複雑・ファジー小説

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児童捜弾員
日時: 2022/02/09 15:36
名前: 梶原明生 (ID: pkc9E6uP)

児童相談所には毎年数千件にも及ぶ児童に関する相談が寄せられる。その一つ一つに対処するのが児童相談員だ。しかし、全てにより良く対処できるわけではなく、何が深刻で何が深刻でないか判断するのは難しい。下手すると児童に被害者が出れば必ず槍玉に挙げられ、加害者扱いされかねない。福岡県福岡市某地区の児童相談所もその中の一つだった。ある日東京から福祉大学出身の長見正成58歳が天下りしてくることになった。東京で役所に勤めていたが、退職して福岡に転居したのだ。誰もが期待していなかったが、何故か彼のおかげであらゆる児童問題が解決されてゆく。その上人当たりも良く、回りの信頼を得ていくのだが。ある児童の問題を解決したことで、歯車が狂っていく。

Re: 児童捜弾員 ( No.15 )
日時: 2024/09/03 17:14
名前: 梶原明生 (ID: .KVwyjA1)

・・・「どうした。何故現れない。」「クソでもしてんじゃねーか。」「うるせー黙れ。し、何か聞こえなかったか。」微かだが、異変に気付いた部下が後ろを振り向いた。「奴は後ろだっ。」叫んだが無駄だった。全員セムテックス爆薬の餌食に。「グワーッ」部下全員吹っ飛ぶ。爆火残る中、背中にM4A1をスリングで回し担ぎ、シグ拳銃を構えて死体を探る長見。ほんの少しの油断か。死体でカバーしていた生きてる部下一人がグロック拳銃で撃ってきた。「パンパンパンッ」と銃声が響く中、長見は別廊下へと逃げ込んだ。「手答えはあった。」死体をどけると、すぐさま長見を追う。その長見は別フロアにて止血帯で左腕を止血していた。「俺としたことが。」血が
ポトポト落ちる中、一人の部下を待ち侘びた。「やはり歳だなジジイ。肝心なラストステージでどじるとは。ボーナスステージはなしだな。」呟きながらクリアリングしていく部下。最後のフロア入り口に差し掛かったとき。白い粉が顔面を襲ってきた。消化器である。「うへっ」思わずグロックを落としてしまうが、さすがラストステージ。そう簡単には死なない。長見のシグを蹴り落とした。M4A1を向けようとしたが、弾倉を掴まれ外された上、薬室の一発すら引き金掴まれて発射された。「俺も社長の弟子だ。そう簡単にやられねーぜジジイ。」「若いの。調子に乗るな。」部下は抜いたナイフで刺してくるが十字受けで止めて右手を返して手首を掴み、脛蹴り。壁際に手を思いっきりぶつけてナイフを落とさせた。肘打ち、足刀蹴り。「やるなジジイ。益々殺し甲斐があるぜ。」ローキックを撃つ部下。しかし柳に雪折れなく、柔らかく受けて金的蹴り。それを両手で受けたため、長見のアッパーパンチを喰らう。慌てた部下は回転肘打ちを長見の顔面に食らわしたが、脇腹を殴られる。顔面を正拳突きして膝裏を回し蹴り。部下がひざまづいた所へ手刀打ちを首に叩きこんだ。逆髪に前髪を掴み、顔を上に上げさせる。「俺をよく見ろ。見ろっ。苦しいか。お前たちの欲と野望のせいで罪なき子供達が攫われ、未来を奪われ、尚且つ苦しみと絶望感の真っ只中に追いやられたんだ。その苦しみに比べたら、今のお前の苦しみなんぞ、蚊に刺されるよりも容易い。あの世で子供達が待ってる。」錯覚なのか心霊か。部下の男の回りを真っ白い顔になった子供達が彼を地獄に引きずり込もうとしている。「や、やめろ、やめてくれーッ」叫んだ刹那、長見のタクティカルナイフが彼の首に突き刺さる。「せいぜいあの世で叫べ。俺はただの児童相談員だ。」突き刺したまま背中を向けて立ち去る長見。・・・続く。

Re: 児童捜弾員 ( No.16 )
日時: 2024/09/05 13:28
名前: 梶原明生 (ID: 8comKgvU)

・・・一方その頃屋上では、隣の新ビル建設工事を煩く思う高嶋の姿があった。「ち、音が煩いな。ま、盗聴を防いで、射撃訓練にはいいと思ってたが、返って長見の戦い安い環境を作っただけか全く。お、ヘリが来た、可愛い弟子共よさらばだな。お前らの代わりはいくらでもいる。」そう言ってヘリを見上げた矢先「ガチャリ」と冷たい金属音がした。弾倉交換した長見の姿があった。勿論銃口は高嶋に向けたままだ。「さすがだ師匠。俺の後ろを取って尚且つこんなに早く上がってくるとは。少々見くびってましたよ長見3佐。」「お前の弟子が修行不足だからだよ。それからその呼び名で呼ぶな。」「これは失礼。」「さっさとアタッシュケースを置いて両手を見えるように挙げろ。ゆっくりこちらを向け。」「これでご満足かな師匠。」「何故こんな馬鹿げた事をした。」「馬鹿げた。はっ、よく言いますね。私達にそもそも何が馬鹿げてて、何が大義かなんてあるんですかね。あなたが特殊作戦群と別班を掛け持ちしてた頃、児童研究室の公務員も兼ねて潜入していた。あなたには随分と教えられましたよ。特殊作戦群のセレクションの時から。警務隊からの配属でしたが、あなたとの任務はスリル満点でやりがいがあって満足してました。ところが忘れもしないあの任務。覚えてますよね、俺が一度死んだ任務ですから。」「ああ、覚えてるさ。テロリスト殲滅作戦。」「そう。あの作戦で俺は死んだも同然だった。幸い生きてましたがね。あの日我々はとあるテロリスト幹部が、実は小児性愛者だと知り、誘き出すために餌を作った。テロ組織幹部への手土産に。相手はただの餌ですよ。国家国民の運命を、たかがメスガキ一人のためにあんたは棒に振ったんだよ。あろう事かテロ組織幹部を射殺。無事女の子は助かった。世間一般から見たらそりゃヒーロー扱いでしょうよ。でも我々から見たらあんたはとんでもないバカで、無能で、売国奴な上官にしか見えない。案の定敵にこちらの存在がバレて戦闘になり、散り散りに撤退するしかなかった。」「つまりあの時撃たれて谷底に落ちたはずのお前は生きていたのか。」「御名答。そりゃ、誰だってあんな数百メートルから落ちたら普通死亡って判断になるわな。だが運は俺に味方した。枯葉が堆積していた場所に落ちたんだよ。その時誓ったね。こんなやつをリーダーに据えて作戦させる国なんかの為に死ねるかって。紆余曲折して帰国した俺は潜伏中に高嶋充って男を見つけた。苗字も同じな上に顔まで似てるときた。益々悪運の強さを感じたね。おまけにこいつ。両親を亡くしてて親戚とも疎遠な、半分引きこもりニートのシステムエンジニアだった。後は言わなくてもわかるだろ。そいつを殺して新しい高嶋が産まれたわけだ。所謂、背乗りってやつだな。それからは破竹の勢いでIT企業を立ち上げ、今現在に至るってわけさ。」「そして子供達を使って人身売買で荒稼ぎか。このバカが。」「バカはどっちだ。」・・・続く。

Re: 児童捜弾員 ( No.17 )
日時: 2024/09/06 14:21
名前: 梶原明生 (ID: emG/erS8)

・・・ヘリの位置を確認のため、チラリと後ろを見ながらまだ語る。「知ってんだぞ美月ちゃん事件。」「うっ・・・」眉間がピクリとする長見。「当時七歳だった美月ちゃんは、一つ上の兄と下校途中、黒っぽい格好の男に車で連れ去られて性的暴行の末殺害。三日後に遺体となって発見された。今生きてればそう、18歳くらいかな。」銃を構える長見。「やめろ。お前を殺す。」「ああ、どうぞ。丸腰の私を撃ち殺したらさぞかし美月ちゃんは悲しむだろうね。だから未だに長男と奥さんから恨まれてる。おっと、奥さんは外すべきか。すぐ許したそうですね。流石自衛官の妻だ。しかしあなたはこうも言われてた。貴方が任務に出なければ。特殊作戦群のテクニックを使えば娘は死なずに済んだのにって。かつて初代郡長はこう言ってました。我々特殊作戦群は国は守れるが、家族家庭は守れないと。辛いですね、家族を持ち、子供を持ったばっかりに娘を失う羽目になるとは。だが私が最も許せなかったのは、・・・そんなあなたに任務に就かせた上層部ですよ。わかっていたはずだ。こんな感傷男に任せたら任務は失敗すると。なのに、あなたを選んだ。怠慢もいいところですよ。だから子供を使って商売しようと思った。少子化が進むこの国で、ガキを無くして行けばやがては上層部も滅びる。それと処分が甘かったあなたへの当て付けでもありますがね。なんですか。児童相談員にでもなれば仲間の死や美月ちゃんへの償いにでもなるとでも。」「思っていない。確かに俺の失態は償いようがない。だからこそ、特戦と別班を卒業した今。人の為に尽くして行こうと決意したんだ。お前の死の分まで。だがお前は違った。どんなに屁理屈を重ねても、ただの児童人身売買、臓器売買に過ぎん。お前は特殊作戦群の人間である前に、人として終わってるんだ。・・・だがかつての教え子でもある。礼に従い、お前は素手で葬ろう。」スリングを外してM4A1を置き、拳銃も置いた。「流石だ我が師匠。最後のお情けに格闘戦に持ち込んでくれるとは。まるでハリウッドのB級映画みたいだ。夢見心地でございます。」ジェントルマンのような姿勢で胸に手を当て、一礼する高嶋。しかしいきなり鋭い目に変わり、いきなり走り込んでくる。見越していた長見はパンチを躱し、回し蹴りを喰らわす。「ぶへ・・・あんたには現役時代一度も格闘訓練で勝てなかった。だから一度は勝ちたいんだよ格闘技で。最後の一度だがな。あんたの。」回し蹴りで返す高嶋だったが、それを取り、立ってる側の脚を蹴り倒して頭から落とそうとしたものの、受け身を取られて高嶋は長見の背中を回し蹴り。互いに立ち上がりファイティングポーズを取る。「あの時殺しておけばよかった。」「師匠、それはお互い様でしょ。あんたさえいなければまだガキ使って甘い汁を吸えた。」「やかましいっ。」長見がパンチを打つと躱した勢いでアッパー。肘打ちを顔面に打とうとしたが、掌て受けられてフックパンチ。苦しみながら足刀蹴りを入れて距離をとる高嶋。脚に仕込んでいたナイフをスラックスの裾を上げて取り出す。「そう、高嶋。お前にはその卑怯さが似合う。」「うるせー。要は勝てばいいんだ。勝ちさえすれば悪も正義になる世の中だ。」「その通りだな。」・・・続く。

Re: 児童捜弾員 ( No.18 )
日時: 2024/09/08 17:07
名前: 梶原明生 (ID: KP9MPHtc)

・・・高嶋の一撃を躱して再び対峙する二人。「つまり俺が勝てばさらに正義になるわけか高嶋。」「くだらんことを。」先程撃たれた腕を掴まれる長見。「グワーッ」彼のナイフ側の手首を掴む。ジリジリとナイフの刃先が長見の顔先一寸まで迫る。「怪我してたな師匠。好都合だ。やはり天は我に味方してくれている。」更に怪我を掴む高嶋。長見は一瞬の油断を見逃さず、力の方向を変えて自分の怪我した部分を掴んでる高嶋の手甲に刺した。肉を切らせて骨を断つである。「貴様、よくも・・・」蹴りでかろうじて長見と離れた高嶋は、屋上の、欄干に向かって走った。その手摺り裏にはグロック拳銃が裏に貼り付けてあったのだ。長見も悟って自分のM4A1とコルトガバメントが置いてある方向に走っていく。コルトを手にして一回転して受け身し、膝立ちになりながら高嶋に銃口を向けた。「パンパンパンッ」三連射撃つと高嶋はもんどり返って倒れる。「素手で葬ってやりたかったのに。」「く、クソ野郎っ。・・・」最後に高嶋の額に一発撃ち込んで終わった。背中を振り向かず、ヘリパイロットが拳銃で撃ってくるところを察知して撃ち殺した。・・・数分後。ヘリを背に、セムテックスで爆破される爆炎をバックにスポーツサングラス姿の長見がゆっくり歩いてくる。無論、その爆炎の中に、高嶋とパイロットの遺体が入っていたことは間違いない。これで終わった。爆炎を振り返りながら、サイレンの音遠くに聞いて立ち去る長見であった。・・・「今日未明、博多港付近の廃ビルにて、児童人身売買を行っていたハッピーアース社の社員と思われる射殺遺体が複数発見されました。警察はフロント企業としてのハッピーアース社が、暴力団と何らかのトラブルがあったと見て捜査しています。」蕎麦屋で蕎麦を平らげながら細川刑事は新しい相棒とテレビニュースを見ていた。食い終わるもそこそこに金を置いて出る細川。「待ってくださいよ細川さん。まだ揚げ天食ってないですよ。」「よかよか。お前は来んでよか。野暮用ばい。」暖簾を潜って出る細川。長見が頃合いを見てセイフハウスに戻ろうと、都市高速途中の道路でXトレイルを走らせていたら運悪く細川に見つかった。「ウーッ。」サイレンを鳴らし、反対車線に切り返して停める。長見も仕方なく路肩に停めた。「長見正成、きさんを殺人罪及び、銃刀法違反の罪で逮捕する。手挙げて出てこんか。」言う通り、出てくる長見。「おや、この前の刑事さん。一体何の事です。」「せからしか。きさんが一連の事件に関与してるのはわかっとるばい。大人しくワッパにかかれ。」手錠を投げる細川。「手錠くらい扱いはわかっとろうが。きさんが掛けろ。ばってん聞かんかったら撃つ。何しでかすかわからんばい。」ニューナンブリボルバー22口径を構える彼に、少しニヤつく長見。・・・続く。

Re: 児童捜弾員 ( No.19 )
日時: 2024/09/09 00:51
名前: 梶原明生 (ID: BLmVP1GO)

・・・手錠を言う通り掛けた。「これでよろしいので。」「ああ。ゆっくりこっちに来い。よか、ゆっくりと。」長見は近づきながら、一気に攻勢に出る。細川は緊張が走り、引き金を引く前にニューナンブを取られた。「撃ち殺される。」そう心の中で呟くが、長見は銃口ではなく握把側を差し向けた。一枚のメモ紙と共に。「そんな物騒な物はしまってくださいよ細川さん。はい、今日息子さんが行く場所と彼の住所を書いてます。長年探していたんでしょ。奥さんの命日だそうですね。」「きさんそこまで調べたとか。」「ええ。互いに反発する息子を持つと苦労しますな。どうです細川刑事。ここは見逃してくれませんか。あなたも薄薄気づいているはずだ。私が悪人でないと。よく聞いてください。この世には、法で捌けぬ悪がある。それを裁く闇の処刑人がいてもいいんじゃないですか。あなたは法の番人である警察官だ。だから葛藤するのも無理はない。だが、時としてこの世界には、法であることが法とは限らない。法でないことが法ではないとは限らない。」立ち去ろうとした長見にまた銃口を向ける。「あなたに私が撃てますかね。・・・」「クソ・・」銃口を上に向け、悔しがりながらホルスターにニューナンブを収める細川。「負けたよ旦那。」Xトレイルが都市高速へ走り去るのをただだ黙って見送った。・・・「混闘」終わり。 次回「人の幸せのために」に続く。


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