複雑・ファジー小説
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- 何回目かの初めまして。
- 日時: 2019/09/07 12:17
- 名前: 白刃 さとり (ID: R58dZSmU)
私には、前世の記憶があった。
それは、全て貴方の記憶。
その、嘘つく時の癖も、照れ隠しの憎まれ口も。ありがとうって言った時の反応も、怒った時の素っ気なさも。好きなものも、嫌いなものも。どんな所で怒るのかも、喜ぶのかも、つい甘やかしてしまう所も……。
その全てが。
貴方に染まっている。
始まりは些細なこと。
戦国時代。織田信長さまがお亡くなりになられて、豊臣秀吉さまがお国を納めになるころ。
蔵にあった"石"を子供であった私たちが開けてしまったことである。私たちは、その"石"の珍しい色にそれで簡易的なネックレスを作った。
それが、呪いの石とは知らず。
何度目かの……
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[何度目かのサヨウナラ。]も良ければ見てください。
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.14 )
- 日時: 2019/06/30 22:24
- 名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)
私は、ぼんやりと目を開けた。祖母の声が響く。
「楓!。いい加減起きんと学校に遅れるよ!。」
いつもの風景だ。しかし、決定的にいつもと違うのは、祖母の発した『今日が初めての登校でしょう』だった。
「おばあちゃん。今、なんて?。」
私は、首を傾げてそう言った。
「あんた、まだ寝ぼけてんのかい?。」
そう言って祖母は眉を潜めた。
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「今日は、このクラスに転入生が来ています。……どうぞ、入ってください。」
おかしい。
「小日向さん?。」
絶対におかしい。
私は、先生に呼ばれて渋々歩き出す。教室の皆の視線が私に一直線に集まった。そこの中に朔がいる。まだ、朔の死も受け止めきれていない私にとって、これは苦痛以外の何でもなかった。
「初めまして。こ、小日向楓です。宜しくお願………。」
クラスメイトがざわめき始めた。
そこで私は気づく。私の頬から一筋の涙が零れていたことに。
私は先生に勧められるままに席に着いた。まだ涙が止まらない。
「か、楓。」
そんな私を心配してか、朔が私に声をかけた。しかし、彼からは、そこから一言も発しなかった。
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.15 )
- 日時: 2019/07/07 01:42
- 名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)
たくさんある前世の短編集
1.太平洋戦争時期[朔]
明日。俺は"兵隊"になる。
明日。俺達は18になる。
東京が初の襲撃を受ける一日前。
2.今のひとつ前の前世[楓]
車のボンネットにあっとゆうまに乗った私。
その時、一瞬だけ後悔した。
君との未来を諦めたことに
3.始まり[楓]
「朔〜何かあるよ〜。」
私は札の貼られた箱をあけた。
「うっわぁー。綺麗だなぁー」
きっかけはきっと、私だ。
4.江戸時代初期[朔]
「楓っ!!!。」
大声で叫んだ。楓は虚ろな目で微笑んだ。
役人の刃が楓を襲う。
そして、楓の体は地面に落ちた。
5.バブル時代
真っ先に犯人は楓に銃口を向けた。
ぱぁあん
その音が、今この世で一番聞きたくなかった。
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.16 )
- 日時: 2019/07/10 22:40
- 名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)
つづき
6.2回目の始めまして[朔]
俺は、思わず彼女の名前を呼んでいた。
朔…
そう呟いた彼女の声は、歓喜と不安に包まれていた。
7.何回目かの最期[朔]
やっぱり、君のいない未来なんて考えられない。
そう言って、俺は楓と共に深い眠りについた。
8.昭和時代真ん中[楓]
あ。
空に舞った君のハンケチが、追いかけろといっている。
そして車道に飛び出した。
9.江戸時代真ん中[朔]
俺は、楓と川へ飛び込んだ筈だった。
心中なんて馬鹿馬鹿しいと神が言ったのだろう。
しかし隣には、冷たくなった君がいた。
10.蒼[楓]
君の瞳は何処を見ているの?
何処へ向かっているの?
私のいない君の人生なんて考えたくない。
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.17 )
- 日時: 2019/07/16 20:31
- 名前: 白刃 さとり (ID: DLaQsb6.)
朔目線
「楓。」
恐る恐る、彼女に話しかけた。それは、まるで試すようなやり方で言ってからちょっと後悔した。楓は顔を上げる。
自己紹介の時、誰よりも驚いていたのは彼女だった。まるで、夢の中にいるような。
それが”恐る恐る問う”という行動にさせた理由の1つだ。
「うん。なあに?。」
思ったより、彼女はあっさりと返した。でも、その瞳はさっきよりも苦しそうだった。
まず、俺に逢いたくなかったのか、そう考えてしまった。無理もない。こんなに苦しいのであれば逃れていたい。そう思うことだってあるだろう。
「楓。ちょっと良いか?。」
その気持ちを払拭するかのように俺はそう言った。
- Re: 何回目かの初めまして。 ( No.18 )
- 日時: 2019/09/06 19:41
- 名前: 白刃 さとり (ID: OH2Ram.J)
俺達は屋上に来ていた。屋上に置いてある椅子や机を扉の前に置き、鍵を閉める。誰にも邪魔なんてさせたくないからだ。
目の前でうろたえる楓がどうしようも無く愛しい。それと同時に失うのが怖かった。
「私の・・・前世のこと・・・?。”死ぬ前”の記憶があるの?。」
楓はそう言った。今、一番楓が怯えているのは俺に対してだろう。抱きしめたい。しかし、そうしたときの彼女の反応を考えると出来なかった。
「楓は・・・前世を覚えているのか?。」
楓は小さく、でもはっきりと頷いた。
「でもね、断片的に・・・。なの。朔は?。死ぬ前のこと覚えてないの?。」
俺は何を言っているのか分からなかった。
「俺は死んでない。」
俺はそう言った。楓を安心させるように両手を広げた。楓はまた、一筋の涙を流した。俺の傍まで来ると俺の心臓の部分を触った。
「うそ・・・だ。」
ボロボロと大粒の涙を流した楓。胸が痛かった。
「楓はきっと夢を見ていたんだよ。」
優しく、できるだけ優しく。楓を抱きしめた。楓の長い髪が手にかかった。
楓だ。
確かに俺の知っている楓だった。でも、楓は前世とは違いどこか怯えていて、俺を見る目が明らかに違う。
「楓・・・。」
俺はそっと呟いた。その声は、春の暖かい空気がそっと飲み下してしまった。