複雑・ファジー小説

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「救出命令」オペレーションサザンクロス
日時: 2019/06/28 02:32
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

「懲役20年を取りますか。それとも、子供達の命を見捨てますか。…」この二者択一を迫られたとしたら、あなたはどうするだろう。この物語は主人公、保江しのぶがこの二者択一に翻弄される姿を描いたものである。この話の結末を知った時。…あなたは涙せずにはいられない。………………………………あらすじ。PKO活動の一環としてコンガディア共和国に派遣されていた陸上自衛隊。ある情報筋から、日本でテロ計画を進めてる過激派組織がこの国で暗躍しているという情報をつかんだ。PKOの増援に見せかけて密かに特殊作戦群が派遣されていたのだ。しかし、女性オペレーター主任がテンカンの持病で発作が起き、急遽普通科部隊の敏腕オペレーター保江しのぶが主任代理に抜擢された。上官からただ一つだけ出してはいけない命令を言い渡された。それは「救出命令」。この命令に背いたら懲役20年を覚悟しなければならない。かくしてオペレーター主任に就くのだが。…特殊部隊の無線一つで全ては狂わされていく。「借金の形に子供達が売り飛ばされるっ。今なら間に合う。監視命令から変更。救出命令を出してくれ。」彼女が出した決断とは。…

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.41 )
日時: 2019/10/12 20:23
名前: 梶原明生 (ID: 0zy7n/lp)  

隊長である篠原と現れた。「いや、しかしだな篠原。」「俺達なら大丈夫だ。必ず助け出してみせる。」「わかった。」本部長は再度の突入を許可した。彼等は同じく89式小銃を携えながら裁判所に近づく。篠原はある男が訪ねてきたのを思い出していた。「よぉ、篠原。」「おお、宮内。どうした珍しい。」「折り入って話したいことがあってな。」「そうか。まぁ入れよ。女房にビール用意させる。」帰宅した篠原を待ち伏せしていた宮内は誘われるまま家に入る。「先ずは駆けつけ三杯。」「相変わらずだな。そんなこと言ってると娘に嫌われるぞ、俺みたいに。」「そんなことを言いに来たのか宮内。」「いや違うが…なら本題に入ろう。実はな、お前だからこそ話せるんだが、オペレーションサザンクロスって作戦があるんだ。乗らないか。」そんな光景を浮かべながら、法廷のドアまで来た。「スタングレネードっ。」叫びながら篠原のB班は一気に特殊音響閃光手榴弾を法廷内に投げ入れた。宮内達を牽制するためと言うより、むしろ中の人質の目と耳を塞ぐのが目的だった。銃声が響き渡る。「どうした、B班。篠原、応答しろ。篠原。」本部長が叫び続けるが応えない。「本部長、人質が出てきます。SATの隊員も肩を担がれてB班の隊員と歩いて出てきました。」「やった、制圧成功か。」歓喜する本部長を余所に、篠原は叫ぶ。「どいてくれ。ここの6人はかなり重傷だ。SATの装甲車両を救急車代わりにして病院に向かう。時間を争う、早くどいてくれ。」「は、はい。」篠原は介抱する者(6人)と共に乗り込み、赤色灯を回して急発進して走り出した。その後、人のいない法廷内で爆弾が爆発した。「退避っ。」本部長が叫んだ頃には、黒いバラクラバを下ろして篠原とハイタッチする宮内達の姿があった。「やったな。」「ああ、ありがとう。持つべきはSATの友達だな。」やがてRVにて善光寺達のバンと合流。宮内達は乗り換えて走り去った。…翌日この不思議で不可解な大事件はトップニュースとしてマスコミを賑わした。犯人は一体どうやって消えたのか…テレビコメンテーターが解説するも、このマジックの謎解きにはならなかった。しかしそれよりも不可解なのは佐藤三佐の行動だ。何と、証拠はこじつけによる捏造だったと認めたことだ。簡易裁判所で簡素に執り行われた裁判では、命令違反のみ言及され、減俸僅か2ヶ月分と判決が下った。退廷する佐藤を呼び止めた。「何故…捏造と認めたんですか。」…続く

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.42 )
日時: 2019/10/13 01:31
名前: 梶原明生 (ID: W4UXi0G0)  

…「ん、そんなことを聞いてどうする。」「いえ、ただ…あまりにも不自然で。」「ふふ…まぁ罪滅ぼしかな。と言うと聞こえはいいが、実のところそう思わせたのはある母子だった。君は被疑者だったから情報統制で伝えられなかったが、コンガディアの件以来あの S と言う施設隊員達の計らいであの四人は日本国籍を取得。色んな経緯を経て、今は香住康二郎の親御さんと暮らしてる。我が息子の忘れ形見とそれはもう大層喜んだそうだ。そんな親子があんたの為に一週間ペースで防衛省に嘆願してきた。助けてくれた命の恩人を、今度は私達が助ける番だと叫んでた。たまたま見かけた私は久々心洗われたよ。私も特殊作戦群の端くれだが、人の心を捨てたわけじゃない。…これは君に渡してくれと受付に預けたものだ。」手渡されたのは、折り鶴だった。かつて康二郎が好きだった折り紙。チュア、サヤ、レンにも確実受け継がれていた。「私の為に…あの子達が…」今にも泣き崩れそうな保江の肩を掴む。「まだ泣くのは早い。二階の控え室に行きなさい。」「え…」保江はまさかと駆け足で階段を駆け上がる。開け放ったドアの先に、三人の子供とスレイがいた。「お姉ちゃんっ、会いたかったよ。」拙い日本語で叫んだ。「私もよ。少し大きくなって。…私のためにここまで。ありがとう、本当にありがとう。」保江は感無量なくらい泣き崩れた。ドア脇でそれを見つめる宮内。「あれ、もう年ですか。涙なんか流して。」「うるさい。行くぞ。」「はいはい。」はぐらかした岡沢も目が潤っている。高倉がSUVで待機していた。「これで一件落着ですかね。」「一つを除いてはな。もし、あの子達をいじめるやつらがいたら容赦しない。それなりの制裁を課してやる。あの子供達は例外的に守ってやるさ。」「そうっすね。…で、その一つだけって何すか。」「元帥様に挨拶しないと。」「へ…」岡沢は首を傾げた。その元帥様はまたもや高級マンションの最上階にて和室で煎茶を啜っていた。刀原が報告する。「首尾一貫して宮内曹長達は成し遂げました。自衛隊のイメージアップも副産物的に効果ありです。」「それは何より。まさに特殊作戦群は使い勝手の良い駒よのう。…ん、障子は開いておったか。」「は、いつの間に。」刀原が気づいた時は遅かった。どこから現れたのか、溝口と宮内が刀原と元帥にシグ226E2拳銃の銃口を首に押し付けていたのだ。「しーしーしー静かに。…随分とつれないじゃないですか元帥様。」…続く。

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.43 )
日時: 2019/10/15 20:11
名前: 梶原明生 (ID: 97SCsTUE)  

…「き、貴様等これは一体何の真似だ。」「何の真似…デートに誘ってやることやったら、はいサヨウナラしたのはそっちじゃないですか。ねぇ森下陸将。」「な、何故私の素性を。」「何故って。同じゴースト同士じゃないですか。餅屋は餅屋ですよ。通称元帥様。今から15年前に中国の鉄砲玉のバイクに跳ねられて救急搬送されるも死亡したことになっている。その実、あなたは別の病院に移され死んだことにして無事回復。それを手引きしたのは当時あなたの部下であり、小平学校情報官にして二等陸尉だった刀原修造。二人は結託し社会の闇に落ちた。巨万の富を得て裏から政治と国軍に影響力を与える元帥として君臨。…何か間違いはありますか。」腹を据えた表情になる森下。「間違いなどない。その通りだ。で、何が目的でここへ来た。」「そこなんですよ。お分かりと思いますが、あなたの優秀な部下を潜り抜けてここまで忍び込んだ。つまり我々特殊作戦群はいつでもあなたの命を狙える。」「何が言いたい。」「何が…そうですね。お命を頂くわけではないんですよ。あなたと我々で不可侵条約を結びたい。あなたのような存在を否定するつもりはない。ただもし、あなたが我々やその関係者に危害を加えたなら。その時は私達が待ってる。我々を消しても特殊作戦群は戦闘要員が約200命若。つまり消してもまた我々が20回はやってくる計算になる。それともう一つ。我々特殊作戦群の雇い主は国家と国民だ。その国家国民を裏切る場合でも、我々が待っている。宜しいですか。」「待て待て、欲張りだな。こっちが2つの条件で、そっちが一つの条件とは随分と不平等条約だな。ハハハッ」苦笑いになる元帥様。「そうかな。そっちとこっちの立場を考えれば、丁度釣り合いの取れる条約だと思いますがね。元帥様…」「うぬぬ…あいわかった。な、何だと消えた…」元帥が振り向くと既に宮内と溝口は消えていた。「恐ろしいやつらよ。敵に回さずワシを取り込んで戦力にするとは…さすがは楠公の精神を継ぐ武士道特殊部隊。…」首をさすりながら苦々しい顔で障子を見つめる。…数日後、渋谷のカフェでサラリーマン風にした宮内と篠原が隣り合わせてコーヒーを嗜んでいた。「で、その後内務調査班には…」「気にするな。俺はそんなドジは踏まないと知ってるだろ。証拠もないしな。」「それに同じSATの仲間を…」「それなら尚更気にするな。どの道A班の連中とは反りが合わなくてな。いけ好かないと思ってたんだ。」…続く

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.44 )
日時: 2019/10/18 01:48
名前: 梶原明生 (ID: wh1ndSCQ)

「そうなのか。」「何を今更。自衛隊だって一枚岩じゃないだろ。人間関係色々だ。」「まぁ確かに。」二人は互いに笑いあった。「ところで特殊作戦群にはまた戻るのか。」「まぁな。しばらく休暇はもらったが。すまん、用事を思い出した。また今度居酒屋で飲もう。」「ああ。」宮内はカフェを後にした。向かった先は娘の沙也佳のところ。下校途中だった。「何、何か用。」「お前と父親として面と向かって話し合ってなかったなと思って。」「別に話すことなんてない。」「防衛大学目指すんだろ。」「ど、どうしてそれを…」「母さんから聞いた。血は争えんな。お前から命令される日を心待ちにしてるよ。」「お父さん…もしかしてS…コンガディアの件もまさか。」「特別だ。お前はもう自衛官だ。機密厳守はわかるな。」「はい。」「その通りだ。」「やっぱり…私の自慢のお父さんだよ。」笑顔で抱き付く沙也佳であった。その頃、とあるグラドルのスキャンダルが持ち上がり、高倉曹長がほくそ笑んで文春ビルを後にする。伊原一曹は木材で5才の息子の隠れ家を作り上げ、善光寺二曹は結婚式へ。石倉一曹は湘南の波乗りへ、岡沢三曹はオンラインゲーム大会優秀。クラブでナンパに勤しむ。溝口隊長は新婚旅行。そして…保江しのぶはスレイ、チュア、サヤ、レン達と香住のお墓参りだった。「先輩。安心してください。あなたのお子さんは日本でスクスク成長してますよ。どうか安らかに。…」両手を合わせてひたすら冥福を祈った。コンガディアと日本のつながる青空の下で…

Re: 「救出命令」オペレーションサザンクロス ( No.45 )
日時: 2019/10/19 06:33
名前: 梶原明生 (ID: 99wOCoyc)  

エピローグ……「戦闘訓練開始っ。」宮内曹長は休暇中にも関わらず、後進の選抜試験に鈴本一曹と一緒に立ち会っていた。「助かります宮内曹長。任務で出払ってて教官が足りなかったもので。」「なーに。暇つぶしに顔出したまでだ。この前の合格者は。」「105人中3人です。」「ま、そんなもんだろうな。こら、そこ。今遮蔽物に隠れて標的を銃撃せずに待機したな。何故だ。述べよ。」「え、え〜と…」迷彩服に装備と小銃を携えて膝立ちの受験者にいきなり意地悪な質問をする。これが特殊部隊が「机で静かな勉強しかできない秀才はいらない」という由来だ。銃声や爆音や格闘溢れる環境下にあっても「頭は冷静に回せるか。」が大事だからだ。「はい、不合格。」「え〜っそんな。」宮内曹長はもうその受験者は見ていない。ある者は三日三晩不眠不休で行軍した後のいきなりな戦闘訓練のため、倒れた。鈴本一曹が診る。「脈拍乱れてる。心臓音もだ。息は上がりすぎてる。すぐに医務室へ。」的確に診断して担架を用意させる。「鈴本、行ってこい。」「はい。」鈴本一曹はポケットの箱をいじりながらにやついて担架と共に医務室へ。待機していた医療班が処置を開始する。看護士の一人が鈴本を見る。「直也…どうしたの。」「愛美。これ。」「指輪…」鈴本は涙する彼女の手に結婚指輪を箱ごと手渡す。「今しかないから。待たせてごめんよ。」「謹んでお受けいたします。」二人は勤務中を忘れて抱き合った。宮内曹長はその時キラリと光る人材を見た。「宇野辺、合格。次は拷問訓練だ、急げ。」 「はいっ。」初々しい新人隊員の誕生だ。彼は宇野辺に確信を持った。「宮内曹長、試験中すまんが新たな任務だ。休暇が終わったら私のオフィスに。頼んだぞ。」「群長、了解しました。」やがて彼等宮内班は戦闘装備一式で新たな任務に臨むのであった。 了


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