開けませんか?
〇開ける← ●開けない
- 第一階層[新米研究員の日常] ( No.29 )
- 日時: 2019/08/31 15:21
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
ここから先は垢黒い液体で汚れて読めないようだ。
貴方の目の前に扉があります。
——開けますか? ——開けませんか?
〇開ける ●開けない←
知ってます? 好奇心は猫を殺すと言うんですよ? 猫は九つの命を持っている、だから容易には死なない、と言われていますがちょっとした好奇心で安易に死んでしまう事もある、外国のことわざですね。
何処の国のことわざだったかな。山の国? 海の国? 和の国? 仮面の国? それとも別の……おっとこれはまだ秘密でしたね
まったく先輩も困った人ですね。残す後輩にわざわざこんな悪趣味な手紙を残すなんて。
報告書って……後輩に何を報告しようって言うんですかねぇ、わたしはあなたの主じゃないっての! って感じですよ、まったく。お茶目な人だと思ってましたがここまで悪趣味な方向にお茶目だったとは思いませんでした。
やれやれと深く息を吐いた後、わたしはもう一度、悪趣味な先輩が"辞める"前に"わたしへ"と書かれた、よれてボロボロになった羊皮紙の切れ端をもう一度読み返すことにしました。
もしかしたら一度目には感じなかった新たな発見というものがあるかもしれないし、そもそも最初は流し見でちゃんと読んでませんでしたしね。赤黒く塗られた血糊が気持ちが悪すぎて。
ふむふむ。報告書と名を打ってある辺り最初はちゃんとこの研究所で働いている職員たちの名前や素性に個々への感想など記されているようですね。自分の事をうっかり書き忘れているのは先輩らしいですが。
スラスラと読み進める。慌てて書いたのか文字はあっちへこっちへとよれており時々汗ですかね? 何か雫が落ちたような跡が残っている。緊迫した切羽詰まった情報で書かれた感が文字にありありと現れています。さすがは先輩。悪戯に手は抜かない主義なんですね。わかります。わかりますとも、ええ。
しばらく職員たちのどうでもいい詳細データが続いた後。
次は子供達のことですね。三枚目の紙からは研究所に集められた子供達の詳細データに移行したようです。
顔と名前が一致しないような職員よりも、良く知った子供達の方がより楽のしめますよ。と小さく独り言を呟きながらわたしは読み進める。
此処には沢山の子供がいますからね。彼らの事も一人一人丁寧に、見る角度によっては変態的に詳しく書かれているのは研究員らしくてわたしはいいと思いますよ。特に此処に集められた子供達の殆どがドラゴンネレイドだということに気付いた着目点が特に素晴らしい!
先輩はドラゴンネレイドが何たるかを解ってらっしゃる!
ドラゴンネレイド。別名"竜の一族"
太古の昔。神々がまだ地上でヒトと共に暮らしていた神話と呼ばれた時代。女神ナーガは邪神ギムレーと闘う駒として異世界に住まう最強の種族"ドラゴン"のDNAデータをベースに新たな種族を創造しました。まあ端的に言うとそれがドラゴンネレイドの先祖に当たる訳なんですけどね。
基本的に世界が無数に存在しているということを理解する者は少ない、それを知る事は禁忌と女神を祀る者達の間でされてきましたから当然の事なんですけどね。
物語は美しい方がいいに決まっている、昔の狂信者の言葉です。
しっかし……???のデータベースで検索したら簡単に解りそうな事ばかりだというのに。まあこの時代ではそんな便利な物、存在しないので仕方のないこですが……でもよく自分の力だけで此処までの情報を集めましたよ。拍手喝采ですよ。褒めちぎってあげますよ。
「特にわたしの項目なんて……」
ビロロロローン!!
わたしの言葉を遮るかの様に野太い鳥の鳴き声が窓から聞こえた。これは朝を来たことを皆に伝える雄鶏の鳴き声ですね。毎度聞いても慣れない、なんともいえない鳴き声の。
やれやれと溜息を吐きながらよいしょっと愛用のログチェアから身体を起こし立ち上がる。下手な体制で読んでい所為か少し白衣に皺が寄ってしまっている。これは先輩に見られたら即叱られる奴だ……叱られる自分を想像するとぶるるっと身体が震えてしまいます。
「今からアイロンをかける時間なんてないですし、それにそうこうしてる間に先輩が起こしに来てしまいそうですですし」
なにか。なにか誤魔化せれるものはないかと物は溢れ返りまるで何処かの洞窟(ダンジョン)の最奥にある宝物殿のような部屋の中を探索してみますが、積み上がっお気に入りの人形(コレクション)の下を潜って探して見たり、卑猥な物を隠すなら定番のベッドの下を捜索してみたりしましたがお目当ての物は見つからず。
むしろ白衣が埃まみれになってさらに悪化してしまったような気も……しないでもない?
あ。これ。わたし詰んでしまったのでは?
「あああ! どうしましょう! 几帳面な先輩の事です。きっと怒られるだけじゃ済みませんよ。野原に磔の刑にされてそのまま一生を終えるんですよーーー」
「ほう……随分と楽しそうな事を考えているんだな。俺もいれてくれよ」
背後から聞こえるのは乙女心をくすぐる渋いハスキーな美声(イケメンボイス)
この声はもしや……いやもしかしなくてもそうですよね。そうなんですよね。ちらりと見た壁掛け時計はいつも先輩が起こしに来る時間丁度を指し示しておりました。おー神よー。
- 第一階層[新米研究員の日常] ( No.30 )
- 日時: 2019/09/04 07:23
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
「おー神よー」
「お前の"ソレ"は何の神なんだよ」
はぁーと大きな溜息が聞こえてきます。これは……呆れてますね。
仕方ないじゃないですかー。わたしはあなたのような完璧超人じゃないですからー。極普通のその辺にごろごろといそうな凡人(モブ)なんですからー。と、本人に直接言う勇気がないので心の中で反論しておきます。えぇ。ひっそりと。
「はぅ。溜息をつきたいのはこちらも同じですよ。知ってます? 乙女の朝は色々大変なんですよ?
着る服装を選んだり(わたしは仕事着も普段着も白衣なんで、白衣=一張羅なんで全然関係ないですけどね)、あれやこれやと髪型を整えたり(生まれてこの方髪をいじった事などございません。だってー面倒じゃないですかー)、あとはお化粧をしたりなんかですね(わたしは……以下略)、とまあ、色々乙女は大変なんです!」
とりあえずなにか言わなくてはわたしの地位が……此処での地位が危ぶられてしまうかもしれないので、いちおう、反撃してみたのですが……返って来た返事は。
「あっそ」
あっそ! って。 あっそ! って。
もっと何か言う事はないんですかこの人はっ。物事にこれっっっぽっちも興味の無い人だという事は初対面の時に嫌という程に味合わされましたけどね! もう少し何か……。
わたしがぶつぶつと心の中で愚痴っていると聞こえてくる「ふぅー」とまた息を大きく吐く声。えぇーまた何か呆れてます? わたし!?
とも思いましたがよくよく考えなおしてみたらこれは溜息ではありませんね。この深く息を吸って大きく吐いた、深呼吸的な動作をしている時は大抵……。
「だーかーらー此処は全館禁煙なんですってばーーー!!」
いざっと振り返ってみれば案の定。自然に任せて伸び放題したボサボサの髪に死んだ魚のような目をした"もう一人の先輩"シュヴァルツァー先輩。
整えられたお顔立ち、そして煙の上がる白い棒。はあ……また所長に怒られる……おー神よー。
「だからお前のソレはなんの神なんだよ」
ぷはー。と頭を抱えるわたしをしり目に先輩はまた息を吐き出す。
先輩がぷはぷはやっているのは煙草と呼ばれる、吸うと気持ち良くなれる危険な成分を持つ葉っぱを簀巻きにし手のひらサイズにしてご家庭に配られている"違法薬物"と言う奴です。
吸うのに火を使うので森に囲まれた此処では火気厳禁。そうじゃなくても小さな子供になにか悪影響を及ぼしかねない危険性を兼ね備える違法薬物……諸々の理由で煙草は禁止にされているっていうのにこの人は……。
もし所長に煙草を吸っている現場を目撃される、または人づてに吸っていたことがばれる、見つかれば言わずもがな叱られる=一人は嫌=よし。後輩を巻き添えにしよう。とゆう魂胆でいつもこの人はわたしの部屋にやってきては美味そうにぷはぷはと……くぅー。
「なんだ。お前も吸うか」
「吸いませんよ! 仕事へ行きますよ!」
返ってくるのは「ふーん。真面目なんだな」と、いつもの生返事。
何故神はこんなだらしのない男に美の声をあげてしまったんでしょう。もっと適材適所が居たでしょうに……まさか髪はブス専!?
先輩も言っていましたがわたしは一度信仰する神を見誤る必要がありそうですね。うんうん。心のメモに書き留めておきましょう。
- 第一階層[新米研究員の日常] ( No.31 )
- 日時: 2019/09/04 09:00
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
木漏れ日も射さない薄暗い森の中をひた歩く一組の男女。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
無言。沈黙。静寂。
無音の世界。二人の間に言葉は交わされません。ただひたすら目的地に向かって真っ直ぐ伸びる廊下を歩くのみ……って。
「さすがに静かすぎますよ!」
「ふっ」
あまりの静かさに、無言の重圧に耐えきれなくなった私は口を開いた。
先輩の方は掛けている黒縁眼鏡を右手の中指でくいっとあげて余裕の笑み。……なんでしょう何気の無い動作なのに異様な苛立ちを感じます。
今私と先輩が立っているのは職員寮と子供たちとの触れ合いの場(仕事場)を繋げる廊下の中腹辺り。
建物同士は別々に建っているのでそれを繋ぐ廊下も外に建設されいてお陰様で毎日薄暗くてナニカ出そうな森の中を進まなきゃならないんですよー。
だからなので毎朝先輩に起こしに……とついでに用心棒役をやってもらっているんですよね……いや見た目は美形ですし女性のナニカだったらいけないかなーっと、男性のナニカだったらそこは潔く諦めましょう。私も女です。覚悟はできています! いえできてません! まだこの若さでアチラの世界の方々の仲間入りはしたくはないです!
「およよよ……」
「何一人でぶつぶつと言っている。腹でも痛いのか」
「……なんで神は先輩なんかに美顔をおたえになられたんですかね」
「知らん」
敬虔な信徒? の私とは違い神などまったく信じていない現実主義なシュヴァルツァー先輩。まぁ化学に携わる者だったらそれが当たりまえの反応なのかもしれませんけどね。
ですが化学があまり発展していないこの時代においてその反応は大変珍しいものなんです。何故ですかって?
ではお教えしましょう。
先にも言ったようにこの世界には女神と邪神と呼ばれた二伸の神々がおりました。ですが太古の昔、神話の時代と呼ばれた時代に両者は対立し世界を巻き込んだ大戦争を起こしました。詳細は省くとして、結果女神が勝利を収める事となり邪神はさよならバイバイめでたしめでたし……となったのが数百年前までのお話。
邪神との闘いでかなりの力を使ってしまった女神は力を取り戻す為、女神の住まう聖地(天界か何処かでしょう)に戻られてしまいました。
信仰する対象を失った当時の人々は焦りました。今後誰が自分達を導いてくれるのだと、困惑し絶望し、自ら命を絶つ者も少なくはなかったそうです。
それを憂いた各種族の王たちは世界会議(レヴェリー)を開き話し合い、こう結論を出しました。
"新たなる神を我々の手で召喚しよう"
王たちと優秀な魔導士たちが協力して召喚した七匹の竜(ドラゴン)
新たなる絶対的支配者であり、自分たちを護ってくれる巨大な存在に出会えた人々はこれ幸いとそれまで信仰していた女神をあっさり捨て、自分が所属する種族を護る竜へ対象を変えたそうです。
それが今現在各国を守護する守護竜(ネイティブドラゴン)だと、私は勉学の時間子供たちに教えています。
そういえば召喚獣を召喚するにあたって起こるルールはご存知です?
召喚獣——それはこの世界には存在しない異世界から呼び出された魔獣。
召喚を行うにはそれ相応の対価が必要である。
対価は召喚する者によって必要な物は違うようですね。まあ大体は人の肉とか魂とかその辺の贄なんですけどねー。守護竜はどうなんでしょう? まさか守護する存在が人の肉やら魂なんか食べてないですよね? もしそうでしたら本末転倒! ぞわぞわものですよ。
召喚獣はある一定時間経過する、もしくは召喚士が死亡すると元居た世界へと自動的に帰還する。
こちらの世界へ留めるためにはさらなる対価が必要になる。
「……ふぅ。召喚獣についてはこんなもんですかね。最低知識(常識)を知っていればあとは興味のある子たちが自ら進んで学びに行ってくれるでしょう」
一息つくと私は今日の勉学の時間で子供たちに読み聞かせようと思っていた、召喚士と召喚獣の関係と書かれた本を閉じ片手に持つ袋の中へと放り込んだ。
「……」
ちらりと横を向く。先輩は相も変わらず黙々と歩いている。
もっと本を読みながら歩くのは危ないぞっとか、そんなに熱心に……おまえは本当に子供が好きなんだなっとか、何か色々構ってくれてもいいのにーですよねー。
求める相手がシュヴァルツァー先輩なだけにそれはもう叶わないものなんだと諦めるしかないんでしょうけど。
それにしても……いやだとしても……もう何年もずっと二人一緒いるんですから少しくらい二人の関係に進展があったりしても良いのでは……それはないものねだりとでもいうのでしょうかねぇ。
「あっ!せんせぇ」
目的地でる建物の入り口が見えてくるとそこには待ち人が。
ふんわりとゆるーく巻きがかかったトウモロコシのようなブロンドのクセッ毛を頭の左右で横に纏め、くるりとした藍色の瞳が愛らしい私の天使。
無言。沈黙。静寂。無視。そして無言の圧に耐えた私のご褒美いえ天使が今此処に降臨! ありがとうございます。おー神よー。
- 第一階層[新米研究員の日常] ( No.32 )
- 日時: 2019/09/08 08:33
- 名前: 姫凛 (ID: 9nuUP99I)
「あっ! せんせぇ」
私を見つけて嬉しそうに満点の笑みを浮かべる天使。真っ直ぐに私の方へ走って来てぴょーんとっ腕の中へダイブ!
はぁーすりすり。焼けたトウモロコシの香ばしくていい匂い……じゃなくて果物のような甘い香り、くんくん。なにか香りつけでも使ってるのでしょうか?
洗濯する時にレモンの汁でも入れました?
「入れるかそんなもん」
「むっ。私はコニーに聞いたんですよー。シュヴァルツァー先輩には聞いてませーん」
「ああ。そうですか」
先輩と私のやり取りをみてくすくすと小さな体を揺らして笑う私の天使。
まるでお人形さん(リアルドール)のように可愛いです。出来る事ならこのまま担いで部屋に持って帰りたいですよ……そんなことしたら先輩から愛の無い鉄拳を貰うことになってしまいますけどね。
容赦のない本気(マジ)殴りを贈られて(プレゼント)しまいますよ……とほほ。思い出しただけでも殴られたところがズキズキジンジン痛みます。
「あー! せんせぇーまたコニーといちゃついてるー」
建物の入り口からわらわらと沢山の子供たちが出て来ました。
あ。この子たちも名前も言った方がいいです? どうせ無増減に湧いてくる一般人(モブ)なのに?
天使以外あまり興味が……じょ、冗談ですよ。子供は皆の宝物! 子供は皆天使ですもんね! って私はいったい誰に誤っているでしょう? 私の神様ですかねぇ。
「せんせぇー」
「せんせぇーー」
「せんせぇーおはよー」
拙い言葉で話しかけてくれるのは、ここで私が身の回りのお世話を担当している三歳から七歳までの子供たち。
あっいえ。正確に言うなら三歳児の子たちだけでしたね。まあ私が担当しているのは三最から七歳児までだと認識してもらえればそれでいいでしょう。
「はいはーい。教室に行きますよー勉学の時間が始まりますからね」
「はーい」
子犬のようにぺたぺたとまとわりついていた子供たちは私が立ち上がると、すっと一瞬離れ次は誰が先生と手をつなぐのか問題で言い争いを始めだしました。
うへへ。可愛い。間違えても口に出してはいけないので手で押さえついでに顔も半分隠してこのとろんとしただらしのない表情を見られないようにしときます。
子供たちに見られたところでべつに痛くも痒くもないないんですけどね。
一人厄介な人がいますからねーちらり。
「…………」
無言! そしてやはりとゆうか無視!
先輩はあまり子供が好きじゃないらしい。予想不可能な行動を取るのが嫌らしい。そこが可愛いのに……。
建物の中は小さな子供用にカラフルに彩られた造りになっています。
色鮮やかなブロックのぬいぐるみっぽい椅子が廊下に点々と置かれていたり、壁にはある意味芸術? 過去に此処にいた子供たちが描いた可愛らしいらくがきなどがそのまま残っていたりして小さな子供にとっては楽園とも呼べそうな空間となっているんです。
大きく成長してしまった子供たちにとっては子供っぽく過ぎて退屈な場所のように感じるみたいですけどね……残念なことに。
子供たちに先導されるまま建物内を進んでいると壁にかけられた大きな掲示板が見えて来ました。
此処で行われる予定表などが張り出されている掲示板です。
此処には多くの子供たちが暮らしています。大人よりも沢山の子供が暮らしています。
下は乳幼児から上は十二歳まで。種族は偏りなく差別もなく様々子たちが。
——ですがこと最近に関してはドラゴンネレイドの子供が多いような気もします。
子供たちは大きく分けて三つのクラスに分けられています。
まずは乳幼児組のホワイト。主に所長が担当しています。
次に三最から七歳までの年少組のイエロー。私とお手伝い役のシュヴァルツァー先輩が担当しています。
本当は先輩が先輩なんだからメインで後輩の私がサブを担当するはずだったんですけどね……まあ先輩は子供苦手だから仕方のないことなんでしょうけど。私は子供大好きですし。
最期に残りの八歳から十二最の年長組のグリーン。
担当外なのであまり詳しい事は判ってないですが、十二歳を迎えると子供たちは新しい親御さんの元へ行ってしまいます。
なんでしょう……ああ。里子です。里子に出されて里親さんに拾われるんです?
此処では身寄りのない子供たちと一緒に暮らす研究施設であると同時に身寄りのない子供たちのための孤児院でもあるんです。
お別れの時はいつも涙涙で胸が張り裂けそうなくらい痛いです。先輩は無表情でしたけど。
「さてさて今日っは何か面白い事はあるのかなーと」
「グリーンのクラスは身体検査があるみたいだな」
「ですねー」
毎月一回は行われる身体検査。ようは健康診断ですね。
やはり新たにお父さんお母さんになりたいって里親さんも不健康な、謎の流行病とかにかかっているような子供はいらないですからね。残酷な話ですけど。
なのでいつお迎え(里親さんの)が来ても良いように常に万全な状態でいようってことでやっているそうです。
私としてもドラゴンネレイドの血が楽に手に入れられるチャンスなので願ったり叶ったりなんですけど。
ドラゴンネレイドは狂暴で恐ろしい存在ですから此処以外で手に入れる方法となると……診療所に紛れ込みますか? 白衣の天使として私が?
白衣の天使となった自分の姿を思い浮かべてみた。
「いやぁ私に天使は似合いませんよーうへへ」
「あらあら楽しそうですね」
「うへへ……うえ!?」
やばい。やばいですよ。どうしましょう。
厄介も厄介。先輩よりも厄介。もしかしたら最終の敵並(ラスボス級)にやばいお方が現れた(エンカウント)してしまいましたよっ。おー神よー。