二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【ラブライブ!】アイドルを支えたロックバンドの話
- 日時: 2015/07/25 19:19
- 名前: 北瀬結里 ◆Hy48GP/C2A (ID: hxVh9B54)
はじめまして。北瀬結里(きたせ ゆうり)です。
この名前では活動していませんが、かつてはよく別の名前でここをよく訪れていました。
それはいいとして。
*注意*
この話は、とあるバックバンドに照準を当てたお話であります。
完全なバンド初心者の自己満足です。
!!!μ'sがほぼ出てきません、ご了承ください!!!
*
プロローグ「皆で叶える物語」
>>1
オリキャラ紹介
>>2
*
μ'sがほぼ出てきませんが、よろしくお願いします(2回目)。
- Re: 【ラブライブ!】アイドルを支えたロックバンドの話 ( No.12 )
- 日時: 2014/10/26 01:39
- 名前: 北瀬結里 ◆Hy48GP/C2A (ID: hxVh9B54)
7.
その数日後。
渚は、通学途中の坂を自転車で駆け上がっていた時に、一台の自転車が渚を追い越した。
「渚先輩ぃ!部活辞めたんですか!」
追い越した自転車の運転手がこちらを振り返りながら叫ぶ。長い髪が風を受けてなびいていた。彼女は、中学時代は渚の後輩であった北原そらである。
「前見ろよ」
渚はなお冷静に返した。すると前にいたそらは、おもむろに自転車を降りたかと思うと、渚にも自転車を降りるよう下手に出つつお願いするのだ。
「今じゃなくてもよくね? 放課後話すから」
渚は、今からそらに尋問でもされるのかと思った。別に時間が無く焦っているわけでも無かった。しかし今はそのように部活を辞めた理由を延々と述べる気にはなれなかっただけだった。
「理由を聞きたいんじゃないです! 私の長年の夢を! 叶えて欲しくて!」
そらとは、高校に行って以来はメールなどでしか話していない。そのせいもあって、今、渚目の前にいるこの北原そらは、中学時代に渚のよく知る冷静な北原そらの面影をまるで感じさせなかった。
ちなみに、そらの長年の夢というのは、学生のうちにロックバンドを組んで、あわよくばマンウィズの『アカツキ』と『フォーカスライト』を卒業式前後にどこかのライブハウスで披露することである。よくそらが話していた。
「バカ言え〜、ベースとドラムしかいないんでしょ〜?」
「チャットモンチーっぽくていいでしょ!!」
しかしメンバーが集まったという話は一切聞いていなかったし、この返事でまだ誰も集まっていないことを確信した。
「ギターなしでフォーカスライトが演奏できっかよ!!」
「じゃあ探しますか!!」
ふと渚の脳裏に、この間音楽室にいた、μ'sの2年に囲まれてたあのギター弾きの女の子の顔が浮かんだ。
「心当たりが無いわけでもないんだけどね」
渚がふとつぶやく。
「ほおおおおおおおおお?!」
そらが目を輝かせる。だが渚は「でもなぁ……」と呟いた。
渚としては、話したこともないのに、いきなりバンドを組もうとか言われても正直困るだろうなー……という思いがあった。しかし、あれほど上手いギタリストとなら、一度は何か曲をセッションしたいものである。
「正直手強そうなのよ」
μ'sの3人が目をつけたということは、うかうかしてると彼女はギタリストでなく、スクールアイドルμ'sの一員になるかもしれない。
その旨をそらに話した渚だったが、渚自身、別にバンドが組みたいと言うわけではなかった。しかし今、まるであの天才ギタリストを意地でも引き込もうとしている自分がいるのに気がついた。
「……あれ! ねぇそら! あの人!」
後ろから歩いてきた少女を指差す渚。彼女こそが、渚があの時、音楽室で見た天才ギタリストだった。
「おおおおお!!」
そらは脇目も振らずに華乃香に駆け寄る。華乃香の方は完全にそらを、そして連れの渚を警戒していた。
「あ、あのっあっあっ、 カカ、カノンさんじゃないですか?!」
ほう、ギタリストの人ってカノンって名前なのか。そらの知り合いだったのか。渚は勝手に納得していた。
「は? え! うそ! 待って!! ちょ、ちょっと……」
しかしカノンの方は、顔がとても真っ赤にしたと思ったら、そらの肩を抑え、そのまま走って行った。渚は急いで自転車を漕ぎ後を追った。
「あの! もしかして! 弾いてみた観てくれてました?」
カノンは小声でそらに問いかけた。そらの方はというと、
「はい! そうです!ファン第一号のSkyこそ私です!!」
と声高に答えた。
「え? 何? 知り合いなの?」
渚は何が何だか分からず、ただ二人の顔を交互に見ていた。するとカノンの方から言葉を発し出した。
「あの……、私、動画サイトとかに……顔出しはしないんですけど、被り物やマスクしてギターの演奏動画を上げてて」
先程カノンが『弾いてみた観てくれました?』と聞いたのも、その動画のことを指すのだろうか。
「あんね! めっちゃ上手い! んでもってこのルックスな! もう! これは! チート!」
読者の皆さんには信じてもらえないかとも思うが、本来北原そらは冷静で落ち着いた人物である。同じ年の女子高生が怯えてしまうのゴキブリに、無言真顔で殺虫剤を吹っかけるほど冷静なのである。
「発情した腐女子みたいな興奮の仕方するよね」
渚の一言に、そらも我にかえったようだった。コホンと咳払いをすると、先程より落ち着いた様子で喋り始めた。
「その動画に最初コメントしたのが、ハンドルネームSky、北原そらなのです」
渚は、えっへん! と言わんばかりの誇らしげな顔をしていたそらを殴りたい衝動にかられたが、「その情報要らない」とあっさり返す程度に留めた。
「あのSkyさんに……こんなとこで会えるなんて……」
カノンの反応を見る限り、そらが言っていることが本当なのはわかった。心なしか、頬が紅潮している気もした。
そらが意を決したかのような顔をして、カノンに話しかけた。
「あ、あの……私ずっとバンドを組みたいと思っててですね……」
渚の耳には、そらの声が裏返って聞こえた。緊張しすぎ……。
「コメントに『カノンちゃんみたいなギタリストとバンドを組みたい』ってよく書いてくれてましたね」
カノンはニコっと笑った。あぁ、確かに愛らしい笑い方をする人だなぁ、と渚は思った。カノンのそんな様子をみたそらは、一呼吸おき、息をはぁ〜と吸って、そしてこう言った。
「あの、早い話がですね……」
渚は固唾を飲んだ。そらがこの後何を言うか分かったからだ。そして、出会ってすぐに話しかけられたヤンキーみたいな奴の連れの、変な人に変なテンションで話しかけた上に、こんなお願いを聞き入れて貰えるのか不安だったからだ。
渚の頭の中は、もそもそっ、という感じで掻き回されていた。いやしかしだ、ありえないが、万が一にも承諾してくれるというなら、ベーシストとしてこれ程にない幸せを感じられるだろう、あぁ、そわそわする。
しかし渚の、もそもそとした感情は、カノンの発する端的な一言で消えるのであった。
「あ、いいですよ! バンド組みましょう!」
カノンはニッコリと笑った。そらは先程の冷静さをまたどこかに忘れてきたようで、喜びまくってスキップしながら走っている。
渚には、その様子を半歩後ろから見守ることしかできなかった。
*
- Re: 【ラブライブ!】アイドルを支えたロックバンドの話 ( No.13 )
- 日時: 2014/10/27 19:52
- 名前: 北瀬結里 ◆Hy48GP/C2A (ID: PzqI3wcg)
8.
ネットでそこそこ名の知れたギタリストと、中学の後輩ドラマーとバンドを組んだ帰宅部ベーシストは、その日の授業中ずっと気が気でなかった。
渚はあまり違うクラスの人のことは気にしない。そういえばあのギタリストの人、たまにすれ違うなぁと思う程度だ。
渚には、バンドを組むという事は、しかもガールズバンドとなれば、相当な人間関係のこじれが付いて回るイメージがあった。どうだろうか、私達うまくやっていけるのだろうか。
黒板を見つめ、窓の外の青々と葉を茂らせた木を見つめ、渚はひたすらに考えていた。そらがずっと前に種を植え、それが今発芽したところ。私とカノンが水をあげて、最後にはどんな綺麗な花が咲くのか。花ではないかもしれない。枯らしてしまうかもしれない。
そんなことも考えていたが、やはりこれから同じバンドで音楽をする仲間のことは知りたいなあと思った渚は、昼休みに思い切ってカノンに話しかけようと考えた。
4時間目の体育が終わってすぐ、教室に戻り、制服に着替えた渚は、1年の教室に行きそらを捕まえた。
その後は出来るだけ、少しの間自分の後輩だった人達に会わないように小走りで1年の教室の前を通り過ぎ、2年の教室にいるであろうカノンを探しに行った。
「先輩、いつになく積極的ですね?」
そらが渚に話しかけた。今朝のような興奮はまるで感じない口調であった。
「だって私カノンさん知らないし」
「あ、カノンさんの本名は穂坂華乃香って言うんですよ」
華乃香だから、カノンというハンドルネームにしたのだろうか。そこの辺りも含めてまたゆっくり喋りたいものだと、渚はぼんやり考える。
「で、先輩、穂坂先輩が何組なのか知ってるんです?」
「いいえ。あ、でも多分μ's? の3人と同じクラスだと思うわ多分」
偶然ギターを弾いてる穂坂華乃香に出会ったという可能性も無いので、クラスメートと言い切れる自信はなかったが、まぁ探せばどっかいるだろう! というのが渚の言い分である。
*
2年生全てのクラスを回ったが、結局教室には穂坂華乃香を見つけられなかった渚とそらだった。図書室に中庭など、他にも立ち寄りそうなところも探したが、やはりいない。
「トイレでぼっち飯とかして無いよね」
渚がぼそっと冗談を言った。もちろん渚はそんなことは無いと思って言ったのだが、
「クラスぼっちらしいけど流石にそれは……無い……と……はい」
などとそらが返すので、申し訳なくなりそれ以上は何も言わなかった。
「あ……でも今日の放課後近くのファストフード店でお話することになってるんですよ」
出し抜けに、そらが思い出したかのようにこう言った。
「それ最初に言えよ」
渚の言葉に相槌をうったのは、そらではなく予鈴のチャイムだった。
- Re: 【ラブライブ!】アイドルを支えたロックバンドの話 ( No.14 )
- 日時: 2014/10/29 18:04
- 名前: 北瀬結里 ◆Hy48GP/C2A (ID: PzqI3wcg)
9.華乃香side
うまいものは、脂肪と糖分でできている、とはよく言ったものだ。実際に我々高校生がよく食べる『うまいもの』といえば、スナック菓子にファストフードといったものが代表的な例である。
私自身、学校帰りに買い食いはしないこともないが、何しろ音楽を聴きながら電車とバスで通学(無論独りで)しているので、何を買って食べたか、どんな味だったかとまではあまり強く覚えてなく、その日のうちに忘れてしまう。
今日は買い食い、ではなく、動画サイトの繋がりで知り合ったバンドの仲間(結成1日目)と、今後の話し合い含めゆっくりおしゃべりするために、ファストフード店でおやつタイムだ。今日の朝バンドを組み、その時おやつタイムが決まった。
実は私が高校生になって初めての、放課後のおしゃべりタイムなのだ。
そういうことで、少しワクワクしながら私は店に入った。
「ほおおお…かぼちゃバーガーとな」
チェーン店のファストフード店の期間限定商品は、大概アタリとハズレが五分五分の割合で展開されてるものが多い……気がする。このかぼちゃバーガーはハズレの方……だろう。
4人用のテーブル席に腰掛け、とりあえず私は人数分のアイスコーヒーを買いにレジへ向かった。私の奢りで。レジのアルバイトさんは、ニコニコと注文を聞き、厨房入り口付近のコーヒーサーバーから手早くコーヒーを紙パックに注ぎ、もう2回同じ作業を繰り返すと、再びこちらへ戻ってアイスコーヒー3つをトレーに乗せてくれた。私は代金を払ってコーヒーを受け取ったのち、再びテーブルに戻り、席に着いた。
「2年の穂坂華乃香です」
「1年の北原そらです」
「そらの先輩だった新瀬渚です」
全員が名前と学年を名乗るだけの簡易的な自己紹介をした。が、なんとも言えない沈黙の時間がしばらく続いた。というより、何を言うべきかと言葉を探していたのだが。
「穂坂さん。この度はうちの後輩がご迷惑をおかけしました!」
すると向こうから沈黙を破ってくれた。声の主は新瀬渚である。
彼女のビジュアルは、ツーブロックだし、ヤンキーのオーラも漂ってて正直怖かった。廊下ですれ違うたび軽く震えた記憶もある。しかし素行は全く悪くなく、むしろ優良な生徒らしい。
雰囲気と見た目にかなり構えていたのだが、あまりにも丁寧な言葉遣いと遜った態度に、私は拍子抜けしてしまった。
「Sky……もとい、そらさんには、たくさんコメント頂いてて……そらさんとバンド組むの興味あったんです、だからその……迷惑なんかじゃなくて、全然嬉しくって……」
初めて渚さんと話すが故、言葉がなかなか繋がらぬままに、ぽつぽつとしか出てこなった。
私が最初に動画を上げたその日からSkyさん、つまりそらさんは、私のファンになるよ! と言ってくれていた。上げる動画全てに、彼女のコメントがあった。時に心無いコメントが送られてくることもあったが、そんな時は励ましてくれたりもしたのだ。
「カノンさん、私がSky名義で上げたドラム叩いてみた動画にも、コメントめっちゃくれてて! 『Skyみたいなドラマーとならバンド組みたいなあ』って言ってくれてて!」
確かに、そらさんのドラムはとても上手だった。これほどの腕の人のドラムとセッションなんて、滅多にできることではないなぁとは思っていたのもまた事実。
一方そらさんは目を輝かせながら、私と渚さんを交互に見つめた。渚さんは固まってしまっていた。
「ほああ……あのカノンさんとバンド組めて……私はとても幸せです〜」
中学から3年近くそらさんを見てきたらしい渚さんも、こんな風に喜ぶ(?)そらさんを見たことがないらしく、目をパチパチさせてそらさんを凝視していた。そしてこう言った。
「実際同じ店の席に座ってるなら、ハンドルネームで呼び合うのやめない?」
私とそらさんは、顔を見合わせてあはははと笑った。そういえばそうだなあ、とお互い笑いながら言った。
ふと、笑いながら思った。学校生活で、放課後におしゃべりしながら笑うってことがなかったので、今すごく楽しい気持ちでいっぱいなのだ。
ーー 私、今すっごく楽しい。
- Re: 【ラブライブ!】アイドルを支えたロックバンドの話 ( No.15 )
- 日時: 2015/01/16 15:30
- 名前: 北瀬結里 ◆Hy48GP/C2A (ID: MgUgGnIS)
10.華乃香side
これからバンドを組んで活動していく仲間ができて、私は心が躍った。
ハンバーガー屋でおしゃべりしたその日の帰り、柄にもなくスキップしたくなるほど嬉しかった。
*
「あっちいな……」
花を咲かせていた校庭の桜に、次第に緑色が混ざる時期になって、気温も上がってきた。しかし相変わらず私は、一人で登下校している。家が近い人や同じ中学の出身がいないという理由ではなく、お察しの通り、単に友達がいないからである。
いつもの通り一人で登校していた私だったが、後ろから自分の名前を呼ばれたので不意に振り返ると、そこには渚とそらがいた。
「華乃香ちゃん、おっはよー」
「おはようございます」
先日バンド仲間となった、新瀬渚と、北原そらである。
「おはよう!」
友達に挨拶されるのは、まだ少し照れくさいものがあるのだが、それでも嬉しいものだ。私は元気よく挨拶を返した。
「今日放課後時間ありますか? よかったらバンドの名前決めません?」
すると、そらの方からこう提案があった。
そうだ。バンドを組むのなら当然名前を決めなくては。
*渚side
「で、何故音楽室に集合させられてんだよというわけですよ」
そらは今朝の別れ際、「音楽室に集合してくれ」とだけ言った。何故音楽室なのかはわからないが、とりあえず指示に従い、放課後にここ音楽室でそらを待っていた。
「何か楽譜がなんとかって言ってましたよ」
私が来るより少し遅れてやってきた華乃香が言った。というか、よく見ると彼女はギターを構えていた。音楽室の備品だろう。
「なんで臨戦態勢なんすか」
後輩に微妙に敬語混じりで漏れ出た本音が、ビビった気持ちが現れていて、あぁ自分すごくダサいと感じた。
「セッションでもするんじゃないんですかね、と思って」
「聞いてないんだけどォ!」
バンド名も決まってないのに、セッション始めちゃうの? 初見なのにセッション始めちゃうの?
そらには後でたくさん聞きたいことが出てきたが、とにかくそらが来ないことには何も始まらない。私は大人しく待つことにした。
「でも新瀬先輩楽器持ってきてないですよね」
「何も聞いてないんだもん……」
何となく悲しくなった私は、部屋の隅にあったピアノ椅子に体操座りをした。惨めだがまあ仕方ない。悲しいんだもん。ついでにピアノを弾いてみようとしたが、私はピアノを弾くことは出来なかったので、とりあえずドとラの短三和音を奏でていた。
「悲しみすぎじゃないですかね」
華乃香は笑いながらこう言った。なるほど、彼女は笑うと可愛い。
「すいません、遅れました!」
そらがバタバタと現れた。私は思わずピアノでシとドの鍵盤を鳴らして、さらに「不快感の表現じゃボケ」と一言添えた。
「本当にごめんなさい! でも楽譜持ってきましたよ!」
そう返すそらの手には、何やら紙のようなものがあった。
「アレじゃないですか」
華乃香は譜面を見るなりこう言う。よく見ると彼女は、嬉しそうな顔をしていた。
「アレとは」
「おしゃかしゃまです」
「嫌だまだ死にたくない」
イントロから難しいギターリフが出てきて、リズム感もあまり取れないから難しい曲と言われているらしい(渚も弾いてみようとして挫折した)。
「高校生バンドの定番、リライトとか小さな恋の歌とかもっと弾きやすいやつ無かった?」
私は思わず逃げたくなった。
「いや、私これ友達にもらっただけなんで。弾けとは言ってませんので。今日はただ決めたいことがあって」
そらは冷ややかな顔をして私を見てくる。かつて後輩だったやつの態度には見えない。
「そんな顔せんかて工藤」
「北原です」
しばらく空気が凍った。
「バンド名ですよ、バンド名を決めるみたいです」
不穏な空気を払拭するかのように華乃香が言った。
「というわけで、バンド名考えましょう」
- Re: 【ラブライブ!】アイドルを支えたロックバンドの話 ( No.16 )
- 日時: 2015/02/21 20:28
- 名前: 北瀬結里 ◆Hy48GP/C2A (ID: hxVh9B54)
11.渚side
そらの突然すぎる切り替えに、華乃香と私は思わず、
「ちょっと待って〜ちょっと待って〜おネェさん」
「決めましょうって〜言われても〜」
「いきなりすぎて〜出来ません〜」
と息ピッタリな返事をしてしまった。言い終わってから2人で笑ってしまった。
「何を言いますか、バンド名を考えずしてバンドが組めますか! あと最初の方に決めるって言ったし」
「いやー、組もうと思えば組めないこともないですよ」
そらはバンド名を決めようとしていたが、華乃香が冷静に返すとそらはしばらく黙ってしまった。が、その後「それもそうっすね」と呟いた。簡単に譲歩してしまったので私は少しびっくりしてしまった。
「とりあえずまず方向性を決めたいんだよね」
華乃香が切り出したので、私は「確かに」と相槌を打った。すると華乃香は、「文化祭出たいんですよね〜、実は」と照れ臭そうに笑った。
「じゃーとりあえず、文化祭に向けたバンドってことになるのかな?」
私がこうまとめると、2人は頷き、「一応当面はそれで行こう」と同意してくれた。
*視点なし
もうすぐで夏休みを迎える、そんな夏の夕暮れ時の教室は、西日が差し込みオレンジ色に染まっていた。窓際の席で、真姫は一人何か作業をしていた。譜面に音符を並べては消す。作曲だ。
「エレキギター……ね」
教室に残ってμ'sの新曲を考えていた真姫だったが、どうにもならなさそうな問題に直面していた。エレキギターの音が無いのだ。
「今回の曲は、格好良さも入れたいな!」
頭の中で、穂乃果の言葉が響く。新曲はかっこいいのがいい! という穂乃果のオーダーに、真姫が辿り着いたのは「ロック」テイストの曲だった。
ロックといえば、ギターなどの楽器が格好良く、ベースにドラムのリズムが心地いい、そんなイメージを真姫は持っている。
ピアノやキーボードに関しては、真姫自身が演奏できるので、レコーディングに支障はないが、ギターの、しかもエレキギターの音入れとなると、そうはいかない。ギターの腕前もなのだが、楽器自体も無いし、アンプやエフェクターなどの周辺道具も無い。
「ママに頼んで、買ってもらう方がいいのかしら……」
はぁ、と溜息をついた。その時、ガラガラと教室のドアが開いた。
「あ、西木野さん、居残り?」
真姫を見るなり声をかけたのは、真姫と同じクラスのそらだった。
「あ、北原さん……」
そらが真姫の手もとの譜面に視線をやったので、思わず真姫は、書きかけの譜面を隠してしまった。
「μ'sの新曲?」
「ま、まぁね……み、見ないでよ!」
そらが「ごめんなさい」と謝ると、真姫は顔を赤くしていた。書きかけのものを見られるのは好きではないようだ。
「ものすごい溜め息してたから、なんか心配だなって……ごめん余計なお世話かな」
そらは控えめにいうと、真姫は「ため息なんかついてたの、私」と言って顔をまた赤くしていた。と、真姫はそらがドラムの経験者であるのを思い出した。
「ギター……弾ける友達はいるかしら?」
「弾ける人知ってるよ」
「ギターの音が欲しくて……明日にでも録音がしたいの」
そらは少し驚いた様子だった。華乃香先輩にμ'sからお声がかかったなぁ……すげぇ、と、頭の中でそんなことを考えていた。
「腕前は私が保証するよ〜、これ聞いてみ」
そらはスカートのポケットからスマートフォンを取り出して、ブラウザを開くと、ブックマークから華乃香の投稿した弾いてみた動画にアクセスした。
「……」
真姫は食い入るようにして動画を見ていた。そして最後まで動画を見ると、「この人に、ぜひお願いしたいんだけど、いいかしら?」と言った。
「今多分、華乃香先輩教室にいるから! 話に行こう?」
「えっ!? ……ちょ、ちょっと待ってよ」
*
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