二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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フレッシュプリキュア!〜裏切りと信用〜
日時: 2017/04/20 15:11
名前: ひのり (ID: CzRhDmzb)

こんにちは!映像版ではプリキュアの小説でおなじみのひのりです!
今日からはフレッシュプリキュアの小説書きます。
前にも書いただろとか言われそうなので言わせてください。ブッキー中毒なんです。
楽しんでいただけるよう頑張って書くので、温かい目で見てやってください。
それでは、よろしくお願いします。

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Re: フレッシュプリキュア!〜裏切りと信用〜 ( No.15 )
日時: 2017/04/30 18:57
名前: ひのり (ID: fYNkPhEq)

「パイン!」

 すぐに、ピーチ達が駆け寄ってくる。
 檜村君を寝かせた私は、人差し指を口に当てた。

「彼が……ノールの正体……?」

 パッションの呟きに、私は頷く。
 その時、「んんっ……」と声がして、彼が上体を起こした。

「檜村君っ……」
「えっ? アンタ……誰だ?」

 キョトンとした表情で言う檜村君に、私は一瞬戸惑った。
 どういうこと? ノールの状態では、キュアパイン=私であることを知っているような発言をしていたのに。
 彼は不思議そうにキョロキョロと辺りを見渡して、首を傾げた。

「えっと……僕、今まで何を……それに……アンタ達は……」
「えぇっと……私たちは、フレッシュプリキュアっていう……」
「……悪いけど、興味ないや」

 ピーチの言葉を無視して彼は立ち上がり、歩いて行く。

「あ、ちょっと!」
「待って! ……多分、彼、ノールになってる時の記憶が無いんじゃないかしら」

 私の言葉に、ピーチ達は目を見開いた。
 しかし、すぐにパッションは「確かに……」と同調した。
 そこで、ハッとした。

「そういえば、この街の人の大半は、私たちの正体に気付いているわよね? でも、彼は知らない」
「……ノールの正体に気付いた瞬間、謎が一気に増えたわね」

 ベリーの言葉に、私は頷いた。
 そして、重たい口を開いた。

「ねぇ……これから先は、私に任せてくれないかな?」
「「「……え?」」」

 不思議そうに言う三人に、私は「お願い」と手を合わせた。

「彼……どうも、私を一番目の敵にしているみたいだし……この中で彼と接点があるの、私だけだし」
「でも、一人でする必要なんて……」
「お願い。私……彼を、孤独から救ってあげたいの」

 私の言葉に、三人はしばらく不安そうに顔を見合わせた後で、フッと微笑んだ。

「分かった。ブッキーに任せるよ。ちゃんと、彼の幸せをゲットしてあげて」
「ブッキーなら、きっと完璧に、彼を助けてあげられるわ」
「私たちにもできることがあったら、言ってくれれば、精一杯頑張るわ」

 三人の言葉に、私は頷いた。

Re: フレッシュプリキュア!〜裏切りと信用〜 ( No.16 )
日時: 2017/04/30 23:05
名前: ひのり (ID: fYNkPhEq)

 檜村君の情報を集めるために、私は、校舎の跡地に行ってみた。
 現在、校舎は再建作業中。まだまだ時間はかかりそう。

「山吹さん。どうしましたか?」

 その時、背後から声を掛けられた。
 振り返ると、そこには私が通う高校の担任である石川先生が立っていた。

「石川先生!」
「なぜここに? まだ学校は休校中ですよ?」
「えっと……檜村君について、少し知りたくて……」

 私の言葉に、一瞬、先生の顔が不快そうに歪んだ。

「……どういうことが、ですか……?」
「なんでもいいんです! どの中学校から来たのか、とか、彼の過去について、とか!」
「お、落ち着いてください。……彼の過去に関しては、あくまで、教師が知っている限りでしかないんですが……」

 それから、先生は一度言い淀み、続けた。

「……彼は昔、イジメを受けていたようです……」

−−−

 電車に揺られながら、私は右手をギュッと握り締めた。
 私たちが住む町から、電車で約一時間かけて行く場所に、檜村君の母校があるらしい。
 これだけで、少しだけ檜村君の謎が分かった気がした。
 私たちがプリキュアであることを知っている人は、あくまで四ツ葉町に住む人たちだけ。
 言いふらすことでもないし、町の人たちもあまり人に言わないようにしてくれていたので、他の町に住む人たちが私たちについて知らないのも無理はない。
 檜村君は、おそらく高校に進学するに当たって、四ツ葉町に引っ越してきたのだ。
 私たちがプリキュアとして活動していた時期は中学二年生。だから、知らなかったのだろう。

『次はー、○○町ー』

 聴こえてきたアナウンスに、私は鞄を持って立ちあがった。

 駅から出て十分ほど歩いた先にある喫茶店。
 石川先生が、檜村君の母校の先生を介して、彼の過去について一番よく知る少女に連絡をしてくれたらしい。
 檜村君がノールに変身する理由は分からない。でも、彼の怒りの原因は、恐らく彼女にある気がした。
 彼女を通じて檜村君の怒りを静めることさえできれば、きっと、ノールも暴れなくなる気がする。

「あっ……」

 私が喫茶店に入った瞬間、一人の少女が声を漏らした。
 黒くて長い髪はとても綺麗で、その顔つきは、どことなく私に似ている気がした。
 私は彼女の元に近づき、口を開いた。

「檜村陸君の……知り合い、ですか……?」
「はい……。今の、陸君の、クラスメイトさん、ですか?」

 その問いに、私は頷いた。
 すると、彼女は息を呑み、ゆっくりと俯いた。
 私は無言で向かい側の席に座り、ゆっくりと深呼吸をしてから、口を開いた。

「えっと、私は、山吹祈里って言います」
「あ……鈴村真理、です……」

 そこまで言って、彼女は自分が注文したであろうオレンジジュースを飲み、深呼吸をする。
 私は、その様子に、自分用にパインジュースを注文して、真っ直ぐ彼女を見つめた。

「それで……檜村君の過去というのは……」
「……私と陸君は……中学時代、付き合っていたんです……」

Re: フレッシュプリキュア!〜裏切りと信用〜 ( No.17 )
日時: 2017/05/01 21:05
名前: ひのり (ID: fYNkPhEq)

〜三年前〜

 人気のない校舎裏。
 真理はそこに着いて辺りを見渡すと、すでに、陸が着いていた。

「ごめん。待たせたかな?」
「え? あ、いや、全然。今来た所だよ」

 強張った声で言う陸がなんだか可愛く見えて、真理はクスッと微笑んだ。

「それで……何の用かな?」
「あ、えっと……僕、鈴村さんの事が好きです! 付き合ってください!」

 そう言って手を差し出してくる陸。
 真理は、少し迷った後で、その手を握り、「こちらこそ、よろしくお願いします」と言った。
 すると、陸は信じられないと言った様子で顔を上げ、やがて、「っしゃぁ!」と歓喜の声を上げた。

 ……何も知らない状況で見ていれば、ここから先、彼等には幸せが待っているとしか思えないだろう。
 だが、しかし、ここから先に待っていたのは……絶望だけ。


「おはよう!」

 翌日。教室に入った陸は、早速元気な挨拶をした。
 明るく元気でお調子者な彼は、いつもこうして挨拶をする。
 いや、むしろ、いつも以上に元気なくらいに。
 しかし、普段なら誰かが挨拶をするハズなのに、誰も挨拶をしないのだ。

「あ、あれ? どうしたんだよ、皆」
「ったく、朝からうるせぇな」

 そう言うのと同時に、体格の良い男子が教室の扉を閉めた。
 次の瞬間、男子生徒が、全員ニヤニヤと笑いながら立ち上がり、陸の周りを囲った。

「えっ……?」
「ハハッ、ビビってんのかよ。……なぁ!」

 その言葉と同時に、ドゴッと音を立て、蹴りがみぞおちに入れられた。
 陸は口から息を漏らして、その場に蹲った。
 蹲ったその背中を、男子生徒達が踏みつける。

「ガハッ、ゲホッ、なんだよ、急に!」
「うるせぇなぁ。少し黙って……ろ!」

 一人の男子が、そう言って陸の顔面を蹴り飛ばした。
 床に倒れ込んだ陸は、立ち上がろうとするが、脳震盪を起こしたようで中々立ち上がれない。
 その時チャイムが鳴ったので、他の生徒達は全員素早く着席し、やがて、担任の教師が入って来た。

「ん? 檜村。どうして倒れてるんだ。立てるか?」

 事情を知らない教師は、そう言ってしゃがむ。
 心配をかけないようにと、陸は「大丈夫です!」と言って立ち上がった。
 しかし、まだフラフラするのか、少し足取りがおぼつかない。

「おいおい、本当に大丈夫か? 保健室に行った方が」
「あ、だったら俺が連れて行きますよ〜」

 ニヤニヤと笑いながら言う男子に、陸は顔を青ざめさせた。
 しかし、すぐに真理が手を挙げて立ちあがり、「私が行きます!」と言った。

「え、でも……」
「遠慮しないで。じゃあ、ちょっと保健室まで行ってきます」

 そう言って敬礼する真理に、担任は「おう。気を付けろよ〜」と軽い口調で言った。
 しかし、二人は気付いていなかった。
 真理が立ちあがった瞬間から向けられている、敵意剥き出しの視線に。

「それにしても、急にあんなことするなんて、男子最低だよね。何があったんだろ?」
「分からない……彼らの反感を買うようなことはした覚えないんだけど……」

 元々、陸は男女問わず人気が高い。
 先ほど上述した性格に加え、誰にでも優しくできる優しさを持ち、見た目も中々イケメンだ。
 整った顔立ちに、真っ黒な綺麗な髪が映える。
 成績優秀で、スポーツだって平均並みにはできる。
 そんな彼を苛めるような理由など、存在するハズがないのに……。

「んー……まぁ、私も探ってみるよ」
「ありがとう、真理……僕は、こんな彼女を持って幸せだよ」
「フフッ。……大好きだよ。陸君」
「あぁ。僕も」

 陸と真理は、顔を見合わせて笑い合った。

Re: フレッシュプリキュア!〜裏切りと信用〜 ( No.18 )
日時: 2017/05/06 16:50
名前: ひのり (ID: fYNkPhEq)

 それからというもの、イジメはどんどん激化していった。
 最初は暴力だけだったのが、いつしか、物を奪ったり、日常用品に悪戯をしたり、金を奪ったりと、少しずつ陰湿なものになっていった。
 いつしか、真理も学校では自分から陸に話しかけることはなくなり、傍観者となっていた。
 だが、帰り道だとかで話してくれたり、電話やメールをしてくれているだけ、まだ陸にとっては救いだった。
 しかし、徐々にイジメが酷くなっていくにつれて、自分の心が消耗していくのが分かった。
 そんなある日だった。彼に、一本の電話がきたのは。

「はい、もしもし?」

 見覚えのない電話番号から来た電話に、陸は不安を伴いながら応答する。

『もしもし。檜村陸さん、ですか?』
「はい、そうですが……」

 神妙な言葉に不安になりながらも、陸は答える。

『実は、檜村裕次郎さんが、事故に遭いまして……』

 世の中に、伏線なんてものは存在しない。
 何かが起きるのはいつも、突然なのだ。
 父親の死。それは、陸の心に大きな影を落としていた。
 葬儀では、母や何人かの親戚が泣いている中、一人だけ無表情で、暗い瞳で呆然としていた。
 その後、夫を失った悲しみから、母親はノイローゼになって、病院に入院した。
 最初は親戚の家に行くように勧められたが、陸はそれを断った。
 たとえイジメを受けていても、唯一自分の味方をしてくれる真理から、離れたくなかったのだ。

「あれ? 父親が死んだ檜村陸君じゃないか」

 学校に行くと、早速男子がちょっかいをかけてきた。
 しかし、陸にとって、もはや、真理以外の生徒はどうでもよくなっていた。
 真理さえいれば、イジメを受けても、痛くも痒くもない、なんて思っていたから。

「おいおい、無視かよ」

 その言葉と同時に、軽く小突かれる。
 しかし、未だに暗い目をしている陸に、男子はイラつき始める。
 その時、扉が開いた。入ってきたのは、真理だった。

「真理……」

 陸の目が微かに輝く。
 真理はそれに微笑んだ、陸に近づき……彼を、蹴り飛ばした。

「な……!?」

 女子の力なんて、そもそもたかが知れている。
 陸はその場に尻餅をつき、真理を見上げた。

「真理……?」
「……気安く名前を呼ばないでくれる?」

 冷たい言葉に、陸は、背筋に寒いものが走るのを感じた。
 真理の口角は吊り上がり、そして……全てを、壊す。

「あはは! まさか本当に好きだと思ってたの!? そんなわけないじゃん! 誰がアンタみたいな根暗と付き合うかっての」

 ———なんだ? 何が、どうなっている?
 突然の状況に、陸は驚きが隠せない。
 真理は続ける。

「全部お遊びだよ、お遊び。信じる方が馬鹿なんじゃないの?」

 視界がグニャグニャと捻じ曲がる。
 それから、殴られ、蹴られ、金を奪われた。しかし、陸は抵抗の一つもできなかった。
 父を失った悲しみ。裏切られた失望感が胸の中をぐるぐる回って、消えていく。

「もう、何もかも、信じられない……」

 もしこれ以上何かを信じて裏切られたら、きっと自分はダメになってしまう。
 そう思った瞬間、自分以外の全てが、マネキン人形に見えるようになっていた。
 裏切られた頃、陸は、中学三年生だった。
 二年間以上も続いていたイジメのストレスからか、彼の髪の色素は薄くなった。
 それからは、ただイジメに耐えるだけの日々が過ぎ、精神病院から退院した母と話し合った結果、四ツ葉町にある獣医の学校に通うことになった。

Re: フレッシュプリキュア!〜裏切りと信用〜 ( No.19 )
日時: 2017/05/06 21:27
名前: ひのり (ID: fYNkPhEq)

「……というのが、陸君に起こった、一連の出来事です」

 真理さんの言葉に、私は「そう……」と頷いた。
 確かに、そんなことがあれば、誰も信じなくなるだろう。
 友達と恋人に、裏切られたのだから。……理由も分からず……。

「でも、言い訳するわけではないのですが、私は陸君を裏切ったわけじゃないんです!」
「え……?」

 私が聞くと、真理さんは悲しそうに俯いて、もう一度、「違うんです……」と言った。
 それは、彼女が朝、学校に行く前の出来事だった。

−−−

「そういえば、真理、檜村君に裏で協力してるでしょ」

 一緒に登校する友人の言葉に、真理は「えっ?」と聞き返した。

「な、何の話?」
「とぼけなくても分かってるって。……檜村君がなんでいじめられてるか、そろそろ話そうか」

 それから友人は一度深呼吸をして、続けた。

「……真理と付き合ってるからだよ」
「え……」
「真理は自覚してないみたいだけど、男子の中では真理はマドンナとかアイドルみたいな存在なの。それが陸君と付き合っちゃったから……」
「でも、陸君は皆の人気者でしょ? それなら、誰かから恨まれることなんて……」
「……前に、すごい人気の声優さんが結婚するってなった時、謝罪会見していたでしょう? 相手なんてどうでもいいの。真理が誰かと付き合うことが、気に食わないんだよ」

 そんなの無茶苦茶だ……。
 あまりに理不尽な理由に、真理は言葉を失った。

「もし、檜村君を助けたかったら、別れるしかないよ……それこそ、アイツ等に分かるくらい、ド派手な喧嘩別れ」
「でも……」

 しばらく迷ったが、結局、真理は別れることにした。
 思っても無いような罵詈雑言を言って、蹴って、後でトイレで泣いた。
 しかし……陸へのイジメが止むことはなかった。
 二年間も続いていると、最早、それをすることが当たり前になっているのかもしれない。
 そして、彼は自分のことを最も恨むようになったらしく、視線すらほとんど合わせられなくなり、ごく稀に目が合うと、怨念が籠った目で睨まれた。

−−−

「そんなことが……」
「本当なら、彼に謝りたい。でも、きっと彼は、許してくれない。だから、私は許してもらわなくても構わない。……でも、私のせいで人を信じられなくなったのなら……助けたい」

 悲しそうに俯いて言う真理さんに、私は、何も言うことができなかった。

「……私は、私にできることをします。それが成功するかは……」
「いえ、これは、私が悪いですから。……いずれ、彼に直接会って、話をしたいです」

 そう言って、真理さんは悲しそうに微笑んだ。


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