二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターIH
- 日時: 2013/05/02 21:37
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
どうも、初めての人は初めまして。白黒というものです。
旧二次小説紙ほかを覗いた事がある人なら知ってる人もいるかもしれません。以前にも、ポケモンの二次小説を執筆していました。
さて、白黒はずっと紙ほかで活動していたので、実は映像板で小説を書くというのは初めてなので、もしこの板限定での暗黙のルールとかがあるのなら、それを守れていない可能性が高いです。その時はごめんなさい。
それと、先に断わっておきますが、白黒はこの時期、かなり多忙だったりします。なので更新が滞る可能性が高く、また同時に建てた二次小説新紙ほかの作品がメインとなるので、こちらの更新頻度にはあまり期待しないでください。
ではざっくりと作品説明です。白黒は今まで、ゲームをモデルにした冒険ものの作品を執筆してきました。僕の知るポケモン作品の書き手さんも、そのような作風が多かったです。しかし白黒は、ちょっと違う作風にも挑戦したくなり、このような小説を作りました。
皆様も気になっているであろうポケットモンスターに続く『IH』の二文字。これはインターハイの略です。つまり、今作のポケモンは学園ものを織り交ぜた作品となります。
細かいことは後々プロローグとか紹介しますが、実はこの作品、ポケモン以外の作品からも取り入れているものがあるのですが、ポケモンの二次小説という土台を壊したくないので言わないことにします。分かった人は……まあ、言っても言わなくても好きにしてください。
ともあれ、今作品は他に見るポケモン小説とは異質なものとなっていると思われます。バトルもアニメや漫画より、ゲームに近い形に仕上げるつもりです。なので対戦での専門用語とか出て来ると思いますが、分からなかったら聞いてください。あと、白黒はそれど対戦経験が豊富ではないので、ダメージ計算などは結構適当です。もし間違っていても、大目に見てください。
さらにこの作品は三つのサイドからストーリーが展開するのですが……まあそれは追々説明します。
それと、前作やもう一つの作品ほどではありませんが、この作品でも非公式のポケモン、アルタイル・シリウス、ベガのポケモンが登場します。知らないポケモンが出た時は、>>0のURLをクリックしてください。決してポケモンの新作、X・Yのポケモンではないので、ご注意を。
なお、もう一つの作品でも言っていますが、この作品内ではポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。まあ、超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。
長くなりましたが、これより、白黒の新しい物語が始まります——
プロローグ
>>1
雀宮編
序章
>>2 >>5 >>6 >>10 >>11 >>12
龍源寺高校
>>13 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20
- Re: ポケットモンスターIH ( No.14 )
- 日時: 2013/04/17 20:50
- 名前: シグレ (ID: FAqUo8YJ)
千尋vs伊織vsこのみvs芽のポケモンバトルになりましたか。
最初から伊織のポケモンが戦闘不能になるなんて……。まぁ、ウインディは炎タイプですから地面タイプのポケモンが相手だときついですよね。
さっき、白黒さんのURLからポケモン、アルタイル・シリウス・ベガのサイトに行ってクチールスをご覧しましたが……あまり変わっていないですね。クチートと見分けがつきません。(涙)
では、また来ます。
- Re: ポケットモンスターIH ( No.15 )
- 日時: 2013/04/17 19:11
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 千尋は学年十三位、伊織は学年二位……どう考えても逆じゃね?
シグレさん
とりあえずは、まだ部員同士のバトルですね。
伊織は見ての通り、後先考えずに突っ走るタイプなので、交代とかはあまりしません。でも、あの状況ならウインディに有効打を持ってそうなのはバンギラスだけだから普通は、インファイトで落とすか素直に戻すかするんですけどね。
正直、白黒もあまり見分けがついていません。初見ではページを開き間違えたのかと思いました。強いて違いを挙げるのなら、角が丸みを帯びているところと人型の本体が大人びてるところくらいですかね。
- 第八戦 龍源寺高校 2 ( No.16 )
- 日時: 2013/04/17 22:52
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 今作品では性格補正はかからない。
「次は頼んだよっ、ガブリアス!」
伊織の二番手はガブリアスだ。地面タイプで砂嵐のスリップダメージを受けないだけでなく、特性、砂隠れで回避率も上がっている。素の能力も高いので、非常に厄介だ。
(まあここでガブリアスが出て来るのは読めてたけど……問題は横に二人だよなぁ)
千尋はこのみとクチールス、茅とバンギラスをそれぞれ見遣る。
(ガブリアス以外の三体は、見事に地面技が刺さる。だから次にガブリアスが繰り出す攻撃は地震のはず。それに対して、この二人はどう出るのか)
バンギラスはクチールスのカウンターを喰らっており、結構な痛手になっているはず。だがクチールスも地震を受けているので、残り体力が僅かなのはどちらも同じ。さらに言うなら、アバゴーラもそうだ。ここは手負いのポケモンを捨てて、後続を無傷で出すという手もある。
(死に出しするのなら、クチールスの攻撃は不意討ち……三色牙や三色パンチを覚えてればガブリアスに刺さるけど、先制してやられるのがオチ。なら捨てるのが普通かな……バンギラスはどうせ遅いし、戻すメリットがない。なら)
このポケモンは捨てる。そして次に繋げる。
「ガブリアス、じし——」
伊織はガブリアスに指示を出すが、それより速くガブリアスに接近する影が二つあった。
「クチールス、不意打ち」
「アバゴーラ、アクアジェット!」
背後からはクチールスが現れ、角が変形した巨大な顎で齧り付く。
正面からは水流を纏ったアバゴーラが猛スピードで突撃し、ガブリアスの腹に直撃した。
先制技でガブリアスの先手を取った二体だが、所詮は攻撃寄りでないポケモンの不一致技と低威力の技の等倍ダメージ。ガブリアスを倒すことなどできはしない。
「……なんか邪魔が入ったけど、気を取り直して。ガブリアス、地震!」
ガブリアスは力強く地面を踏みつけ、地を伝う凄まじい衝撃波を放つ。衝撃波はまず近くにいたクチールスとアバゴーラを襲い、吹っ飛ばす。続いてバンギラスにも向かっていき、吹っ飛ばしことしなかったが、バンギラスはその場に崩れ落ちた。
アバゴーラ、クチールス、バンギラス。三体のポケモンは同時に戦闘不能となってしまった。
「……ま、こんなもんか。戻れ、バンギラス」
「よくやってくれたよ、アバゴーラ。戻ってくれ」
「ありがとね、クチールス。戻って」
三人はそれぞれポケモンをボールに戻す。ガブリアスが少しだけ手負いなので伊織が一番不利とも言えるが、実際はまだほぼイーブンな状態。
新しいボールを構え、千尋とこのみは次なるポケモンを繰り出す。
「今度こそ君の出番だ、ジャローダ!」
「次は任せたよ、フワライド」
千尋はアバゴーラと交代させたジャローダを再び繰り出し、このみはガブリアスが拘りスカーフを持っていると読んでかフワライドを繰り出す。
そして茅は、
「本番はここからだ。出て来い、ムーランド!」
寛大ポケモン、ムーランドを繰り出した。
(来たか……)
「…………」
「うー、やだなぁ……あれ」
茅がムーランドを繰り出すのを見るや否や、千尋たち三人は軽く緊張を走らせる。
この一週間、茅と共にバトルをして、彼女がどのようなバトルスタイルの名のかは概ね把握できた。というか、最初のバンギラスの時点で十分予測は可能だ。
砂嵐パーティ、いわゆる砂パと呼ばれるメンバー構成でのバトルを、茅は得意としている。
(牧野先輩のムーランドの特性は砂かき……砂隠れで回避率が上がっているように、砂パにとってガブリアスは厄介な相手なはずだから、氷の牙か敵討ちあたりで倒してくれるはず。ガブリアスはムーランドに任せよう)
となると、問題はこのみだ。
(フワライド……前に見た個体と同じ個体なら、特性は熱暴走。トリックで火炎球を押し付けてくるけど、攻撃がメインではないジャローダに矛先が向くことはない。押し付けるなら、物理主体のムーランドに押し付けるはず)
裏をかいてジュエルバットという可能性も無きにしも非ずだが、その可能性は低く、どっちみち素早さではジャローダが勝っているので特に問題はないだろう。
そう判断を下し、各々行動に移る。
「ムーランド、氷の牙!」
最初に動いたのは砂かきで素早さの上がっているムーランドだ。素早い身のこなしで駆け出し、砂嵐に紛れているガブリアスを見つけ出して氷結した牙を喰い込ませる。
四倍の弱点を喰らい、事前に不意討ちとアクアジェットで多少削られていたこともあってか、ガブリアスはその一撃で戦闘不能となった。
「またあたしに攻撃!? なんか今日、集中砲火されてない?」
「気のせいだ。ジャローダ、蛇睨み」
伊織の苦言を流し、ジャローダは蛇のような鋭い眼力で睨み付ける。その相手は、フワライドだ。
「ん……」
このみの表情が少しだけ歪む。もしフワライドの特性が熱暴走なら、この麻痺で機能停止する。フワライドの素の火力はそこまで高くないので、熱暴走がなければ恐れることはない。
「……フワライド、トリックだよ」
フワライドはムーランドに接近し、素早く互いの持ち物を入れ替えた。それでムーランドが手にしたのは、千尋の予想通り、火炎球。フワライドが手にしたのはラムの実だ。
麻痺が治ってしまうのは痛いが、これでフワライドは熱暴走が発動せず、火力も出ない。ムーランドも火炎球を押し付けられて火傷状態になってしまったため、攻撃力が低下する。
伊織の残りポケモンは一体、このみのフワライドは熱暴走が実質的に無力化され、一気にアドバンテージを握ったことになる。
(行ける……!)
胸中で拳を握り締める千尋をよそに、伊織は三体目のポケモンを繰り出そうとしていた。伊織の手持ちはこれが最後、いよいよ追い詰められてしまった。
「出て来て、トゲキッス!」
そんな伊織の最後のポケモンは、祝福ポケモンのトゲキッスだ。
(ここでトゲキッスかよ……)
トゲキッスで有名な戦法と言えば、先手を取って天の恵みで追加効果の発動率を二倍にしたエアスラッシュを連発する戦法。かなり高い確率で怯んでしまうため、ほとんどなにもできずに倒されるなんてことはざらにある。
ガブリアスがムーランドに抜かされたことを考えると、あのガブリアスはスカーフ持ちじゃなかったのかもしれない。となると、素早さを補強するためにトゲキッスに持たせている可能性が高い。
(流石にスカーフ持ちじゃあジャローダにはどうしようもない……エアスラ一発でやられるとも思わないけど、怯むのは嫌だし、ここは交代させておくか)
千尋はジャローダが入っていたボールと、残った一体のポケモンが入ったボールを同時に取り出す。
「戻れ、ジャローダ」
まずはジャローダを戻し、一旦仕舞う。そして次に、千尋の三体目のポケモンが入ったボールを放り投げた。
「出て来い、アーケオス!」
千尋の三体目はアーケオスだ。砂嵐下なので特防が上がり、エアスラッシュのダメージはかなり抑えられるはずだ。
「ムーランド、ワイルドボルトだ!」
最も早く動いたのは、やはりムーランド。全身に弾ける電撃を纏い、トゲキッスに突っ込む。
だが火傷状態にされ、攻撃力が半減しているため、トゲキッスを一撃で倒すことは出来なかった。
「うぅ、やっぱりこっち狙い……でもまだ終わらないよ! トゲキッス、エアスラッシュ!」
トゲキッスは空気の刃を飛ばし、ムーランドを切り裂く。ムーランドもそれなりにダメージが溜まっているはずだが、まだ戦闘不能には至らなかった。
しかし、
「フワライド、アクロバット」
直後、俊敏な動きでフワライドがムーランドに接近し、体当たりのように突撃して吹っ飛ばす。
「っ、ムーランド!」
蓄積したダメージが限界を超え、ムーランドは遂に戦闘不能となる。
だがそれ以上に、千尋たちの驚きは大きい。
「おいおい、熱暴走の特殊型かと思えば、物理型か……」
「トリックで押しつけられるとは言っても、挑発されたら火傷状態になるデメリットもあるのに、なんで……」
茅と千尋はたいそう驚いているが、伊織はよく分かっていないようだ。
二人の驚きっぷりを見ても、このみはいつもの表情を崩さず、静かに説明を始める。
「……まず、ヒロくんのジャローダ。あの子が麻痺撒き型っていうのは読めてたから、わたしのフワライドを特殊型と読んで麻痺状態にして、熱暴走を無効化するのは分かってたよ。次に牧野先輩のムーランドは、抜き性能を考えてるだろうから、麻痺や火傷で機能停止しないようにラムの実を持たせてるっていうのも、なんとなく読めてたんだ」
だからあえて麻痺を喰らって持っている火炎球をムーランドに押し付け、代わりに手に入れたラムの実で状態異状を回復。アクロバットの威力も高めたということらしい。
もしかしたら裏をかいてジュエルバットもあるかもしれないと千尋は思ったが、ジュエルはなかったものの、裏を書いた物理型ではあったようだ。
(……まずい)
あとがきです。なんでしょう、やっぱり動きの少ないバトルシーンだと、いまいち盛り上がりに欠ける気がするんですよね。その分、キャラクター(というか千尋)の思考が書けるので楽しいっちゃ楽しいのですが、うーん、読者的にはどうなんだろう、これ。正直、よく分からないことを延々と述べてるだけの駄文、とか思われてないか心配です。今後、もっと動きを取り入れるようにするのが課題ですね。さて、火炎球トリックで熱暴走を印象付けたフワライドがまさかの物理型と分かり、次回に続きます。お楽しみに。
- 第九戦 龍源寺高校3 ( No.17 )
- 日時: 2013/04/20 14:32
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 千尋、(色々な意味で)最大の危機……!
まさかの物理型に変更されたフワライドに、千尋は歯噛みする。
フワライドが物理型ということは、アクロバットを多用してくるはず。となると、素早さで勝っていてもジャローダは繰り出し難い。だからと言ってアーケオスのままで戦い続けられるかというと、微妙な所だ。
物理型フワライドの主な攻撃手段はアクロバットくらいだが、代わりに補助技が充実している。しかもアーケオスがフワライドに有効打を撃てる攻撃技は諸刃の頭突き。体力の多いフワライドに諸刃の頭突きなんて食らわせれば、反動でアーケオスがやられかねない。このみにはまだ正体不明のポケモンが一匹の凝っているので、なおさらアーケオスをここで失いたくはない。
「…………」
千尋が思考を巡らせている中、茅も最後のポケモンを繰り出す。
「そら出て来い、トリトドン!」
茅の最後のポケモンはトリトドン、西の海の個体だ。こちらもアーケオスの弱点を突けるので、注意が必要だ。
「とりあえずはフワライドを倒そうか……アーケオス、アクロバット!」
アーケオスは俊敏な動きでフワライドに接近し、翼を叩き付ける。飛行のジュエルとアクロバットの相乗効果で威力が跳ね上がっているため、かなりのダメージが期待できるのだが、フワライドはまだ戦闘不能ではない。
このまま反撃に何かされるだろうと腹を括っていた千尋だが、
「トゲキッス、エアスラッシュ!」
直後、フワライドがトゲキッスに切り裂かれた。
「っ、フワライド……!」
アーケオスのアクロバットでかなり削られていたため、フワライドはトゲキッスのエアスラッシュで戦闘不能。
このみはフワライドをボールに戻す。これでこのみの手持ちも残り一体だ。
(ラッキーだったな。伊織がこのみを狙ってくれるとは)
なんとかフワライドを倒し切れたため、あとは三体目のポケモンだけに注意していればいい。そう思っていたが、
「よそ見するなよ。トリトドン、波乗りだ!」
「!」
次の瞬間、トリトドンはどこからか大波を呼び寄せ、アーケオスとトゲキッスを飲み込んでしまった。効果抜群のアーケオスは勿論、ワイルドボルトで大きく削られたトゲキッスも、まとめて戦闘不能にされてしまった。
「くっ、戻れアーケオス」
「うー、あたしが最下位なんて……戻って、トゲキッス」
千尋と伊織はそれぞれポケモンをボールに戻す。この時点で伊織は手持ちがゼロなので、敗退確定というか、最下位決定だ。
(さて、残り一体、ジャローダだけか)
千尋はジャローダを場に出しつつ、胸中で呟く。
茅の残りポケモンはトリトドンだけなので、相性で非常に有利なジャローダなら問題なく倒せる。だから問題は、やはりこのみだ。
(なにが出て来る……?)
千尋はこのみを注視し、このみは手にした最後のボールを放り投げる。
「出て来て、ポリゴン2」
このみの最後のポケモンは、ポリゴンZの進化前、ポリゴン2だ。
(……ポリゴン2かよ)
苦虫を噛み潰したような表情を見せる千尋。ここでいっそ炎タイプなんかが出て来てくれれば清々しいのだが、ポリゴン2となるとギリギリジャローダでは倒せない相手となる。
勿論、ポリゴン2の技構成次第では倒せるが、恐らくこのみはジャローダを倒せるような技構成にしているだろう。フワライドのトリックの時もそうだったが、このみの読みは鋭く的確だ。こちらがジャローダを選抜することを予測して対策することは十分考えられる。
(ここまでか……ま、トリトドンは倒せるし、結果として二位に着けたのならよしとするか)
千尋はこの一週間バトルを続けて、トップを取ったことが一度しかない。ほとんどが三位か四位という、総合的に見れば部で最も勝率が低いのだ。だから二位というのも、彼にとっては好成績となるので、無理に一位を狙う必要もない。
だがその時、今までずっと椅子に座って観戦していた汐が立ち上がった。そして、
「ねぇ、若宮君って女の子っぽいと思わない?」
「……はぁ?」
突然なにを言いだすんだと思いながら、千尋は混乱していた。本当にいきなり過ぎる内容だ。
だが意外にも、千尋以外の三名は同意を示していた。
「まあ、確かによく見れば女っぽい顔してるな」
「ヒロさん、普通に女物の服着るだけでも通用しそうだよね」
「言われてみれば……ヒロくんって女の子みたいだね」
口々に言う女子たちの言葉が、千尋の心に容赦なく突き刺さる。
「ぅぐ……いや、そりゃ僕は女顔で体つきも男らしいとは言えないかもしれませんけど、だからなんだと——」
「若宮君も分かってると思うけど、君は部内で一番成績が悪いのよ?」
千尋の言葉を遮って、汐は続けた。
「これは由々しき事態だと思うのよね。こんな体たらくじゃ県予選を勝ち抜くなんて夢のまた夢、若宮君にはもっと緊張感を持ってバトルに臨んでもらわないといけないわよね」
と言って、汐はごそごそといつ間にか足元に置いてあった大きな鞄からなにかを取り出し、それを大きく掲げる。
「……なんですか、それ?」
「見て分からない?」
「いや、分かるのは分かるんですけど……それを、どうしようと、いうのですか? 部長?」
汐が取り出したのは制服だ。雀宮高校の、女子用の制服。黒いブレザーとプリーツスカート、白いブラウスに、赤いリボンタイが付いている。
汐は悪戯っぽく口の端を上げて笑うと、千尋に宣告する。
「もし若宮君がこのバトルで一位になれなかったら、これを着てもらおうかしら」
「……え?」
千尋の額からドッと汗が噴き出す。まさか、本気ではないだろう。そんな健全なる男子生徒に女装を強要する人間がいるわけない。そう思いたいのだが、汐は笑っている——本気で楽しむように、笑っている。
しかも、それだけに終わらない。
「そうか。なら千尋が一位を取れなかった時はあたしがひん剥いてやる」
「あーあ、もっと早く言ってくれれば、ヒロさんに集中攻撃してたのに。言うのが遅いよ、部長」
かなりノリノリな茅と伊織。この二人を止めることはもう不可能そうなので、千尋は最後の救いとしてこのみの方を向く。
が、しかし、
「ヒロくんの女装かあ、ちょっと見てみたいかも……」
(マジか……!)
唯一の良心が寝返った。もうこの場に、千尋の味方はいない。
「さあ若宮君、明日も男子用の制服で登校したければ、トップを取りなさい。君ならできるはずよ」
と汐は言うが、この状況、ジャローダでポリゴン2を倒すのは非常に難しい。特にこのみが本気で勝ちに来るとなれば、千尋の勝利は絶望的だ。
だが、明日から着る制服が女子用になればそれこそ千尋の未来が絶望に包まれる。ここは是が非でもこのみを倒さなくてはならない。
(やるしか……ないのか)
うーん、やっぱりこっちだとあまりバトルをしたって感じがしませんね。というわけで、部内バトルもいよいよ大詰めです。さて、千尋が男の尊厳の危機に瀕したところで、次回に続きます。千尋はこのみに勝てるのか、ジャローダ一体で、どうやってポリゴン2を攻略するのか。次回をお楽しみに。
- 第十戦 龍源寺高校 4 ( No.18 )
- 日時: 2013/04/20 14:35
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: 千尋に秘められし力を垣間見る時……
(大丈夫だ、上手くやれば、きっと露見せずに事を済ませられる……)
千尋は自分にそう言い聞かせて、ジャローダに指示を出す。
「ジャローダ、リーフストーム!」
大きく声を上げ、ジャローダは無数の葉っぱを出現させる。その直後、葉っぱは渦巻くように回転し、巨大な嵐となってトリトドンを飲み込む。
リーフストームは草タイプの技でトップクラスの威力を持つ技、加えてトリトドンには四倍の弱点を突けるため、トリトドンはその攻撃を耐え切れず、戦闘不能となった。
「草技が来るとは思ってたけど、よりによってリーフストームか……これであたしも脱落だな。戻れ、トリトドン」
茅はトリトドンをボールに戻す。よって、残る敵はこのみとポリゴン2だけになったわけだが、
「ポリゴン2、毒々だよっ」
ポリゴン2はジャローダに毒液を発射する。それによりジャローダは猛毒状態。スリップダメージを受ける上、時間が経過するごとにそのダメージ量が大きくなっていく。
「くっ、だったらこっちは宿木の種だ!」
ジャローダもいくつもの種子を飛ばし、ポリゴン2に植え付ける。これでポリゴン2も宿木のやりっぷダメージを受け、ジャローダはその分だけ体力を回復するが、それでも猛毒のダメージを補填し切ることはできない。
しかも、
「身代わり」
ポリゴン2は体力を削って自身の身代わりを作り出す。これでジャローダはポリゴン2を攻撃することが難しくなり、蛇睨みも使えなくなった。
「……リーフストーム!」
それでもジャローダは攻撃を止めない。再び草の嵐を巻き起こし、ポリゴン2の身代わりを破壊する。
「へぇ、天邪鬼か……」
汐が呟く。天邪鬼とは、ポケモンの持つ特性の一つで、その特性を持つポケモンにかかる能力変化が逆転するというものだ。
この特性を持つポケモンが積み技を使えば能力は下がってしまうが、リーフストームのような能力が下がる技を使えば、その変化が逆転して能力下降は上昇に変わる。
(撃つたびに特攻が二段階上がっていく天邪鬼リーフストーム。普段なら強力だけど、相手は身代わり持ちのポリゴン2。しかも)
汐の胸中での呟きを繋ぐように、このみはポリゴン2に指示を出す。
「テクスチャーだよ」
「っ!」
このみの指示を受けると、ポリゴン2の色彩が目まぐるしく変化していき、やがて赤色になると、元の色に戻った。
テクスチャーは自分の持つ技、そのどれか一つのタイプに変化する技だ。今の色とポリゴン2の覚えている技から考えて、恐らくタイプは毒。リーフストームが通じ難くなってしまった。
「こっちは毒のダメージもあるし、早く決めないと……ジャローダ、リーフストームだ!」
ジャローダはさらにリーフストームを放つ。特攻が四段階上昇した葉っぱの嵐は凄まじいの一言に尽きるが、それでもポリゴン2は倒れない。
このみのポリゴン2は、恐らく耐久面に特化させている。進化の輝石で防御と特防も上がっているので、火力の低いジャローダでは倒すのは難しいだろう。しかも、さらにジャローダにとって悪いことは続く。
「ポリゴン2、自己再生」
ポリゴン2は自己修復プログラムを起動させ、自身の体の傷を治していく。
(やっぱそう来るか……)
半ば予想していたことだが、状況はかなり悪い。ジャローダの特攻はマックス四倍まで跳ね上がったとはいえ、ポリゴン2には威力半減。しかも身代わりや自己再生まで使用してくる耐久型。
一応、宿木の種でもダメージは与えられているが、同時にこちらも猛毒のダメージを受けている。徐々に増していくスリップダメージに耐えるのもそろそろ限界だ。
(……そろそか)
千尋は胸中で呟き、決心する。
ポリゴン2が次に繰り出すであろう技は恐らく自己再生。あとはこのまま体力を回復し続け、リーフストームのPP切れか、猛毒でやられることを狙っているのだろう。ジャローダが勝つには、ポリゴン2が回復する前に決めるしかない。
だがさっきも言ったように、決して火力が高いとは言えないジャローダが、高耐久のポリゴン2を一撃で倒すのは困難だ。少なくとも、現状の火力では一撃で落とすことは出来ない。
そう、現状では。
どこかでカチッと、なにかが切り替わるような音が聞こえた。
「ジャローダ、リーフストーム!」
ジャローダはまたしても葉っぱの嵐を巻き起こす。天邪鬼で特攻が最大まで上がったリーフストームは途轍もなく凄まじかったが、それにしても勢いがあり過ぎる。
例えば、千尋のジャローダの特性は天邪鬼なのでありえないことだが、ここでジャローダの特性、深緑が発動しているとする。それならばこの圧倒的な威力のリーフストームにも納得できるのだが、それでもやはり強すぎる。
言ってしまえば、今のジャローダには通常の深緑以上の力が働いていない限り、これほどのリーフストームを放つことは出来ないはず。
だがまあ、なんにせよ、ジャローダの凄まじいリーフストームはポリゴン2を飲み込み、吹き飛ばした。どういう要因かは分からないが、威力の増したリーフストームを喰らい、ポリゴン2は遂に戦闘不能となる。
「……!」
「うわぁ、すっご……」
「おいおい、どうことだよ……」
嵐が収まると、このみ、伊織、茅は三者三様の驚きを見せる。そして汐は、
「……確定ね」
と呟いた。
なにはともあれ、千尋は無事、今回のバトルでトップを取ったのであった。
「ヒロくん、今のは……?」
驚きの表情のまま、このみは千尋にそう問うが、
「……運よく、急所に当たったんだよ」
とはぐらかすように言った。
だがこの場にいた全員、運が良かっただなんて思ってはいない。今のリーフストームは、間違いなく技の威力そのものが増強されていた。千尋がなにかを隠しているのは明らかなのだが、なにを隠しているのかが分からず、実証するための証拠もない。
そこで汐は、ポケットからボールを一つ取り出し、
「エーフィ、出て来て」
太陽ポケモン、エーフィを出した。そして、
「スキルスワップ」
「あ……」
エーフィはジャローダにスキルスワップを使用し、特性を入れ替えた。これでジャローダはエーフィと同じシンクロの特性を得、エーフィはジャローダと同じ天邪鬼の特性を得るはずだ。
「茅、ドリュウズを出して」
「? ああ……出て来い、ドリュウズ」
茅は汐に言われるがままにドリュウズを出した。その様子を見て、千尋は焦燥感に駆られる。
だがそんな千尋を無視して、汐はエーフィに指示を出した。
「エーフィ、草結び」
刹那、ドリュウズは大量の草に絡め取られ、蹲ってしまう。草は容赦なくドリュウズを覆いつくし、やがて草がなくなった時には、ドリュウズは戦闘不能となっていた。
「っ……!」
「ちなみに、私のエーフィは特攻にはまったく努力値を振ってないわ。加えてドリュウズの体重は40,4kg、互いの種族値を考えても、普通は等倍の草結び一撃では倒せない。でも、もしエーフィの攻撃能力がなんらかの要因で上がっているとしたら?」
「まさか、深緑? でも、ヒロさんのジャローダの特性は天邪鬼じゃ……」
「そうね。でも私のエーフィの特性は、どういうわけか深緑になっているわ。さてさて、これはどういうことなのかしらね、若宮君?」
「あ、ぅ……」
汐に問い詰められ、視線を泳がせる千尋。汐だけでなく、伊織やこのみ、茅も千尋を見つめている。
「…………」
「あくまで話す気はないようね。しょうがないか……茅」
「おう」
「若宮君をひん剥いて」
「おう」
「ちょっ……部長!?」
汐と入れ替わりに茅が千尋に近寄ってくる。しかも指をポキポキと鳴らしているので、威圧感は倍増だ。
「さーて、覚悟はいいか?」
「あ、いや……その」
千尋が言い淀んでいると、痺れを切らしたように茅が千尋の胸倉をつかみ、
「わっ、ちょ、分かりました! 分かりましたから! 言いますからちょっと、待ってください!」
そこで遂に千尋が折れた。茅は少し残念そうに息を吐くと、汐に視線を向ける。
「どうする、部長?」
「……話、聞かせてもらいましょうか」
そこで茅は手を離し、後ろに下がる。それによりちょうど女子四人が千尋を取り囲むような配置となった。
「若宮君、すべて話してもらうわ。あなたが今、隠していること、全部」
「……はい、分かりました」
そして千尋は、諦めたように、覇気なく部員に告げる。今までずっと隠してきた、自分の力について——