二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- プリアラ〜キュアショコラと影の将軍〜【完結!】
- 日時: 2017/04/22 21:18
- 名前: モンブラン博士 (ID: JJ3BeOFP)
キラキラ☆プリキュアアラモードのキュアショコラを中心とした作品を書いてみたいと思います。
- Re: プリアラ〜キュアショコラと影の将軍〜 ( No.8 )
- 日時: 2017/04/07 19:03
- 名前: モンブラン博士 (ID: JJ3BeOFP)
シャドウはキュアパッションにシャドウ剣の切っ先を向けて告げた。
「赤いプリキュアよ、俺と闘え」
「勿論そのつもりよ。ラブ達が倒れた今、闘えるのは私だけだもの」
「一人で闘うとは無謀な奴よ。他のチームに連絡を取り、応援に駆けつけてもらえば楽に闘えるものを」
「私は人に迷惑を懸ける真似は好きじゃないの。ここは、私一人であなたを倒して見せるわ」
「随分と大きくでたな。敗北して後悔しても知らぬぞ」
「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」
「フフフフフフ……中々の自信。俺を失望させてくれるなよ」
「そっちこそ」
互いに言い合い牽制していたが、一陣の風が二人の間に吹くと共に決闘の火蓋は切って落とされた。
「はああっ!」
先制攻撃に出たのはパッション。彼女は長けた素早さを活かした連続攻撃で、シャドウに反撃させる隙を与えない。無数のパンチとキックに連打がシャドウを襲う。
「スピードも良い、威力もある。どうやらこれまでの相手とは一味違うようだ」
「それはありがとう。でも、あなたに褒められても嬉しくないわ」
敵に背を向け飛び上がると、そこから一回転。
回転する勢いを利用した蹴りを、シャドウの後頭部に打ち込まれる。
続けざまに彼の腹に鋭い肘鉄を食らわせ、追撃の飛び蹴りを放つ。
シャドウは猛攻に押され地面を滑っていたが、右手を突いて停止する。
「トランプ・カッター!」
手裏剣のように無数のトランプを投げつけるシャドウ。
凄まじいスピードで投げられたそれは、並のプリキュアならばまともに食らってコスチュームが破けていただろう。
しかし、パッションには他のプリキュアにはない武器があった!
「アカルン!」
命中する直前に相棒である赤い妖精、アカルンの力で瞬間移動をして、直撃を全て紙一重で回避する。
「お前も俺と同じ力が使えるとはな。だが、逃げているだけは俺は倒せぬぞ」
「逃げているだけじゃないわよ」
不意に遠方にいたパッションがシャドウの目前に現れた。
咄嗟の事に反応が遅れたシャドウの隙を逃さず、腹を殴り、続いて顔面を殴り飛ばした。
「これで止めよ!」
パッションは専用武器であるパッションハーブを取り出し、一気に決着を付けようとする。
「吹き荒れよ、幸せの嵐! プリキュア・ハピネスハリケーン!」
赤いハートの光弾で形成された赤い竜巻がシャドウに迫り、彼の抵抗を許さずに飲み込んでいく。
「はああああああぁっ!」
竜巻は勢いを強め、回転を更に速く強力なものにしていく。
「シャドウ、消滅前のあなたにひとつだけ訊ねるわ。
あなたの幸せは、何?」
嘗てピーチがした質問をパッションはシャドウにぶつけてみた。
パッションは知りたかったのだ。
どうしてあなたはプリキュア打倒に拘るの?
あなたはあの時、ラブ達の命を奪おうと思えばできたはず。
なのにそうはしなかった。変身アイテムだけ奪って見逃した。
あなたの目的は何?
「……俺の幸せか」
竜巻の中から彼の渋く怖い低音が響いてきた。
「俺の幸せは自分に匹敵する強者と闘うこと」
「それだけ? 大好きな人とお喋りしたり美味しい食事を食べたり、遊んだり、そう言った幸せは、あなたには無いの?」
「俺には仲間も家族も無い。求めるのは、強者との心躍る決闘欲のみだ」
「そんな……!」
パッションにとってその返答は信じられないものだった。
ラブに会い、桃園家で家族の一員として過ごし、美希や祈理と過ごした日々。
その中で得た愛情は何よりもかけがえのないものであり、幸せとはこんなにも素晴らしいものなのかと学んだのだ。
それはイースだった頃には絶対わからないもの。
かつての自分に「幸せとは何か」と聞いたらきっとシャドウと同じような答えが返ってくるだろう。
家族、友情、愛情とは無縁で、メビウスに従え、彼の命令を達成することだけが生きがいだった、思い出しただけでも胸が締め付けられる、辛く暗い過去。
そして目の前のシャドウは愛を知らずに、消滅しようとしている。
彼は、それでいいのか。愛や幸せを知らずに消えていくのは、あまりにも悲しくはないだろうか。
気が付くと、パッションの瞳から冷たい雫が流れていた。
触れてみると、それが涙であることがわかる。
このままプリキュアの幸せを守る為にシャドウを消滅させるか。
それとも、技を解いて力づくで幸せの素晴らしさを教えて改心させるか。
彼女は選択を迫られていた。
奇遇なことに、シャドウとパッションが闘っている場所は嘗て彼女がピーチと拳で満足するまで殴り合い、思いの丈をぶつけた森だった。
昔、ラブがしたことを今度は私がシャドウに。
拳を握りしめてハピネスハリケーンを見つめる。
答えは決まった。
と、突然に竜巻が真横に裂かれ、一瞬で消え失せてしまった。
なんとシャドウは手刀だけでハピネスハリケーンを破ってしまったのだ。
「フフフフフフ、最大必殺技を破られ、もうお手上げかな」
破られたショックで肩で息をするまでに体力は落ちていたものの、パッションの瞳の闘志は些かも衰えてはいなかった。
「……いいえ、まだよ。拳で語り合いましょう。あなたの気が済むまで」
- Re: プリアラ〜キュアショコラと影の将軍〜 ( No.9 )
- 日時: 2017/04/07 19:20
- 名前: モンブラン博士 (ID: JJ3BeOFP)
「拳で語り合うだと?」
「そうよ。私はイースと名乗っていた時代に、イースとしてピーチと語り合って想いの丈をぶつけたの」
「お前には通じたかも知れぬが、俺に通用するとは限らないぞ」
「わかっているわ。でも、何もしないよりは動いた方がマシだから」
パッションは一瞬微笑みを見せた後、臨戦態勢に入る。
「お前の拳で俺の心は変わらない」
「やってみなければわからないわ」
「答えなど最初から出ているだろう」
再び風が吹き抜け、落ち葉を舞い上がらせる。
これが二人にとっての闘いの合図となった。
「はああっ!」
「フンッ!」
拳と拳が合わさり衝撃波を生み出し、周りの木々を揺らしていく。
幾度も重なり合う拳。その度に二人の赤と白のオーラが激突する。
「シャドウ! どうしてあなたは闘いを求める生き方しかできないの!」
「それが俺の生き方だ。他人の生き方に偉そうに口を挟むな、年端もいかぬ小娘が」
「ただ強者と闘い続ける修羅の道に平穏はないわ。いくら闘い続けても、満足感は得られない!」
「お前には分からぬ。世界最強を目指す男の気持ちが。長年の宿敵との決戦を夢見て地獄から蘇り、二度と好敵手と闘う事のできなくなった絶望が」
「闘いだけが人生じゃないわ! 美味しいものを食べたり、友達と会話したり、人を好きになったり……そんな生き方だってある!」
「俺の人生には闘いしかない」
「勝手に決めつけないで!」
「お前に何がわかる」
彼らは拳を打ち合い、言葉を交わしていく。
あのときのピーチのように、イースのように。
「あなた、友達はいないの? 家族は?」
「俺は天涯孤独の身。親など知らん。盟友は全て仮面ライダーストロンガーに葬られた。俺の忠実なる部下で愛人だった蛇女もろともな」
「ぞれではあなたはその人に復讐をしに蘇ったと言うの!?」
「違う。俺の盟友、鋼鉄参謀、ドクロ少佐、そして恋人の蛇女が倒れたのは、単なる実力不足。それに関しては仕方がないと割り切っている。だが、それよりも悔しかったのは、俺自身が最高の環境、最高の状態で奴と闘えなかったことだ。ある事情のせいでな!」
「その事情って何なの?」
「……小娘の分際で他人の過去を詮索するな!」
ついにシャドウはキレ、腰の鞘からシャドウ剣を引き抜いた。
そして、慣れた手つきでパッションの胸を剣で一突き。
「かはっ……」
パッションの瞳孔が縮んだかと思うと、瞬く間に変身が解け、元のせつなになった。崩れ落ちた彼女の胸からはドクドクと血が流れ、土を真っ赤に染めていく。
「下らぬ事を喋らせおって」
多少怒りを露わにしつつも、これまでと変わらぬようにアカルンを奪って去ろうとした。だが、少し歩くと移動をやめて立ちどまる。
「女を殺すと俺の誇りに傷が付く」
足早にせつなの元に戻ると、うつ伏せに倒れている彼女を仰向けにして、傷口に触れる。すると、傷口から血は引き、傷はみるみるうちに塞がっていく。
傷が治ったのを確認すると、お気に入りのトランプのハートのキングをせつなの傍に置き、マントを翻して去っていく。
「時期に意識も回復するだろう……女とは言え、敵を回復させてやるとは、俺もまだまだ甘い。次からはもっと非情に徹せねば!」
- Re: プリアラ〜キュアショコラと影の将軍〜 ( No.10 )
- 日時: 2017/08/28 07:21
- 名前: モンブラン博士 (ID: mOILM.Mp)
南野奏は加音第一病院の個室のベッドで寝込んでいた。
その右足には包帯が巻かれている。数日前、彼女は加音街に現れたジェネラルシャドウを倒すべくキュアリズムに変身し、仲間の北条響/キュアメロディ、黒川エレン/キュアビート、調辺アコ/キュアミューズと共に闘った。
四人は持てる力の全てを出して闘ったものの、最大協力必殺技であるプリキュア・スイートセッション・アンサンブル・クレッシェンドを破られ敗北を喫してしまった。シャドウが気まぐれで撤収したために命は助かったものの、彼女は足を負傷し、変身アイテムであるキュアモジューレを奪われてしまった。
医師から告げられた診断は、全治一か月。
その間、大好きな学校にも行けないし、カップケーキも作れない。
響達も別々の病院に入院してしまって会話もできない。
何より憧れの王子正宗と一か月も会えないのだ。
それが奏には一番堪えた。
ジェネラルシャドウなんて大嫌い!
奏は寝返りを打って頬を膨らませた。
「一日中寝ているだけの生活が一か月も続くなんて我慢できない! あーあ、王子先輩がお見舞いに来てくれたらいいのになぁ……」
家族は毎日のように見舞いに来てくれる。けれど、彼女は物足りなさを感じていた。年頃の女の子なら好きな人に見舞いに来てほしいと考えることもある。
奏はプリキュアである前に一人の中学生の女の子なのだ。
「南野さん?」
背後からの突然の呼びかけ。聞き覚えのある爽やかな声。
まさかと思いながらも恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは——
「王子先輩!」
「南野さん、お見舞いに来たよ。足を折って入院したって聞いたから心配したよ」
「家の階段で転んじゃって……ドジですよね、私」
それは精一杯の嘘。本当ならば真実を言いたい。けれどプリキュアの正体は明かしてはいけない決まりになっているのだ。
気持ちを抑えて、ありえそうな嘘を吐く。すると王子は首を振り。
「南野さんはドジなんかじゃないよ。誰だって不注意で転ぶことはあるのだから。自分を責めなくてもいいんだよ」
「王子先輩……!」
「ん? どうしたんだい。顔が真っ赤になっているよ。もしかして熱でもあるのかな」
王子は自分の額と奏の額を合わせ熱があるかを確かめる。
憧れの人とキスできそうな距離で額まで合わせたのだ。
奏の心臓は喜びで張り裂けそうだった。
ほんの十秒ほどで奏の額から顔を離し、優しい笑顔を向ける。
「熱はないみたいだね。良かった。あっ!」
「どうかしたんですか!?」
「うん。実は君が元気になってくれればと思って作ったんだけど、もしよかったら、どうぞ」
王子が鞄から取り出したのは手作りのカップケーキだった。
王子先輩が私の為にカップケーキを?
「実家がカップケーキ屋さんの君にカップケーキをあげるというのは少し変かもしれないけどね」
「そんなことないです! ありがとうございます!」
「喜んでくれて僕も嬉しいよ。じゃあ僕は『王子音楽隊』の練習があるから行かないと。少ししかお見舞いできなくてごめんね」
「いいえ。とっても嬉しかったです!」
「南野さんの怪我が早く治って、学校で会える日を楽しみにしているから」
「えっ……!」
こうして彼は病室から出て行った。
「キャー! 王子先輩王子先輩王子先輩! どうしよう。私、私……王子先輩と額を合わせて、手作りのカップケーキまで貰っちゃった〜!」
足の痛みも忘れ暫くベッドを転がり喜びまくっていた奏だったが、しばらくすると彼女の大きな瞳にやる気の炎が宿る。
「王子先輩の期待に応える為にも、リハビリ頑張らなくっちゃ!」
病院の外。平日ということもあり人気のない病院の駐車場で、一人の少年が佇んでいる。彼の名は王子正宗。私立アリア学園のアイドルであり奏の憧れの男子生徒だ。彼は周囲に誰も人がいないことを確認すると、ニィッと口角を上げて呟く。
「この程度で騙さるとは愚かな奴よ」
王子の姿が一瞬にして透明なフルフェイスヘルメットを被った醜い顔となる。
「折角、このジェネラルシャドウが王子に化けてまで見舞いに来てやったのだから、それなりに早く退院してもらわねばな……さて、次は北条響を見舞いに行くとするか」
シャドウは病院の屋上に瞬間移動をし、愛用のトランプを切る。
「だが情けをかけてやるのはスイートプリキュアまで。次のスマイルプリキュアの五人はそうはいかぬぞ。フフフフフフフ!」
- Re: プリアラ〜キュアショコラと影の将軍〜 ( No.11 )
- 日時: 2017/04/11 05:55
- 名前: モンブラン博士 (ID: JJ3BeOFP)
「世界よ。最悪の結末バットエンドに染まれ。白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ」
ジェネラルシャドウは七色ヶ丘市に現れると、自作の闇の絵本に闇の絵の具を塗りつけた。
黒魔術に長けた彼にとっては、バットエンド王国幹部達が使用していた闇の絵本と闇の絵の具を作り出すことなど朝飯前なのだ。
バットエンド空間が発動し、空は曇り、道行く人は暗い絶望に飲み込まれる。下校途中だったスマイルプリキュアの五人は異変にいち早く察知し犯人がどこにいるかを確かめるべく辺りを見渡す。
突然、みゆきは飛んできた二枚のトランプにより視界を奪われた。
「目があぁ……!」
どうにかトランプを剥がした彼女。その視線の先には——
「あなたは!」
「デルザー軍団のジェネラルシャドウ!」
「ほほう。流石は特撮に詳しい黄瀬やよい。俺の名を知っているとは光栄だ」
「当たり前だよ!」
やよいがドヤ顔で言うと、今度はれいかが訊ねる。
「私達に闘いを挑みにきたのですね」
「よくわかっているではないか」
シャドウは腰のシャドウ剣を引き抜く。
「これはただで帰れそうにもないわな」
「直球勝負で倒して、速く家に帰れないとね。お母ちゃんの夕飯の手伝いしなくちゃいけないから」
あかねが少し冷や汗を流しながら呟くと、なおは制服を腕捲りし気合を入れる。
「フフフフフフフ、今日の俺は甘くはないぞ」
「みんな、行くよ!」
みゆきの声掛けにより、五人一斉にスマイルパクトを構え、変身する。
「Lady?」
「「「「「プリキュア・スマイルチャージ!」」」」」
「GO!」
五人は光に包まれていき、ほんの一分ほどで変身完了した。
「キラキラ輝く未来の光! キュアハッピー!」
「太陽サンサン! 熱血パワー! キュアサニー!」
「ぴかぴかぴかりん! じゃんけんポン! キュアピース!」
「勇気りんりん! 直球勝負! キュアマーチ!」
「しんしんと降り積もる清き心! キュアビューティ!」
「「「「「五つの光が導く未来! 輝け! スマイルプリキュア!」」」」」」
「今日のぴかりんじゃんけんはチョキでした!」
「この俺がじゃんけんに負けるなど……あり得ない。絶対にあり得ない!」
シャドウはパーを出してピースにじゃんけんで敗北したことが余程悔しかったのか体を震わせ現実逃避していた。
けれどすぐに落ち着きを取り戻し五人と間合いを取る。
「まあよい。じゃんけんでは勝てずとも、闘いで勝てばいい」
「それってただの八つ当たりやんかぁ!」
「黙れ」
サニーのツッコミを一蹴し、高速移動でハッピーに接近。
「シャドウ剣!」
「あああああっ!」
シャドウ剣の目にも留まらぬ乱れ突きを食らい両膝を落とすハッピー。
「ハッピー!」
彼女を助けようと飛び出したサニーとマーチの攻撃をトランプを巨大化させ無効化。前方と後方から攻めてきたビューティとピースの攻撃も瞬間移動で対応する。
「どうした? 五人もいながら誰一人攻撃を当てられないとは情けない奴らだな」
「直球勝負だ、シャドウ!」
「よかろう。お前のその姿勢は嫌いではない」
先陣をきって飛び出したのはマーチ。
彼女はパクトにエネルギーを溜め、単独浄化技を発動した。
「プリキュア・マーチ・シュートォー!」
無数のエネルギーボールがシャドウを襲う。
「果たして何発撃てるかな? シャドウ分身!」
「増えた!?」
上空に百人ほど浮遊するシャドウ達。
本物はどれか一人だ。
「さあ、どれが本物か当てられるかね」
マーチにとってこの状況はいつかのマジョリーナとの闘いを彷彿とさせるものだった。あの時は無数のマーチシュートを当てて本物に命中させた。ならば今度も同じ手で行く。直球勝負だ。
「うおおおおおおおっ!」
勇ましい声を上げて無数のボールを生成。
そしてそれを一気にシャドウに蹴りまくる。
「フフフフ……九〇、八〇、七〇……」
沢山の分身のせいで木霊するシャドウの声。
だが、それもマーチに分身をかき消されるうちに小さくなっていく。
偽物は次第に数を減らしていき、ついに二人にまで絞られた。
「さあ、どちらが本物かな」
「私にはどっちにも同じに見える。だったら、両方当てるまでだ!」
「なんだと!?」
二発のマーチシュートは驚愕するシャドウをもろともせずに命中。
「やった!」
ガッツポーズを決め喜びに浸るマーチ。
すると煙の中からシャドウの声がした。
「おめでとう。よくぞ我が本体を見破ったな。この対決、お前の勝ちだ」
「これが私の直球勝負だ!」
「流石のこの俺も負けを認めざるを得ない。完敗だ」
「いや、そこまで褒められるなんて、なんだか恥ずかしいな」
少し顔を赤くして頭を掻くマーチ。
敵にとは言え褒められて嬉しかったらしい。
舞っていた煙が晴れ視界が明るくなった。
シャドウの姿は見えない。
消滅したか?
それとも撤収した?
声も姿も見えず、聞こえず。
五人は彼の姿を探し辺りを見渡す。
と、ここでマーチの影を見たビューティの顔から血の気が引いていく。
なんと彼女の影がグニョグニョと動き、その中からジェネラルシャドウが出現したのだ。
「——などと俺が言うとでも思ったか」
「マーチ、危ない!」
「えっ……」
「先ほどの分身は全て偽物。本物を当てろとは言ったが、あの中にいるとは言わなかった」
「なっ……」
「表に気を取られ過ぎ、裏を見ることを忘れたな。
この勝負、お前の負けだ!」
シャドウはマーチの腰を両手で抱え込み軽々と持ち上げると、体を反らして思いきりアスファルトの地面に叩き付けた。
マーチはひび割れた地面に沈んでいく。
「マーチ!」
彼女に駆け寄る四人の仲間。
シャドウは冷笑し、彼女らを見下す。
「これで俺のジャネラルシャドウという名の意味がわかっただろう。
まずは一人目……さて、次は誰が相手かな」
- Re: プリアラ〜キュアショコラと影の将軍〜 ( No.12 )
- 日時: 2017/04/11 22:09
- 名前: モンブラン博士 (ID: JJ3BeOFP)
マーチが倒れハッピーとサニーが飛びかかったものの簡単に返り討ちに遭い敗北。三人のスマイルパクトが奪われ、残るはビューティとピースの二人だけだ。
シャドウは服についた埃を丁寧に払うと、威厳のある超低音で告げる。
「今回の俺の目的はお前たち二人にある」
「どういう意味です?」
「俺はお前とキュアピースに以前から強い興味があった。
今は亡きストロンガーと同じ電気属性を持ち潜在能力に優れるキュアピース。
冷静な頭脳と判断能力でチームの要としての役割を持つキュアビューティ。
お前たち二人が組めば、果たしてどれほどの力を発揮できるのであろうな?」
「私とピースを試す為だけにマーチたちを倒したのですね」
「当たり前だろう。では、行くぞ!」
シャドウは狂気の笑みを顔全体に浮かべビューティに突進する。
彼をとび箱のように軽く避けるとビューティは氷の刃を生成。
そのまま氷の剣を振り下ろすが受け止められる。
互いの武器からは火花が散り一歩も引かない。
何度も鍔迫り合いを繰り返し、激突する両者。
シャドウはお得意のトランプを投げつけるも素早い斬撃で斬られて無効化。
投げたトランプを爆発させる技、トランプ・ショットも見切られる。
間合いを詰め、シャドウに一太刀を浴びせる。
彼は呻き声を上げて後退する。
それはプリキュアとの闘いでは初めてのことだった。
ビューティは氷の息でシャドウの足場を凍らせる。
「これであなたは影分身も瞬間移動も使えません」
「考えたな。流石はチームの司令塔だけはある」
彼女は剣を下ろし、少し悲しみを帯びた表情で語りかける。
「もう……やめましょう」
「俺の反撃前に剣を下ろすとは。空気の読めぬ奴」
「私には、あなたが自分自身を消滅させるために闘っているように見えます」
「……」
「それは誰も幸せにならない虚しい闘いです」
「俺が幸せになる」
「折角蘇った命を無駄にしてはいけません!」
「何……?」
「あなたはとても気高い人です。その気高さを闘いで曇らせないでください」
「シャドウさん。ストロンガーと闘った正々堂々闘ったあなたは、とてもカッコ良かった。自分の為じゃなくて人を守るために闘ったら、あなたは本物のヒーローになれる」
「今の俺にはお前達の言葉など耳に入らぬ。俺が説得を受け入れる相手がいるとすれば、キュアショコラのみだ」
「キュアショコラ?」
「一体どのようなプリキュアなのです?」
「最近誕生したばかりの新しいプリキュアだ。そもそも俺がお前達プリキュアを狙い倒すようになったのも奴に責任がある。怨むなら俺ではなくキュアショコラを怨め。フフフフフフフ……では、また会おう」
顔を見合わせ不思議がる彼女達に構うことなく、シャドウは気障なセリフを残して何処へと消えていった。
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