複雑・ファジー小説
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- 児童捜弾員
- 日時： 2022/02/09 15:36
- 名前： 梶原明生 （ID: pkc9E6uP）
児童相談所には毎年数千件にも及ぶ児童に関する相談が寄せられる。その一つ一つに対処するのが児童相談員だ。しかし、全てにより良く対処できるわけではなく、何が深刻で何が深刻でないか判断するのは難しい。下手すると児童に被害者が出れば必ず槍玉に挙げられ、加害者扱いされかねない。福岡県福岡市某地区の児童相談所もその中の一つだった。ある日東京から福祉大学出身の長見正成58歳が天下りしてくることになった。東京で役所に勤めていたが、退職して福岡に転居したのだ。誰もが期待していなかったが、何故か彼のおかげであらゆる児童問題が解決されてゆく。その上人当たりも良く、回りの信頼を得ていくのだが。ある児童の問題を解決したことで、歯車が狂っていく。
- Re: 児童捜弾員 ( No.10 )
- 日時： 2024/09/26 03:22
- 名前： 梶原明生 （ID: UsiAj/c1）
・・・「ごめんなさい。私、私・・」泣きそうな彼女をやさしく抱きしめていた。それは男としてではない。かつて守れなかった妻と子供達を思うかのような優しい抱擁だ。無論比重は後者の方だ。「泣かなくていい。もう大丈夫だ。車に乗りなさい。ワケを話してくれないか。」長見の優しさと人柄とオーラに絆されて乗る彼女。軽く車を流し始める長見。彼女は語り始めた。「私は手嶋美優と言います。高3の１８歳になります。中学の時に両親が離婚して、私は母につきました。原因は新しい女と結婚したいからと、父が母に無理矢理離婚を迫ったからです。その後しばらくは貧しいながら二人で生活していましたが、母が霊感商法にはまってしまい、気がつけば全貯金も何もかも奪われていました。その上不幸は続くもので、母に癌があることがわかり、頼れる親戚もなく、私達母子は路頭に迷いました。私ももう高校には行けません。そこでこんなバカなことを。・・・本当にごめんなさい。警察の方ですか。私、捕まるんですよね。」「心配しなくていい。君は警察に保護してもらうから。」「え・・・」「警察が改心したらね。」しばしハテナな顔になる美優。やがて博多署の駐車場に車を停める長見。「待っててくれないか。優秀な刑事さんに話しをつけてくるから。優秀ならね。」軽くウインクしてくる長見に益々不思議がる美優。二人の若い刑事が歩いてくる。「まだ連絡よこさねー。マジあいつら俺たち舐めてやがる。」「一度殺人罪でパクろうか。」「よせよ。それよりあの子の店寄ろうぜ。うまい飯もあるし。」「だな。ハハハ。」笑うのも束の間。後ろから初老の男の声が。「刑事さん、緊急通報です。子供達を食い物にする殺人犯がいるんです。今すぐ捕まえてもらえませんか。山本刑事に白井刑事。」「何だあんた。110番にでもかけたら。」「山本。・・・例の長見だよ。」「長見ってあの。」威風堂々と仁王立ちになる長見。「どうした。私は幽霊じゃないぞ刑事さん。それとも私が生きてると都合の悪い事でも。」顔を見合わせる二人。山本がスマホを出すと丁度着信音が響いた。「おや、変ですね。このスマホ。私を殺しに来た殺し屋が持ってたんですよ。今刑事さんのスマホに繋がってる。これは一体どう言うことか説明してもらいましょうか。」言われて拳銃を抜こうとするも嗜められる刑事。「おーとっ、拳銃はまずいんじゃないですか。今あなた方は帰宅中のはず。つまり拳銃は持ち合わせていないはずだ。なのに護身のために私物で所持していた拳銃で撃ち殺しましたと上に報告するつもりで。」再び顔を見合わせた二人は同時に殴りかかる。・・・続く。
- Re: 児童捜弾員 ( No.11 )
- 日時： 2024/09/04 11:23
- 名前： 梶原明生 （ID: wSTnsyhj）
・・・二人の拳、腕を絡めて薙ぎ倒し、山本の蹴りを受け返して踵を腹に蹴り入れる。起きあがった白井が背中に回るも肘打ちを鳩尾に食らわし、裏拳で顔面を殴る。「どうした白井刑事。もうお終いか。」煽られた白井は鼻を押さえて血を止めるのも忘れてタクティカルナイフを取り出して長見を刺しにいく。無論腕をへし折られるのは必須だ。「ウギャーーーッ」醜い悲鳴がコンクリートに響く。胸ぐらをつかむ長見。「このクソ野郎。忘れたかお前。警察官宣誓文を言え。」「う、う、な、何。・・・」「だから警察官宣誓文だ。代わりに言ってやろう。 私は日本国憲法及び、法律を忠実に擁護し、命令を遵守し、警察職務に優先してその規律に従うことを要求する団体、または組織に加入せず、何者にも囚われず、不偏不党かつ公平中正に、警察職務を遂行することを固く誓います。おいっ、聞いてるのか。お前たちは正義を貫く警察組織に泥を塗ったんだ。わかってんのか。どうりで高嶋に筒抜けだったはずだ。お前は、全国何十万人の警察官を裏切ったんだ。何が不偏不党かつ公平中正にだ。お前たちは、組織にドップリハマり、甘い汁を吸うだけでなく、多くの子供達の未来を奪ったんだ。万死に値する。」山本が拳銃を抜いて長見を撃とうとしたら、誤って白井を撃ってしまう。「ご苦労様だな。わざわざこちらの裏工作を手伝ってくれるとは。」白井の脇から拳銃を抜き、彼の死んだ手に握らせて山本の頭を撃つ長見。「パーン」と銃声が鳴り響く。そそくさと車に乗り込む。美優が怖がりながら聞く。「何があったんですか。」「ん、君は心配しなくていい。刑事さん二人がケンカしててね。話せないから仕方なく警察は諦めたよ。君は私が保護する。こう見えて児童相談員だからね。」優しい笑顔で語る長見。セイフハウスに着くと、笑顔になるはずの搏谷が急に不機嫌になる。「長見さん、その子誰ですか。」「彼女はね、手嶋美優って言うんだ。高3の１８歳。ワケあって保護したんだ。彼女の面倒見てやってくれないか。」「まさか長見さんの・・・」「バカな。あくまで保護したまでだ。邪推もいいところだぞ搏谷君。これも児童相談員としての職務だよ。」「は、はぁ。・・で、でも、私が狙われてたら菅谷課長とかも危ないんじゃ。」「その心配はいらない。奴は私の人間性を知ってる。奴はよりダメージの大きい相手しか狙わない。」「奴はって、もしかして悪い奴の正体は長見さんの知ってる人。」「君は何も知らなくていい。後は頼んだよ。奴等を片付けてこないとね。」セイフハウスを出る長見。神部ととある倉庫で落ち合う。もう夜明けに差し掛かっていた。「お久しぶりっすね。長見3佐。」「その階級で呼ぶなよ。」「へいへい。ところで掃除は万全、滞りなくやりましたからご安心を。ついでにあの子の部屋もキレイキレイっにっ、片付けときましたから毎度あり。」「現金な奴だな。」懐から札束の入った現金を出す長見。「現生しか信じないタチでしてね。」「それより例のアレ、用意してくれたか。」「はーい、お客様。ご注文の品をご覧あれーーーっ。」少々ふざけ気味に神部はワンボックスカーの後部を開けた。ズラリと掛けてある銃器類に爆薬、手榴弾、電子機器。「お、やっぱり89式折り曲げ式っすか。」・・・続く。
- Re: 児童捜弾員 ( No.12 )
- 日時： 2024/09/01 17:04
- 名前： 梶原明生 （ID: ciG5lJ4e）
・・・「使い慣れてるからな。ただ、野戦限定ならこれだが、被筒から銃口までが長すぎる。市街戦には向かない。このM4Ａ1カスタムをもらおう。中近距離両方に対応できる上、隠しやすく軽い。難点は操作部が多すぎだ。」「お、グロック拳銃は選ばないんですか旦那。」「確かにな。だがシグＰ226とコルトガバメントの方が俺にしっくりくる。」それらを選びつつ、セムテックス爆薬や手榴弾、電子機器をバッグに詰め込む長見。「旦那、そんなに銃、弾薬買い込んでどうやって移動するんです。警察の検問かかったらまずいっすよ。」「愚問だな。」長見がポケットからリモコンを取り出して押すと、どうしたことか。日産ＸトレイルSUVが次々ドアが開き、もう一つのドアが開いていく。「どこに武器弾薬があるのかな。」所謂、「隠し収納」に次々セットしていく長見。リモコンで元に戻すとあら不思議。あれだけあった戦闘装備が跡形もなくなくなった。「どこに武器弾薬があるんだ神部。」「ひゃー、そんなオプションまで。」「今更驚くなよ。」「確かに。ハハハッ」笑い合いながらもハンドルを握る頃には目が鋭くなっていた。「待ってろよ元教え子。今日中に片付けてやる。俺の大事な人達を傷付けるやつは容赦しない。」エンジンをスタートさせて、旭日を浴びて颯爽と博多の街を駆け抜ける。その頃細川刑事は、部下二人を失ったことよりも、長見から送られてきた二人の裏切りの証拠データに、腑煮えくり返る思いだった。「児童人身売買に情報漏洩。あんバカタレ共が。・・課長っハッピーアース社に直ぐ手配をお願いします。それから今日出るクルージング船、里親と共に子供達が乗せられとります。付近のパトカーを直ぐ回しとってください。ワシも行きますけん。」「わかった。緊急配備っ。」博多署が慌ただしくうごいた。「やっぱり旦那、悪い奴じゃなかと。ばってん・・・」何かを覚悟したように覆面パトのサイレン引き出しスイッチを押す細川。先鋒のパトカーがサイレンと赤色灯鳴らして博多港に駆けつける。「この船に指名手配犯がいるとの情報を得ました。中を改めさせてください。」「は、はぁ。なら遅延手続きします。」港職員は素早く対応したのだが。「パンパンッ」船側から拳銃の発砲があった。「退避。こちらＰ82車。警察官一名負傷。ハッピーアース社の者と思わされる犯人から拳銃発砲あり。至急応援を。繰り返す・・・」船側はリーダーらしき男が殴りつけていた。「馬鹿野郎っ勝手に発砲しやがって。テメーのせいで策を使って逃げられなくなったじゃないか。」「す、すみません。」もう一人の部下が尋ねる。「どうします春井さん。このままじゃ」「仕方ない。子供を人質に強硬突破するしかない。某C国に入れば日本の警察は追えない。」無茶な計画が実行された。直ぐに船を出すよう船長に命令するのだが。「無理です。見てくださいあれを。」何といつのまにか海上保安庁の巡視船に囲まれていた。・・・続く。
- Re: 児童捜弾員 ( No.13 )
- 日時： 2024/09/02 14:33
- 名前： 梶原明生 （ID: uwN5iK1I）
・・・「ハッピーアース社の諸君、
既に君達の児童人身売買の犯行は明白である。速やかに拳銃を置いて投降しなさい。」何と、巡視船の先頭に立ってメガホンで叫ぶは細川刑事だった。それでも撃ってくる高嶋の部下達。「うるせーっ人質のガキはエントランスに集めてある。皆殺しにされたくなかったら道を開けろっ」向こうも部下の持つメガホンで春井が叫ぶ。子供一人を盾にして。歯軋りする細川だったが、海上保安官から意外な通達が。「Sからの通達です。人質の子供達は確保したとのこと。」「Sが入ってたんですか。わかりました。全FTR隊員に継ぐ。今すぐ突入っ。」ＦＴＲとは「フクオカ タクティカル レンジャー」のことで、福岡県警銃器対策部隊である。ちなみにSとは潜入捜査官を指している。「まさか旦那、これも見越して俺に任せたんじゃ。」改めて長見を恐ろしい男と思う細川であった。その頃、別のアジトにしていた高嶋が所有する立ち入り禁止の廃ビルに、新井と共に隠れていた。その高嶋が古い社長デスクの椅子に座ってスマホを耳に当てている。通話が終わると、そのスマホをいきなり壁になげつけた。新井が冷や汗混じりに尋ねる。「ど、どうしました。」「どうした。どうしただって。見りゃわかるだろ。これが笑えてる顔か。あ、畜生、やられた。船も、会社ビルも、全て警察に抑えられた。お前ら無能な使えない部下のせいで俺は、全てを失った。後は海外に高跳びかな。わかってんのか。」切れた卓上電話を投げつける高嶋。「す、すみませんボス。でも・・・」「でも、ボス、一番嫌いな言葉だな。」引き出しからグロック拳銃を取り出し、いきなり新井に向けて撃つ高嶋。ダブルタップで撃ち殺した。「元はと言えば全部お前のせいだ。お前が悪い。・・・何見てんだ。さっさと死体を片付けろ。」唾を吐きつつ、部下に命令する高嶋。「pt、応答しろ。・・・どうした、定時連絡がないぞ。」「一体何だ。」「は、はぁ、社長。さっきから無線での、下の階の護衛の定時連絡がないんです。」「あ、そりゃ、みんな死んでるな。」「何、し、死んでるとは・・・」「おーい、鈍いな。あれだけ俺がお前らを訓練して教えてきたのに、まだわからないのか。奴が嗅ぎつけてきたんだよ。思ったより早かったな長見のおやっさん。少しも衰えてない。さすが、俺の師匠なだけある。おいお前ら、奴の首を仕留めてこい。きたやつにはボーナス10倍払う。さぁ行け。」「りょ、了解。」一斉に部下達は銃器類を取り、動き出した。「ふん、時間稼ぎにはなる。・・あー私だ。ヘリを至急例の屋上に回してくれ。大至急だ。」アタッシュケースを持ち、もう一つのスマホで歩きながら通話する高嶋。その頃一階では沢山の死骸を横目に、長見が銃口をハイレディにしたコルトM4A1の弾倉を交換している所だった。弾倉をL字型に添えて、弾倉止めを押して外し、くるりと返して新しい弾倉を差し込む。ボルトキャッチを押して遊底を進ませ、ボルトアシストを掌で押す。その間3秒もかかってない。「やれやれ。年寄りにはきついが、階段と行くか。」・・・続く。
- Re: 児童捜弾員 ( No.14 )
- 日時： 2024/09/03 14:44
- 名前： 梶原明生 （ID: .tpzY.mD）
・・・長見にしては珍しい意見だが、それは何故か。この後わかる。階段を上がっていく中、待ち伏せてる部下達が思い思いに銃を構えてる。「今だっ。」手榴弾のピンを抜き、レバーが跳ね上がると同時に階段に転がす。ドカーンッと爆発音がした。「やったぞ。確認に行こう。」煙の中、踊り場に三人ほど折り重なって誰か倒れている。「大丈夫か。うへっ」それは見るも無残な死体。「長見の奴は。」「分からん。損壊が激しくて。でもやったのは間違いない。」と大勢が階段に降りてきていたのは幸せ中の不幸だ。弾倉が空になるくらい死体の中から銃口が顔を出し、連射で撃ちまくった。「グワーッ」「オヘッー」断末魔の叫びが全員を射殺した。死体の中から長見が姿を表した。スリングでM4A1を背中に回し、シグＰ226拳銃を構える。「ウグウッ・・・」まだ息がある部下が拳銃を抜くも、長見にヘッドショットをくらう。辺りを警戒しつつ拳銃をホルスターに収め、M4A1の空弾倉をまた交換する。弾倉下を叩き、ボルトキャッチを押し、ボルトアシストを押す。先程階段上がるのは疲れると長見が言ったのは、二人の死体も担いで上がっていたためだ。五階まで上がってきた。待ち伏せしてる部下が話している「おい、相手は高嶋社長の師匠なんだろ。俺たち勝ち目ねーって。」「うるさい。こっちはまだ人数がいる。大丈夫。束になってかかればひとたまりもない。」「その束の三階がやられたんだぞ。ここへ上がってくるってことは、皆殺しだろ。敵わねーよ。逃げようぜ。」「バカ。ここは廃ビルだぞ。階段はあそこしかねー。非常階段は朽ちてるし。最悪飛び降りるしか。」「飛び降りるなんてごめんだぜ。」「なら道は一つしかねー。」さらにサブマシンガンの握把をなおさら強く握りしめる。階段口に人影が。「撃てーっ」一斉にサブマシンガンを撃ちまくった。「やったか・・・」蜂の巣になった長見らしき遺体に近づく。足元に何かが転がり込む。「しゅ、手榴弾っ。」そう思ったのが彼の最後。ドカーンッと爆発があったかと思いきや、蜂の巣の遺体の後ろからハイレディに構えた長見がスローモーションの如く現れる。「な、何だ・・・」意識朦朧とする部下達を次々ヘッドショットしていく長見。しかし一人だけ手強い奴がいた。意識朦朧としながらも、物陰に隠れながらサブマシンガンを連射してくる。カチンと弾が切れたことを知らせる。「クソっ」サブマシンガンを捨て去り、グロック拳銃を出す。壁際を覗くと撃ってくる長見。「クソクソクーッ」やけっぱちに拳銃を撃つ部下。「へ、どこ行った。」弾倉交換してスライド止めを片手指で押してカチャンと戻す。「野郎、どこ行った。」「ここだよ。」「ヒッ・・・」気がつけば銃口が後頭部に当てられていた部下。広い五階フロアに銃声が鳴り響く。「五階フロア、応答しろ、何があった。・・クソ、全滅かよ。」7階社長室だったフロアで、最後の部下達がいた。「奴はまた階段で来る。手榴弾で応戦するぞ。」カメラ画面を前に、部下達は一斉に手榴弾を構えた。だが一向に長見は現れない。・・・続く。