二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスターIH
日時: 2013/05/02 21:37
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 どうも、初めての人は初めまして。白黒というものです。
 旧二次小説紙ほかを覗いた事がある人なら知ってる人もいるかもしれません。以前にも、ポケモンの二次小説を執筆していました。
 さて、白黒はずっと紙ほかで活動していたので、実は映像板で小説を書くというのは初めてなので、もしこの板限定での暗黙のルールとかがあるのなら、それを守れていない可能性が高いです。その時はごめんなさい。

 それと、先に断わっておきますが、白黒はこの時期、かなり多忙だったりします。なので更新が滞る可能性が高く、また同時に建てた二次小説新紙ほかの作品がメインとなるので、こちらの更新頻度にはあまり期待しないでください。

 ではざっくりと作品説明です。白黒は今まで、ゲームをモデルにした冒険ものの作品を執筆してきました。僕の知るポケモン作品の書き手さんも、そのような作風が多かったです。しかし白黒は、ちょっと違う作風にも挑戦したくなり、このような小説を作りました。
 皆様も気になっているであろうポケットモンスターに続く『IH』の二文字。これはインターハイの略です。つまり、今作のポケモンは学園ものを織り交ぜた作品となります。
 細かいことは後々プロローグとか紹介しますが、実はこの作品、ポケモン以外の作品からも取り入れているものがあるのですが、ポケモンの二次小説という土台を壊したくないので言わないことにします。分かった人は……まあ、言っても言わなくても好きにしてください。
 ともあれ、今作品は他に見るポケモン小説とは異質なものとなっていると思われます。バトルもアニメや漫画より、ゲームに近い形に仕上げるつもりです。なので対戦での専門用語とか出て来ると思いますが、分からなかったら聞いてください。あと、白黒はそれど対戦経験が豊富ではないので、ダメージ計算などは結構適当です。もし間違っていても、大目に見てください。
 さらにこの作品は三つのサイドからストーリーが展開するのですが……まあそれは追々説明します。

 それと、前作やもう一つの作品ほどではありませんが、この作品でも非公式のポケモン、アルタイル・シリウス、ベガのポケモンが登場します。知らないポケモンが出た時は、>>0のURLをクリックしてください。決してポケモンの新作、X・Yのポケモンではないので、ご注意を。
 なお、もう一つの作品でも言っていますが、この作品内ではポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。まあ、超次元サッカーとか異能力麻雀とか、そんな感じのものだと思ってください。

 長くなりましたが、これより、白黒の新しい物語が始まります——





プロローグ
>>1

雀宮編

序章
>>2 >>5 >>6 >>10 >>11 >>12
龍源寺高校
>>13 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20

Page:1 2 3 4 5



Re: ポケットモンスターIH ( No.9 )
日時: 2013/04/15 19:23
名前: 男女共同参画社会基本法 (ID: ffzF7wsd)



余談で申し訳ございませんが僕の友達が福岡県糟屋郡新宮町大字立花口字名子山2171ー2にある社会福祉法人レーヴ福岡立花園に通っていて、暴力や暴言、酷いいじめを絶対に許せない性格なんですが、そのことで立花園の職員さん達からモニタリング表で「他人を思いやっていて駄目」みたいなことを言われて、立花園の利用者さんの荒巻幸大君からも言われて精神的ショックが酷く大きかったようです。

立花園の電話番号とFAX番号を教えますので、もし「思いやりを馬鹿にする人が絶対許せない」人がいたら、抗議を何卒宜しくお願い致します。

立花園の電話番号0929632311

FAX0929631020

第四戦 雀宮高校4 ( No.10 )
日時: 2013/04/16 17:26
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: 千尋vs伊織、決着。そして……?

 千尋は最後のボールを手に取ると、それを放り投げた。
「これで最後だ、リザードン!」
 千尋の最後のポケモンは、火炎ポケモン、リザードンだ。
 炎タイプのポケモンの中でもトップクラスの人気と知名度を誇るポケモンだが、実力もそれなりに高い。
(普段ならガブリアス相手にリザードンは出し難い。でも伊織の手持ちは残りガブリアス一体、しかも拘りスカーフの影響でアイアンヘッドしか出せない。これはチャンスだ)
 ガブリアスは確かに攻撃力が高いが、それでも効果いまひとつのアイアンヘッドではリザードンを倒す前にやられるのがオチだ。千尋はこの時点でほとんど勝利を確信していた。
「ガブリアス、アイアンヘッド!」
 ガブリアスは地面を蹴って突っ込み、鋼鉄の如く硬化した頭でリザードンに頭突きをかます。かなり勢いのある一撃だったが、リザードンには効果いまひとつ。決定打にはならない。
「リザードン、龍の舞!」
 今のうちにリザードンは、龍のように激しく力強く舞い、攻撃力を上昇させる。
 あと二発くらいならリザードンでもガブリアスのアイアンヘッドには耐えられるはず。なので次の一発を耐えて地震を繰り出す、その次の一発も耐えてさらに地震でとどめを刺す、というのが千尋の算段だ。ドラゴンクローやアクロバットを覚えていないので龍の舞を積んでも一発で倒せそうにないのが痛いが、それでも二回攻撃すれば十分倒せる範囲内だ。
 だが、現実は千尋の都合には合わせてくれなかった。
「アイアンヘッド!」
 ガブリアスのアイアンヘッドがリザードンに直撃するが、効果いまひとつなため、ダメージは少ない。けれど、その攻撃を受けて反撃するはずのリザードンの動きが止まってしまった。
「っ、こんな時に怯みか……っ!」
 アイアンヘッドは三割程度の確率で相手を怯ませる技。鋼タイプが攻撃に向かないのは前述したとおりで、アイアンヘッドを追加効果目的で使うポケモンも少ないため普段なら怯みなんて意識しないのだが、ここに来てそれが発動してしまった。
(やばいな)
 この怯みのせいで千尋の算段は瓦解してしまった。いくら効果いまひとつでも、ガブリアスの攻撃をリザードンがそう何度も耐えられるとは思わない。耐えられてあと一発だが、リザードンではガブリアスには先制できず、しかも今リザードンが覚えている技——フレアドライブ、地震、龍の舞、身代わり——のいずれかを使用してもガブリアスを一撃で倒すことは出来ない。
 勝ったと思えば、たった一回の幸運で逆転されてしまう。これも、ポケモンバトルの神髄である。
 分かっているのか分かっていないのか分からないが、状況が優勢になったと感じ取って伊織は得意げな顔になる。
「まーしょうがないよ。中学の時からそうだったし、多少対策したところで、ヒロさんじゃあたしには勝ってこないのさ!」
「…………」
 若干、不機嫌そうに眉根を寄せる千尋。言うまでもなく、伊織の発言にイラッと来ていた。
(くっそ、たかが一回のラッキーパンチで調子に乗って……ムカつく奴だ。戦術もデタラメな癖に)
 怒りと苛立ちが募っていく千尋。中学時代に経験してもう慣れたはずだったが、そう上手くは行かないらしい。
「さーて、じゃああと一二発で決めちゃうよ、ガブリアス! アイアンヘッド!」
 地面を蹴って飛び出したガブリアスは、頭部を鋼のように硬化させ、猛烈な頭突きをリザードンにぶつける。そしてその反動を利用し、すぐさまリザードンから飛び退った。
 これでリザードンの体力は残り僅か、あとアイアンヘッド一発でやられてしまうだろう。ここで千尋が逆転する方法があるとすれば急所狙い程度。
 だが、しかし、

「リザードン、フレアドライブ!」

「え……っ?」
 刹那、リザードンは激しい爆炎に包まれる。そしてその炎を纏ったまま翼を羽ばたかせて超高速で飛行、凄まじい勢いでガブリアスへと突っ込む。
「ガ、ガブリアス!?」
 フレアドライブの直撃を喰らい、ガブリアスは吹っ飛ばされる。効果はいまひとつなはずだが、ありえないほどの火力を叩き出したフレアドライブでガブリアスは戦闘不能となっていた。
「…………」
 流石の伊織も黙っていた。
 フレアドライブは炎タイプの技なので、リザードンが使用すればタイプ一致で威力に補正がかかる。さらに龍の舞で攻撃力が上昇し、リザードンの持つ特性、猛火も発動するため、かなりの高威力になることは確かだ。
 しかしそれでも、ガブリアスを一撃で倒すというのは驚くべきこと。もう一段階攻撃力が上がっていれば別なのかもしれないが、今のリザードンの火力は異常だった。
「あ……」
 攻撃が終わってから、千尋はしまったというような表情を見せる。が、それも一瞬で、すぐに気を取り直して反動で戦闘不能となったリザードンをボールに戻す。
「……引き分け(ドロー)、だな」
「え? ああ、うん……」
 どこか釈然としない様子の伊織だったが、今の攻撃でガブリアスがやられても、それは急所に当たったとか耐久調整の問題とか、色々と理由はつけられる。なのでここは一旦飲み込むことにした。
 そしてそのすぐ後、授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。



「へぇ、結局は引き分けになったんだ」
「うん。もう少しであたしが勝ってたのに、あんなラッキーパンチのせいで引き分けだよ?」
「言っとくけど、お前のアイアンヘッドもラッキーパンチだからな。あの怯みがなければ僕が勝ってた」
 放課後、千尋、伊織、このみの三人はすぐに帰宅せず、軽く談笑しながら教室に居残っていた。
「それよりヒロさん、あのフレアドライブなに?」
 このみに一限目の結果を報告し終えると、伊織は千尋の方を向いて訝しげな眼差しで見つめる。
「……なに、っていうのは? それこそなんだよ」 
「あのフレアドライブさ、どう考えても火力がおかしいと思うんだよね。いくら龍の舞で攻撃力上げても、あんな威力はでないはず、ガブリアスが一撃でやられるなんてありえないよ。あれ、どういうこと?」
 ジッと見つめられ、千尋は少しだけ視線が泳ぐが、すぐに言い返す。
「どうもこうも、急所にでも当たったんじゃないのか? もしくはお前の努力値振りが適当だったとかな。それより、このみはどうだった? 今日の一限目」
「えっ? えっと、わたしは、特になにもなかった……かな? ぎりぎりでなんとか勝てたよ」
 急に話を振られて言い淀んだが、このみも言葉を返す。だが伊織もこのみも、千尋が唐突に話を変えた事に疑念を抱いていた。特に中学からの付き合いの伊織は、千尋が自発的に話の流れを変えることはほとんどない事を知っている。なのでさらに追及しようとしたのだが、

 突如、凄まじい勢いで教室の扉が開かれた。

 ダンッ! と扉が壊れるくらいに開けて入って来たのは、一人の女子生徒だ。このみよりも少し長いくらいの黒髪で、制服は着崩しており、目つきはお世辞にも良いとは言えない。
 というか、はっきり言って不良っぽい。
 女子生徒は鋭い眼光で教室内を見渡す。教室内の生徒は何事かとざわざわしだすが、女子生徒が目線を向けただけで黙り込んだ。
「な、なんだろう、あの人……?」
「さあ……? 校章から察するに、二年生っぽいけど……こんなとこに何の用だ?」
「ちょっ、こっち来るよ……っ」
 女子生徒は視線を千尋達に固定し、ずんずんと歩み寄って来る。途轍もない威圧感だ。千尋としては今すぐ逃げ出したいところだが、伊織がぐいぐいと前に押し出してくるため、そうもいかない。
 そうこうしているうちに女子生徒は千尋たちの前に立ち、止まった。他のクラスメイトたちの視線が一斉にこちらへと向くのだが、それ以上に目の前の女子生徒の眼力の方が怖い。
 千尋はサッと伊織に目配せをするが、伊織は、ヒロさんに任せた! とでも言うような目線を寄越す。このみも伊織と同じようなことを言いたそうにしている。
 なので仕方なく、千尋は目の前の女子生徒に言葉をかける。
「あの——」
「お前が若宮千尋か?」
 先手を取られた、というか出鼻を挫かれた。
 そのせいで少し戸惑ってしまったが、どうやら相手は千尋に用があるらしい。千尋としては最悪であるが、ここで答えないわけにもいかない。
「えっと、そうですけど……僕に、何か……?」
「ちょっとツラ貸せ」
 ドスの利いた声で女子生徒は千尋の腕をつかむ。
(怖っ!)
 今のところの言動すべてが不良そのものだ。自分が一体何をしたのか、自分は今からどこに連れて行かれるのか、様々な不安が千尋の脳裏によぎる。
 流石にこれはまずいと思い、千尋は友人二人に助けを求めるような視線を送るが、
「がんばー、ヒロさん」
「えっと、無事に帰って来てね……」
 二人とも助ける気はサラサラないようだ。手を振って千尋を見送っている。
「おら、ついてこい」
「ちょ……っ!」
 千尋はぐいぐいと女子生徒に引っ張られ、教室から出されて強制的にいずこかへと連行されていった。

第五戦 雀宮高校 5 ( No.11 )
日時: 2013/04/16 22:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: 旧校舎に連れ込まれた千尋。その行方は……?

 千尋が連れて来られたのは古びた旧校舎だった。雀宮高校が由緒正しき学校なんてことはないが、それでも設立は結構昔のことらしいので、老朽化した校舎を旧校舎とし、新しく建築した校舎を新校舎として使用している。生徒たちがもっぱら使うのが新校舎で、旧校舎が使われることはほとんどないのだが。
 しばらく歩いたが、女子生徒が止まる気配はない。流石の千尋も耐え切れず、思い切って聞いてみた。
「あ、あの、先輩……ですよね?」
「確かにあたしは二年だから、一年のお前からすれば先輩だな」
「そうですか……で、一体、どこに向かって——」
「もう着く、黙ってろ」
「はい……」
 聞いてみたが、黙らされた。
 だが女子生徒の言うことは正しく、確かにその発言の後、すぐに足を止めた。そこは、一つの教室の扉の前だった。
「……対戦部?」
 扉の前にぶら下がっているプレートには、そう書いてある。
「おら、ここだ。入れ」
「は、はい……」
 一抹の不安を感じながらも、千尋はゆっくりと扉を開ける。
 中はごくごく普通の教室だった。いや正直に言ってあまり普通とは言えないが、少なくとも造りは普通の教室だ。
 だが中にはテーブルやらソファやらベッドやら冷蔵庫やら……どこからそんなものを運んできたのかと聞きたくなるような日常品が並んでいる。
 そんな木に竹を接いだような部屋の中央のテーブルに、女生徒が腰を下ろしている。千尋を強引に引っ張ってきた女子生徒とは違い、落ち着いた印象のある生徒だ。
「おい、お前の言ってたカモ連れて来たぞ」
「カモ?」
「ご苦労様。とりあえず中に入れてあげて」
「あ、あの——」
「おう、とりあえず中に入れ。話は後で聞いてやる」
 背後の女子生徒に背中を押され、強引に入室させられる千尋。どうやら逃げることは出来ないらしい。最初から逃げられるとは思っていないが。
 招かれるまま千尋は席に座らされる。ちょうど女生徒と向かい合う位置だ。
「……さて、急に連れてこられて困惑してると思うけど、まずは自己紹介からさせてもらうわね。私は常葉汐、雀宮高校対戦部の部長よ」

『profile
 雀宮高校三年
 常葉 汐(Tokiwa Shio)』

「んで、あたしが副部長の牧野茅だ。よろしくな」

『profile
 雀宮高校二年
 牧野 茅(Makino Kaya)』

「えっと、僕は若宮千尋です……」
 名乗られたので名乗り返したが、よく考えれば茅は千尋の名前を知っていた。ということは汐もそれを知っている可能性が非常に高く、ここで千尋が自己紹介をする意味はなかった。言ってからそう思い返す千尋だが、二人はそれをスルーして、汐が立ち上がる。
「あなたをここに連れてきたのには、当然ながらちゃんと意味があるの。単刀直入に言えば——」
 千尋に背を向け、汐は一拍溜める。それからすぐにくるりと回って千尋に向き直ると、

「若宮千尋君、あなたを対戦部にスカウトするわ」

「はぁ……え?」
 適当に相槌を打ったが、よくよく考えて疑問符を浮かべる千尋。わけが分からない、それだけで千尋の頭はいっぱいになった。
「えーっと、よく意味が分からないのですけれど……というか、この学校に対戦部ってなかったんじゃ……」
 入学してすぐに部活紹介があったのだが、そこに対戦部の名前はなかったはず。それも含めて、千尋にとってはわけが分からない。
「そうね、確かにまだ対戦部はないわ。はっきり言って勝手に部を名乗ってるだけで、実際は同好会みたいなものだし……でも、あと三人部員がいれば、部活に昇格するの」
「だから、僕に入部しろと……?」
「大雑把に言うと、そんな感じだな」
 つまり、細部を端折れば直接部活動に勧誘されたという形になるわけだ。ただ、強制連行されたのは釈然としないが。
 そしてもう一つ。千尋にとって腑に落ちない点がある。
「まあ、部員が足りないのは分かりましたが、なんで僕なんですか? 対戦部って、ポケモンバトルをする部活ですよね? なら、もっと強い人を勧誘すればいいじゃないですか。たとえば、僕の友達なんかは学年二位、誘うならこっちでしょう」
 さらりと友人を売る千尋だったが、汐はゆっくり首を横に振った。
「うん、確かにあなたと戦ってた女の子、彼女は強かったわ。でもただ強いだけで部員を集めるっていうのもなにか違うのよね。私としては、あなたに見どころがあるからこうして声をかけたんだけど?」
「見どころ……?」
 千尋は首を傾げる。自分に見どころがあるなんていわれても、どう返せばいいのか分からない。少なくとも千尋自身は、自分に特筆すべきものがあるとは思っていない。だがしかし、汐は続けた。
「あなたが最後に出したリザードン。その最後の技、フレアドライブ。あれ、なんだかおかしくかったかしら?」
「っ……!」
「龍の舞を一回積んだくらいじゃ、いくら猛火が発動してもノーダメージのガブリアスを一撃で倒すことはできないはず。どうしてかしらね?」
「いや、あれは……」
 必死で頭の中から言葉を引っ張り出し、並べて繋ぎ合わせる。言葉を繋ぎ終えると、今度は途切れ途切れになりながらも矢継ぎ早に言葉を発す。
「急所に当たったとか、努力値振りの関係とかで、倒せただけですよ。伊織……彼女は、そういう細かいの、苦手ですから。だからたまたま、偶然倒せただけです」
「へぇ……?」
 何か含みのある笑みを浮かべ、汐はゆっくりと千尋に近づいてくる。
「じゃあ、君のリザードンが覚えてる技は? 普通、あの場面でフレアドライブなんて技は選ばないわよね。他に攻撃技を覚えてないならともかく、普通のリザードンなら攻撃技がフレアドライブだけなんてありえない。地震とかドラゴンクローとかアクロバットとか、そういう技を覚えているのが定石だと思うんだけど?」
「う……っ」
 流石に千尋も言葉に詰まる。ここで嘘を吐いても、今度はリザードンの覚えている技をチェックされるだろう。なので、千尋はこれ以上何も言えなかった。
 いや、言えることはあるのだが、千尋はそれを口には出さない。決して、口外しない。
 だがこのまま黙っていてもどうしようもないので、千尋はお手上げとでも言うかのように、深く溜息を吐く。もう、彼は諦めた。

「……分かりましたよ。その対戦部とやらに入ればいいんでしょう」

 そしてこの日、若宮千尋は雀宮高校、対戦部の部員となった。

第六戦 雀宮高校 6 ( No.12 )
日時: 2013/04/17 01:30
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: 徐々に集まる部員たち(ピース)、雀宮高校対戦部

「——で、結局その対戦部に入部したの?」
「まあな……断るに断れない状況だったし」
 翌日の早朝、千尋は先日の旧校舎での出来事を伊織に話した。伊織はうんうんと頷きながら、ニヤニヤと笑っている。
「なんだよ、その変な顔」
「いやー、なんか面白そうだなーって思ってさー」
「僕が連行される様が、だろ。第三者め」
「いやいや、そうじゃなくって。話を聞く限りはほんとに面白そうだと思うよ、その部活」
「うーん、そうかなぁ……?」
 千尋も昨日の今日で部活動の内容はざっくりとしか聞いておらず、詳しいことは分からない。なので面白いのかどうかは判断できないが、あまり好意的にはなれなかった。
(まさかあの場面を見られてるとはな……気を付けてたつもりなんだけど、僕としたことが、安い挑発に乗っちゃったなぁ……)
 不良染みた言動の茅、見透かしたような性格の汐。はっきり言って癖の強い上級生が二人もいて、やりにくそうな部活動、というのが千尋の現状での見解だ。
「ま、今のところ部員が足りないみたいだし、入部希望者は歓迎されると思うよ。入りたければ入れば? どうせお前帰宅部だし」
「そうだねー、んじゃ、今日にでも覗いてみよー」
 と伊織が言ったところで、始業の鐘が鳴った。それを合図に教室内に散開していた生徒たちは慌ただしく自らの席へ散っていったが、中でも一番慌てていたのは、寝坊してギリギリの登校となったこのみだった。
(相変わらず抜けてるなぁ、このみは……)
 昨日は普通に登校してきたが、このみは三日に一回くらいの頻度で寝坊する。おっとりしていると言えば聞こえはいいが、率直に言ってとろい。
 あわあわと一限目の授業の準備をするこのみを眺めつつ、千尋は彼女も対戦部に勧誘しようかと思ったが、
(……いや、やめとくか。あんな癖のある部活にこのみが付いて行ける気がしないしな。対戦部からしたら惜しい人材かもしれないけど)



 放課後。係の仕事があるらしいこのみと別れ、千尋と伊織は対戦部の部室がある旧校舎へと向かった。
「へぇ、こんなとこに部室があるんだ。なんかいいね、秘密基地みたい」
「地震とか来たら怖いけどな」
 旧校舎北棟四階右端、校舎の右上の隅っこが対戦部の部室だった。他にも空き部屋は、正に腐るほどあるのだからこんな辺鄙な所じゃなくてもいいと思うのだが、何故かこんな不便な場所に部室が存在している。
 部室の扉まで来ると、千尋は恐る恐る部屋へと入る。中には既に、汐と茅がいた。
「お、来たわね千尋君……と、後ろの子は?」
「ひょっとしてひょっとすると、新しいカモ——もとい新入部員か?」
 期待の眼差しで見つめる二人。その期待には沿えるのだが、なぜか釈然としない。
 そんな千尋を差し置いて、伊織はピョコッと前に出て、
「桐谷伊織ですっ、よろしくお願いします!」
「元気いいわねぇ。私は部長の常葉汐。よろしくね、桐谷さん」
「あたしは牧野茅、副部長だ。しっかし、二日続けて部員が増えるとはな。これは、インターハイもマジで狙えるんじゃないか?」
「インターハイ?」
 茅が何気なく発した一言を千尋が拾う。
「対戦部って、インターハイに出るのが目的なんですか?」
「当たり前じゃない。運動部全国を狙うように、私たちもそこを目指すのが道理でしょ? あと一人部員が増えれば、部活動として正式に活動できるし、県予選の団体戦にもエントリーできる。ま、それはこっちで何とかするから、あなたたちは難しいことは考えなくていいわ。とりあえず、何か飲み物……」
 椅子から立ち上がり、汐は冷蔵庫に向かった。電気は通っていないはずだが、一体どうやって稼働させているのだろうと千尋は疑問符を浮かべる。
「ねぇヒロさん」
 汐が冷蔵庫を漁っている間、伊織が軽く千尋を小突く。
「なんだ?」
「あと一人、部員がいればいいんだよね?」
「そうらしいな」
 対戦部を正式な部活動にするためにも、県予選の団体戦にエントリーするためにも、五人という人数が必要らしいので、あと一人いればどちらの条件もクリアできる。
「だったらこのみちゃんも誘おうよ、せっかくだし」
 なにが折角なのかは分からないが、伊織がそう言うだろうことは予想できていた。なので千尋は、考えていた返しをそのまま口にする。
「はっきり言って僕は反対だけど、このみ次第だよな。お前はお気楽楽観主義者だからどうってことないだろうけど、正直、僕はこの空気感に押し潰されそうなんだよ。このみが同じようにこの空気に耐えられるか、僕としては非常に疑問だ」
「えー、そんなの入ってみないと分かんないよ」
「だからこのみ次第、だ。あいつが嫌と言えば、無理強いは出来ないだろ」
 千尋がそう言うと、伊織は黙り込んだ。是が非でも入れたいというような顔をしているが、千尋の言うことも否定はできない、そんな表情だ。
「……あれぇ」
 とその時、冷蔵庫の中身を漁っていた汐が妙な声を上げる。
「どうした?」
「冷蔵庫の中に飲み物が何もないわ。茅、お茶かコーヒー、そっちの棚にある?」
「……ねぇなぁ。もう切れてるみたいだ」
 教室の端にある棚を覗き込み、茅は首を傾ける。どうやら飲み物はないようだ。だからと言って千尋が困るわけではないが。
「ふぅ、しょうがないわね。若宮君、ちょっと新校舎まで行って飲み物買ってきてくれない?」
「え? なんで僕が?」
 急に名指しされて慌てる千尋。断ろうとしたが、すぐに鋭い視線が突き刺さった。
「男だろお前。か弱い女子生徒にパシリやらせるつもりか?」
「か弱いって……」
 少なくとも、茅はか弱いという風には見えないが、当然ながら口には出さない。
 このまま抗議しても茅が怖いので、千尋は仕方なく、不承不承新校舎まで飲み物を買いに行くことにした。
「ヒロさん行ってらー」
「ゲテモノじゃなけりゃなんでもいいぞ」
「部員が集まって部が設立出来たら、部費で降ろしてあげるから」
 背後から口々に言われ、千尋は部室から出ていった。



「流石に持ちにくい……!」
 四人分の飲み物を抱え、千尋は再び旧校舎に向かっていた。運の悪いことにほとんどの自販機は売り切れで、ゲテモノしか残っておらず、旧校舎から最も遠い自販機で買う羽目になってしまった。
「あれ? ヒロくん?」
 旧校舎に向かってとぼとぼ歩いていると、不意に声をかけられた。振り返ると、そこには黒髪をショートカットにした女子生徒。というか、この学校で千尋のことをそのように呼ぶ人物は一人しかいない。
「このみ……」
「どうしたのこんな時間に?」
「部活動だよ。朝は伊織にしか話してなかったんだけど……ほら昨日、僕が連行された」
「あー、あれかぁ。だいじょうぶだったの?」
「うん、まあなんとか……」
 ただ、現在進行形でパシリをやらされているが。
「部活動かぁ。それって、どんな部活なの?」
「対戦部だよ。ポケモンバトルをする部活」
「え……っ?」
 千尋がざっくりと部活動の内容を説明すると、このみはきょとんとした目でこちらを見つめる。
「ポケモンバトルの、部活……?」
「う、うん、そうだけど……」
 なにか変なことでも言ったのだろうかと千尋は不安になり、もう少し情報を開示することにした。
「今、部員が一人足りなくて、五人揃えば正式な部になるんだって。あ、あと人数が集まればインターハイに出場するとか——」
「インターハイ!?」
 グイッと、このみは身を乗り出して千尋に顔を近づける。身長差があるのでさほど威圧感はないが、このみは必死な表情で千尋に詰め寄って来る。
「こ、このみ……?」
「そ、その部活に入れば、インターハイに出れるの? 全国に行けるのっ?」
「い、いや僕にはなんとも……とりあえず落ち着いて」
 まだ短い付き合いだが、このみがこんな大声を出すとは思わなかったので、千尋も狼狽している。
「どうしたの、このみ。インターハイに、なにかあるの?」
 ひとまずお互い冷静になって、千尋はこのみから話を聞くことにした。
「う、うん。昔の話なんだけど、実はね——」
 そしてこのみは語り出した——



「そう……愛媛にいた頃の幼馴染との約束、か」
「うん、本当はインターミドルに一緒に出たかったんだけど、予選で負けちゃって……インターハイこそいっしょに全国行こうって約束したんだけど、わたし、こっちに転校することになっちゃったから……」
「それで、インターハイか」
 千尋は、伊織とは中学来の付き合いだが、このみは高校に入ってからの友人だ。なので当然、彼女の幼馴染のことは知らない。けれど彼女がその幼馴染たちに強い思いがあるのは理解できた。
「インターハイで会おうって別れる時に約束したんだけど、わたしが入れる高校はこの辺りだと雀宮だけで……学校紹介でもポケモンバトルに力を入れてなくて、対戦部もなくてって知ってからは、もうほとんど諦めてたんだ」
 でも、とこのみは彼女にしては力強く言い、
「まだ全国に行く希望は残ってる。この学校にも対戦部はあるんだよね? この学校でも、全国に行けるんだよねっ?」
「う、うん。確かにこのみがいれば部員五人、県予選には出られるみたいだけど」
 その一言で、このみの顔はぱぁっと明るくなる。
「じゃあわたし、対戦部に入る! 全国に行って、みんなに会いたい!」
「そ、そう。じゃあ今から部室に戻るから、一緒に行こうか」
「うんっ!」
 にこやかで晴れやかなこのみは、軽い足取りで千尋の後に続く。
(そうか、昔の友達か……)
 他県から来たということもあって孤立しかけていたこのみを伊織が引っ張り込んできた時、千尋はこのみになにかあると踏んでいた。まだ付き合いが浅いこともあって今まで触れなかったが、存外早くその謎も解けた。
 しばらく歩くと、やがて対戦部の部室に辿り着く。部屋に入ると目を垂れる伊織や茅、待ちくたびれたと嫌味を言う汐たちがいたが、全員このみの姿を見ると目を丸くしていた。
 千尋は黙ってこのみを前に誘導する。そして、

「城川このみです、えっと……よろしくお願いしますっ!」

 四月十五日、雀宮高校対戦部が、発足した。

第七戦 龍源寺高校 1 ( No.13 )
日時: 2013/04/17 17:02
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: 一応、登場人物の名前には植物に関する文字、言葉、部首を付けてる

 放課後の遅い時間、もうほとんどの生徒が帰宅している中、旧校舎の一角、つい先週発足したばかりの対戦部の部室にて、二人の生徒が向かい合っていた。
 一人は女性にしては若干背の高い、大人びた雰囲気の女子生徒、常葉汐。もう一人は、目つきが鋭く制服も着崩した不良のような出で立ちの女子生徒、牧野茅。
 汐は便箋を片手に持ち、もう片方の手でシャーペンをくるくると回していた。
「——で、詰まるところ、対抗試合の誘いが来たわけか」
「ざっくり言えばそうなるわね。ついてるわよ、私たち。こんな発足してから一週間の部活に目を付けるなんて、あちらにはいい目利きがいるようね」
「よく言うな……だが、いいのかよ」
「なにが?」
「確かにその誘いを受けられたのはラッキーかもしれないけど、あいつらのプレッシャーにならないか? まだ一年だしよ」
「うーん、大丈夫じゃない? それに、全国に行くなら一度は経験した方がいいでしょ?」
「あ? なにをだ?」
「そんなの決まってるじゃない——」
 茅の言葉に汐はスッと立ち上がり、夕日を背に、答える。

「——全国最強の実力よ」



 千尋、伊織、このみの三人が対戦部に入部して、一週間が経過した。県予選は六月の半ばくらいだそうなので、もうあと一ヶ月を切っている。
「さーて、みんな集まったわね。それじゃあ今日もいつものように大会のレギュレーションに近い形でバトルをしてもらうわ」
 汐は部長らしく皆を仕切りまとめ、指示を出す。
「それと、今までは体育館を借りてバトルしてたけど、今日からは一階にバーチャル空間を展開する機械を設置したから、時間無制限でバトル出来るわよ」
 校内ではバーチャル空間以外の場所でポケモンバトルをしてはいけない校則となっている。なので今までは他の部活との兼ね合いもあってバトルに制限時間があったのだが、どうやら今日からはそれがなくなるらしい。だが、
「……いつの間にそんなものを」
「科学部に頼んで、昔使ってた装置を直してもらったのよ」
「ちなみに、交渉はあたしが行った」
「交渉……?」
 脅迫の間違いでは、と言いそうになったが、寸でのところで言い留まる。
 とにかく、今日からは時間を気にせずバトルができるようだ。今までの窮屈な感じがなくなるだけでも万々歳だろう。
 というわけで、今日も今日にて県予選に向けての特訓が開始された。



 インターハイにおける対戦形式は通常のバトルとは相違点が多々ある。その中でも特筆すべきものは、四人で同時に戦うところだ。それもいわゆるマルチバトルではなく、四人が一体ずつポケモンを繰り出し、シングルバトルを行うというもの。
 攻撃範囲などはダブルバトルに準拠するが、細かい部分ではこの形式独自の技術を求められたりもするので、まずはそれに慣れるところから始めることになる。
 というわけで、千尋、伊織、このみの三人に、茅を加えた四人で同時にバトルを行うこととなった。部長の汐は今回は見学——伊織曰く現場監督だ。
「四人とも定位置について、さっさと始めるわよ」
 汐の指示を受け、四人はそれぞれバーチャル空間と化した教室の四方に散る。東に千尋、西が伊織、南は茅、北にはこのみがそれぞれ位置についた。
「位置についた? もう一度ルールを確認するけど、使用ポケモンは一人三体。勝利条件は、最後まで生き残っていた者が勝ち。いいわね?」
「おう」
「大丈夫です」
「おっけー」
「わ、わかりました」
 四者四様の答えを聞き、汐は満足そうにうなずく。
「よろしい。それじゃ、バトル開始!」
 汐の合図で四人は一斉に手にしたボールを宙に投げる。
「最初はお前だ! バンギラス!」
 乱暴に投げられたボールから出て来たのは、鎧ポケモンのバンギラス。
 バンギラスは場に出ると、激しい砂嵐を巻き起こす。バンギラス特性、砂起こしだ。これにより岩、地面、鋼タイプ以外のポケモンはスリップダメージを受けてしまう。
「頼んだよ、ジャローダ!」
 千尋の先発はロイヤルポケモン、ジャローダ。
 草単タイプで弱点は多いが、防御寄りのステータスと補助技を使いこなすテクニカルなポケモンだ。
「出て来て、ウインディ!」
 伊織が繰り出したのは例のウインディ。バンギラスには不利だがジャローダには有利なタイプだ。だが特性が威嚇ではなく貰い火なので、バンギラスの攻撃力を下げられないのが痛いか。
「とりあえず頑張って、クチールス」
 このみの一番手はクチートの進化系、欺きポケモンのクチールスだ。ウインディに代わって特性、威嚇を発動させ、他のポケモンの攻撃力を下げる。
「さて、と……」
 千尋はまず考える。ポケモンバトルでは一つの行動が生死を分けると言っても過言ではないので、ポケモンに指示を飛ばす際は慎重にならなければいけない。
 千尋のジャローダは、一般的な麻痺撒き型。蛇睨みで相手のポケモンを麻痺させ、後続に繋げる型だ。
 バンギラスはタイプからしてジャローダが有利。クチールスも、特性が威嚇なら積極的に攻撃することはないはず。恐れることはない。
 だが千尋は正面——伊織に視線を向ける。伊織の先発は炎タイプのウインディ。持ち物は恐らく命の珠。厚い脂肪のトドゼルガすらフレアドライブで瞬殺したウインディが相手では、威嚇で攻撃力が下がってもジャローダが耐えられるとは思えない。
(もしウインディがクチールスに向かってくれればいいけど、あいつの性格から考えれば……)
 千尋は新しくボールを一つ取り出し、こっそりと構える。そして、
「ウインディ、ジャローダにフレアドライブ!」
 直後、真っ先に動き出したウインディは爆炎を纏い、ジャローダに向かって一直線に走りだした。
「やっぱりこっちに来るか……! ジャローダ、交代!」
 伊織の行動は読めていた。なので、千尋はジャローダをボールに戻し、代わりに先ほど取り出したボールから違うポケモンを繰り出す。
「次は君だ、アバゴーラ!」
 交代で出て来たのは、アバゴーラ。アバゴーラはウインディのフレアドライブの直撃を受けるが、水と岩の複合タイプで炎技の威力は四分の一。さしたるダメージにもならず、余裕で受け切った。
「うっそ!? そこで交代なんて!」
「ウインディがこっちに突っ込んで来るのは読めてたからな。単純なんだよ、お前は」
「む、なにおう!」
「おいそこの二人、ぼさっとするなよ!」
 言い合う千尋と伊織に割り込む形で、茅が声張り上げる。それと同時にバンギラスも動き出した。
「まとめて吹き飛ばせ! 地震!」
 バンギラスはその巨体を存分に生かし、地面を踏みつけて地を伝う凄まじい衝撃波を放つ。衝撃波はウインディ、アバゴーラ、クチールスの三体に容赦なく襲い掛かった。
「うわっ、ウインディ!」
 一番派手に吹っ飛ばされたのはウインディだ。威嚇で攻撃力が下げられたとはいえ、効果抜群の地震だ。耐え切れず、戦闘不能となった。
 対するアバゴーラとクチールスはまだ耐えている。アバゴーラは特性、ハードロックで威力を減衰し、クチールスは恐らく防御を調整していたからだろう。まだまだ余裕だ。
 そして最後に動き出したのは、クチールス。
「クチールス、カウンター」
「っ!」
 クチールスは拳を握り、バンギラスに接近。そのまま勢いよく拳を振り抜いて、バンギラスを吹っ飛ばした。
「バンギラス!」
 ウインディほどではないが派手に倒れたバンギラスは、なんとか体を起こす。まだ戦闘不能にはなっていないようだ。
「あたしが初っ端から一体戦闘不能かぁ……戻って、ウインディ」
 伊織はウインディをボールに戻すと、次のボールを構えた。



「…………」
 一通りバトルの様子を眺めていた汐は、不満そうに口を尖らせている。
「あれから一週間……まだ出ないのかしら」
 以前、偶然にも見つけた未知の力。あれに惹かれて彼を誘ったのは事実だし、だからこそもう一度の力を見て確認したいのだが、
「隠してるのかしら……? だったら、どうにかして引っ張り出さないとね……」
 怪しく笑い、汐は下級生たちが戦う様子をじっくりと眺める。



今回から、こっちにもあとがきを書くことにします。と言っても、紙ほかのように毎回というわけにはいかない……と思いますけどね。そういうわけで序章が終わり、次の章、龍源寺高校がスタートです。龍源寺高校とはなにか、それは作中でじきに明かされるとして、今まで書いてきた感想でも。今まで僕はアニメや漫画を基準にした、殴り合いの描写をしてきましたが、このようにゲーム染みた駆け引きも書いていて面白いです。とはいえ、まだバトル描写は少ないし、完全にゲームに合わせてるわけでもないですが。あ、ちなみに一応言っておくと、クチールスはクチートの進化系で、改造ポケモン、アルタイル・シリウス、ベガのポケモンです。詳しくは>>0のURLを参考にしてください。では次回、思ったよりも書きやすかった千尋vs伊織vsこのみvs茅の四人対戦の続きです。あと一、二話くらいで終わるかな? それじゃ、次回もお楽しみに。


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