複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー
- 日時: 2020/05/29 16:20
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
あらすじ・・・陸上自衛官の父を持つ鳥影年光は、父に反発して就職先は工場勤務にした。そこで知り合ったサバイバルゲームを趣味とする同僚に触発されて、のめり込むことに。やがて時はすぎて、年光は自分の父を理解しはじめ、「カエルの子はカエル」だなと悟りはじめる。そんな時、千葉県に元自衛官や元警察官で創設した会社「提中訓練研究社」の存在を知り。仕事を辞めてその会社の危機管理と戦闘訓練コースである「特級コース」を取得し、二年後に卒業して社長等に激励をうけた。しかし、社会に出れば誰も関心がなく、危機管理アドバイザーとしてどこも雇ってくれずに貯金も底を突き、やむなく派遣会社に登録してまた工場勤務で仕事をすることとなった。何とか研修期間3か月を乗り切ったある夜勤の日、ある異変が起こりはじめる。会社の金を使い込み、あまつさえ傭兵を雇って国外逃亡を図ったロシア人前社長が、本社工場に仕返しを企んでいたのだった。金でまたもや雇った傭兵を使って。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.6 )
- 日時: 2020/06/08 19:54
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
「襲撃」 「今日はありがとうございました。ここが私の家です。」美佐が鳥影のタクシー内で指さした。野口班長達と飲み会は一次会で抜けてきた。美佐自身もお酒に強いわけではなかったので、真っ直ぐ鳥影がおくることに。閑静な住宅街に、畑付き民家がポツリと立っている。築30年以上といったところか。「驚きました。うち、兼業農家なんですよ。」「いや、そんな別に・・・でも、閑静な過ごしやすい所だなって。」「まあ確かに。でも不思議でしょう、福岡なのにこんな辺鄙で。」「そんなことは・・・それはそうと、明日、車、有料パーキングに取りに行くんでしょ。何なら自分が車で迎えに来ましょうか。」「え、・・・」一瞬時が止まったが、すぐ切り返す美佐。「ありがとうございます。お言葉に甘えまして。・・・」「じゃあ、明日10:00くらいにお電話します。おやすみなさい。」「お、おやすみなさい・・・」走り出すタクシーを見送る美佐だった。翌日は軽四の車を出すはずが、鳥影の日産Xトレイルで、ドライブデートを普通に楽しみ、充実した日曜日を堪能した。そして月曜日。美佐は8時に出勤し、遅く起きた鳥影は就業時間まで筋トレと、自前の次世代電動ガン89式とスカーなどを使った戦闘訓練にフィジカルトレーニングを課していた。マンションの自室内で熱気が漂い、陽炎が日光で舞う。「もう16時か。行かないとな。」彼は軽くシャワーして身支度を整えた。いつも防災防テロ用に持ち歩いてるリュックを肩にかけ、車で出かける鳥影。出かけていたのは張達もだった。物々しいトラックにSUVが、高速を降りて一般道にさしかかった。「シコルスキーさん、心配いらない。計画は順調だ。皆殺しにしてやりますよ。夜勤と日勤社員全員あの世行きだ。」「それは何より。では後程抜け道で帰った時に。」「オフコース。」張はスマホを切った。「さて、楽しい交響曲の幕開けだ。ラララー」指揮者ぶってふざける。時間は刻一刻と迫っていた。更に時間は過ぎて19:15時を回った。中勤組と日勤残業組とが共に汗水流して働いている時間。「オシッコ行っていいですか。」野口に聞く鳥影。「おお、いいとも行っといで。」いつもならトイレは休み時間に済ますのだが、今日に限って何故か尿意に襲われた。何かの無私の知らせか。これが後に大きく運命を分ける結果になった。トイレの窓をたまたま覗いた時、次々撃ち殺されるトラック搬入口の社員達と警備員の姿があった。明らかにいつも見る業者とは違う連中。自動小銃と拳銃を持ち、サイレンサー装備して黒、灰色、オリーブ色といったまちまちの戦闘装備。間違いなくこれはテロと断定した。「何てことを・・・マズい。」彼のアドレナリンは急上昇。危機管理アラームが体中を駆けめぐるようだった。すぐに大声で隣の北田が仕切る金属部門に叫んだ。「おーいい、今すぐ逃げろ。テロが起こってる。殺されるぞ今すぐ警察に通報を。」「はぁ、何言ってる。お前頭狂ったか。」全く取り合おうともしない面々。巻野が不機嫌に歩み寄ってくる。「はいはい妄想は一人でしてろバカ。」いけ好かない連中でも人の命に変わりない。さりとて火災報知器を鳴らせば、テロリストの殺害速度は増す一方。やむなく自分の所属する部門だけでも助けようと走った。「大変だ皆聞いてくれ。テロリストが銃を持って乱射してこっちに向かってる。今すぐ逃げるんだ。」「な、何。警察に・・・なんだこりゃ、スマホがかけられない。」「私も・・・」野口班だけは信じてくれた。しかし。通信網はすでにシャットアウトされている。「間違いない。これはプロだ。早く、大駐車場へ。その向こうは道路まで森林公園だ。就いてきて。」一縷の望みをかけて鳥影が先頭に立って走り出した。精密機器部門の社員ほとんどが大駐車場に向かったのだが・・・「待て、何か様子がおかしい。」かつてネイティブアメリカンのスカウトマンに気配の読み方をレクチャーされたことがあったが。「何だよ、逃げられるんじゃないのか」野口が冷や汗流しながら叫ぶ。「いや、何かがおかしい。危険な予感が。」それを無視して梨田が飛び出した。「うるせーよ、勝手に死にな。俺はまだ女子高生とやりたいんだ。」「あ、待て・・・」大駐車場の中盤まで差し掛かった時「バン、キューン。」と嫌な音が響いた。頭を撃ち抜かれて梨田はまるで人形のように倒れる。「やっぱり。スナイパーだ。」「ええ・・・」絶望感が辺りを漂った。・・・続く。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.7 )
- 日時: 2020/06/09 18:04
- 名前: 梶原明生 (ID: eVM80Zyt)
・・・「でも、皆で一斉に逃げれば。」「ダメだ。」山下の悲壮感漂う口ぶりに激しく抵抗する。「山下さん、あんた、ここの50名が何人か餌食になってもいいと言いたいのか。俺にとってどの命も尊い、テロリスト以外はな。そんな不確かな賭けにここの命を懸ける気はない。」「で、で、でも、・・・ねえ野口班長、あなた責任者でしょ。皆に逃げようって言って。」「それはできない。」狙撃を目の当たりにした彼は既に意思は変わっていた。「さっきの狙撃見たろ。森の中に罠がないとも限らないんだぞ。悪いが山下、彼は危機管理と戦闘のインストラクターだ。俺は仕事の責任者でも、対テロの責任者じゃない。彼こそが責任者、いや、俺たちの隊長だ。頼んだぞ鳥影隊長。」「謹んでその責お受けします。」そう話した矢先、いち早く気付いた従業員達が鳥影達のいる棟の向こう側から大勢大駐車場に逃げ出していた。自動車部門の人々だ。窓を開ける鳥影。「危ない、戻るんだ、こっちに来い。な・・・」叫んだが時遅し。今度は雨あられの如く銃弾が飛び交い、大駐車場に飛び出した全員を皆殺しにした。「嘘・・・・」口を両手で塞ぐ山下。「確かこの工場は郊外の工業団地にあって、後ろは山。両サイドは山に続く岡の群れと道路が連なるはず。さきほどの銃弾のバンキューン音からしてスナイパーとマシンガン担当は右サイドの岡から狙い撃ちしているに違いない。バンと鳴って、キューンと空気を切り裂く音の間隔の秒数で大体の距離がつかめる。恐らく1キロ。すなわち1000メートルほど離れた位置から銃撃したに違いない。あそこなら工場全体が見渡せる。」「ちょっと待った。全体だと。逃げ場がない。」鈴木が頭を抱えた。鳥影は時間を惜しく感じ始めた。「皆、聞いてくれとにかく奴らと遭遇するまでこの工場の広さだと数分かかる。二階へ逃げよう。たしかここの中階段は窓はないし外に通じてない。自動車部門から来たならまだ二階にはあがってない。食堂に逃げるんだ、早く。」「わかった。」野口は一斉に皆を誘導した。「ちょっと待て、タンはどうした。」「あれ、さっきまでいたのに。」鈴木に聞いてみたが知らなかった様子。「しまった、俺としたことが。あいつ、フェイを助けに行ったんだ。」「そんな・・・」タンがフェイに入れあげてることをすっかり忘れていたのだ。「どうしよう、どうしよう。」「落ち着け鈴木君。とにかく、今すべきは戦う準備だ。教えたろ、テロに遭遇したら先ず二つの選択肢があると。」「え、は、はい。確か、一つは即座に逃げる。犠牲者を増やさないために。自分が死んでも被害者は1名増える結果になると。」「そうだ。だがいまはその一つ目の選択肢が絶たれた。なら残る選択肢は・・・」「た、戦う・・・護身術を駆使して全身全霊で・・・」「そうだ。」「無茶な」野口が口を挟む「相手はプロって言ってたろ。おまけにマシンガンまで持って武装してる。どうやって。勝ち目はないだろ。」「なら黙って全員殺されますか。ここの人達全員。」野口は社員を見渡した。まだうら若い青年、女性もいる。小中高生の子供を抱えた主婦もいる。「この人達の家族、友人、子供、そして親や婚約者。その愛すべき人々に、死体袋か棺桶に入れて無言のタダイマをさせる気ですか。確かに生き残れるかわかりません。しかしこのまま黙って殺されるより、生きる希望に賭けた方がましじゃないですか。」「わかった。」野口は力なく答える。「俺はタンを探してくる。野口班長と鈴木君と男性方は、梱包部門や事務所の人達をここへ誘導してください。途中テロリストを見かけたら即座に撤退してください。やむおえません。それから、武器になりそうなもの、戦うのに役立ちそうと思うものは製品でも貴重機器でも構いません、ここに持ってきて下さい。いいですか。」「はい」全員が一斉に動いた。鳥影は先ずロッカーに行き、リュックを背負って再び中廊下を降りる。その頃、丁度テロリストは金属部門に到達していた。「誰ですかあなた方は・・・」驚いた北田が対応する。「巻野さんにお会いしたくて。」「ああ、巻野さんならあちらに。」「彼がそうですか。おい。」男が手を挙げると部下がコルトライフルで撃つ。「あ、あんた何をしてんだ。」「こうしてんだよ。」一瞬で拳銃を北田の頭に向けて引き金を引く。「バンッ」乾いた音が機械の騒音をも劈いた。「キャーッ」逃げようとする従業員を次々射殺するテロリスト達。李がブーツで倒れた巻野を踏みつける。「日本の元軍人さんさ、撃たれたご感想は。」「な、何故こんな・・・」「「ごめん、金が欲しいから。じゃね。」噛んでいたガムを吐き捨てて脳天を拳銃で撃ちぬいた。「ガキが二人逃げるぜ」部下が叫ぶ。「何してる、撃ち殺せ。」部下はコルトライフルを構えた。必死に走るのはフェイとタン。「こっちだ、早く来い。」出ぐわした鳥影は二人に手招きしたが、「バンッ」一発の銃弾がフェイの背中を貫通する。「フェーーーイっ。」叫んで助け起こすタン。飛び出した鳥影と共に中階段へ上がる三人。「チッ、何してる、始末してこい。」「はい。」「たく、どいつもこいつも素人が。」李は製品箱を蹴っ飛ばした。「フェイ、フェイ・・・」タンは彼女の手を握った。食堂で応急処置を始める鳥影。「ダメだ。病院に運ばないと。救急キットだけではどうしようもない。」誰もが固唾を飲む中、フェイは息を引き取った。山下達が号泣する。「そ、そんな、フェイちゃん・・・」「フェイーーーッ」叫んで血まみれの彼女を抱くタンを見て、怒りの拳を挙げる鳥影。「この罪は何万倍にして返しても足りないぞ。・・・総員戦闘準備。」叫ぶと共に男性陣を中心に作戦内容を生き残って逃げてきた人々も加え、話し始めた。やがて警戒しながら5人のテロリストが上がってきた。「警戒しすぎだって相手はたかが作業者だろ。」「それもそうか。ハハハ。」笑いながら歩く面々。しかし、最後尾の男がタンの持つ細いパイプでドアの隙間から太腿を刺され、はずみで前の男二人をコルトライフルで撃ってしまう。「ギャーーッ」気を取られた前の二人を鳥影が鉄パイプで殴り、蹴りを入れて一人の銃を奪って二人とも射殺した。ライフルを構えて叫ぶ。「クリア。」5人とも死んだか確認してから銃、弾薬、無線機からプレートキャリアに至るまで剥ぎ取った。「ザマーみろ、フェイの仇だ。」「よせ、もういい。行くぞ。」死体をできるだけ片付けてから食堂に戻った。「おい、7班。どうした応答しろ。・・・たく、さぼってんのか。おい、9班のお前らが確かめて来い。」「了解。」李はイラつきながら指示した。まさか思わぬ反撃にあっていたなど、この時は想像できていなかったのだ。・・・続く。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.8 )
- 日時: 2020/06/09 20:31
- 名前: 梶原明生 (ID: eVM80Zyt)
・・・血に染まったキャリアプレートベストを青い作業服の上から着ている上、コルトライフルを手に帰ってきた二人を見て野口はゾッとした。「まさか・・・殺したのか。」やむおえないと分かっていても、ショックはぬぐえない。「ええ。やむおえません。正当防衛です。・・・少し休ませて下さい。」鳥影は皆から少し離れてテーブルに手を付いた。「ハァ、ク、グ、ハァハァハァ・・・」「だ、大丈夫か。」過呼吸になってる鳥影を心配する野口。「初めて人を殺したのか。」「ハァ、グ、・・・あ、当たり前じゃないですか。平和な日本に住んでる人間なら、人を殺すことなく一生終わるのが大半なんですから。でも情けない。みっともないところ見せてしまって。」「いや、それどころか、当たり前の反応だよ。君が人間である証だよ。」「そうですね。ですが奴らにそんな感情はない。苦しんで死んでいった、何の罪もない従業員達に比べたら、これくらい屁でもありませんよ。すぐに戦線復帰します。」言いながらコルトライフルの槓桿ボタンを押した。「いいですか、皆さん。今さっきテロリスト5名をタン君と倒してきました。おかげで彼らの所持していた武器が手に入りました。コルトライフル5丁に拳銃3丁と弾倉いくつか。自分とタンとで迎え撃ちますが、もし、戦える勇気のある方は名乗り出て下さい。二人より5人いた方がお互いカバーし合えます。」さすがに誰も出てこない。「俺が出ないわけにはいかないな。」「鳥影隊長、俺もいいですか。」結局名乗り出たのは野口班長と鈴木。「ありがとう。頼もしいですよ。簡単に説明します。ここが弾倉止めボタンで、押すと弾倉が落ちます。」「知ってる。」「え・・・」野口の意外な答えだった。「昔グアムの射撃レンジに海外旅行がてら行ったことがあるから。コルトなら扱える。」「そうだったんですか。意外だなー、まさか野口班長が。自分も一回だけ実銃訓練にグアムへ行きました。」「昔取った杵柄だよ。ま、鳥影隊長ほどでもないが。」「いえ、心強いです。では鈴木君にだけ・・・」簡単に操作方法と構え方を鈴木に教えた。「・・・弾が詰まったら一度槓桿を引いて排莢口から弾をこうして抜いてから、槓桿ボタンを押してボルトを前進させる。わかった。」「はい。」「ようし。頼むから味方は撃つなよ。」「はい。」手が震えてる彼を見て言った。「俺もだ。震えてるよ。大丈夫、君ならやれる。」「は、はい。」ようやく返事をする。しかし、食堂には逃げてきた社員150名ほどでごった返していたが、その中に偶然美佐を見つけた。「さ、佐藤さん。何でここに。」「いや、その、忘れ物を取りに戻ってたらこんなことに。」安堵感と、焦燥感とが同時に襲ってきた。まさか帰ったはずの彼女まで巻き込む羽目になろうとわ。「正直、驚いてます。話には聞いてましたが、いざそんな姿見ると・・・」美佐の言いたいことは何となく悟っていた。恋する存在から、いきなり恐怖する存在へと変貌しているようにしか見えなかったからだ。差し伸べた手を、扱い無沙汰にする鳥影。「とにかく、必ず守ってみせます。例え、あなたが自分を拒絶しても。」「はっ・・・」胸に手を当て、彼の背中姿を見つめる美佐。そんな姿を破るように、沈黙していた森部部長が叫びはじめた。「守るってなんだよ。ただ人殺ししただけだろ。どうするんだ、余計刺激したじゃないか。こうなったら素直に謝って、命乞いした方が助かるんじゃないのか。それに何だこの暗い食堂は。電気ぐらい点けたらどうかね。」「黙っててもらえませんか。少なくともここまで生き延びられたのは誰のおかげです。」野口が反論した。「な、な、何だと。たかが班長の分際で部長のワシに指図する気か。」「ええ、少なくともあんたも、皆も、命を守るためにね。」押し黙る森部。「無線だ。10人ほど階段を上がってくるらしい。急ごう。」「ああ。」槓桿を引いてタン、鈴木、そして野口は走り出した。「どうかご無事で。」美佐は祈るように見送った。「おい、これ血が引きずられた跡だ。普通あいつらがわざわざ死体を隠すか。」「確かに。するとこの血痕は・・・」9班の部下達が不審に思っていると、いきなり廊下の角からハイ&ローで壁に構えた鳥影と野口が「ダダダダッ」と一斉射撃してきた。「何だっグァーッ。」5人は息つく間もなく射殺され、残りは退却する。「逃がすか。援護頼む。」走りながらポーチから弾倉をとり、空弾倉を同時に掴んで引き抜いて弾倉を差し込む。槓桿ボタンを押して遊底を前進させて弾を薬室に送り込んだ。野口も同じようにやる。タン、鈴木が後方を守り、鳥影はホロスコープ越しに残り5人を匍匐姿勢で捉える。「ダダダダッ」テロリストは応戦しようとしたが、圧倒的に油断があったために、何の反撃もできなく射殺される。「うわーーーっ」冷や汗掻いて引き金を何度も引く野口。「野口班長、野口班長・・・大丈夫ですか。もう終わってる。」「そ、そうだったな。隊長から言われるとは。」「とにかく早く使えるものを取って引き上げましょう。また奴らが来る。」「そ、そうだな。」汗を腕で拭うと、早速回収を始めた。その頃、ようやく張率いる本隊は、一階の従業員全員の掃討を完了していた。「おい、9班、応答しろ、どうした。・・・おかしい、こんなバカな。おい、俺に付いてこい。」さすがにおかしいと感じて李直々に2階へと上がった。「何だこれは・・・」驚くのも無理はない。従業員の死体どころか、自分の部下の死体が転がっていたからだ。「どうした李。何かあったのか。」「何かどころじゃありませんぜ。俺の部下が10人以上射殺されてる。おまけに武器、装備は剥ぎ取られてる。」「何だと。・・・一旦撤収だ。俺のところに全員帰ってこい。」「いや、しかしぶっ殺さないと・・・」「引き揚げろと言うのが聞こえないのか。命令だ、帰ってこい。」「ら、ラジャー。チっ。」舌打ちする李。傍でパソコンを扱っている部下の髪の毛を鷲掴みにする張。「お前確か、巻野以外は戦える奴はいませんって断言したよな。あーーっ。」「し、しました。」「なら何で俺の雇った兵隊が死んでんだ。しかも俺たちの銃で。説明しろ。説明しろ。説明しろ。」髪の毛を抜けそうなくらいグリグリ引っ張る。「も、申し訳ありません。」「申し訳ないで済むかアホ。鉛をこの頭にくれてやろうか。ん。」拳銃を向ける張。「おい。従業員出入口に体温チェック用の名簿が貼りだしてあったよな。取ってこい。」「は。」部下は一目散に走った。・・・続く。
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.9 )
- 日時: 2020/06/10 18:45
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
「ヒーフーミーってか、ん、これで2度目だな。おかしいな。全社員1070名になってるぞ。おまえたしか社員数は全部で1020名って言ってなかったか。50人多いぞ。これはどういうことだ、説明しろ。」「そ、その、多分新人派遣だけ入力遅れだったものかと。そ、それで50名分はわからなかったんだと思います。」「お前な、多分、だろうって言葉が大嫌いなの覚えてるよな。これで二度目だな。」「おおお、お許しください、あ・・・」バンッと言う音が響いた。「死体を片付けろ。おい、おまえ、替わりにネット担当だ。それからこの名簿の50人分を今すぐ洗い出せ。戦闘訓練か自衛隊関係者かいるはずだ。」「了解。」替わりの者にパソコンを扱わせた。「張隊長。何で引き上げさせたんですか。」李が不満そうに詰め寄る。「まぁそうカッカするな。頭を使え。こいつはただの作業員の仕業じゃない。いくら寄せ集めの傭兵とは言え、それなりの連中だったはず。それをたかが工場に勤めてるだけのアホ共がやったとは思えない。かなりのプロがやったんだ。ただ・・・生き残った奴が皆プロとは限らん。」ほくそ笑む張。無線で日本語を話し始めた。「よぉ、勇気ある諸君。聞いてるんだろ我々の無線を取り上げたんだ、聞こえないはずはない。なぁ、お互い色々誤解があったようだが、我々だって殺したくて殺したわけじゃない。君達だってそうだろう、よくわかるよ。」たまらず無線を取る鳥影。「なら何で多くの何の罪もない作業員や社員を射殺した。」「あるUSBメモリーを探していてね。それを探すのが目的さ。邪魔になった人だけ殺しただけなのさ。いやーすまなかった。」嘘だ。と唇だけ動かして野口や山下達に告げる。森部が無造作に置かれていた他の装備の無線ボリュームを上げる。「そこでだ。どうだ取引といこうじゃないか。君達が装備や銃を全て返してくれたら命の保証はしよう。ただし、明日の8:00時まで君達をここから帰せない。その時間になったら一斉に我々は退散する。今から30分以内に銃と装備を返してくれたら一切危害は加えない。どうだ、悪い条件じゃないだろ。それにだ。装備と銃1セット返しに来た人には命の保証プラス1000万円の札束を渡そう。君達工場労働者なんて貧乏の極りだろう。1000万あれば大概の問題に方が付くんじゃないか。ん、悪くない話だろ。では30分後に。」「馬鹿にしやがって。」鳥影は無線を切った。森部と首塚が叫びだす。「ほら、向こうだって話せばわかるじゃないか。武器を先方さんに返して、見過ごせばいいんだ。」「そうよ、大体、あなたが殺したりしたから余計私たちを危険に晒したんじゃない。第一、伝票を佐藤さんが忘れていなかったら私あなたとわざわざ事務所で落ち合わなくて済んだのよ。この疫病神。」「すみません・・・」佐藤は身を竦める。「それは違う首塚さん。悪いのはテロリストだ。はき違えるな。」「まぁ、何なのよ偉そうに。キーッ、もうやだ。装備もって下降りる。」ヒステリーが加速するものの、野口と鳥影で抑える。しかし、真に受けた数人の従業員は、テロリストから鳥影達に敵意が移った。「そうだよ、あんたらさえいなけりゃ助かるんだ。」「よせ。」鳥影はいち早く構えた。「早まるな。騙されてるだけだ。あの悲惨な死体の山を見たろ。あいつらに俺たちを助ける気なんかさらさらない。ただの罠だ。」言っても聞かない男たち。やむなく格闘技を用いて制圧せざるおえなくなった。・・・続く
- Re: 凄瀕凄憎工場 サバイバルディフェンダー ( No.10 )
- 日時: 2020/06/11 18:09
- 名前: 梶原明生 (ID: PvE9VyUX)
・・・野次を飛ばし始める男性陣。しかし、実際飛びかかってきたのは5,6人だった。殴ってくるのを逆関節に極めて投げると同時に肘打ち、足刀蹴りと技を出して残る5人と乱闘となった。抱き着かれたのを左右の肩を上下にずらしスッポ抜けて肩当てで突き飛ばす。「いい加減にしろ。いいくらいに奴に踊らされてるのがまだわからないのか。奴の狙いはこれだ。俺達を分裂させて争わせようと煽ってるんだ。その策略に乗ってどうする。」「チっ・・・」座り込んで悔しがる男達。「あ、首塚さん、佐古さん、待って。」佐藤が気がついた時には、騒ぎの隙に三つの装備を抱えて走り出す、森部、首塚、佐古みずきの姿があった。「冗談じゃないわ。誰が心中するもんですか。私達は助かりたいもの。」呟きながら廊下をひた走った。「森部、あいつ。・・・」一歩遅れて装備とコルトライフルを持って、鳥影は走り出した。息を切らしながら張たちのいる中央エリアへ。「こ、これ、お宅らの大事なもの、ハぁ、届に来たよ。」森部達が銃と装備を置く。「ご苦労だったな3人とも。ではご褒美だ。」アタッシュケースらしきものを部下が持ってくる。「1000万円・・・」目をキラキラさせる3人だったが、蓋を開けてみればコルトライフルが。「え、これを売れと・・・」森部が不思議がる中、それを手に取る張。「ああ、そうとも。金の玉をくれてやる。おっとすまん、間違えた。鉛の弾だった。」「ダダダダダダッ」と5.56ミリ弾の餌食になる首塚、森部。佐古も片腕を撃たれたが、必死で走った。「おっと、一人ウサギを取り逃がしたか。」狩猟のような感覚で構えて、スコープ越しの佐古を見つめる。「間に合わなかったか。」鳥影や野口が来たが、時既に遅しだった。走って逃げる佐古を製造ロボットの扉越しに隠れて誘導する。「おい、こっちだ早く。」後1メートルで鳥影の手を掴めると言うのに・・・その瞬間、コルトライフルの引き金を引いた張。5.56ミリのNATO弾が、彼女の心臓を貫く。彼女を回収しようとしたが、張の部下達の猛反撃に合う。「ダメだ鳥影隊長。敵が多すぎる。ここじゃ不利だ。一旦戻ろう。」唇を噛みしめながら、投げ渡された佐古のスマホだけ回収し、野口と共に二階へ戻った。「彼女、何を伝えたかったんだ。」鳥影は食堂でムービーモードになっていたスマホを再生したみた。そこには先ほどの森部達が撃たれる瞬間を撮った動画があった。皆にこの動画を一斉に見せた。「ほら、これでもまだ奴等が命を保証してくれると信じるのか。」「畜生・・・」閉口する面々。「いいか、聞いてくれ。幸いここには12丁のライフルと装備が残ってる。後8人分は今余分にある。もう一度言う。戦う意思のある者は俺に就いてきてくれ。共に戦おう、生き残るために。まさにサバイバルディフェンダーなんだ俺達は。山下さん、佐藤さん。俺達は防御に着く。その間、外部との連絡手段を考えてくれ。」「わかったわ。佐藤さん、やりましょう。」「ええ。」二人は見取り図を取り出して考え込んだ。「ん、スカー(SCAR)か。気が付かなかった。」敵から回収した銃器の中に、グアムの訓練で愛用したF.N FAL社由来の自動小銃があろうとは思ってもみなかった。「こっちを使おう。」コルトライフル装備と交換する鳥影。・・・