複雑・ファジー小説
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- アニマーレ
- 日時: 2025/02/06 22:19
- 名前: 長谷川まひる (ID: oQuwGcj3)
ライトノベル「アニマーレ」です。
主人公が殺人ギルドを抜け出した少女、という設定なので
暴力シーン多めです。
が!
よい子は、というか、
あくまでフィクションですので
どうか、これに感化されて暴力行為や奇行に走るとか
そういうことはやめてください。
お願いします。
長谷川
- Re: アニマーレ ( No.1 )
- 日時: 2025/02/06 22:28
- 名前: 長谷川まひる (ID: oQuwGcj3)
0001
殴られる、蹴られる、叩かれる。痛い、痛い、痛い。
毎日、毎日、痛い。痛すぎて、痛い。
そして、おさまる。ジンジン、痛い。
父さんがどっかへ行った。足音が向こうへ行く。
乱れた髪の間からのぞく。父さんがどっかへ行った。
痛むところをさする。「大丈夫、痛くないよ。」小さくつぶやきながら、腫れた腕や足をさする。
しばらくすると、眠る。小さい体を丸めて、ゆらしながら。
足音が向こうから来る。父さんが来た。
酒瓶を大きく呷り、落ちるように座る。赤らむ顔をこちらに向ける。
髪からのぞく。目が合う。
殴られる、蹴られる、叩かれる。痛い、痛い、痛い。
毎日、毎日、毎日、毎日、痛い、痛い、痛い、痛い。
ただ、ある日、痛すぎて痛みがなくなった。感じなくなった。
痛みも、空腹も、悲しみも、辛さも、寒さも、暑さも。
だから、殴られても、蹴られても、叩かれても、どうでもよくなった。
手足が腫れても、引っ張られても、変に折られても、血が出ても。
なのに、だからか、、、だからか、切られたときは別段痛かった。
僕が苦しまないのが不服なのか、父さんはその日、包丁を持ち出してきた。
0002へ
- Re: アニマーレ ( No.2 )
- 日時: 2025/02/07 23:37
- 名前: 長谷川まひる (ID: cdCu00PP)
0002
※今回は特にひどい暴力回ですが、どうか、奇行に走らぬよう。以上。
切られる痛みを知らなかった僕は、抵抗もせずに顔を切られた。
左の眉の上から顎にかけて一線を引かれた僕は痛みのあまり泣き叫んだ。
痛みに顔をゆがめるが、それすらも痛い。
傷口から血が流れ出るのを感じた。口の中にそれが入り、苦い。
それに追い打ちをかけるように、父さんは喜びながら顔の左側をはたく。
痛い。
もう一度。
痛い。
三度目に来た平手に僕がかみつくと、腹を力いっぱい殴られた。
僕はその日、忘れていた、痛みと辛さを思い出し、
人生で初めて怒りと殺意を覚えた。
殺す。刺す。切る。裂く。お前を殺す。
その日、深夜、酒に酔い、寝静まった奴の首に、あの包丁を刺す。
飛び起きた父さんは状況もわからずに、もがき、苦しみ、のたうつ。
声にならない雄たけびを上げ、首に手をやる。
一層深く包丁を刺し、それを抜き、かざされた手の上から、さらに刺す。
僕はうれしかった。うれしくてたまらなくて、身震いがした。
気持ちよくて、体が熱くて、狂おしいまでに胸が高鳴っていた。
しばらくすると、父さんはびくん、と大きく跳ね、それきり動かなくなった。
僕はうつぶせになり、奴の血のついた包丁をしばらく眺めていた。
包丁にわずかに映った僕は、紅潮し、にっこりと満足気に笑っていた。
「あはは、、、。」
腹の底にいた怒りと殺意は、いつの間にか消えていた。
ただ僕は寝込みを襲うことしかできないので、このスラムでは生きていけなかった。
ネバーデッド、眠らない街。
盗みは下手だし、子供の小さな体では、大男の巨躯を負かすことはできなかった。
せいぜい、ごみ箱を漁るのがいいところで、腹が減ったら、奴の死体を食べた。
傷口が腐り、ウジが湧いた。ゲロを吐きながら、食い続けたが、それも限界だった。
死臭まみれの家を抜け、僕は路地裏に身を潜めた。
しばらくすると、また何も感じなくなった。
空腹も、辛さも、寒さも、暑さも、何もかも。
ただ、意識は薄れていった。
体が揺れる。ゆら、ゆらゆら。
ゆっくりと目を開けると、そこには日の光を遮るように人が立っていた。
顔を上げて、髪の間からのぞくと、それはどうやら男性らしい。
「こんにちは、私は「獅子」、名は「雷音」。君は?」
僕は?えっと、、。
「、、い。ない。」
からからの喉から出ない声を絞り出す。
「なまえ、ない。」
獅子は僕の脇に手を通し、座ったままの僕を持ち上げ、抱きかかえた。
「そうか、私のもとへ来ないか?無名くん。」
「い、、く。」
僕は獅子がどこかいいところへ連れて行ってくれる気がした。
0003へ
- Re: アニマーレ ( No.3 )
- 日時: 2025/02/08 17:51
- 名前: 長谷川まひる (ID: cdCu00PP)
0003
16歳になった僕は「猫」として仕事をこなしていた。
世の闇で暗躍し、依頼をこなしていた。
街を殺し、貴族を殺し、皇族を殺し、一国を殺していた。
いつの間にか、僕は限界を超えていた。
限界はとっくに超えていて。
だから、失敗した。
殺し損じた。
あの日、殺し損じてしまった。
僕がアニマーレに入って4年後、園長は獅子から鯨になっていた。
獅子と違い、鯨は実力至上主義で、何よりも能力を重視し、何よりも成果を重んじた。
鯨は依頼の失敗を許さず、敗走する者を逃さず殺した。
鯨のカリスマ性と実力は全ての獣の中で群を抜いていた。
彼は次の5年も園長を引き続きまかされた。
猫は限界を超えていた。
依頼が続いて4つも入っていて、心も体も疲れていた。
だからか、あろうことか、自警団の一部を壊すという内容の仕事を失敗した。
獅子が園長であったなら、猫はこの仕事を蹴ることもできた。
だが、鯨は許さない。成果を、戦果を、成績を彼は重んじた。
街のはずれ、巡回をする3人の自警団を殺すことが、猫の仕事だった。
理由はいろいろあった。
限界を超えていたのもあったろうし、雨が降りそうなのもそうだろう。
昨日の仕事で少しけがもしていた。
そうして、僕は彼ら3人を殺し損じた。
鯨の耳は非常に良い。
自警団に返り討ちにあ、拘束されているところに、鯨は文字通り飛んできた。
傍らには蝙蝠がいた。
鯨は表情を一切変えずに、うつ伏せの僕を見る。
自警団の3人と僕はただじっと鯨の様子をうかがう。
「猫、これはどういう状況だ。説明しろ。」
鯨はおもむろに口を開き、目を細めた。
「依頼に、、失敗した。」
僕は唇をかみしめて答えた。
「失敗と敗走は、今のアニマーレには許されていない。」
知っているな?と鯨は続け、僕に2歩近づく。
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