複雑・ファジー小説

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児童捜弾員
日時: 2022/02/09 15:36
名前: 梶原明生 (ID: pkc9E6uP)

児童相談所には毎年数千件にも及ぶ児童に関する相談が寄せられる。その一つ一つに対処するのが児童相談員だ。しかし、全てにより良く対処できるわけではなく、何が深刻で何が深刻でないか判断するのは難しい。下手すると児童に被害者が出れば必ず槍玉に挙げられ、加害者扱いされかねない。福岡県福岡市某地区の児童相談所もその中の一つだった。ある日東京から福祉大学出身の長見正成58歳が天下りしてくることになった。東京で役所に勤めていたが、退職して福岡に転居したのだ。誰もが期待していなかったが、何故か彼のおかげであらゆる児童問題が解決されてゆく。その上人当たりも良く、回りの信頼を得ていくのだが。ある児童の問題を解決したことで、歯車が狂っていく。

Re: 児童捜弾員 ( No.1 )
日時: 2024/09/21 16:46
名前: 梶原明生 (ID: 9nuUP99I)

登場人物・・・
長見正成。福祉大学卒の元役所職員。人当たり良く、誰にも好かれる好人格。しかし、年齢に似つかわしくなく185センチの体格に恵まれていて高い格闘能力と気配を読み取る能力がある謎の人物。・・・・・搏谷美郷。新人児童相談員。課長から長見のお目付役としてバディを組まされる。気弱で折り紙の才能はピカイチ。子供が苦手である。・・・・・菅谷課長。児童相談所課長。役所仕事向きで部下の管理は得意だが何ごとも事勿れ主義の点数稼ぎ。長見に批判的。50歳。・・・清水政子。児童福祉施設のお局様と称される。・・・細川刑事。福岡県警きってのベテラン刑事。長見をはなから疑っている。52歳。・・・杉田拳。長見のコーポの近所に住む快活な老人。長見とは博多に引っ越したときからの知り合い。元ボクサーだったらしい。82歳。・・・新井。高嶋社長に支えるホスト上がりの半グレ。36歳。・・・高嶋社長。先進IT企業の社長。裏で人身売買や子供の売買、臓器売買まで悪どく手掛ける。32歳・・・田楽梨乃。長見が最初に相談に乗った活発な小学生。希少な血液型の持ち主。7歳。・・・白井。東京から博多署に赴任した若手刑事。細川の相棒。24歳。・・・山本。同じく白井と共に博多署に赴任した若手刑事。元は天才的IT技術者。24歳。・・・神部。長見の元専属掃除屋。悪態つきながらも何故か長見の頼みを聞く。28歳。・・・井坂一佐。長見の自衛隊時代からの同期にして親友。神部と同じく長見に手を貸している。(実は命令している?)・・・長見美月。 長見の娘。10年前に小児性愛者に惨殺された。生きていれば18歳。・・・長見正道。 長見の息子。27歳。警視庁警備局所属の警察官。10年前の妹の事件がきっかけで警察官に。実は贖罪だった。・・・長見美佐子。長見の妻。犯罪被害者の会に所属するも、心労で胃癌を併発。治る見込みあり。他。

Re: 児童捜弾員 ( No.2 )
日時: 2022/02/10 15:23
名前: 梶原明生 (ID: SQ5s5iz7)

「浸透」・・・・・・・・書類をトントンとしてから少女に向き直った。「もう四時だ。暗くなる前に帰りなさい。」長見は人当たりのいい笑顔で諭す。「そうやって児童相談員が怠慢やって死んだ子供はたくさんいるんだよ。まじめに聞いて、お母さんは虐待してるんだよ。」「それは怖いな。でも私が会いに行ったらそんなお母さんに見えなかったがね。」「虐待は虐待よ。お説教ばっかり。」「いいか、よく聞くんだ。虐待と親としての教育の違いは何かわかるか。」「そんなの知らない。」「お母さんは自分の不満や怒りの捌け口として君に説教しているのか。聞いたところによると君はかなり悪さばかりしているそうだね。先生からも聞いたよ。それで本当に虐待と言えるのかな。君の方が単なる我儘でここに相談に来てるだけな気がするが。」「そんなこと・・・」いきなり押し黙る少女。「本当の虐待とはね、相手への愛情ではなく、自分の感情の捌け口として行う行為だ。そこには手加減も相手への思いやりもない。それが,本当の虐待だよ。あ、搏谷君。この子を自宅まで送ってやってくれないか。」「あ、はぁ、わかりました。」新人職員に連れて行かれる少女。彼女の背中姿を,救えなかった子供達に重ねてみている長見。溜息を吐きながら次の仕事に取り掛かる。彼の名は長見正成。初老をもうすぐ迎える58歳の天下り職員。福祉大学卒で東京の役所に35年勤務した後、老後を見据えて福岡市に転居してきた。そして市の児童相談所に入所。児童福祉司としての新たなスタートを切った。時間はその頃の三カ月前に遡る。同じ福祉司のお局様、清水政子が他の事務員に耳打ちする。「ねぇ聞いた、今日天下りが来るんですって。いやーね。どうせしょぼくれたジジイか、油ギトギトのハゲデブに決まってるわよ。どうせ東京でなんかやらかして飛ばされたに決まってんだから。」愛想笑いする事務員。「あの、児童福祉司の方ですか。」そこへ、背の高い年配の男性がやってきた。しょぼくれでもハゲデブでもない、精悍な体付きに好人格なマスク。「あ、はい、左様ですがどちら様で。」「この度こちらの児童相談所勤務となりました長見正成と申します。」「えーっ」誰もが驚愕した。初老とは言え、あまりにイメージと掛け離れていたためだ。「菅谷課長、東京の例の方が。」「わかった。あなたが長見さん。私は課長の菅谷だ、よろしく。」「こちらこそ。」「ああ、それから、もう一緒に働くパートナーは決めておいたよ。新卒採用の搏谷美郷君だ。」「ど、どうも搏谷です。よ、よろしくお願いします。」「よろしく」人当たりいい笑顔に搏谷も癒される。清水がヒソヒソ話を始める。「ねぇねちょっと、かっこいい老紳士って感じじゃない。」「ええ、ハゲデブでなくて宜しかったですね。」事務員も嫌味混じりに言う。「東京の役所じゃ働きぶりは良かったと聞いてるがね、ここは福岡なんだよ。やり方ってもんが違う。そこは弁えてもらうよ。」「わかってます。」またもや笑顔で答える長見。ここから彼の児童福祉司としての第二の人生が始まった。夜の八時。クタクタになって退庁する長見。三階建てのコーポに一人帰宅するとご近所のお爺さんが犬を散歩させていた。「やぁ、あんた。もう博多になれたと。」「ああ、杉田さん。ええ、おかげ様で。」「そりゃ良かった。でもこんな遅くまで大変たいね。公務員なのに。」「ええ、でもやりがいがあります。でも、杉田さんもこんな遅くに犬の散歩ですか。気をつけてくださいね。」「なーに、ワシはこう見えて元ボクサーたい。若いもんにはまだまだ負けん。」「そりゃよかった。ではおやすみなさい。」笑顔を交わして部屋に入る長見。・・・続く。

Re: 児童捜弾員 ( No.3 )
日時: 2022/04/18 11:17
名前: 梶原明生 (ID: 16oSxNwZ)

・・・だが何か嫌な胸騒ぎが絶えない。「もうやらないと決めてたんだがな。」言うセリフとは真逆にジャケットをはおり、コーポを後にした。「このせからしいバカモンが。」案の定、杉田の爺さんはコンビニで屯している若者に食ってかかっていた。「ああ、何だ爺い。」「騒ぐわゴミを散らかすわで近所迷惑たい。」「せからしかっ。」夜年並みには勝てぬか。若者のパンチをモロに食らう杉田。それを皮切りに四、五人が寄ってたかって殴る蹴るの暴行を加え、大怪我を負わせる。気がおさまるとコンビニを後にする若者達。「杉田さん。」長見が来た時は遅かった。「何、あ、あ、足が滑ってな。」「救急車は呼びました。少し待っていて下さい。」コンビニ店員に肩をあずけると、淡々と若者集団に歩き寄りはじめた。「おい、君達。」「あ、何だ、オッサン。」「救急車と警察を呼んだから今すぐコンビニにもどりなさい。そして深く反省して罪をつぐなうんだ。君達の行為は暴行致傷の罪になる。若者達は顔を見合わせて笑い合う。「何言っとるとこのオッサン。」「嫌なら仕方ない。コンビニ斜め前に空き地がある。そこでお仕置きをしてやろう。」若者達は我が物顔でついて行く。「オッサンバカと違うか。ここには監視カメラもないばい。」「そう、だからお仕置きに都合がいいんだ。」「ああっ」言ってる間に長見の瞬殺パンチが飛び、バカにしていた連中も一気に青ざめた。しかし時遅し。次々に叩きのめされる若者達。「あ、あんた誰だ」「ただの児童相談員だ。」捨て台詞を吐いて立ち去る長見。翌朝、清水がまた噂話をしている。「聞いた、今朝のニュース。老人殴って怪我負わせた不良グループが誰かにボコボコにされたんだって。いい気味よね。」苦笑いの事務員。「おはよう御座います。」「あ、長見さん。おはよう御座います。」いつもの朝の業務が戻ってきた。搏谷が案件を持ってくる。「あ、あの、おはよう御座います。例の児童虐待の件。調べにいきましょう。」「ああ、そうだったね。よし行こう。」適度に書類を片付けると、イスから立ち上がった。車でその家庭に向かう。「長見さん、何ですかそれ。」「ん、何ってライブカメラだよ。虐待生中継のね。」アパートの近くに駐車した車から家庭内の映像を見る長見に絶句した。「ちょ、ちょっとそれ、違法じゃないですか。」「どうして。彼等が消し忘れたパソコンやビデオカメラに映ってるだけの話だよ。」「あの、おっしゃる意味がわかりませんが。」「風呂に沈め始めた。行こう、子供が危ない。」車のドアを開けて走り出す長見。「ちょっと待ってください。」彼の足についていけない搏谷。ポケットから工具を取り出して鍵を開ける長見。「な、何してるんですか。ふ、不法侵入ですよ。そ、それに鍵を開けるだなんて、長見さん、一体あなたは何者なんですか。」「何者なんて考えてる暇があったら子供の命を考えたらどうだ。行くぞ。」「ええーっ。」ドアを開け放ち突入する長見。・・・続く。

Re: 児童捜弾員 ( No.4 )
日時: 2024/08/04 21:14
名前: 梶原明生 (ID: WTiXFHUD)

・・・「ちょっとあんた何ひとんちに入ってるとっ。」母親が制止するも、突き飛ばして風呂場に入る長見。「何やってんだコラっ。」掌底突きを父親にかまし、風呂水にしずんだ子供を抱き上げる。「いかん、搏谷君、すぐに救急車。」「へ・・・」「何やってる。子供の命がかかってるんだぞ。」「は、はい」慌ててスマホを取り出し、119番にかける。長見の応急処置により、息を吹き返す女児。付近はパトカーと救急車で騒然となった。一人の刑事が長見から事情聴取をとるべく歩み寄る。「博多署刑事課の細川だが。」「何か。」「長見さん、あんたどうやって中に入った。」「ですからたまたま鍵をかけ忘れていたんじゃないですかね。無用心もいいところですよ。」「そんな話は聞いてないよ長見さん。どうやって入ったかと聞いとるんです。」「ですから・・・」「あーもういい。それはさっき聞きました。あくまでシラをきるならいいでしょう。必ず尻尾は掴みますから。今日のところはお帰りください。」「それは殊勝な心掛けで。それでは失礼します。」憮然として帰る長見。後輩刑事が細川に告げる。「調べました。あの男の素性。」「おう、それで。」「成田大学教育学部卒業。その後文部科学省に入省して児童教育研究室に30年以上勤務。ごく最近定年退職したのち、福岡市児童福祉課に移動とあります。」「バカやろう。」頭を軽く叩く細川。「痛、何すか。」「誰がそげん表の経歴調べい言うた。見るからに偽造臭い経歴ばい。そがんこつもわからんか。」「はぁ、しかしそうなると裏のやつに調べさせるんで、部長に内緒になりますが。」「かまわん。バレたら俺が責任取るたい。早う調べんか。」「はい。」電子タバコに火をつける細川。「全く、厄介な旦那が来たばい。」翌日、何事もなかったかのように出勤する長見。案の定、菅谷が突き詰めてくる。「長見さん、昨日のアレはなんだったんですか。おかげでこれから私も博多署に出向かなければならなくなったじゃないですか。」「それは申し訳ありませんが、全ては警察の誤解なんですよ。たまたま子供を救い出しただけな・・・」遮るように菅谷が入る。「とにかく、いいですね。今後はちゃんと警察を呼ぶか、私に一言電話をください。いいですね。」「はい、わかりました。」通り一辺倒な返事を返す長見。またもやいつもの業務に戻る。昼過ぎ、折を見て搏谷と共に杉田の見舞いに訪れた。「お、こりゃ。あんたが見舞いにくっとは思わんたい。」「杉田さん、容体はいかがですか。」「見ての通りピンピンし
・・・あたたた。」「あ、無理なさらずに。大丈夫。あの輩には制裁を加えておきましたから。」「そりゃ、ありがてー。」机の写真盾を見つめる杉田。そこには古いがしっかりと写っている写真が。「それは、もしかして娘さんですか。」「ああ。もう生き別れて30年になるたい。ワシもなかなかハンサムじゃろ。ハハハッ」苦笑いの長見。・・・続く。


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