複雑・ファジー小説
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- 「死ぬな」なんて聞き飽きた僕ら
- 日時: 2019/09/06 20:25
- 名前: Nahonn (ID: R58dZSmU)
その日、梅雨に差し掛かった日本の真ん中、東京の僕の家に、一通の手紙が届いた。
[ 自殺を志願している君へ ]
白い封筒に、そう丁寧な字で書いてあった。
誰からの手紙かわからないので、とりあえず開けてみる。
[ Xより ]
開こうとした紙に大きめの字で書いてあった。
僕は、疑いの目を向けながらもゆっくりと折り畳んである紙を開いた。
これは、死ぬな、なんて聞き飽きた僕らの勇気と涙をつずった物語である。
<目次>
プロフィール >>4 >>5
第一通 手紙 >>1 >>2 >>3
第二通 目的 >>6 >>7 >>8
第一章
第一通 神崎汐里という女 >>9
第二通 消えない恐怖 >>10 >>11
第三通 日常茶飯事と手紙と >>12 >>13
第四通 非日常で分かること >>14 >>15
第五通 客と劇 >>16 >>17
第六通 殺人ゲーム >>18 >>19
第七通 スキル発動 >>20 >>21
第八通 司の実行 >>22 >>23
第九通 予想外 >>24
- Re: 「死ぬな」なんて聞き飽きた僕ら ( No.6 )
- 日時: 2019/04/22 18:52
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
「これで...全員....よね?」
畠中さんが、張りつめた無言の空気を割った。その、蒼みがかった瞳は、心なしか苛立ちが混ざっていた。
「秋風くんか〜。意外ダナー」
能天気に比留間さんが笑った。不安を誤魔化しているのだろう。僕も吊られて微笑む。
「へぇ〜。面白いメンバー。特に仲良くないし俺ら。強いて言えば、4組のやつは居ないね。」
鹿山くんはそうニコニコ笑った。しかし、眼は口ほどにものを言う、と言われているように、紅い眼だけは、
動揺を隠し着れていなかった。
「ねー、神崎さん。」
そして、無理矢理に神崎さんに話題を振った。
「え...あ...はい。そうですね。」
神崎さんは、ぼーっとしていた様で、曖昧に答えた。何か、変に怯えている。
「それに、部活、委員会、クラブチームにもピンとくる繋がりは無いな。」
山澤くんが、そう言うと、「そお、それ。」と鹿山くんが山澤くんを見た。
「目的、そろそろ教えてよ。Xサン。」
鹿山くんが、スマホを右手でつまみ上げた。
- Re: 「死ぬな」なんて聞き飽きた僕ら ( No.7 )
- 日時: 2019/04/23 19:48
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
[全員揃ったみたいだし、そろそろ初めましょうか。]
スマホからはそんな声の電子音が聞こえた。
その言葉に、鹿山くんが苛立ちを隠せていない笑みを浮かべ、
「ええー、俺は目的を聞いたんだけど。」
と言った。電子音は聞こえず、その代わりか、
「教えるつもり、どうせ無いでしょ。それくらい分かりなさいよ。」
と畠中さんが言った。はあ?なんて言いそうな眼で鹿山くんが畠中さんを見た。
「まあまあ、その人何か言いかけてたし...」
何か険悪なムードに耐えきれず、比留間さんは言った。
「俺も、一回きちんと話を聞いた方が良いと思う。」
その後、山澤くんが言った。キッと畠中さんが、山澤くんを見た。
「何よ、あんたまで。」
畠中さんが、ふいっとそっぽを向いた。
しばらく、静かになる。
[さて、もう噺は済んだかな。]
その人が、そう告げると鹿山くんがため息を吐いた。
[うん。済んだみたいだ。]
[それじゃ、あの手紙、とどいたんだ。]
手元に出せ、とでも言わんばかりに、その人は言った。
僕は、手紙を出す。そう思ったのは、僕だけではない様で、皆も出していた。
[それじゃあ、写真を手紙と皆の、両方撮ってくれない?]
言われた通りに、僕らは撮った。その間は2分程度。僕たちは一言も、言葉を発さなかった。
まるで、何か大事なものを噛み締めるように。
- Re: 「死ぬな」なんて聞き飽きた僕ら ( No.8 )
- 日時: 2019/04/27 22:35
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
結局、僕らはラインの交換のみをして帰った。
でも、今日、この時だけ、死を忘れられた気がした。
それだけでも僕にとっては、重苦しい日常の中で初めての感情だった。
今も、手紙を受け取った感覚を覚えている。
自分は、こんなにも"日常"に酔っていたのだ。
そして、こんなにも"日常"を嫌っていたのだ。
でも、楽しいなんて感情は、自然と沸いて来なかった。
それよりも先に、謎の羞恥心が沸き上がってくる。
きっと僕は、"あの人"を前に何も出来なかったことが悔しかったのだろう。
(明日は、死ねますように。)
僕の心は泡になって、この歪んだ世界に溶け込んでいく。
- Re: 「死ぬな」なんて聞き飽きた僕ら ( No.9 )
- 日時: 2019/04/27 22:46
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
神崎汐里の考え、一部
私の死にたい理由。
それは、クラス全体からイジメの対象となっていることだ。
でも、本当は、ちょっと違う。
"自分"のせいで死にたいのだ。
それが、自分を一番苦しめていると知っていても
- Re: 「死ぬな」なんて聞き飽きた僕ら ( No.10 )
- 日時: 2019/05/04 17:04
- 名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)
Xからの手紙が来て一週間がたった。
皆からの連絡も、Xからの連絡も、両方ない。
また、退屈な日々が繰り返される。
そういえば、皆にもあの手紙が着たんだよな。
僕の脳裡に焼き付いた[自殺を志願している君へ]の十一文字。
あれを受け取った時、確かに高揚感と、何かへの期待や興奮を感じたが、それとは逆に、
見透かされたような恐怖と"私は君を理解している"という感情を押し付けられた気もした。
何か、虚しい。
xの前で踊らされている感覚。
そして、皆が受け取ったであろうあの一文に動揺している事も。
「おっはよーう。」
不意打ちで声を掛けられた為、ふわあ!?、と変な声が出る。
「驚き過ぎだって。」
その人は鹿山君だ。不敵な笑みを浮かべている。
「て...。皆も。」
鹿山くんの後ろに神崎さんや畠中さんもいる。
「今。空いてるかな?。」
比留間さんがそう言った。