複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー
- 日時: 2020/05/29 16:20
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
あらすじ・・・陸上自衛官の父を持つ鳥影年光は、父に反発して就職先は工場勤務にした。そこで知り合ったサバイバルゲームを趣味とする同僚に触発されて、のめり込むことに。やがて時はすぎて、年光は自分の父を理解しはじめ、「カエルの子はカエル」だなと悟りはじめる。そんな時、千葉県に元自衛官や元警察官で創設した会社「提中訓練研究社」の存在を知り。仕事を辞めてその会社の危機管理と戦闘訓練コースである「特級コース」を取得し、二年後に卒業して社長等に激励をうけた。しかし、社会に出れば誰も関心がなく、危機管理アドバイザーとしてどこも雇ってくれずに貯金も底を突き、やむなく派遣会社に登録してまた工場勤務で仕事をすることとなった。何とか研修期間3か月を乗り切ったある夜勤の日、ある異変が起こりはじめる。会社の金を使い込み、あまつさえ傭兵を雇って国外逃亡を図ったロシア人前社長が、本社工場に仕返しを企んでいたのだった。金でまたもや雇った傭兵を使って。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.11 )
- 日時: 2021/01/30 18:53
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・早速最前線へ臨んだ。そこは侵入してくるであろう、二つの通路をバリケードで封鎖したもので、鳥影の指示通りにジグザグになるよう椅子やらパイプセルやら(製造業で最近多い、絶縁パイプとジョイント器具を使用してレゴブロックのように作れる作業台のこと。)を無造作に置いた掩蔽ができていた。土嚢の代わりにABS樹脂なんかの原材料袋を使って防弾掩蔽も作らせた。防火シャッターは勿論閉めさせている。。後は協力してくれる従業員、社員に厳しく銃に関するレクチャーをするだけだ。すると先ほどの野次馬の一人と、5人の従業員が名乗り出た。「あんた達は・・・」「悪かった。お前さんが正しかったのにな。」「いや、こっちこそ・・・」「そりゃもういい。俺も昔は地元の不良で喧嘩ばっかりしてたもんだ。根性だけは負けねー。教えてくれ、撃ち方。」「はい。ありがとう。ありがとう皆・・・」感動しつつ、要点を手短に説明しはじめた。「・・・なので、一旦遊底を引き、マガジン、つまり弾倉を抜いて振ってやっても詰まった弾が出せる。終わったらさっきの手順で弾倉を差し込み、槓桿ボタンを押して、ボルト。即ち遊底を進ませてダストカバーを閉めて安全装置をかける。わかりましたか。」「ああ、わかった。」「それから、銃口は常に上に向けてください。下でもいいですが、皆さん今日が初めてなら素人にまちがいありません。誤って発砲しないともかぎらないので、銃口は常に上に向けること。それから絶対に味方に銃口を向けないこと。頼みますよ、あなたたちに後ろを任せるんですからね、間違っても発砲するまでは銃口は上です。そして常に人差し指は引き金にかけない。かけるのは撃つ時だけ。いいですか。」「おう。」一通り終わるとそれぞれ配置についた。その頃、佐藤はあることに気付いた。「そうだ。・・・」「どうしたの、佐藤さん。」「確か、警備員さんの為の予備の長距離無線機とバッテリーが事務所横の保管庫にあったはず。在庫は10個ぐらいあったはず。あれを使えば・・・」「そうかそれだ。さっきだってあいつらの無線は使えた。なら、無線なら。」「外部と交信できるかも。しかも緊急災害時には井上専務に無線を繋ぐよう指示されてたし。」「も、何で早く気付かないのよ。」「ごめんなさい。気が動転してて。それに、災害時って覚えてたわけだし。」「とにかく鳥影さんに。」「うん。」佐藤は掩蔽にひた走った。その頃その事務所では、何故か猿渡が一人ポツンとスマホを眺めてる。電話がなった。「はい、こちらSCCH工業でごいますが。・・・はぁ、奥さんの帰りが遅い。ふむふむ、あのですね、お聞きになってませんか。今日から1泊2日で会社の研修旅行でして。・・・ええ、ええ、ご心配なく。ご主人それでは失礼いたします。・・・ま、永遠の研修旅行だけどね。」平然とした顔でスマホに戻る猿渡。一方、鳥影は美佐の元へ駆けつけた。「本当に。無線機があるのか。」「はい。事務所横の保管庫に。」「仕方ない、一か八か。シャッターを開けて事務所に行くしかないか。」鳥影は事務所側の廊下へ急いだ。・・・続く
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.12 )
- 日時: 2020/06/16 18:37
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・そこは野口班長とタンが担当していた。「どうした、鳥影隊長。」「シャッターを開けてください。半分だけでいいです。事務所横の保管庫に長距離無線機があるんです。それを取りにいくんで。」「わかった。しかし、ここから先は未知数だ。やつらがもうすでに来ているかも知れん。気をつけて。」「わかりました。大丈夫です。」シャッターは開けられ、高匍匐姿勢で走りだす鳥影達。しかしまだここまでは来てない様子。「何だ、事務所に何で猿渡がいるんだ。」床には数人の社員の死体が転がっているのに平気な様子でデスク前に座ってる。「一体どういうことだ。一人だけポツンと。」「きっと隠れてて生き延びたんでしょう。」二人とも事務所前の窓脇で隠れながら様子を伺っていた。鈴木がドアを開けようとしたのを制した。「待て。それにしては落ち着きすぎてる。とにかく静かに保管庫を探るぞ。」「了解。」二人はソッと抜け出して保管庫に入った。「あった。無線機だ。これさえあれば。」できるだけかき集めてから保管庫を出た。「待ってください。猿渡班長を助けないと。」「待て、どう見たって怪しいだろ。」「そんなバカな。もし違ってたらどうするんですか。」「わかった。」仕方なく猿渡に声をかける。「猿渡班長。助けに来ました。すぐに食堂まで行きましょう。」「ああ、助かった。もう絶望かと思ったよ。」臭い芝居を見せる猿渡。しかし鳥影は彼の腕を背中に回し、逆関節に極めた。「何やってるんです鳥影さん。」「これを見ろ。奴らと同じ無線機だ。これをどこで手に入れた猿渡。」「そ、それは、ヒッ・・・奴らの一人を倒して・・・」「ほう、それはおかしいな。奴らはテロリストだが、訓練された傭兵でもある。必ず二人一組で行動するはずだ。つまり二人以上倒さないといけない。あんたにそれほどの格闘能力はないだろ。そろそろ本当の事を吐かないと腕一本へし折ることになるな。」「わかった。わかったから・・・奴ら、アントン・シコルスキーの手先だ。」「やっぱり・・・」何となくそんな予感はあった。軽はずみに断定したことは言えないため黙ってはいたが。猿渡は続ける。「も、元奥さんが、不正の証拠を工場内の一階のどこかに隠したんだ。USBメモリーだよ。慰謝料を請求する切り札としてな。それが嫌だから探させてる。それと、俺以外の社員は皆殺しにしろと命じられてる。朝出勤する幹部、日勤社員もろともな。でなけりゃ一人でも生き残ってたら金は支払わないと・・・」「それですぐ二階を攻撃してこなかったのか。で、何であんたは加担してるんだ。」「声をかけられたのさ。会社に不満持ってて家族なしだからな。5000万円やるって言われてさ。」「あんたな、それでも・・」「危ない。」鈴木が慌ててコルトライフルを構えて発砲した。傭兵が事務所ドアまで迫っていたのだ。「ダダダダッ」連発しながら下がるふたり。「よせ、撃つな味方だ。」両手を振るも、お構いなしに発砲する傭兵。「邪魔なんだよ猿。」倒れた猿渡を踏みつけて歩き去る。鳥影達は交互警戒発砲しながら弾倉交換もしていた。「シャッターを閉めろ。」鳥影は走りながら叫んだ。「早く、君は先に行って。」鈴木の背中を押して、SCARを発砲しながら後ろ向きに走る鳥影。「早く、鈴木も鳥影隊長も早く。」野口は最前線で発砲しながら叫んだ。鳥影はスライディングしながらシャッターを潜り抜けた。・・・続く。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.13 )
- 日時: 2020/06/17 18:36
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・最後に数発SCARを発砲させて掩蔽に戻る。傭兵の一人が倒れた。「おい、誰かこいつの死体片付けろ。・・・こちら6班。事務所に来てましたよ例の無線の男が。身のこなし、銃の射撃術といい、かなり手ごわい相手ですぜ張隊長。既にうちのメンバー4人やられました。猿渡もです。」無線連絡に冷静に装ってる体で指示する。「構わん、戻ってこい。店番は他のやつにやらせるから戻ってこい。」李は耳を疑った。「正気ですか。既に20人以上やられてるんですよ。黙って引き下がれって言うんですか。」「いいから俺の言うことを聞け。まずはUSB。それからゆっくり料理させてやるから。」「ならせめてガソリンで炙り出すか、セムテックス爆弾で片つけましょうや。手っ取り早い。」「アホか貴様。火の手や爆発音見たり聴いたりした民間人が通報したらどうなる。今までの苦労が水の泡だろうが。とにかく、サプレッサー付けた銃以外は許可できない。それよりUSBメモリーだ。探してこい。」「はい。」不満そうにしながら李は張の元を離れた。一方鳥影側は、すぐに襲ってこないことがわかったので、皆に銃の取り扱いだけでなく、戦闘訓練の基礎やCQB(クローズ クゥオーター バトル。近接戦闘)まで訓練した。「拳銃射撃になったらこうしたライトが有効ですが、いきなりライトを相手の目に向かって照射すると、一瞬視力を失いますから。」「壁際の角が危ないです。カッティングパイと言って、角の縦ラインを上下に索敵しつつ、少しずつ敵がいないか横歩きで向こう側をさぐります。両サイドに角があるT字路は、二人一組で角の手前に立ち、互いに見合って、互いの後ろの角を確認しあいます。そして、敵がいないなら、合図して互いの後ろ側の角から通路側へふりむきます。」「階段は上に銃口を向けつつ、必ず壁側を登ってください。でないともし二番目の階段側を歩くと、階段で待ち伏せてる敵に気付かず鉢合わせになります。ですから壁側を登る。逆に階段の上側ならしゃがんだ姿勢で一番上の段からは1メートルくらい離れた処から下を観察してください。でないと匍匐姿勢で行けば鉢合わせになるし、立って下を窺ったらそれでも撃たれやすい。」「通路、廊下で撃ち合いになったら決して壁側に寄り付いたらだめです。銃弾は跳弾したら壁を這うからです。それに服と擦れて音がする。」「とにかく辺りにあるもの全て武器と思ってください。もし弾がなくなったら消火器を使った方がいい、目くらましにもなるし、殴る鈍器にもなる。ペンもピンセットもドライバーも武器にできるし、いざとなったらこのコンクリートの床や壁も考えようによっては武器になる。」一通り訓練指導すると山下達が駆け寄る。「ペットボトルのマスク作ったけど、これをどうするの。」「上出来上出来。そうしたら中にスポンジやウエスをできるだけ詰めて。ガスマスク代わりになる。」「ああ、なるほど・・・」・・・続く。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.14 )
- 日時: 2020/06/20 20:14
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・関心している山下を他所に、美佐に声をかける。「佐藤さん、無線での呼びかけがまだ通じませんか。」「はい。さっきからずっと呼び掛けてますが、井上専務の応答はありません。」「クソ、そこが唯一の生命線なんだが。まさか周波数間違ってるってことは。」「いえ、ちゃんとここに非常災害時にはこのチャンネルで交信してくれと書いてます。」「そうか。わかった、引き続き呼び掛けてくれ。」「わかりました。」美佐はまた無線に呼び掛ける。その頃井上専務はソファーでヘッドホンしながら書斎で音楽を聴いていた。無線が鳴っても気付かないはずだ。そうこうしてる間に時刻は夜の22:00時になろうとしていた。「何で時計気にしてるんです。」鈴木が鳥影に聞く。「もうすぐ22:00だ。ここの工場は22:00と24:00時と03:00時と05:00時に材料搬入や製品搬出のためにトラックが一斉に来るんだ。後は10:00までトラックは来ない。問題は奴らがそのことを知っているかどうかだ。勿論知ってると見て間違いないだろう。そうなると奴らは朝までここに籠城するためにはトラックをスムーズに流さなければならない。」「まさかそのトラックに・・・」「その通り。誰かがトラックに侵入できればうまく外部と連絡が取れる。警察が来るのも時間の問題だ。しかし、その方法が思いつかない。下手すりゃトラックの運転手達を死なせてしまう。どうしたものか。」思案に暮れていると山下が何かを思いつく。「要はトラックに乗れればいいのよね。あいつらに気付かれずに。」「何か名案が。」「外のスナイパーの死角になる左側非常口から出れば、トラックを止めて事情を話して乗せてってもらえるかも。」「そうか。トラックは一方通行で外に出るから、あそこでなら搬出搬入終わって帰るだけの道程だし、すぐに出られる。」「そうよそれそれ。」「しかし一発勝負だ。そこにも奴らがいたらできないし、もし乗ってるところを抑えられたら一貫の終わりだ。もう同じ手は使えない。」「それでも、行くしか。」「わかった。」その話を聞いていたのか、あのパワハラ男の小川が名乗り出た。「俺にやらせろよ鳥影。」「あんた・・・」「出られるんなら何だっていい。お、トラックだ。」窓からトラックのヘッドライトが見えた。「お、早速お出ましか。」勝手に走り出す小川。「待て、危険だ。」鳥影の制止もふりきって走る小川。・・・続く。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.15 )
- 日時: 2020/06/27 19:56
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・彼を知っていた野次馬の一人が勝手にシャッターを開ける。「おう、小川か。何か知らねーけど出たいんなら行け。」「おう、サンキュー。やった、これで俺も晴れて自由の身だ。」後ろからは鳥影達の声が聞こえるがお構いなし。「おい待て。危険だ。」鈴木と共に追いかけるが間に合わない。「おーいっ待てよトラック。」小川が叫んで手を振りながら走るが間に合わない。と言うより運転手も気付いていたが、変質者と誤解して更に加速して走りだした。「おーい、頼むよ、ハァハァ乗せてってくれ。」普段走ってない小川にとって、それが限界だった。「そんな・・・」絶望は更に絶望を連れてきた。「ゴキブリが、のこのこと這い出して来るとはな。」鉢合わせたパトロール中の傭兵を見た小川。それが最後の光景になろうとは。「大方ここに現れるんじゃないかって思ってたんだ。」雨あられのような銃弾が彼の体を貫いた。「ウギャーっ。」「クソ、間に合わなかったか。」左側非常口に来た鳥影達はがっかりした。しかしただでは引き下がらない。SCARを撃ちまくる鳥影。「ダダダダダッ」4人は倒れた。「鳥影さん、もうどうしようもないよ。すぐに2階に戻ろう。じきに敵の応援が来る。」「わかってる。」つい激昂してしまう鳥影。「クソ、助けられなかった・・」悔しさを滲ませて走る。無線で野口が聞いてきた。「隊長、どうした。トラックは成功したか。」「こちら鳥影。無理でした。。敵がいて、小川が犠牲に・・・」深く溜息を吐く野口。「そうか。とうとう最後の希望も潰えたか。夜明けまでまだ8時間弱。長い夜になりそうだな。どうぞ。」「ええ。ですがまだ希望はあります。気を落とさないで。どうぞ。」「ああ。交信おわり。」思わず無線のアンテナを噛む野口。食堂に戻ると、山下達にもこの事を伝えた。「そんな、私のせいで・・・余計な事を言ったばっかりに・・・」「それは違う山下さん。あんたのせいじゃない。どのみちこうなってたんだ。」口を両手で抑える山下。「勘違いしないでくれ。悪いのはあいつらテロリストだ。」そこに運悪く奴らの無線機が鳴る。「やぁ、ジョンマクレーン君。大したものだ、また私の部下を殺すとは。聞いてるんだろ。」「ああ、聞いてるとも。そう言うお前らは何人殺した。いい加減にしろ。」「フフフ、確かにそうだな。だが死体は後続のトラックが来る前に早々片付けたよ。それに君たちと同じ作業服来た私の部下が社員になりすまし、丁重にトラック群に帰っていただいたよ。次のトラックが来るまで後1時間と数十分。悪いがそこまで君たちは持たないよ。USBメモリーは発見した。ボディーガード付けて行方を眩ませたアントン爺の奥さんが見つかってりゃこんな苦労しなくても良かったんだがな。まあそういうことで、心置きなく君達をぶち殺しに行けるんで覚悟しときな。あ、俺って優しい紳士だろ。わざわざ襲撃を予告してやったんだから。それじゃあジョン。君の活躍ぶりに期待するよ。」李がまたもや問いかける「張隊長。何でそんなことまで・・・」「んん、決まってんだろ。ここの15人は旧知の傭兵仲間。その他は自称傭兵の金欲しさのド素人ばっかだろ。アントン爺のやつ、数さえ多けりゃ安心とばかりに無断で雇いやがって。それもクズまで。口減らしすりゃその分の金は俺達の懐にってわけさ。」「なるほど。」「それと少しでも始末できりゃ、俺たちの負担もなくなる。ハハハハハ。」高笑いする張。待ち構える鳥影達に刻一刻と敵が迫っていた。・・・次回「激闘」に続く。