複雑・ファジー小説

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99%のボクと1%のキミ
日時: 2018/01/13 21:29
名前: わたあめ (ID: cdCu00PP)

目が覚めた時、見えたのは真っ白な天井だった。
少しぼやけて見える。
いや、ほぼぼやけていて白いことしかわからない。

そこに何人か、顔を覗き込んできた。
驚いたが、体は何も反応しなかった。

動けない。
手が、足が、すべてが言うことをきかない。

なぜだ。
ここは一体どこなんだ。
俺はここで何をしているんだ?
こちらを見ているのは誰なんだ。

そんなことを考えただけでもの凄く疲れた気がした。
瞼が重い。
今にも目を閉じてしまいそうだ。
だが不思議とここで目を瞑れば、もう二度と同じ風景は見れない気がした。
目を覚ますことができなくなりそうな気がした。










あれ、俺は一体?







【登場人物】

#三島 椋 (みしま りょう)
高校2年生。夏に心臓移植に成功するも人格が180°変わってしまう。
元は大人しく読書が好きな青年だったが移植をしてからは口数が増える。

#藤井茉里(ふじい まり)
高校2年生。椋と同じ学年の女子。
移植前の椋と話すことはなかったが移植後に話すようになる。

#有明翔太(ありあけ しょうた)
高校2年生。移植後の椋と仲良くなる。
爽やかで誰にでも優しい。

#土屋健人(つちや けんと)
高校2年生。翔太と同様、移植後の椋と仲良くなる。
チャラついていて女子からの人気が高い。

#森山芽以(もりやま めい)
高校2年生。茉里と同じクラス。
口が悪くはっきりした性格。

#蛯名秀雄(えびな ひでお)
椋の主治医。

#四宮洸(しのみや こう)

#芹沢飛鳥(せりざわ あすか)

【ストーリー】
#01 【 春に 】 01~05
#02 【 ずっと君のことを 】 06~10
#03 【 ひそかな気持ち 】 11~14
#04 【 助けて頂いた者です 】 15~

Re: 99%のボクと1%のキミ ( No.14 )
日時: 2018/01/13 21:28
名前: わたあめ (ID: cdCu00PP)



「終わったー!」

健人は教室で大声をあげた。

ちなみに今日は7月28日。
実に、夏休みが始まってから10日かかって数学と科学の補講が終わった。

「おつかれ、つっちー」

椋はそう言ってお茶の入ったペットボトルを差し出してきた。
健人は「さんきゅー!」と言ってペットボトルを受け取りお茶を飲んだ。

「長かったね、わりと」

翔太はそう言って微笑む。

「うるせえ、終わったんだからいいだろ」

健人はそう言いながら幸せそうに机に突っ伏した。

あの後、芽以は来てくれなくなった。
Limeは3日に1回くらいしか返信が来ない。
最終的にもう手伝わなくていいよとか言ったのは俺自身だから別にいいんだけど。
で、椋と翔太に来てもらっていたというわけだ。

「あれ、今日は珍しく男くせーな」

黒川の声がした。
見れば、黒川が教室に来ていた。

「芽以は?痴話喧嘩でもしたか?」

黒川は茶化すように言った。

誰のせいだと思ってんだ。
って、これはただの八つ当たりか。

「してねえよ、てかあいつ友達だし」

健人が言うと、黒川は「いやあ、芽以が男と話すの珍しいからさ。健人はチャラいし」と言いながら近くの椅子に座った。

「森山さん、そんなに男子と話さないの?」

翔太が黒川が言った。
黒川は「1年のときから見てきたけどまったく」と答える。

「なんで?男嫌いなの?」

椋が言う。

「さあ、俺にもわかんないけど。って、お前らも芽以と話すんだ」

黒川は驚くように言った。

「俺らは完全に嫌われてるけどな」

健人が言った。

「嫌いな相手と遊んだりしないだろー。芽以は流されるタイプじゃないし」

芽以ちゃんのことよくわかってんだな。
とか思うんだけど教室なら当たり前だよな。
これはポジティブ?

「生徒の恋路気にしてねーで、あんたこそどうなんだよ」

健人はニヤニヤしながら言った。

「えっ、先生彼女いるの?」と椋。

「失礼だな。俺ももう27だしな、そりゃいるよ婚約者くらい」

婚約者、か。

「へええ、なんて名前?」

翔太がいい、黒川は「教えねーよ」と答える。

「はるかちゃん」と健人。

「おいっ健人!」

「こないだはるかちゃんからLimeきてたの見ちゃった〜」

「うるさいぞ」

「どこの人なの?」と翔太。

黒川は渋々答え始める。

「はるかは前働いてた学校で会った保健の先生なんだ」

「うわー、保健の先生に手出したんだ」

健人が言う。

「手出したってなんだよ、健人じゃあるまいし」

「ふざけんな、俺に人権なしか」

「健人はチャラいだろー。俺は知ってるぞ」

「ひっでえイメージ。そりゃ彼女いない時はナンパくらいするだろ」

「しねえよ、俺は。なあ、椋も翔太もしないだろ」

黒川が言うと、椋は「俺はもちろん一途なんで」と得意気に。

翔太は「俺は別に男といた方が楽しいし」と微笑んだ。

「なんだこの、俺が悪者みたいな雰囲気は」

健人は肩身が狭そうに呟く。
その時、ドアの方から女子の声が聞こえる。

4人が不思議そうにドアの方を見ると、そこには見知らぬ女子が二人いた。

「お前らどうした?」

黒川が行き、ドアの前で何か話しているようだった。
すると黒川が戻ってきて健人に「お呼びだぞ。1年生が」とドアの方を指した。

この流れは…。




健人が彼女たちの方へ行くと、1人の女子が前に出てきた。

「あ、あの!健人先輩って…彼女いるんですか…?」

彼女はとても恥ずかしそうにきいてきた。

はいはい、その質問ね。
うーん、なんて答えよ。

「ああ、いやいないけど」

健人が困惑気味にそう言うと、彼女はぱあっと明るい顔つきになった。

「あ、あの…去年球技大会で健人先輩見てすごくかっこよくて…その、良かったら付き合ってもらえませんか?!」

彼女に言われ、健人は「あー、うーんと…」と少し考える素振りを見せる。

年下は興味ないんだよなあ。
ていうか俺、今後は一途になるって決めたしな。
いやそもそも、今気持ちがザワワッ!としてるところだしな。

「あー、あのさ。俺そのー…好きな子いるからごめんね」

健人がそう言うと、彼女は「そうですか…」と落胆した。

「うん、ごめんね」

「…わかりました。あの、ただの後輩としてでもいいので…番号、教えてもらえませんか?」

わりと芯の強い子だな。

「うーん、ごめん。まずは挨拶程度に学校で見かけたら話しかけてよ」

「…わかりました。ありがとうございます」

彼女はそう言うと健人に会釈し、友達と戻っていった。

あーあ、泣かせちゃった。
俺もふられたら泣いちゃったりとかするのかな。

健人が教室に戻ろうとすると、廊下から足音が聞こえた。
足音の方を見ると、芽以がいた。

「芽以ちゃん、来てくれたんだ〜」

健人が言うと、芽以は「別に。今日はあたしの課題出しに来ただけ」と言って1人で歩き出す。

「おまえあれから避けてやがるな」

健人はそう言いながら芽以の隣へ。
芽以はうざそうにする。

「避けるわ痴漢」

「だーれが痴漢だよ。んなこと言ってっと次はちゅーすっぞー」

「きもいんだよ、しね!」

「ちゅーするまでは死ねないな〜」

「まじきもい!さっきも女遊びしてたんでしょ、はやく消えろ!」

「遊んでねえよ!ちゃんと断ったわ!」

「知らねえよ!興味ねえから!」

「興味ねえとか言うなよ!」

「お前なんかに興味ねえよ!痴漢!」

芽以はそう言ってカバンで顔を殴ってきた。
不機嫌な顔はいつもと同じ。




あーあ、これは道が長そうだ。

Re: 99%のボクと1%のキミ ( No.15 )
日時: 2018/01/17 02:27
名前: わたあめ (ID: cdCu00PP)


【 助けて頂いた者です 】



「スポーツ大会か〜、つっちー何出る?」

翔太は後ろの席の健人に問いかけた。
健人は「俺はバスケだな〜」と呟く。

「椋ちゃんは?」

健人の隣の椋へ。
椋は「うーん」と考えてから答える。

「バレーかな」

「そっか〜俺は何にしようかな〜」

8月、スポーツ大会が始まる。
球技はバスケ、バレー、サッカーの3つ。
あとは短距離、長距離、リレーといった陸上競技。

「そこの3人、アンケートとるから紙に書いてね」

クラスの体育委員の石原さん。
石原さんはそう言って紙を配ってきた。
3人は紙を受け取りやりたいものに〇をつける。

「夏休み全然動いてないからなー、できなそー」

健人はそう言ってだるそうに机に寝そべる。

「まあまだ1週間後だしねー。体育の時間結構ありそうだし大丈夫でしょつっちーは」

椋が言う。

「あはは、二人とも頑張ってね」

翔太はそう言って微笑んだ。

「とか言って翔太もスポーツ得意でしょ。リレーにでも出たら。足速いんだし」

椋がそういい、翔太は「いやいや」と謙遜。

「お前って本当謙虚だよな〜。優しい爽やかイケメンなのに。俺ほどではないけど」

健人が言う。

「そんなことないよ俺は。優しくもないし爽やかでもないしイケメンでもないよ」

「うわ〜そこまで謙遜されるとむかつく」と椋。

すると、石原が来た。

「ねえ3バカ、馬跳び出てくれない?」

石原がそういい、健人は「馬跳び?なんで」と嫌そうに言う。

「余ったから。そしてあんたたちお喋りしてたから」

「強引か」

「決まりね、放課後練習あるからよろしく。さぼんなよ〜」

石原はそう言って教卓へ。
同時に今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

「じゃあ今日はこれでーーーーー」

担任が授業を締める。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そして放課後。
3人はジャージに着替えグラウンドへ。

「じゃあ練習するよ〜」

クラスの女子3人(上野、河合、笠原)と椋たち3人。

上野に言われ、3人は「はーい」と返事。

「はい、上野。何時まで練習ですか」

健人がきく。
上野は「6時?」と答える。
現在4時。

「はっ!?2時間?!」

「さすがにきついか。5時?」

「…はーい」

健人は嫌々というように準備体操を始めた。
隣では椋と翔太も準備体操をする。

その時、同じく違うクラスの練習できたのかグラウンドに茉里と芽以の姿が見えた。

椋は「あっ藤井〜」と、健人は「芽以ちゃん!」と声をかける。
呼ばれ、茉里は笑顔で「あ、三島くーん」と、芽以は「え、行かなくていいよ茉里!」と言いながらもこちらへ。

「そっちも練習?」

椋は茉里に言う。

「うん、わたし短距離になっちゃって。芽以ちゃんも同じなの」

茉里が答える。

「へえー、お前足速いの?」

健人が芽以に言うと、芽以は「決められたの!」と答える。

「ほぉー、てことは遅いんだろー」

「うるせえよ!話しかけんな!」

二人がそんな会話をしている中、椋は「そうなんだ!見に行くな!」と茉里へ。

「えっやだよ恥ずかしい。三島くんたちは何の練習?」

「俺らは馬跳び。俺らも決められちゃった」

そんなことを話していると「三島!土屋!」と上野の声が。

手厳しい。

「なにさぼってんのよ」

「ごめんなさい…。あ、じゃあ藤井も森山さんも頑張れよ!」

椋と健人はそう言いながら上野たちの方へ。

二人が戻ってくるまでの間、上野は翔太に「あんたたち、何で藤井さんたちと仲良いの?」ときいてきた。

何で、かー。

「うーん、成り行き?」

翔太が答えると、上野は不思議そうに言った。

「三島って藤井さんのこと好きなんでしょ?」

「ええっなんで!?」

「いや、見てればわかるし」

上野は呆れるように言う。

森山さんにもばれてたし、やっぱ椋ちゃんってわかりやすいんだな…。

「藤井さんって達也先輩といつ別れたの?」

「えっ、達也先輩?だれ?」

「ほら、藤井さんが前付き合ってた人。有明知らないの?」

ああ、椋ちゃんが言ってた人か。
達也先輩、って言うんだ。

「さあ、俺はよくわかんないや。見たことないし」

「そうなんだ。達也先輩って結構チャラいから急に別れることわりとあるって聞いてたけど、本当なんだね」

「そうなの?」

「うん、よくきく」

上野とそんな話をしていると、二人が帰ってきた。

「あんたたちーーーーーー」



上野さんが椋ちゃんとつっちーにお説教している。
椋ちゃんはその達也先輩?って人知ってるのかな。

そういえば最近つっちーの様子も変だ。
鈍感な俺にもさすがにわかる。
前よりチャラくない気がする(少しだけ)。
気がするだけ、だけど。

何かやっぱ俺って鈍いんだよな〜。
中学のときから言われ続けてれば自分でもわかるよ。
俺ってバカなのかな。

翔太はそんなことを思いながら二人のところへ戻った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その日は生憎の雨。
明日はスポーツ大会なのに大丈夫なのかな?

「飛鳥、また明日ね〜」

教室で窓の外を見ていると、あっちゃんに声をかけられた。
ちなみにあっちゃんはわたしの友達。

「うん、またね!」

わたしはあっちゃんに手を振り、ジャージを脱ぎ始める。

スポーツ苦手だし、わたし的には中止になればいいなあとか思ってる。
でもみんな頑張って練習してたし…。
って気持ちもあるよ、もちろん。

制服に着替え、着替えてぐちゃぐちゃになっと三つ編みを元に戻すと、ジャージを袋に入れる。

その時、長袖のジャージがないことに気がついた。
あ、体育館で暑くなって脱いでそのまま置いてきちゃったんだ。

時計を見る。
時計は7時を回っていた。
今日は遅くまで練習したんだっけ。
体育館まだ開いてるかな。

わたしは暗い廊下を恐る恐る歩き、体育館についた。
夜の学校ってやっぱり不気味だなあ。

体育館のドアはまだ開いていた。
電気はついてなくて怖かったけど、なんとか電気をつけてステージ裏の倉庫へ。

跳び箱の上にジャージは置いてあった。
はあ、良かった。

わたしはジャージを手に取り、倉庫の出口に向かう。
その時、突然電気が消えた。

「へっ!?」

素っ頓狂な声が出た。

なんで!?なんで消えたの!?

何かうっすらと話し声が聞こえた。

「誰だ電気つけっぱなしで出てったのは」

確かにそう聞こえた。
中には誰もいないと思われてる…?

わたしは急いで倉庫を出て「あの!」と叫んだ。
だけどもう遅かった。
体育館は真っ暗で、誰もいない。
扉は閉ざされてしまった。

どうしよう…どうしよう…

涙が出てきた。
もうやだ、こんなの。

体育館は寒く、真冬のように足凍てつき、手も既に寒い。
ブレザーを着ないできてしまったため上はセーターだけで、下はスカート。
携帯はブレザーの中。

どうしよう…

涙が止まらないよ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、ごめん俺忘れ物した」

教室で着替えているとき、翔太が言った。
椋と健人は「先帰ってるぞー」と答える。

「うん!あと追いつく!」

翔太はそう言いながら体育館へ向かった。

この時間になるともう誰もいないんだなあ。
暗いしこわーい。

翔太はそんなことを思いながら職員室へいき、鍵を借りた。
そして鍵を持って体育館へ。

体育館を開けると外と同じくらいの寒さで、翔太は凍えるように深呼吸をした。

ガラガラ。
ドアを開け、ステージの方へ。

「あったあった」

翔太は1人呟き、置きっぱなしにしていたジャージを手にした。
そして戻ろうとしたその時、裏の倉庫からすすり泣きのようなものが聞こえてきた。

「…お、おばけ…?」

翔太は内心ビクビクしながら恐る恐る倉庫へ向かう。
倉庫のドアは開いていた。
すすり泣きは大きくなる。

翔太は唾を飲みこみ、ゆっくりと倉庫を覗いてみた。
すると、奥に人影が。

ええええええ、おばけ…かな…どうしよう。

翔太はそう思いビクッとなる。
すると、後ろにあったホワイトボードに肩がぶつかる。
瞬間、すすり泣きがやんだ。

や、やばい。ばれた、殺される…!

翔太は焦りながら目を瞑った。
すると「…だ、誰ですか…?!」と小さな声が聞こえた。

「あれ、はっきり聞こえる」

翔太は我に返り、倉庫の中をみた。

そこには、涙目になってこちらを見つめる華奢の女の子がいた。
同じ制服を着ている。

「…えっと、なに、してるの?大丈夫?寒くない?」

翔太はそう言いながら彼女の前にしゃがみこみ、先程のジャージを羽織らせた。

彼女は泣きながら翔太に抱きついてきた。

「うあっ」

翔太は子犬のようにしがみついてくる彼女におされ、尻もちをついた。
彼女はうわんうわんと泣いている。

翔太は彼女を見て少し微笑み、「怖かったね」と言って頭を撫でた。

きっとこの子は俺と同じで、ジャージを取りに来て閉じ込められてしまったに違いない。

翔太は彼女がいた場所に置いてあるジャージを見て思った。

しばらくしたあと、翔太は彼女を肩を優しく掴み、自分から離すと「大丈夫?」ときいた。

彼女は泣きながら小さく頷いた。

「大丈夫じゃないね」

翔太はそう言ってクスっと笑い、親指で彼女の頬の涙を拭いた。

彼女は落ち着きを取り戻すと、「…あの、ありがとうございます!」と頭を下げた。

翔太は笑顔で「ううん、君が無事で良かった。寒かったでしょ?」ときく。

「とっても寒かったです。こ、これ!ありがとうございます」

彼女はまだ少し泣きながら答える。
彼女は羽織っている翔太のジャージを見て言う。

「だよね。俺も体育館入って寒くてびっくりしちゃった。君の泣き声の方がびっくりだったけどね」

翔太にいわれ、彼女は「すいません…」と俯く。

「ううん、お化けじゃないなら良かった。もう遅いし、帰ろっか」

翔太はそう言って立ち上がり、彼女に右手を伸ばした。
彼女は翔太を見上げ、手を掴んで立ち上がる。





職員室へいき、鍵を返すと彼女は改めて「あの、本当にありがとうございました!」と頭を下げてきた。

「もういいよ」

翔太はそう言って微笑む。

「あ、あのわたし芹沢飛鳥って言います!お名前、教えて頂けませんか!?」

芹沢飛鳥に言われ、翔太は笑顔で答える。

「有明翔太。芹沢さんこれからは気をつけるんだよ」

「翔太、さん…。はい、すいません」

飛鳥は顔を真っ赤にして言う。

「あ、あと、その、突然抱きついてしまって…すいませんでした」

飛鳥に言われ、翔太は「大丈夫だよ」と答える。

「芹沢さんーーーーー」

翔太がいったとき、芹沢飛鳥は「飛鳥で!お願いします…」と遮る。
翔太は笑顔で言い直す。

「飛鳥ちゃん、何年生?」

「1年です!翔太さんは何年生でしょうか」

「俺は2年だよ。1人で教室まで行ける?」

いわれ、飛鳥は1度俯いてから「はい!大丈夫です!」と答えた。

「まだ怖いだろうし、一緒に行こっか」

翔太はそう言って1年生の教室の方へ歩き出した。
飛鳥は「ありがとうございます…」と言って小走りで隣にきた。

Re: 99%のボクと1%のキミ ( No.16 )
日時: 2018/01/23 20:59
名前: わたあめ (ID: cdCu00PP)



1年の教室につくと、そこはもう誰もおらず真っ暗だった。

「やっぱ一緒に来て良かったね。真っ暗」

翔太はそう言って飛鳥に微笑みかけた。
言われ、飛鳥は顔を真っ赤にしながら「わざわざすみません!」と答える。

「ううん。俺が勝手に来ただけだから。待ってるから準備しておいで」

翔太はそう言いながら教室に入り、飛鳥の向かう方へ。
飛鳥は自分の席でジャージをまとめ、カバンに荷物を詰める。

「翔太さんは時間大丈夫ですか?」

飛鳥は急いで準備しながら言う。
翔太は飛鳥の前の席に座って「大丈夫だよ」と答えた。

飛鳥が準備を終え、「できました」と言うと翔太は「おっ」と呟いて立ち上がる。

「じゃあ気をつけーーーーー」

翔太がそう言おうとすると、飛鳥は翔太の顔を見上げて「あの!わたしも一緒に行っていいですか。その、校門まででいいので…」と言った。

翔太は「ああ、いいけど…俺荷物まだ教室なんだ」と苦笑。

「あっ!ならわたしも一緒に行きます!行かせてください!」

「それはいいけど…飛鳥ちゃんこそ時間大丈夫?」

「大丈夫です!」

そんなこんなで二人は2年教室へ。

「わああ、2年生の教室ってなんか雰囲気違いますね」

教室を見るなり、掲示物などを見ながら飛鳥が呟いた。

「そうかな?そんな変わらないよ」

翔太はそう言って微笑み、荷物をまとめる。

「終わったよ。帰ろっか」

翔太はそう言いながら入口の近くにいる飛鳥の方へ。

「はい!」

飛鳥は返事をして翔太と一緒に学校を出る。

「うわあ、まだ9月なのに少し肌寒いね。てか雨止んでる〜」

外に出ると翔太が言った。

「ですね。もう冬になっちゃいますね」

「はやいね。ついこないだ入学したばっかりなのに」

「もう1年半くらい経ってるじゃないですか」

飛鳥は微笑んだ。

「いや飛鳥ちゃんも2年生になったら絶対思うよ。1年生の時懐かしいなあ〜とか」

「そうですかー?あ、翔太さんって明日何に出るんですか?」

「俺はバレーと馬跳び〜」

「へええ!見に行きますね!」

「いやいいよー。下手くそだから」

「下手でも何でも見たいんです」

「じゃあ俺も飛鳥ちゃん見に行こうかな。何出るの?」

「わ、わたしはバスケです。下手くそです」

「下手でも何でも見てあげる」

翔太はそう言って微笑んだ。
飛鳥も笑いながら「嫌ですよ」と答える。

校門につくと、「飛鳥ちゃんどっち?」ときかれ、飛鳥は「左です」と答える。

「お、偶然。俺も左だよ。どうせならもう近くまで送っていくよ」

翔太はそう言って歩き出した。
飛鳥は「そんな!大丈夫ですよ」と焦った表情を浮かべる。

「いいよ、だって方向同じじゃん」

翔太はそう言って微笑み、二人は歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おはよー」

朝学校に行くと、つっちーも椋ちゃんも先に来ていた。
今日は早いな。

「お!翔太おまえ昨日結局来なかったけどどうした?」

つっちーに聞かれた。

「うーん、人助け?」

適当に答えちゃおう。

「人助け?なんだそりゃ」

椋ちゃんも不思議そうに見てきた。
ってそりゃそうか。
でも言い訳が思いつかない…。

翔太はそう思いながらも黒板に貼ってあるトーナメント表に目を落とした。

自分たちクラスの時間を把握し、椋たちは時間があるので他のクラスの試合に見に行くことした。

体育館に行くと、隣のクラスと一年生の試合が始まっていた。
体育館の入口に3人でいると、後ろから声が聞こえた。

「うあっ!…翔太さん?」

言われ、3人は同時に振り向く。
そこには、飛鳥ともう1人女の子がいた。

「ああ、飛鳥ちゃん。今日頑張ってね」

翔太がそういい、飛鳥は「はい!翔太さんが見てるなら尚更頑張ります!」と笑顔で答えた。

見に来たわけじゃなかったけど…まあいっか。

すると健人は不思議そうに言う。

「まてまて誰この美少女」

健人は言いながら飛鳥を指さした。

「昨日色々あって知り合った子。1年生だってさ」

翔太が答える。

「人助けとか言ってなかったっけ、さっき」

椋も不思議そうに言った。

「うーん、そんなところなんだよ」

翔太は説明をはしょって言った。

「わたしも翔太さんの試合、絶対絶対見に行きます!頑張ってくださいね!」

飛鳥は笑顔で言った。

「あ、うん。ありがとう」

翔太がそう言うと、飛鳥は3人に会釈して去って行った。

「へええ、可愛い」と健人。

「つっちーはそればっかなんだから〜」と翔太。

「うっせーよー」

二人がそんな会話をしていると椋がいなくなっていた。

「あれ、椋は?」と健人。

「ほんとだ…ってあそこだ」

翔太はそう言って少し離れたところを指さした。
そこには茉里と芽以と話す椋の姿が。
それを見た健人は「あいつずる!俺もいかなきゃ」と言って小走りで3人の元へ。

つっちーはなにがずるいと思ったんだ?
椋ちゃんは一途だな〜。

そう思いながらなんやかんやで翔太も二人の所へ。

会話は相変わらずで、椋が茉里と話してる時、横では健人と芽以が喧嘩している。

そんな中、試合が始まり翔太は飛鳥に目を落とした。

飛鳥は自分で下手だというだけあって、うまいとは言えない。
ボールが回ってきてもパスは下手で。
飛鳥を見て翔太は思わず微笑んだ。

「なーにニヤニヤしてんだよ」

健人が話しかけてきた。
翔太は「飛鳥ちゃん。下手だなーって」と微笑んだ。

「確かに…。でもなんか可愛いなーあの子がワタワタしてんの」

「だね」

話していると、椋が「二人ともー、俺達も試合向かわなきゃ」と言って歩き出した。

言われ、二人も椋のあとを追った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


バレーが終わり、3人は壁際へ。

「ごめん俺トイレ」

翔太は二人にそう言って廊下へ。
すると、見知らぬ女子が話しかけてきた。

「あの翔太先輩!良かったらこれ、使ってください!」

彼女はそう言ってタオルを差し出してきた。

「あー…ごめんね!自分のあるから大丈夫だよ。ありがと」

翔太はそう言って微笑み、トイレへ。

ああいう時ってどうしたらいいのかわかんないんだよなあ。
変に気があると思われても困るし。
かと言って断ると傷つけちゃうし。
大体なんで知らない男にタオルなんて渡そうとするんだろう?
面倒じゃないのかな。

そんなこんなでトイレを出ると、すぐに飛鳥がいた。

「うあっ、びっくりした。飛鳥ちゃん。どうしたの?」

翔太が言うと、飛鳥は「あ、あのこれ…」と言ってタオルを差し出してきた。

え?

「さっき断ってるの見たから迷ったんですけど…。使ってもらえませんか!?」

飛鳥は精一杯話しながら翔太を見上げて言った。
翔太は「うーん…」と悩む素振りを見せる。

翔太はごめんね、と言おうとした。
だが飛鳥の真っ直ぐな瞳を見てしまうとどうも言えない。

「…あ、ありがとう。飛鳥ちゃん」

翔太はそう言ってタオルを受け取った。
飛鳥は嬉しそうに「使ってくれるんですか!?」と微笑んだ。
翔太は「…遠慮なく」と苦笑。

まあ、知ってる後輩からだし受け取ってもいい…よね?

「ほんとですか!良かったあ…」

飛鳥はこの上なく嬉しそうにしている。

こんなことでそんなに嬉しいのかな…。
なんか申し訳ない。

翔太はそう思いながら微笑む飛鳥を見た。

「…飛鳥ちゃんって面白いね」

「えっどこがですか!?」

飛鳥は途端に不思議そうにこちらを見る。

「いや、なんとなく。じゃ、またね。タオルありがとう」

翔太はそう言うと体育館へ歩き出した。

なんだろうあの子。
不思議すぎる。

Re: 99%のボクと1%のキミ ( No.17 )
日時: 2018/02/05 00:54
名前: わたあめ (ID: jBbC/kU.)



「ふーん、でもあの先輩、やっぱ結構人気みたいだよ」

翔太さんのことを話したら、友達はみんなこう言った。

そんなのわかってるもん。
見れば、バレーをしている翔太さんを見てキャーキャー言っている女子はたくさん。
それも、翔太さんの学年の人も、あたしの学年の人も、3年の人も。
あんな爽やかな笑顔はずるいよ〜。
みんなかっこいい!って思うもん。

「やっぱ競争率高いって、飛鳥」

友達の絵里奈が言った。
飛鳥は少ししゅんとしたがバレーをする翔太を見てすぐにぱあっと明るい顔をした。

「でもやっぱりわたし、翔太さんのこと好き!あんなにかっこいいんだもん、諦められない」

飛鳥の目はキラキラ。

「一目惚れなんてすぐ忘れられるって〜」

絵里奈に言われ、飛鳥は「一目惚れするの初めてだもん!これはもう運命だよ!」と微笑んだ。

「吊り橋効果だね」

「つ、吊り橋…なに?」

飛鳥は不思議そうに言った。

「飛鳥、体育館に閉じ込められたんでしょ?そんなときたまたま助けに来てくれたのがイケメンな先輩だったから惚れちゃったんでしょ〜」

絵里奈は呆れるように言った。

「う、うん。そりゃ!だって!あんな状況で助けてくれたら…ああ、思い出しただけでもドキドキする〜!」

飛鳥は言いながらニヤニヤした。

「まあ、飛鳥が好きって言うなら応援するけど…」

絵里奈は苦笑しながら言う。
飛鳥は「ありがとう!えっちゃん!わたし頑張る!」と言って絵里奈の手を握った。





球技大会の1日目が終わり、飛鳥は絵里奈と共に校門へ。

「あ、あれって」

校舎を出た時、校門の近くに翔太たちがいるのが見えた絵里奈が言った。
飛鳥は「翔太さん!」と目を輝かせた。

翔太たちは歩きながら右へ曲がっていく。

「…あれ」

飛鳥がボソッと呟いた。
絵里奈は「どうした?」と不思議そうに校門を見つめる飛鳥に声をかける。

「…翔太さん、左方向だったのに」

「どういうこと?」

「わたしと帰った日、翔太さん方向一緒だから次いでにって、わたしのこと家まで送ってくれたの。なのに今右に…」

「他の先輩たちと遊ぶからその人んち向かったとか?」

「そう…なのかな」

「たぶんそうだよ」

翔太さん、もしかしてあの日。





ああ、もしそうならわたしーーーーー。
もう本気で、本当に諦められなくなりそうです。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、球技大会二日目。
この日、飛鳥は補欠で何もすることがなく絵里奈たちの試合を見に行ったりしているだけだった。

「はあーあ、暇だなあ」

試合を見ながら、飛鳥は呟く。

「飛鳥ちゃん」

ふいに声をかけられた。
横を見ると、そこには翔太の姿が。

「っ翔太さん!」

飛鳥は驚きのあまり素っ頓狂な声が出る。
翔太は微笑みながら続けた。

「驚きすぎ。今日は試合出ないの?」

「あっ、きょ、今日はその…補欠で!何もなくて暇で」

「そうなんだ」

「はい!翔太さんは何してるんですか?」

「ああ、友達が試合出てる間暇だからブラブラしてた。そしたら飛鳥ちゃん見つけた」

「そうだったんですね。びっくりしました」

「びっくりされて俺がびっくり」

翔太はそう言って微笑んだ。

ああ、なにこの天使の微笑み。
かっこいいなあ…。

飛鳥は翔太の笑顔に見とれ、そんなことを考える。

その時、翔太の携帯が鳴る。

「あ、俺試合行かなきゃ。1人足りなくなったって。じゃ、またね」

翔太はそう言って立ち上がり、飛鳥に手を振った。

「あ、はい!頑張ってくださいね!」

飛鳥は笑顔で翔太を見上げて言った。

「うん!ありがとう!」

翔太はそう言うと体育館から出ていく。

あーあ、行っちゃった〜。
もっと話したかったなあ。

その時。

「危ない!!!」

声が聞こえた時にはもう、遅かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「大丈夫ですか!?」

体育館から声がした。
試合が中断されたようだ。
やけに体育館が静まり返っている。

翔太は不思議そうに体育館の方を振り返り、少し小走りで体育館に戻った。

体育館のドアから中を覗くと、何やら人が集まっていた。
人が集まっている場所はさっきのーーーー。

翔太は急いで中に入り、「どうしたの?」とギャラリーに聞く。

「女の子にボールがぶつかって気を失ったみたいで…」

1人の生徒が答えた。
翔太は「ごめんね」と言いながら人の中を行くと、そこには飛鳥が倒れていた。

「飛鳥ちゃん!」

翔太はそう言って飛鳥の脇にしゃがみこむ。

「保健の先生は?」

翔太がきくと、近くにいた生徒が答える。

「もうすぐ来ると思うんですけど…」

その時、「どうしたの?!」と保健の竹内が入ってきた。

「ボールがぶつかったみたいで」と生徒。

「保健室に運ばなきゃいけないわね」

竹内がそう言うと、翔太は飛鳥の首と足に手を回しながら「俺が運びます」と言って立ち上がり、飛鳥を抱き上げた。

竹内は「ありがとう」と言って保健室へ歩き出した。
翔太も竹内のあとに続いた。





保健室につくと、「ここに寝かせて」と竹内が指示した場所に飛鳥を静かに置いた。

翔太は飛鳥のわきにしゃがみこみ、飛鳥の顔を見ながら「大丈夫なんですか?」ときく。

竹内は飛鳥を診ながら「ただ気を失ってるだけみたいだからすぐ目を覚ますと思うわ」と答える。

「…なら良かった。心配なんで少しいてもいいですか?」

翔太が言うと、竹内は「いいわよ」と答える。

「有明くん、芹沢さんの彼氏?」

竹内に言われ、翔太は微笑んで答える。

「いえ、ただの後輩です」

「あら、そうだったの。随分心配してるみたいだったからてっきり」

「誰かが倒れたら心配なのは当たり前ですよ。ましてや知ってる子なんで」

「優しいわねー、飛鳥ちゃんも良かったわね…ん?あら、肩にもボールぶつかったのかしら」

竹内は飛鳥のジャージの首元から見えた青い傷を見て言った。

「俺は見てなかったからわかんないんですけど…大丈夫そうですか?」

「…一応、シップは貼った方が良さそうね。有明くんはカーテン開けちゃだめよー」

竹内はそう言ってベッドの脇のカーテンを閉めた。

「あ、開けませんよ!」

翔太は少し顔を赤らめながら近くの椅子に腰をかけた。

すると、「あら、目が覚めたの?」と竹内の声が聞こえた。

翔太は即座に立ち上がり、カーテンを開けて「飛鳥ちゃん!」と声をかけた。

が、瞬間。
開けて後悔。
顔が熱い。

飛鳥は上半身裸で、下着しかつけていない状態だった。

「ああっ!ごめん!」

翔太はそう言って後ろを向く。

「…翔太さん?」

飛鳥の声だ。

「有明くんが運んでくれたのよ」と竹内。

「へっ?!そ、そうなんですか!?」

いつもの飛鳥だ。

「…あ、うん」

「迷惑かけてごめんなさい!その、ありがとうございます!」

「俺は全然迷惑なんかじゃ。そ、それより大丈夫?」

「はい!大丈夫です」

「…痛くない?肩」

見たのは少しだが飛鳥の肩は青くなっていた。

「大丈夫です」

すると、竹内は「有明くん、もうこっちみても大丈夫よ」と言った。

翔太は恐る恐る振り返る。
見れば、飛鳥はもうジャージを着ていた。
ホッと胸を撫でおろし、改めて飛鳥を見る。

「良かった、無事で」

翔太がそう言うと、飛鳥は微笑みながら答える。

「翔太さんが運んでくれたお陰です。本当にありがとうございます」

「ううん。君が無事ならいいんだ」

翔太はそう言って飛鳥の頭を撫でながら安心したように微笑んだ。

「有明くんは本当優しいわね〜いい男〜」

竹内は茶化すように言った。
翔太は微笑みながら「やめてくださいよ」と返す。

「今日はもう帰る?」

竹内が飛鳥にきく。
飛鳥は1度翔太を見てから「…いや!大丈夫です!」と答えた。

「本当?でも頭とか痛かったでしょ?」

「大丈夫です!」

すると、翔太が「帰った方がいいんじゃない?」と会話に。

「大丈夫です!」

「ほんとに?無理しない方がいいよ」

「竹内先生と翔太さんが看病してくれたので本当にもう大丈夫です」

「あら飛鳥ちゃん可愛い〜」と竹内。

「わかった。じゃ、無理はしちゃだめだよ」と翔太。

「はい!…というか、翔太さん試合だったんじゃ…」

飛鳥が気まずそうに言うと、翔太はハッとした顔をする。

「やっべえ…かも?」

翔太はそう呟いて携帯を開いた。
クラスメイトからたくさんのLimeが。

あー、さぼっちゃった。

翔太は微笑み、「ちょっとやばいからみんなに謝ってくる!飛鳥ちゃん安静にね!」と言って立ち上がり、保健室を後にした。

Re: 99%のボクと1%のキミ ( No.18 )
日時: 2018/02/16 14:16
名前: わたあめ (ID: jBbC/kU.)


「おっ、おっお姫様抱っこ!?翔太さんが!?」

保健室に来た絵里奈に話を聞かされ、飛鳥は顔を真っ赤にした。

「うん。すっごい人がいる中で廊下から走ってきて飛鳥の所に。そしたら何の迷いもなく竹内先生に『俺が運びます』って言ってそのままお姫様抱っこ」

絵里奈は淡々と答えた。

「ああ…ああ…それは…もう…翔太さんずるい」

飛鳥はそう言いながら両手で顔を覆った。
絵里奈は少し微笑んで言う。

「あーれは確かにものすごーくカッコよかったよ、有明先輩」

「わあ、えっちゃんが男の人褒めた!」

飛鳥は嬉しそうに言った。
絵里奈は呆れるように答える。

「いや普通に褒めるでしょ」

「興味なさそうだから、えっちゃんって」

「先輩にあたしが興味あっても飛鳥嫌でしょ」

「あ!それはだめ!だめだめだめ!」

飛鳥は焦って言う。
絵里奈は「でしょ」と言って微笑んだ。

「けど、目覚めたときはまだちょっと寝ぼけてたから何かお礼しなきゃ…」

「あとでお礼言いに行きな」

「うん!」

そんな会話をしていると、さっきまでずっとパソコンで作業をしていた竹内が手を止めて会話に入ってきた。

「飛鳥ちゃん本当有明くんのこと大好きね」

茶化す竹内に、飛鳥は焦って返す。

「いやいや!だ、だって格好良いじゃないですか…翔太さん」

「有明くん人気よね〜特に下級生から」

「え!そうなんですか?」

「ええ。保健室に来る1年生で有明君の話する子って結構多いわよ。ライバルたくさんね」

「ですよね〜あんなにかっこいいんですもん…」

飛鳥は落ち込んだように言った。
その時、保健室のドアが開いた。

「あ、飛鳥ちゃんもう大丈夫?」

入ってきたのは翔太だった。
翔太は飛鳥の目の前に腰を下ろして言った。

飛鳥は「あ!その、大丈夫です!」と笑顔で答える。

すると翔太も笑顔で「なら良かった」と言う。

「し、心配してくれたんですか?」

飛鳥は顔を真っ赤にして言う。
翔太は微笑んだまま「当たり前でしょ」と答えた。

「…そ、その…」

飛鳥が言葉を考えていると、「あ、すみません」と絵里奈の声が。

「先輩、あたし用事ができてしまったので飛鳥のこと、よろしくお願いします」

絵里奈がそう言い、飛鳥は焦った表情で「ちょ、えっちゃん!」と絵里奈に帰らないでと言わんばかりの顔。

絵里奈は表情1つ変えない。
すると翔太は「うん、わかった。気をつけて帰ってね」と絵里奈に手を振る。

飛鳥はそんな翔太に見とれる。
絵里奈は「ありがとうございます。それじゃ、お願いします」と一礼して保健室を後にした。

「ああ、あの…翔太さん…」

飛鳥が言うと、翔太は「ん?」と言って飛鳥の方を振り向いた。

「その…さっきえっちゃんから話聞いて…。わたしが倒れた時運んでくれたって…。あの!本当にありがとうございます!」

「ああ、そんなこと。さっきも言ったでしょ、君が無事ならそれでいいよ」

翔太はそう言って微笑んだ。
飛鳥は「ありがとうございます…」と呟く。

すると竹内が「さ、そろそろ保健室締めるから帰りなさい」と言いながらドアに向かう。

「あ、はーい。じゃあ帰ろっか」

翔太はそう言って立ち上がる。
飛鳥は「はい」と言って立ち上がり、荷物を準備した。





帰り道、校門を抜けると翔太は「こっちだよね」と左を指した。

…これは、聞くべきかな。

「あ、あの翔太さん」

飛鳥が立ち止まると、翔太は振り返る。

「どうしたの?」

「その、本当は翔太さん…反対方向…じゃないですか?」

「えっどうして?」

「昨日、翔太さんが右に帰っていくのたまたま見かけて…」

飛鳥がそう言うと、翔太はハハと微笑んでから言った。

「ばれちゃったか。ハハ」

「どうしてわたしなんかのためにそんな嘘を?」

「怖がってるのに置いていけないでしょ」

「でも、言わないつもりだったんですよね?」

「うん。飛鳥ちゃんが気遣うでしょ」

翔太は微笑んで答えている。

「でも、悪いです…」

飛鳥が申し訳なさそうに呟くと、翔太は飛鳥の目の前に来た。
そして飛鳥に視線を合わせる。

「飛鳥ちゃんは女の子なんだから、男のすることに気ぃ遣わなくていいの、ね」

笑顔でそう言う翔太を見ると、飛鳥は口を結んだ。









ああ、翔太さん。
もう隠してるの、無理みたいです。






「翔太さん」

飛鳥が言うと、翔太はいつものように「ん?」と優しく微笑みかけてくれる。










「わたし、翔太さんのこと好きになっちゃいました」





飛鳥は翔太を見上げて淡々と言った。

「えっ?」

翔太は驚いた表情を浮かべる。

「翔太さんはずるいです。最初っから…。ついこないだ出会ったばかりなのにわたし、翔太さんのことばかり考えてしまって」

「いや、その…うーん、と…」

翔太は困った表情を浮かべている。
飛鳥はそのまま続ける。

「翔太さんがわたしなんかのこと好きじゃない事くらい知ってます!今日だって倒れたのがたまたまわたしだっただけで…。きっと翔太さんは困っている人がいたら誰であろうと助ける人です。けど、やっぱりわたしは…。翔太さんのこと、頑張ってみてもいいですか?」

飛鳥に言われ、翔太は困惑しながらも言葉を口にした。

「うーん、と…飛鳥ちゃん。俺はまだ君のことよくわからないし、そのー恋愛!とか、自分自身あんまわかってなくてさ…そのーだから…さ…」

翔太の言葉を遮り、飛鳥は「いいんです」と微笑んだ。

「今はわたしのこと何もわからなくて当然です。わたしも翔太さんのことあまり分かりません。けど、これから!少しずつ知っていってもらえませんか?そしたらまた、返事してくれますか?」

飛鳥に言われ、翔太は少し驚いた顔をしてからすぐに微笑んだ。

「わかった、いいよ」

「本当ですか!」

飛鳥はぱあっと明るい表情になる。
翔太は微笑みながら続ける。

「うん。…じゃーあまず、んっと番号!交換する?」

翔太はそう言ってポケットから携帯を出した。
飛鳥は嬉しそうにハニカみ、「はい!」と言って自分の携帯を出す。

「わたし、ぜーーーったいに翔太さんと付き合います!」

飛鳥に言われ、翔太は照れくさそうに笑いながら「なんだよそれ」と言って飛鳥を見た。


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