複雑・ファジー小説
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- Primitives Schwarz
- 日時: 2018/07/06 19:47
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=article&id=966
ー此れは漆黒なる創世神の物語—
粗筋
異形な容姿をした少年は駅のホームから落ちた。その先に待っていたのは、山羊であった。その出会いをきっかけに彼は新たな創造主として君臨する。
少年は世界を旅し、仲間を見つけていき、成長する物語。
初めまして、こあくと申します。久し振りにカキコで創作活動をします。ハイファンタジー系です。宜しくお願いします。オリジナル小説です。
とんでもない量の説明(というか忘れた時用)
スキルなどの解説集>>12 人物ステータス一覧>>17
一気読み用 (章ごとに区切っております。)
序章>>1-5 壱章>>6-11>>13 弐章>>14-16>>18 参章>>19-21 肆章>>22-25
用語集
次元
最高地点。全ての源でもある。例えるなら、途轍もなく大きい袋。その中に沢山の袋が層のようになっている。次元はもともと1つしかなかったが、黒山羊の手によって新しい次元が造られた。普通は次元の主が創ることしか不可能。広さは無限。数々の世界の総称として用いられることもしばしば。
世界
この物語では次元の中にある層の事。次元と違い、広さは有限。また、次元に近ければ近いほど魔法や文明が発達しやすく、広くなる。地球みたいな惑星を世界とは言わない。作者自身も混同しちゃいますが……。
ステータス
ノワール達が向かった惑星特有の現象。ゲームでよくあるやつ。カンストしていると『?』と表示される。普通はありませんが。
スキル
魔法などを取得した時に得られるもの。誰でも得ることが可能なスキルです。進化、合成なども可能。スキルのLvの最高は15。カンストしてると表示されないです。
固有スキル
その種族、職業だけのスキル。強力なものが多いです。チート系もしばしば。
種族
種族は生まれた時からの固定。特殊な方法で他の種族に変わる事は出来ますが、Lvが1に戻ったり、死のリスクがあります。
職業
それぞれの職業に決められた基準を合格すると取得出来る。進化、合成が出来る。たまに特殊なのがありますが、世の中の大半は取得するタイプの職業です。
召喚
召喚の定義は『この世にいるもの』を呼び寄せること。夢想獣召喚の場合、想像したものを『あるもの』にすることができる。創造とはまた別です……多分。
ドロップ
ドロップの確率は10分の7ぐらい。お金は確定で出現する。レア度が高いほどより確率が低くなる。運上昇の職業だと確率はUPします。
レア度
星で表される。1から10まである。文字に書くと表せないですが……。
魔獣
モンスターと読む。骨馬ちゃんやらの総称。大体ダンジョンやらにいる。
ギルド
独立した機関。冒険者、商人、錬金術師、鍛治師などなどある。物を売ったりも出来るので、ギルド会員以外にも出入りが多い。大体酒場が併設されてます。
ランク
モンスターと冒険者に存在します。下の方からF、E、D、C、B、A、 S、SS、SSSまである。
魔法道具
マジックアイテムって読みます。魔法が付与されたものや、鍛治師によって加工された魔法石なんかを指します。大体相場がお高い。魔法道具はレアリティも高い。
魔法
スキルで獲得すると使えるようになる。火属性、水属性など沢山ある。大体のスキルは合成、進化が出来るので、強くなるために必須。固有スキルの魔法は強力です。
魔法石
魔力が込められている石。魔法道具の素材として使われる場合が多い。主に魔力溜まりというところから採取可能。
魔力
ステータスで言う、MPです。
ダンジョン
モンスターの巣窟。主に塔、館、地下廊があり、塔は上、館は部屋、地下廊は下を順に攻略していき、ボス部屋をクリアしていく。ラスボスを討伐すると、ダンジョンは壊れて新しい物が出来る。ダンジョンクリアの最後にはレアなアイテムをプレゼントしてもらえたりする。
主要人物紹介
ノワール=ディユ・ブラン
元々は別次元の人間だったが、誰かに駅のホームから突き落とされ、漆黒の次元に落ちる。日本人だった頃は白神 黒という名前だったが、黒山羊によってドイツ語に翻訳してもらい、現在ではそう名乗っている。チート級のステータスとスキルを持ってます。過去は結構グロテスク。風貌は白髪で、右側の一部だけ黒髪。右眼は黒、左眼は赤でどちらとも魔眼。結構童顔。
黒山羊
山羊の頭骨の頭をしてるやつ。漆黒の次元を創った本人。魔法などに関しての知識は豊富。元々、ノワールの次元にいたが、次元研究を成功させた為か追われる羽目に。ノワールと逢うまで漆黒の次元に篭っていた。現在はノワール専属の執事。ノワールの事なら軽く1000万年話せる。
死蛇
しだ、って読む。シダ植物ではないです。身体の殆どが骨で、継ぎ合わせるとこが筋肉。目が100個以上ある。体長は、キロメートルぐらい。ノワールの夢想獣。屍王など異名を持つ。口の悪さはピカイチ。普段はノワールのブレスレットになっている。ブレスレットの丸い石は全部死蛇の目。
雷子
黒の熾天使女王。元々はとある神々の熾天使だったが、ノワールに仲間にならないかと言われて、仲間になった。酒癖が酷い。本能のままに生きている。名前のダサさはノワールのネーミングセンス。金髪ロングの青目。天使の輪と稲妻のような羽根は黒色で、めちゃめちゃ美人。
ドラーク
元々はノワール達が旅をしている世界の神々の一角だった。龍王のダンジョンの管理者。ラスボスではない。裏ボス的な存在だった。ノワールと戦い敗北、その後に黒龍神王として黒の原初の仲間に。身長が高く、和服が似合うイケメン。髪と右眼は黒、左眼は魔眼で金色。ドラークはオランダ語で龍、て意味だよ。
黒騎士
死蛇と同じでノワールの夢想獣。黒き騎士道を極めた、剣術の達人。また、万能で料理、裁縫、家事なども出来る。所謂スパダリと言うやつ。しかし、目立つ事が少なく、ノワール達に忘れられ気味。だから悩んでいるが、一向に解決策は出ない。
誤字、脱字は見つけ次第修正致します。
閲覧数、300ありがとうございます!
6.15 題名を変えました。意味は同じです。ドイツ語になっただけです。
コメントや質問等は大歓迎です!
上記のURLはイラスト集です。スマホで描いてます。
- Primitives Schwarz ( No.23 )
- 日時: 2018/06/16 23:05
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
ダンジョン依頼
この街にもギルドがあるようで、ダンジョン専用の依頼があるようだった。早朝からノワール達は屋台へ寄り道しながらもギルドへ向かう。
「ダンジョンで得点稼ぎして、早くCランクにはなりたいね。」
ノワールがパンにハムやレタスを挟んだものを食べながら言う。
『Cランクになればある程度の緊急依頼は受けることができますからね。』
黒山羊はノワールの口が汚れるたびにナプキンで彼の口元を拭いていた。
「だが、此処のダンジョンは邪神に通じている。厄介な事にならないと良いが……。」
ドラークは神々に巻き込まれる事を懸念していた。確かに、雷子とドラークを引き抜いてしまったのだから。
「それはそれで大丈夫でしょ。最強のノワール様がいるんですからー。」
最後の方は棒読みだった。雷子は相変わらずのテンションだ。
話しているうちにこの街、パルジャンのギルドに着いた。
ギルドのドアを開く。中はノワール達がいた街より大きい造りだった。冒険者達で溢れかえっている。
「依頼は……ダークシープの討伐とかか。」
ノワールは紙を取り、カウンターへ向かう。
「なんのご用件でしょうか。」
受付の人に依頼を渡す。ギルドカードを提示しながら。
「畏まりました。ダンジョンから3ヶ月出てこなかった場合、死亡とさせていただきますのでご注意下さい。」
確かにダンジョンの中に入って確認は出来ない。何故ならダンジョンの栄養分として蓄えられたり、アンデッドモンスターにされたりするのだから。
「分かりました。」
受付が終わり、ギルドからダンジョンへ向かおうとした矢先、
「おい、べっぴんさんよー、俺と遊ぼうぜ?」
雷子が変な奴に絡まれていた。雷子は気にしないで髪をくるくるとしていた。
「雷子、行くよ。」
ノワールが声をかけると、はーい、とだらしのない声が返ってくる。雷子がノワールのところへ行こうとすると、男に腕を掴まれた。
「なぁ、あんなひょろっちぃ男より、俺と一緒のパーティーに入んねぇか?」
雷子の顔が鬱陶しそうだった。睨みつけている。ドラークは隣にいたようで、男の手を掴む。
「我等の仲間に手を出すのはやめて頂こうか。」
雷子はドラークにそうよ、そうよ!と便乗していた。黒山羊は面倒ですね、殺しますか?と物騒な言葉を使ってきた。
「はぁ、面倒だなぁ。ドラーク、雷子、ほっといてあげて。黒山羊がキレてるから。」
2人とも頷きドラークは男の腕を離して戻ってきた。男の腕には跡がついていた。
「逃げんじゃねぇよ、お坊ちゃんよ。金で仲間を釣ってんだろ?」
男は挑発した。ノワールは気にしないつもりだったが、地雷を踏まれたようで、男の元へ静かに向かう。
男が殴ろうとしてきたのでノワールはその腕を掴み、壁へとぶち当てる。
「黙ってろよ、屑が。死にたいの?」
ノワールは低い声で言葉を口にする。オッドアイが目を見開き、殺意と化す。その目を合わせれば殺される、と生存本能が危険を察知したのか、
「ひっ!す、すいませんでしたー!」
男は勢い良く土下座をする。ノワールはすぐにその場を離れ、仲間の元に戻る。
ギルドを出た後、ノワールはスッキリしたように笑顔だった。
「……ノワール様って怖いのね。」
雷子がボソッと呟いた。ノワールはそうだった?と苦笑しながら言う。
「裏表が激しいのか、それとも素なのか……分からないのよねー。」
ノワールはそうかもね、と答えを曖昧に返すだけだった。雷子もそれ以上追跡しようとは思わなかった。
ダンジョンの入り口についた。兵士が入り口の前に立っていた。
「ギルドカードを提示してください。」
冒険者などしか入れないようだ。ノワール達はギルドカードを見せ、ダンジョンの中に潜っていく。
ダンジョンの中は迷宮だった。別れ道、行き止まりなどあり、ゲーム感覚で楽しめる。尤も、モンスターが出るので普通の冒険者には危険極まりないが。
「地図があると効率的だね。」
ノワールは地図を作っていた。そのようなスキルを持っている者がダンジョンの地図を売り出しているようだが、この世界では紙は貴重でコストがかかる。
「ダークシープは弱いわね。どうせならボスのところまで行きましょうよ。」
簡単に1階層は突破、今は5階層である。5階ごとにボス部屋が設置されており、確定で宝箱が出現する。
「そうだね、その後に1階層に転移しようか。」
行き着いた階層はその後、転移することができるようになる。例えば、1階層から5階層までの間を転移で移動できる。勿論、場所は階段の部屋だけという決まりはあるが。
「あっちにモンスタートラップがあるみたいだけど……どうする?」
モンスタートラップはモンスターが大量出現する部屋だ。ドロップアイテムも入手しやすく、経験値稼ぎも出来る。
「そうだな、腕試しに行ってみるのも悪くは無いな。」
ドラークは賛成してくれた。確かに四方八方からモンスターがやってくるという事は技術を高めることも出来る。
「よし、じゃあその後にボス部屋に行こうか。」
ノワールが意見をまとめ、モンスタートラップへと向かう。
「この部屋がモンスタートラップ?普通の部屋だけど……。」
モンスタートラップの部屋に入るが、至って普通の場所だった。しかし、中心部の足元にあるスイッチを雷子が踏むと、いきなり魔物が出てきた。
「ちょ、いきなり過ぎない?!」
雷子は自分が踏んだことに気が付いていないようだった。急いで雷子は弓をドラークも刀を持つ。黒山羊は何処からか死神が持ちそうな巨大な鎌を手にする。ノワールは愛用の黒災禍を握り、モンスターに攻撃を始める。
『『喰らい』』
黒山羊は自分のスキルなのだろうか、魔法を発動した。何処からか黒いものが発生しモンスターを飲み込んでいく。飲み込まれなかった奴等を鎌で斬る。
「『黒災禍ー獄炎』」
ノワールは黒災禍に黒き炎を纏わせ、モンスターを一気に突き刺す。密集していたモンスターに炎が移る。
「『黒雷滅』」
雷子は黒雷滅を放ちながら何万本もの矢を撃つ。それは見事なヘッドショットを決める。
「『破壊』」
ドラークも破壊魔法を使用しながら、黒破刀と龍獄刀で素早い斬撃をモンスターに食らわせる。
「ふー、良い運動になったなぁ。」
外の世界を透視で見る。まだ昼前だったので、ボス部屋に行けそうだ。
この世界には時計が高価な為、ダンジョンにいると時間がわからなくなる。だからこそ透視魔法が役に立つ。
「『ドロップ回収』」
ノワールは魔法を唱え、モンスターから出た大量のアイテムを回収する。
アイテムを見てみるが良いものは少なかった。
「ハズレか。」
ノワールは少し落ち込んだ。もう少しランクが高いモンスターと戦いたいな、とも思った。
モンスタートラップの部屋から出て、ボス部屋に向かう。冒険者達が並んでいた。
『ボス部屋には1つの団体ずつ入るようです。ボスは倒された後、新しく生成されますので心配無いからでしょう。』
成る程、と感嘆の声をあげる。その方が山分けをしなくてもすむ。
「ねぇ、あの男。朝あった奴だよね。」
雷子は顔を顰める。あまり会いたくはなかった。男はこちらに気付いたのか、ノワールの方に向かってきた。
「奇遇だなぁ。今朝は酷い目に遭わせやがって……!許す訳ねぇだろ?!」
掴みかかって来た。ノワールはそれを簡単に避ける。
「君さ、少しは学習しようよ。勝てないよ、そんなんじゃ。」
ノワールは笑顔を浮かべる。それに腹が立ったようで殴りかかってくる。
『ノワール様に手を出そうとは、良い度胸だな。』
黒山羊が入ってきた。今回の件は彼にとって許せなかったようだ。男の手をとんでもない握力で握る。
「あ、亜人が人間と一緒にいるのが胸糞悪いんだよ!さっさっと街を出て行けよ!」
男が大声で叫ぶ。周りにも冒険者がいるのにもかかわらず。
「では、このような提案はどうだ。貴様と我々でどちらが早くボスを倒せるか、賭けをしよう。」
ドラークが提案をしてきた。この場を騒がせたくなかったのだろう。
「ちっ、その提案に乗ってやる。だが、その坊主と俺での対決だ。部外者はその場で待っていろ。」
黒山羊は完璧にキレているようだ。ノワールの安全第一である彼にとって、この提案には乗れないようだ。
「いいよ。黒山羊、安心して。死ぬ訳ないから。」
ドラークが1番よくわかっていた。彼と剣を交え、その強さを証明しているのだから。
「よし、入るぞ。」
男の順番が来たらしく、ノワールと共にボス部屋の扉を開く。
- Primitives Schwarz ( No.24 )
- 日時: 2018/06/21 20:41
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
勝者
男と共にノワールはボス部屋に入る。その部屋の中心には、大きい牛がいた。角を生やしているようで、所謂闘牛というやつだろう。
「これは……!Dランクモンスターのタウロマキアじゃねえか!」
Dランクなのか、と少しノワールは興味を持った。ノワールは黒災禍を出し構える。
「俺がいただくぜ!」
男は背中に担いでいたクレイモアを手に取り、タウロマキアに斬りつける、というより叩きつける。しかし、ビクともしない。
「くっ、何だよこいつ、皮膚が異常に硬ぇ。」
何度も剣を叩きつけているが傷もつかない。ノワールは呟く。
「皮膚が異常に硬い、ね。メモメモっと。」
余裕そうな口ぶりに男はムカついた。
「てめぇ、モンスターに殺されるぞ?調子乗ってんじゃあねぇよ!」
ノワールは男の怒声も気にせずにメモをしていた。メモをし終わると、男の方を傍観する。
「ちっ、少しは手伝えよ!……もしや怖いのか?はは、坊ちゃんだもなぁ!」
ノワールはそう、と簡単な返事しかしない。男は高笑いをした後、モンスターに向かって行く。
剣を叩きつける。しかし、傷がつかない。男は何度も何度も叩きつける。
「魔法は使わないの?」
「使える訳ねぇだろ!俺は剣士だぞ!」
物理攻撃よりも魔法の方が効果覿面だと思うが、男は使えないようだ。魔導師はこの世界でも珍しいらしい。
「くっ、おい、お前、モンスターがきてるぞ!」
タウロマキアが体当たりの攻撃を仕掛けてくる。男は避けるがノワールは動こうとしない。
「……『閃光』」
ノワールはそう唱えると、眩しいほどの閃光がタウロマキアを突き刺す。タウロマキアは一瞬何が起こったのかわからないようだったが、気付く時には命の灯火が消えていた。
「これ、もらうね。」
タウロマキアのドロップアイテムをノワールは回収する。
「お、おう。」
男はノワールに絡もうともしなかった。ノワールは回収し終わり、最後に出現した宝箱を開ける。
「……いらないな。」
宝箱の中身は剣とペンダントだった。
灼熱の剣 レア度・星4
炎属性が宿る剣。この剣を装備すると火属性魔法が使えるようになる。
賢者のペンダント レア度・星6
魔力がupする。初級魔法までなら全属性使用可能となる。
鑑定した後、ノワールは宝箱を閉める。
「あげるよ。」
そのまま、ボス部屋から仲間のところへ戻っていってしまった。
仲間のところへ戻り、報告をする。
ノワールは一仕事終えると、ギルドへの転移魔法を起動させる。
「このまま、報酬を受け取りに行くで良いかな?」
一斉に頷く。ノワールは良かった、と一言呟き、転移させる。
バレると不味いので、ギルドの近くの人が少ない路地裏に転移した。そこから徒歩でギルドに向かう。
ギルドに着き、カウンターで報酬をもらう。
「凄い量ですね。」
暇つぶしで他のモンスターも狩っていたから、依頼対象外のものもある。
「これが今回の買取と報酬の金額です。」
金貨2枚と銀貨82枚だった。ここまでだと少し、受け取りにくかった。
「保管状態も考慮した結果です。受け取ってください。」
ありがとうと言い、宿に戻る。
「何なんだよ、アイツは……。」
男はまだダンジョンにいた。彼にとって、ノワールが放った魔法は見たことがなかった。魔法使いの仲間に見せてもらったことがあるが実力が違う。初級魔法なのにあの威力と速さ。魔法の威力は魔力量によって異なる。込める力が強ければ強いほど、その魔法は強くなる。
「……魔法、か。」
宝箱の中身を鑑定した後、彼はそれを自分に装着する。
「魔法で勝ってやるのも良いかもな!」
高笑いをする。装備により魔法が使えるようになる。これで魔法剣士の職業が解放されることであろう。魔力量の補正がかかる為、威力も底上げできる。だからこそ勝てると思っていたのだろう。一生無理だろうが。
あとがき
投稿が遅れて申し訳ありません。これからは余裕が出てきたので、一週間に何回か投稿出来そうです。イラストも投稿出来たらな、と思っております。これからもお願いします。
- Primitives Schwarz ( No.25 )
- 日時: 2018/06/28 19:48
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
雷子の本気
今日もノワール達はダンジョンに潜る。当初の予定では、滞在は5日だったが、10日にすることにした。
「物足りんな。」
ドラークが不満を呟く。現在、彼等は19階層にいる。此処まで、5階層を含めて、ボスとは三回戦っている。しかし、レベルが掛け離れている為、手応えを感じないのだ。
「いっそのこと、ドラークともう一回戦闘したいなぁ。」
ノワールが言い放つと、ドラークは苦笑いを浮かべる。
「いや、遠慮しておこう。死ぬ予感しかしない。」
そう?とノワールは笑いながら言う。雷子は、はぁと溜息を吐く。
「早く20階に行きたい。」
雷子はつまらなそうに愚痴を零す。黒山羊はそんな雷子を見て、口を開く。
『20階からはボスな毎回出現するようですから、頑張りましょう。』
黒山羊がダンジョンの新情報を話す。すると雷子はそれを聞きピンピンと元気になる。
「行くわよ!トレジャーハンティングしてやるわ!」
その意気込みに若干メンバーは引き気味である。しかし、雷子を止められるはずもなく、無理矢理進むことになった。
いつのまにか、20階のボスの部屋の扉前まで来てしまった。
「今回は私1人にやらせてね?さて、何が出てくるかしら?」
雷子は一人で倒したいらしい。殺る気満々だ。字が物騒になる程に。
「……ほう、我が同胞のようだな。」
ドラークがそう呟く。雷子はポカンとしていたようだったが、ノワールと黒山羊は顔を顰める。
『それは、竜、ということですか?』
黒山羊が疑問を突き付ける。ドラークは首を振る。
「龍、だ。竜の上位互換であり、この世界で最強の種族と言われる。」
竜と龍は同じようで違うらしい。強い方が龍で、その劣化版が竜のようだ。
「へー、楽しめそうね。」
雷子は不敵な笑みを浮かべる。ドラークはそうか、と答えた後、言葉を続ける。
「龍はLv.5000を超えるぞ?勝てるのか?」
ドラークは心配そうに言う。しかし雷子は親指を立てる。
「強い方が燃えるって言うでしょ?それに、この無敵な雷子様にかかれば楽勝よ!だから安心しなさい。」
雷子は最高の笑顔を向ける。ドラークはふっ、と笑っていた。ノワールも黒山羊も微笑む。
「じゃあ、行くよ!」
ノワールは合図をした後、力を込めて扉を開ける。
ボス部屋にいたのはドラークの言う通り、巨大な龍だった。それも金色の。
「古代龍か。それも暴走状態突入付きで。」
ドラークがドラゴン専用の単語を使用する。雷子はちんぷんかんぷんだった。ドラークはそれを見て解説する。
「龍もいくつかの種族がある。古代龍は龍の中でも特に強力な種族だ。暴走状態はドラゴンならではの状態異常だ。ステータスが倍増し、混乱状態になる。」
ドラークの丁寧な説明に雷子はふーんと頷いてはいたが、見た目からして理解していないようだ。
「ま、とにかく鑑定してからの話よ!」
前向きな姿勢は素晴らしいのだが、人の話を聞けと、この場にいたメンバーは全員思ったことだろう。
そんな雰囲気を気にせず、雷子は鑑定をする。
ゴールデンオルター
Lv.7095
種族 古代龍
固有スキル
古代龍の知恵
古代魔法を全属性使える。古代龍限定の固有のスキル。
金色の息吹
金色の息を吐く。この息に当たると身体が金になる。ゴールデンオルター限定の固有のスキル。
黄金なる鱗鎧
攻撃を75パーセント軽減する。また、光属性を宿している。ゴールデンオルター限定の固有のスキル。
光輝の太陽
灼熱の太陽を作り出す。その威力は国1つを滅ぼす程に及ぶ。しかし、発動するのに5分必要。ゴールデンオルター限定の固有のスキル。
「いいわね、こうでなくっちゃ!」
雷子は弓を出す。そして魔力を込め、引く。矢の数は、一千万に及ぶ程だった。矢は古代龍を目指し、雷光の如く飛んで行く。龍も流石に避けきれなかったのか、直で受ける。
「……て言っても軽減されてるわよね。」
あれだけの矢を受けても無事だった古代龍の軽減スキルは凄いのだろう。
「『黒雷滅』一億落とすわよ!」
雷子がそう言い放つと多数の黒雷滅が落ちてくる。そんな中、黒山羊はパラソルと机、椅子を出し、お茶会を始める。パラソルに雷が当たったが、吸収されていった。
「頑張れー。」
ノワールは紅茶を飲みながら応援している。クッキーを手に取りながら。しかし雷子には届いていないようだった。
「もう!私は近接武器ないのにそんな近距離で薙ぎ払いされたらダメージ食らうわよ?!空気読めや!」
雷子は攻撃を避けながらゴールデンオルター相手に怒りを撒き散らしている。当然、暴走状態だから聞こえていないのだが。
「ちっ、ノワール様!剣とかないの!お茶会してるから暇でしょ!」
龍の胴体の上に乗り、叫ぶ。ノワールは待ってましたとばかりにスキルの中から金色の長剣を取り出し、雷子に向かって投げる。
「鑑定してね。」
簡単にそう伝えた。雷子は長剣をキャッチし、鑑定スキルを発動する。
雷女神の神剣 レア度・星10
罪人の裁きに罰を下す為に作られた神剣。雷滅属性を宿しており、雷属性魔法を流し込むと強化できる。一定の確率で即死を与える。それはレベルが弱い程、起こりやすい。また、防御力を無視し、攻撃が通る。黒の原初が黒雷滅の熾天使に贈った、黒の天神達の神器の1つ。
「ノワール様って最高よね!」
雷子は鑑定し終わると、笑みを浮かべて、鞘から剣を抜く。神剣は雷を纏っていた。その剣を龍に突き刺す。防御力無視の威力は生半可なものでは無く、強力なガードスキルを持つゴールデンオルターでさえ、悲鳴をあげる程だった。
『グ、グァァァァ!』
その悲鳴は衝撃波となるが、その場にいる全員には影響無かったようだ。
「やっぱりこの爽快感はたまらないわ!」
雷子は楽しそうに言う。ダメージにより暴れ出したゴールデンオルターの攻撃も簡単に避ける。
「よいしょ!」
黒雷滅を放ちながら神剣を龍の身体に突き刺す。これを繰り返すうちに龍の攻撃も鈍くなる。
「トドメの一撃!」
雷子が神剣を刺そうとした時、薙ぎ払おうと尾が雷子に向かう。その速さは尋常では無く、避けられそうに無かった。ドラークや黒山羊は心配していた。しかしノワールは気にしないようだった。
「……平気なのか?」
ドラークが恐る恐る聞く。ノワールは頷く。
「雷子の実力はそんな程度じゃあ無いさ。」
ノワールが雷子の方を指差す。衝撃で埃が立ち、よく見えない。
少しずつ見えてきた。その中には人影がある。光を放ちながら。
「ドラーク、ちゃんと見てなよ。あれが、黒の女神様さ。」
ノワールは紅茶を嗜みながら話す。横目で雷子を見ながら。
雷子は薙ぎ払いを避ける事は不可能だと直感的に悟った。ならば、どうすればいいのか。受け身の体制をとったところで、吹っ飛ばされこの戦局は不利になる事間違いなしだ。自身のあまり良くない頭で知恵を振り絞る。当たるまで、1秒も無い。打開方法が見当たらない。すると、ある事を思い出す。ドラークとの戦いを見た時、彼には自身の鱗を鎧とする事を。ゴールデンオルターも同じだった。自身が持つ最大の特徴を活かす。それが打開策なのでは。雷子は賭ける。一か八か、勝利の可能性があるのであれば、と。
「『黒雷滅装備』」
黒雷滅を一瞬のうちに纏う。そして、薙ぎ払いをその鎧で受け止める。最大限の魔力を流しながら。
龍の尾は、雷子の鎧に当たると止まる。動揺しているゴールデンオルターの隙を見て、雷子は黒い10枚の羽根を広げ、空高く舞い上がる。
「『裁きの黒雷滅』!」
大声で、究極魔法を唱えると魔法陣が出現した。そこからレザーの様に大きな雷を上から落とす。その光にゴールデンオルターは飲み込まれる。
雷子は力を使い果たしたのかそのまま地上へと落ちる。
「『重力無効』『究極の癒し』」
ノワールは疲れ切った雷子に対し、重力無効と回復をする。雷子はそれを受けると直ぐに起き上がる。
「えっ、ちょっとなんで浮いてんの?!」
「慈悲だよ。素直に受け取ってね。」
ノワールは少々毒舌だったが、心から雷子の勝利を喜んでいる。表に出さないが。雷子は納得がいかない様だった。
「倒したんだから不貞腐れないで。レベルアップもしたんだから、いいじゃないか。『解除』」
ノワールは席を立ち、雷子の方に向かいながら言う。重力無効を解除し、床に落ちた雷子の前に立つ。
「最高の女神に祝福を。」
そう言い、座っている雷子に手を前に出す。雷子はその手を握って立ち上がる。
「有り難きお言葉。」
笑いながら冗談の様に言う。ノワールも満足そうだった。
「じゃあ、宝箱回収しなきゃ。」
ドロップアイテムは回収した為、最後は宝箱を開けるだけだった。
「君のだから、開けてきなよ。」
ノワールは雷子を宝箱の方向に誘導し、背中を押す。雷子は楽しそうに飛び跳ねながら行く。
「さぁ、行くわよー!」
煌びやかな宝箱に手をかけ、雷子は力強く開ける。その中身は、
「……指輪?」
雷子は中身を見ながら言う。ノワールも気になり、宝箱を覗く。
「金色だけど、錆びれてるね。」
金色だとわかるが、所々錆びている。一見、使えなさそうだが只ならぬ雰囲気を醸し出している。気になり鑑定スキルを使った。
古代龍の古びた指輪 レア度・星8
かつて栄えた龍達の力が宿った指輪。現在は錆びていてその力が発揮されることは無いが、磨いたり、加工したりすると変化する可能性がある。
「曖昧よね。使えるんだか、使えないんだか。」
ノワールも共感している。星8なのに対し、この性能はあり得ないだろう。所謂ハズレ。加工技術が無ければの話だが。
「『召喚』」
ノワールはそう言い放つと黒騎士が出てきた。黒騎士は敬礼ポーズをする。
『久し振りでございます!一時は見捨てられかと……ノワール様はやはり素晴らしいですね!尊敬します!』
黒騎士は兜から涙を流す。ノワール達はどこから出ているのか気になっていたが、口には出さなかった。
「加工、出来る?」
黒騎士からの返事は決まっている。
『御意!私に出来ないことは無いのですから!』
ノワールが指輪を差し出すと直ぐに受け取り、その場で加工し始める。
先ずは磨きの作業から、次に文字を埋め込み始める。最後に魔力が通るか確認し、作業は完了した。所要時間は約10分だった。その後、ノワールに指輪を渡す。
「何者?あの人。」
雷子が黒騎士に対して指を指す。黒騎士はそれに気づき、
『私は、上級スキルを全て扱うことが出来ます。ノワール様や雷子様方には及びませんが、ある程度の事ならこなしてみせましょう。』
そう説明する。スパダリとしか思えない。雷子は料理、裁縫、家事が出来ない為、
「私よりスペック高いんですけど……。」
とボソボソと呟いていた。ノワール自身もやったことが無いことが多い為、経験では上だろう、と思う。
「ありがと、黒騎士。先に宿に戻ってて。」
ノワールは指輪のお礼をした後、黒騎士に指示をすると、はっ!と威勢の良い挨拶の後、転移魔法で宿に戻っていった。
「じゃあ、これ、雷子のだから。」
ノワールは手に握っていた指輪を雷子の右手中指に嵌める。
「はい、綺麗だね。」
加工した時に付けた、深い青の宝石がキラキラと輝いていた。
「あ、ありがと。」
雷子は指に嵌めてもらえたのが嬉しかった。
「うん、強くなってね。」
ノワールはそう言い、雷子の手をぎゅっと握って離す。雷子は頬を赤らめていた。
「帰ろっか。」
ノワールが言う。ドラークや黒山羊が頷く。雷子はボーッとしている。
『……雷子殿。失礼ですが、あまり期待しない方がよろしいと思います。』
黒山羊が雷子に近付き、耳元で囁く。雷子はまだ頬を赤らめている。話を聞いていないようだった。黒山羊は溜息を吐いた後、ノワールの近くに戻っていった。
あとがき
お久し振りです。前回、今週は何回か投稿できるかも、と言った記憶があるような……。申し訳ありません。言い訳ですが本当に忙しいのと、内容が思いつかない事が多くなってしまったのです。大体の内容は決めているんですが、細かい事までは、というところです。月何回かの投稿になってしまうのですが、なるべく多く投稿できるように努力します。これからもよろしくお願いします。後、加工後の指輪の能力は解説集にあります。
- Primitives Schwarz ( No.26 )
- 日時: 2018/07/03 20:37
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
伍章 神々
悪意
※グロテスク要素あり
雷子がゴールデンオルターを倒した頃、かの男、ケビンは初級魔法を使っていた。
「おー、いいじゃねぇか。魔法スキルも獲得したし、アイツになんてすぐにぶちのめせるぜ。そしたら、あの女が俺のものに……最高だなぁ!」
男は独り言を吐き、下卑た笑みを浮かべる。初級魔法でノワールに勝てるわけは無いのだが、ケビンにはそれを図る力すらも無い。愚かとは正にこの事だろう。
「ふっ、アイツに目にものを見せてやる。」
彼は錯覚しているようだ。自分の力に酔うなど、剣士として失格だというのに。
そんな男の影が、伸びていき気味悪く、薄笑いを浮かべていた。それに気付かない、ケビンであった。
ノワールが宿の部屋に着き、一休みをしようとベッドに横になる。電気を消した矢先、風が身体に当たった。窓の方を見ると開いていた。閉めようと思い、ノワールはベッドから立ち上がり、窓の方へ向かう。
カーテンが風によって開かれた。そこには、黒い人影がいた。
「……何方ですか?」
ノワールは一歩下がり、言う。人影は窓の縁に座っている。
「…………。」
ただ、ノワールの方をじっと見つめているようだ。黒いフードを被っていたのでよく分からなかったが。
すると、人影はノワールに向かって攻撃を仕掛けてきた。ノワールは避ける。
「……正義神様の名により、審判神のカゴが宿るこの街に死を齎す。」
低い声が、意味のわからない言葉を発する。神々の間で争いが起こっているのだろうか。
「神々の間で戦争でもしてるの?」
鋭い爪の攻撃を避けながら聞く。男は攻撃を止めずに話しだす。
「我が主人の正義神様は、創世神様の派閥だ。新しい考えに反対する神々は力尽くで解らせなければならない。」
どうやら、神々の間でも派閥があるようだ。これでは世界が成立しなそうだが、大丈夫なのだろうか。
「……黒山羊の気持ちも少し分かった気がするな。」
ノワールは呟く。男にはきこえなかったようだ。
ノワールは避けるだけだった。男は少しずつ疲れてきたようで、攻撃速度が遅くなる。
「ねぇ、それだけ?じゃあ追いかけっこでもしようよ。」
窓に近付き、そこから他の家の屋根に移る。現在、深夜だ。この時間起きている人は酒飲みぐらいしかいないだろう。
「捕まえられたら君の勝ち、その前に君が力尽きたら俺の勝ち、これでいいでしょ?」
男は挑発された為か、それに乗る気満々だった。
「よかろう、人間よ、舐めるな!」
「いいね、頑張ってね?」
窓を勢いよく男は飛び出す。ノワールは屋根を物凄いスピードで駆け抜けて行く。
次の屋根、また次の、というように伝っていく。男との距離は近くなることも遠くなることも無い。一定の距離感を保つ。
「ちっ!」
「おっと、危ないなぁ。」
男はそれに怒りを露わにし、武器を投げる。ノワールはそれを掴み、男に投げ返す。男が投げた倍の速さで。
「ぐっ、」
顔を掠ったようだ。いや、正確には仮面をしていた為、仮面に当たっただけなのだが。
「ほらほら、動揺してたら追い付けないよ?」
ノワールは男よりも高い煙突の上から言う。優位に立っていることを示しているように。
「貴様、一体何者だ?」
男がノワールに疑問を投げかける。ノワールはニッコリと笑い、
「それを話したところで、俺に利益なんかある?」
答える気は無いことを言葉にする。男は、少し考え、口をまた開く。
「……そうだな、我々の仲間になれば、この先の安全は保証してやろう。貴様の実力であれば、出世は間違い無しだ。」
男がノワールを陣地に引き込もうとする。しかし、ノワールは顔色を変えずに、
「捨てられたらやだなぁ。」
と呟く。言葉の裏側を見透かしていたことに、男は狼狽えた。なんとか弁解しようとしている。
「そんな事はない。寛大な正義神様ならば、お認めになるだろう。」
しかし、男の言葉はやはり薄っぺらく聞こえるのだ。ノワールは、これ以上話を聞く必要性も無いと判断し、立ち上がる。
「……俺的には、利益が無い。というかデメリットしかないね。いや、内部侵食とか、いいかもしれないけどさ。」
そんな言葉を投げかけると、男は怒りに震えだす。しかし、そもそもノワールはこの為に放った言葉なのだ。
「何故そこまで神々を侮辱する?!貴様には信仰のかけらもないのか!」
ノワールは、はぁ、と溜息を吐き、口を開く。
「馬鹿げた事抜かすなよ。自分を報えるのは自分だけだよ?」
ノワールは冷たく、言い放つ言葉に、重みを感じる。
ノワールは言い終わると、男を見下ろし、手を振る。
「じゃあね、悪意を貪られたお馬鹿さん。」
男は何を言っているのかもわからなかったようだ。しかし、彼の影は不気味に笑っていた。そして、その影は大きくなり、やがて現実に黒い何かとして現れた。男を手でしっかりと持ち、口に入れる。
「な、なんだ!やっ、やめろ、我にはまだやる事があるん……。」
グチャッ、と何かを噛み潰した音がする。見ると影が男の上半氏を齧っている。男の顔は完全に影の口の中で、大量の血を流している。これだけ血を流したのであれば、死んだのだろう。
影は、死体の下半身を手に持ち、一気に口の中へと投げ入れる。ボギッ、グチャ、と気色悪い音がした。
「……美味しかった?」
ノワールは影に向かって言う。影はノワールの方を見て、頷いていた。
「で、君は何処から来たの?それとも誰かのものかい?」
ノワールは質問をする。影は答える事はなかった。ノワールもこれ以上、追求する事もしなかった。
「今度は誰を食べるの?俺?」
次に投げかけた質問は、食べられるかどうかだった。襲いかかってくるのであれば、倒せるが厄介なのには変わりない。
『ボク、タベナイ。ダッテ、オウサマダカラ。トモグイ、シナイ。コロサレル。』
帰って来た答えは、片言の言葉だった。ノワールに関われば殺されるのは当たり前だが、オウサマ、とはどのような事なのか、見当がつかない。
「……俺がオウサマ、ね。」
ノワールは影を見下ろす。不気味な影は、その手をノワールの頬にそっと寄せる。
『モドルキ、ナイノデスカ?』
片言の敬語が聞こえる。しかしノワールは風に揺られながら、表情を変えることもしなかった。
「君達の王様かどうかは知らないよ。戻るって言っても、何処に行くかも分からないし。でも、いつか会いに行くかもね。」
ノワールは影にそう言い、そっと寄せていた手を離す。影は手を自分の元に戻し、暗闇に溶けていく。
「もう、夜明けか。」
日が昇り始めた。ノワールは煙突の上に立ち、日の出を見る。それはとても綺麗だった。
- Primitives Schwarz ( No.27 )
- 日時: 2018/07/07 23:05
- 名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)
敵への拷問
部屋に戻り、装備をすぐ出せるように整えておく。さっきの事があった為、何が起こるかわからないからだ。
確認した後、部屋を出て隣の黒山羊のドアをノックする。
「黒山羊、入るぞ。」
ノワールはそう言い、ドアノブに手をかける。
中に入ると、血生臭かった。黒山羊を見ると、身体に血がかかっている。しかし、彼の血液では無い事はわかった。何故なら、黒山羊の足元に、グチャグチャにされた死体があったからだ。
『ノワール様、ご無事でしたか。』
白いハンカチで自分自身の汚れを取りながら、ノワールに向かって言う。
「まぁね。そっちも随分と派手にやったようだけど。」
黒山羊の足元を指差して話す。血溜まりが出来るほどの攻撃を相手は受けたのだろう。
『失礼しました。直ぐに処理します。』
黒山羊は空間魔法と唱え、男の死体を仕舞う。その後、返り血や部屋に飛び散った血を魔法で拭き取る。
「この調子だと、雷子達も襲われてそうだね。」
ノワールは苦笑いを浮かべた。黒山羊も頷いていた。
処理が終わったので、次に雷子の部屋を向かう。現在の時刻は4時ぐらいだ。
「雷子、入るよ。」
今度は黒山羊がドアノブを捻り、中に入る。入った瞬間、焦げたような臭いがする。
雷子の方を見ると、焼け焦げた死体が3体積み上げられている。
「あら、ノワール様?まさか、2人のところにも此奴らが?」
雷子はベッドに座っているが、ぴょんっと飛び、死体を蹴った。
「こらこら、縁起悪い事しないの。」
襲ってきたからといって、死体を蹴るのは流石に酷いとノワールは思った。そもそも黒焦げの状態にしたのは、雷子でもあるのだから。
「はーい。で、2人のところは何人だったの?」
雷子が話を進める。ノワールはどちらも1人だったことを告げる。また、神々の手下ということも伝えた。
「うーん、つまり私は元々神のところにいたから狙われたって訳ね。じゃあ、ドラークちゃんのところの方が多いんじゃない?」
雷子の言葉に2人は納得したようで、首を上下に振る。ノワールは内心、溜め息を吐く。面倒な事には極力巻き込まれたくなかったのだが……。
「まぁ、確認しに行こう。その前に、雷子は死体処理してね。見られたら大変だから。」
雷子はそう言われて、転移魔法を発動し死体を放り込む。何処に飛ばされるかはわからないが、近くではないだろう。
「よし、行きましょう。」
ドラークの部屋のドアを開ける。ドラークは剣を男の首に付けている。
「死にたくないならお前らの首謀者を吐け。」
「い、言わぬ。私は正義神様に選ばれた人間なんだ!」
どうやら男は生きているようで、ドラークは質問している。いや、拷問だろうな。
「ドラーク、大丈夫、って言っても平気じゃなかったか。10人ぐらい来たみたいだし。」
ドラークの背後に積み上がっている死体達を見ながら話しかける。ドラークはノワールの方を見る。
「来ていたのか。という事はお前達のところにも。」
全員頷く。
「拷問中?続けていいよ。死体処理しとくから。」
ノワールは、ドラークに言い、積み上がっていた死体の方を見て、空間魔法を展開させる。死体は眩い光とともに消えていく。
「終了っと。ドラーク、順調?」
終わり、ドラークの方を見る。まだ吐いていないようだ。ノワールは椅子をだし、男を座らせるように合図する。
男を椅子に座らせ、鎖で縛り付ける。
「じゃあ、これ飲もうか。」
ノワールは無限保管庫から小さな小瓶を出し、男に見せる。中身は青く、どう見ても怪しい薬だ。
「な、なんなんだそれは?!」
男はそう叫ぶ。小瓶を近づけると口を頑なに閉じている。
「ねぇ、黙ってこっちの言う事に従っときなよ。」
ノワールは瞳孔を見開き、男の目を覗き込む。すると、男は硬直する。
「口開けて?」
男は口をゆっくりと開けた。そこに液体を流し込む。
「これはね、自白剤って言って、知らないうちに自白してるんだよ。こわーい薬さ。」
空の小瓶を無限保管庫に戻す。そして、男の方に向く。
「今回の首謀者は?」
「正義神様を祀っている教会の神父様です。」
自白剤の効果が出てきたようで、すぐに自供した。
「じゃあ、アジトは?」
「この街の南の教会です。」
「仲間と知り合った経緯は?」
「全員、正義神様を信仰していました。ある日、神父様が神託を受けたようで、俺たちは選ばれたものだと言われたことが始まりです。」
「武術は何処で身につけた?」
「元々冒険者でしたから。」
そんな受け答えが続いた。質問する内容もそろそろなくなる。
「ふーん、そっか。じゃあ教会に行けば良いんだね。ありがとう。」
ノワールは笑顔で男に向かって言う。
「な、なら解放してくれるんだよな!」
男はやっと解放されると一息ついた。ノワールは笑顔で勿論と言わんばかりの顔をしていたからだろう。
「うん、そうしよう。この拷問から解放してあげるよ。」
男の口角が上がる。嬉しそうだった。
「よし、これで俺は自由……。」
男が喜びを言葉にしたが、それも途切れる。
「な、んだ、これ……。」
男は口から血を流す。自身の身体を見ると、いつのまにかノワールの黒災禍が彼の心臓に刺さっていた。
「これでやっと解放されるね。」
ノワールは男を見下しながら言う。
「たっ、たす、け、てくれる、はずじゃ……。」
男は力を振り絞って言う。しかし、ノワールはそれを冷たい目で見る。
「馬鹿だね。そんなのデメリットしかないよ。それに、俺は解放してあげるとは言ったけど、生かすなんて一言も言ってないよ?」
ノワールは黒災禍を強く握り、男にグッと刺し込む。男はまた口から血を吐く。
「じゃあね、お馬鹿さん。地獄で神様によろしく。」
ノワールは黒災禍を一気に引き抜く。そこからドッと血が流れる。男は力無く項垂れた。
『やはり穢れた血は不味いですね。』
黒災禍は男の血が口に合わなかったようだ。
「乙女の血とかの方が好きなの?」
ノワールは黒災禍には聞いてみる。その間に黒山羊は事後処理をしている。
『格別ですよ。』
「結構な変態だね。」
黒災禍にキツイ言葉を投げつけた。結構毒舌なのだと周りの3人は思った。
「あ、そういえば黒騎士見てくるの忘れてた。」
ノワールがふと、思い出したように言う。他の3人もキョトンとしていたが、やがて思い出し、気まずくなっていた。
その頃、黒騎士は、
『誰も気付かないとは……悲しきことこの上なし……。』
結構落ち込んでいた。
4人は黒騎士に会いに行き、落ち込んでいた黒騎士を全員で励ました。
あとがき
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