二次創作小説(新・総合)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者
日時: 2019/06/27 09:50
名前: セイント (ID: Z3Nydegv)

第一話 プロローグ

藤丸立香とマシュ・キリエライト、そして彼らを支えた数多の英霊やカルデアの人類の未来を掛けた戦いが終わり人類最後のマスターであった少年藤丸立香はいつもの日常に戻りマシュと共に立香が以前通っていた高等学校に通うことになった。

立香「みんな、おはよう。」

マシュ「みなさん、おはようございます。」

俺は教室に入りクラスメイトの人たちと挨拶を交わした。中には女子と登校しているためか嫉妬の視線を向けてくるものもいたが気にせずに席についた。予鈴がなる直前一人の男子生徒が入ってきた。

男子生徒1「よぉ、キモオタ。また徹夜でゲームか。どうせエロゲーでもしてたんだろ。」

男子生徒2「うわ~、徹夜でエロゲーとかキモイじゃん。」

立香「それ酷いブーメランだと思うよ。」

入ってくるなりその生徒は罵倒を受けた。その生徒の名は南雲ハジメ。父親がゲームデザイナー母親が人気漫画家と言うまさに人生の勝ち組とも言える人だった。罵倒したのは檜山大介とその取り巻き、陰口が聞こえたのか俺の事も睨んできたけど。俺から言わせるとハジメは身だしなみが悪いわけでなくただオタクと言うだけだ。だがそういわれる原因は他にある。

女子生徒「おはよう、南雲君。今日も遅刻ギリギリだね、もう少し早く来ようよ。」

その原因である女子生徒がハジメに話掛けた。彼女の名は白崎香織。この学校では三大女神の一人として評されている。ちなみに三人目は俺のパートナーでもあるマシュである。彼女がハジメばかり構うのでクラス中が殺気と嫉妬で満ちているのである。ハジメのほうは生活態度がいいとも言えないので女子からもいいかおされてない。

立香「おはよう、ハジメ。朝から大変だね。」

マシュ「おはようございます、ハジメさん。」

ハジメ「おはよう、二人とも。自業自得とも言えるから仕方ないよ。」

立香「でも徹夜も程々しておいたほういいよ、倒れたら元も子もないだろう。そうだ、俺が栄養価の高い弁当を作ってあげようか。」

ハジメ「いくら何でもそれは悪いよ。」

立香「俺じゃダメか、なら白崎に作ってもらうよう頼んでみようか」

そう言った時クラス中の殺気と視線が酷くなった。ハジメからは余計な事をと言うような視線を向けられ白崎から南雲君さえよければと言うような感じだ。別に悪い事は言ってないんだけどな。クラスメイトも言いたい事があるならちゃんと言えって言いたくなる。

男子生徒3「香織ってば、また南雲に構って。ほんと香織は優しいな。」

男子生徒4「全くだぜ、そんなやる気のない奴放っきゃいいのによ。」

女子生徒2「おはよう、南雲君に藤丸君。それにマシュさんも。」

俺たちに話掛けたのは三人の男女だった。一人目は天之河光輝。成績優秀でスポーツ万能、さらには容姿端麗という一見完璧に見えるが唯一の欠点がある。それは正義感が強い故に思い込みが激しく自分にとって都合のいい解釈するのである。現に白崎の気持ちにも気づいておらずただ優しいという理由だけでハジメに構っていると思い込んでいるのだ。二人目の男子は坂上龍太郎、光輝の親友であり空手部に所属している細かい事を考えない脳筋タイプ。三人目は女子で名前は八重樫雫。気立てが良く凛としているため男子より女子にモテるという何とも言えない人であるが実際は乙女チックなところがあると言う。

光輝「南雲さ、いい加減香織に甘えるのはやめろ。いつだって君に構ってやれないんだから。」

香織「どうして、そんなこと言うの光輝君。私が南雲君とお話したいから構っているだけだよ。」

俺がそれを聞いたときちょっとだけ笑いかけた。何故なら天之河の言い分は白崎には通用しないのである。白崎に欠点があるとすればそれは天然すぎるところである。やがて予鈴がなり授業が始まった。そしてその日の昼休み俺はいつものようにマシュと一緒に弁当を食べる事にしている。ちなみに今日は俺が食事当番でもある。お弁当を食べようとした時白崎がまたハジメに話掛けていた。

白崎「南雲君、今日もそれだけなの。それじゃ栄養付かないでしょ。私の弁当分けてあげるから。」

立香「それなら俺の分も分けてあげるよ、自信作だ。」

マシュ「先輩が分けるなら私も分けます。」

それを聞いたときハジメはバツの悪そうな顔をした。俺とマシュがハジメに分けるのは親切心とハジメにこれ以上殺気と嫉妬を向けられたら持たないと判断したためである。これで少しは減るだろうと思い案の定周りは視線をそらしてる。

ハジメ「僕はいいから白崎さんは向こうで天之河君たちと立香君もマシュさんと一緒にゆっくり食べたらどうかな。」

光輝「香織、俺たちと一緒に食べよう。せっかくの香織の料理を寝ぼけたまま食べるのは俺が許さないよ。」

立香「あれ、俺とマシュはいいのか。それだと差別に値すると思うのだが。」

香織「え、どうして南雲君に弁当を分けるのに光輝君の許しがいるの。」

それを聞いたとき俺や八重樫を始め一部のクラスメイトが吹きだした。天之河のイケメンスマイルも白崎には通用しないのである。天然通り越してちょっと馬鹿なんじゃないかと思った。ハジメはその時異世界召喚されないかなと思ったという。それが通じてしまったのか天之河を中心に魔法陣が広がりクラス中に広がった。

マシュ「先輩。」

立香「ああ、させるか。」

俺はすぐさまカバンの中からギリシャ神話の魔女メディアの宝具ルールブレイカーを模した短刀を突き立てるも魔力が強すぎるのか魔法陣が消滅せず逆に俺の方が吹き飛ばされた。

マシュ「先輩、これは。」

立香「英霊級、いや神霊級の魔術だ。」

俺とマシュの推測をよそに魔法が発動した。畑山愛子先生が教室から出るように言ったが間に合わず俺やマシュを含むクラスメイト全員がこの世界から異世界へと転移した。これがとある学校で起きた集団神隠し失踪事件の始まりでもあった。







Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.13 )
日時: 2019/07/30 19:12
名前: セイント (ID: PMzvo2iV)

第十四話 クラスメイトSide2 過去を超えて 後編

先手を取ったのは光輝だ。

光輝「万翔羽ばたき、天へと至れ、”天翔閃“。」

曲線状の光の斬撃がベヒモスに直撃する。悲鳴を上げ後退するベヒモス。その胸にはくっきりと斜めの剣線が走り赤黒い血が滴ってした。以前は天翔閃の上位技神威でさえカズリ傷一つ付けられなかった。立香とマシュ以外は、何時までもあの頃と同じじゃない、その事が光輝によって証明された。

光輝「行ける、俺達は確実に強くなっている。永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から、後衛は魔法準備、上位を頼む。」

メルド「ほう、迷いなくいい指示を出す。聞いたな、総員光輝の指示でいくぞ。」

メルド団長も騎士団に指示を出し彼らを引き連れベヒモスの右側に回り込む、其れを期に皆一斉に動きだしベヒモスを包囲する。前衛組がベヒモスを後衛に行かせまいと必死の防衛線を張る。ベヒモスが地面を粉砕しながら突進する。

龍太郎「させるか。」

重吾「行かせん。」

クラスきっての二大巨漢、坂上龍太郎と永山重吾がスクラムを組むようにベヒモスに組み付いた。

龍太郎・重吾「「猛り地を割る力をここに、”剛力“。」

身体能力、特に膂力を強化し地を滑りながらベヒモスの突進をくい止める。三者三様の雄叫びを上げ力を振り絞る。ベヒモスは人間に完全に止められずとも勢いを殺され苛立つように地面を踏み鳴らした。

雫「全てを切り裂く至上の一閃、”絶断"。」

雫の抜刀術がベヒモスの角に直撃するが食い込むだけで切断には至らない。だがメルド団長が半ばまで刺さった雫の剣の上から自ら騎士剣を叩きつけた。魔法で剣速を上げると同時に剛力をも強化した鋭く重い一撃だ雫の剣に押し込むように衝撃を与えベヒモスの角を斬りおとした。角を斬りおとされたベヒモスは渾身の力で暴れ回り永山、龍太郎、雫、メルド団長を吹き飛ばす。

香織「優しき光は全てを抱く、”光輪“。」

衝撃により地面に叩き付けられそうになった四人を光の輪が無数に合わさってできた網が彼らを優しく包み込む。形を変化させることで衝撃を殺す光魔法だ。香織は間髪入れずに回復魔法を四人に掛ける。”回天“、それは遠隔の複数の人を回復させる中級光系回復魔法で以前使った”天惠“の上位版である。光輝が突きの構えを取りベヒモスに突っ込み先程も傷口に剣を差し込み、突進中に魔法詠唱を終わらせて魔法発動の最後のトリガーを引く。

光輝「“光爆”。」

聖剣に蓄えられた膨大な魔力が、差し込まれた傷口からベヒモスに流れ込み大爆発を起こした。傷口を抉られ大量出血を起こしながらも技後硬直の光輝をベヒモスはその隙を逃さず鋭い爪を振るった。光輝は呻き声を吹き飛ばされる。爪自体はアーティファクトの聖鎧が弾いたが衝撃までは防げない。それにより彼はせき込む。だがその苦しみも一瞬だ、香織はすかさず回復魔法を掛ける。

香織「天恵よ、彼の者に今一度力を、”焦天“。」

先程の回復魔法が複数人を対象とする代わりに効果がさがるがこの技は個人を対象に回復魔法を高めた魔法だ、光輝は光に包まれ一気に全快する。ベヒモスは光輝が飛ばされた間奮闘していた他のメンバーを咆哮と跳躍による衝撃波で吹き飛ばし折れた角にもお構いなく赤加熱させていく。

雫「・・・角が折れてもできるのね、あれが来るわよ。」

雫の警告とベヒモスの跳躍は同時だった。ベヒモスの固有魔法は経験済なので全員一斉に構える。だが今回ベヒモスの跳躍距離は予想外だった。何と光輝達前衛組を置き去りにしてその頭上を軽々と超え後衛組まで飛んだのだ。前回の戦いでは直近しか跳躍していなかったしあの巨体であれ程の跳躍ができるとは夢にも思わず前衛組が焦りの表情を見せる。ベヒモスが後衛組襲い掛かろうとしたその時ベヒモスが弾け飛んだ。皆が唖然としていると後衛組の後ろから誰かが歩いてくるのが見えた。その人はフードを被っていて誰かは分からなった。

鈴「えっと、誰。」

???「話は後です、まずはあの怪物を倒す事を優先してください。来ますよ。」

顔は分からないが声色からしてその人は女性のようだ、だがそれよりもベヒモスが再び起き上がりその人に襲い掛かった。鈴が危ないと言ったがその女性は手に持った旗を槍のように振り回しベヒモスを吹き飛ばした。自分達があれ程苦戦を強いられていた怪物をいとも簡単に吹き飛ばすその人を見て光輝達は脱帽するがさっきの女性の指示を思い出し攻撃を再開した。

光輝「後衛は後退しろ。」

光輝の指示で後衛組は一気にさがり、前衛組がベヒモスを再び取り囲んだ。ヒット&アウェイでベヒモスを翻弄し続けついに待ちに待った後衛の詠唱が完成する。

恵里「下がって。」

???「今です、攻撃の手を緩めないでください。」

恵里とフードの女性から指示が出て光輝達は渾身の一撃でベヒモスを攻撃しつつその反動を利用し距離を取る。その直後、炎系上級攻撃魔法が発動した。その魔法の名は”炎天“。しかも術者五人による上級魔法で超高温の炎が球体となりさながら太陽のように周囲一体を焼き尽くす。ベヒモスの直上で創られた”炎天“は一瞬にして直径八メートルにベヒモスに落下した。絶大な熱量がベヒモスを襲うがあまりにも威力の大きさに味方までダメージを負いそうになり慌てて結界を張っていく。”炎天“とさらにはそれを強化するようなフードの女性が発動した炎系の魔術攻撃はベヒモスに逃げる隙も与えずに、その堅固な外殻を融解していった。

ベヒモス「グゥルァガァアアアアー!」

ベヒモスは断末魔を上げながらやがて、その叫びすら燃やし尽くされかのように消えていった。そして、後には黒ずんだ広間の壁と、ベヒモスの物と思しき死骸だけが残った。それを見て皆が皆、唖然とベヒモスがいた場所を眺め、ポツリポツリと勝利を確認するように呟く。同じく、唖然としていた光輝が、我を取り戻しスッと背筋を伸ばし聖剣を頭上へ真っ直ぐに掲げた。

光輝「そうだ、俺達の勝ちだ。」

キラリと輝く聖剣を掲げながら勝鬨を上げる光輝。その声にようやく勝利を実感したのか皆一斉に歓声を上げた。男子は肩を叩き合い、女子達はお互いに抱き合い勝利を祝福している。メルド団長達も感慨深そうだ。その時ボーとベヒモスのいた場所を眺めている香織に雫が声を掛け互いに慰めあった。これで先に進める。それはハジメの安否を確かめる具体的な可能性を示している。だがそれにより答えが出てしまう恐怖に香織は弱気が出てしまいそれを察した雫が彼女の手を握った。香織もそれにより弱気を振り払い笑みを浮かべる。そんな二人に光輝達が駆け寄る。

光輝「二人共、無事か、香織、最高の治癒魔法だったよ。香織がいれば何も怖くないな。」

雫「ええ、大丈夫よ。光輝は・・・まあ、大丈夫よね。」

香織「うん、平気だよ、光輝君。皆の役に立てて良かったよ。」

光輝の爽やかな労いに微笑で返す香織と雫。だがその後光輝の言葉に心に少し影を差す。

光輝「これで南雲達も浮かばれるな。自分達を突き落した魔物を自分達が守ったクラスメイトが討伐したんだから。」

光輝の言葉に香織と雫は複雑な表情を浮かべるが彼はそれに気づいていない。どうやら光輝の中ではハジメ達を落としたベヒモスのみとなっておりそれは間違いではない。直接な原因はベヒモスの固有魔法による衝撃で橋が崩落したことだ。しかし、より正確に撤退中のハジメ達に魔法が撃ちこまれてしまったことだ。光輝の中では既にハジメ達は死んだ事になっているばかりかハジメ達への攻撃も意図的ではなく誤爆や事故という事になっている。自分の正しさを疑わない光輝は仲間を故意に攻撃する人がいるとは夢にまで思わないのだろう。

光輝「あなたも有難うございます、危ない所を助けて頂いて。」

光輝は共にベヒモスを倒してくれたフードの女性に声を掛ける。どうやら共に戦ってくれたので味方と勝手に思っているようだ。周りの人も感謝の表情を浮かべるが香織や雫、メルド団長達は念の為警戒を解かなかった。その時その女性は旗の矛先を光輝の首に触れるギリギリの所で向け寸止めした。光輝は驚き後ずさる。

???「油断大敵ですよ、共闘したとは言えほんとに味方とは限りません。今のは私にとって利害の一致というだけです。ある人達を探すためのね、それとあなたはもう少し客観的に物事を見るべきです。立香やマシュ、そして南雲ハジメさんのように、でないと大切な物を失ってしまいますよ。」

その事に光輝は何を言われているのか分からなかった。この人は味方じゃない、共闘したのは利害の一致というだけさらには自分がハジメ達より物事をちゃんと見ていない。この人は何を言っているんだ、まるで俺の方が三人より劣っている感じがしてならない。だが雫や香織は的を得た彼女の言葉に関心をあらわにしていた。光輝がその事に抗議しようとした時その女性がフードを取った。その姿に皆目を奪われた。その女性は自分達と年は変わらない容姿だが金髪碧眼の美少女でしかも強い意志と芯の強さを感じさせる姿に大半の人が見惚れてしまった。その時同じく目を奪われていた雫がこんな質問をした。

雫「・・・一つ質問があるわ、何故あなたが南雲君達の事を知っているの。南雲君達はあなたに会っていないだろうし私達も完全に初対面のはずよ。」

???「何れ時が来たら分かりますよ、それと私は立香やマシュとは面識はありますよ。その関係とは人には言えない親密な関係とだけ言っておきましょう。」

それを聞いたとき皆唖然としていた。浮いた話がほとんどないまさかあの藤丸立香がマシュだけでなくこんな美少女とも知り合いだったなんてしかも人には言えない親密な関係って一体なにがあったんだと皆気になったがその後彼女は気になる事を言った。

???「後、それとある人達に言っておきます、引き返すなら今のうちですよ。でないと歯止めが利かなくなりますから。」

それを聞きある生徒が顔を青くしある生徒はバレないよう必死に表情を隠す。ある生徒はこいつは自分の目的に気づいている、いっそこいつもと思ったが自分達がやっとの思いで倒したあの怪物とも互角に渡り合った。本気を出せばベヒモスくらい一人でも倒せただろう。やりあった所で返り討ちに合うのは目に見えている。

???「それでは私はこれで、あなた達はもっと精進するべきです、力だけでなく心もです。さすれば何れ届くかもしれませんね。このオルレアンの乙女にね。」

皆その言葉に一瞬言葉奪われたその時彼女はフードを脱ぎ捨て皆の視界が遮られた。視界が晴れた時その女性はいなくなっていた。雫は周りを気にしながらそのフードを拾い上げた。

雫「オルレアンの乙女、確かに彼女はそう言ったわよね。」

香織「うん、確かに言ったね。雫ちゃん。でもそれってどこかで聞いた事あるような。」

雫「ええ、そうね、その言葉は誰もが一度は聞く言葉かもしれないわ。オルレアンの乙女、それはフランスの英雄にして救国の聖女、ジャンヌ・ダルクの渾名のはずよ。」

その言葉を聞いて事情を知らないメルド団長達を除く生徒達は唖然とした。ずっと大昔に死んだはずの英雄の渾名を口にした女性。雫は一瞬創世神エヒトが彼女の時代に干渉して召喚したと考えたが何故彼女が藤丸君やマシュと面識あるような言い方をしたのかこの前藤丸君が光輝との決闘の際使った燕返しと言い何らかの事情を知っているであろうマシュの事と言い今回の事と言い二人には大きな秘密があるという事が明らかになり

雫「藤丸君とマシュって一体何者なのよ。」

雫の声が迷宮に響き渡り皆も同じ気持ちを抱きながらも全員国に帰還する事になった。







Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.14 )
日時: 2019/07/19 23:57
名前: セイント (ID: g2/uP3Bc)

第十四話 パートナー達の実力

ハジメ「だぁー、ちくしょぉおおー。」

ユエ「ハジメ、ファイト。」

立香「ユエさん、お気楽だな。」

マシュ「それ以前に私と先輩の応援はしてくれないんですね。」

現在、ハジメ達は猛然と草むらの中を逃走していた。ユエはハジメが背負っている。周りには百六センチメートル以上の雑草を生い茂っていた。そんな雑草を払いのけながらハジメ達が逃走している理由は

「「「「「シャァアアー」」」」

二百体近くの魔物に追われているからだ。ハジメ達は準備を終え迷宮攻略に動き出した後十階層程は順調に降りれた。ハジメの装備や技量、また熟練してきたからにも理由があるがユエの魔法が凄まじい活躍を見せさらには立香やマシュも二人に勝るとも劣らない活躍をしたのも要因の一つだった。四人共どこぞの勇者のパーティーを圧倒できる程の力を持ち互いに息のあった連携を見せここまで来た。

そして現在ハジメ達が降り立った階層で見えたのは樹海だった。十メートル以上の木が一層に生い茂っており空気は湿っぽい。以前通った熱帯林の階層と違って暑くないのが救いだろう。こういう場所に来ると外に出たのかと錯覚してしまう程だ。ハジメ達が階下に降りる階段を探している最中地響きがなり姿を見せたのは巨大な爬虫類を思わせる魔物だった。

立香「見た目は完全にティラノサウルスだよな。」

マシュ「はい、恐竜博士がいたら喜びそうですね。」

立香とマシュがズレた感想を述べていたが二人が言うように見た目は完全に恐竜・ティラノサウルス、だが何故か頭の上に一輪の華麗な花を生やしていたが、ティラノサウルスが咆哮を上げ突進してくる、唯その迫力さと裏腹に頭の花がシュールに揺れていた。ハジメ達が慌てずに戦闘の構えをしたがユエが前に出て手を掲げた。

ユエ「”緋槍“。」

ユエの手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形を取り一直線にティラノの口内目に目掛けて飛翔し圧倒いうまにティラノを貫き周囲の肉を容赦なく溶かし一瞬で相手を絶命させた。地響きを立てながら横倒しになるティラノ。その頭についてた花がポトリと落ちた。立香はその花を拾った。

立香「この花、唯の花じゃなさそうだな。」

マシュ「もしかしたら、寄生種の一種でしょうか。」

立香とマシュの指摘にハジメも賛同するが同時に押し黙った。何故かというと最近ユエ無双が激しい。最初のころはハジメ達の援護を徹していたが途中からハジメ達に対抗するように先制攻撃を仕掛け魔物を瞬殺する。その為ハジメ達の出番が減ってしまいハジメは自分が足手纏いになっているのかと不安がっていた。

ハジメ「あ~、ユエ。張り切るのはいいけど・・・最近、俺等、あまり動いてないきがするんだが。」

ユエ「・・・私、役に立つ、ハジメのパートナーだから。」

立香とマシュのようにハジメとユエは既にパートナーとして随分な活躍を見せている。唯ユエの場合ハジメ達の援護をだけしているのは我慢できなかったようだ。確かにこの前ハジメの事を一蓮托生のパートナーと言っていた気がするがだがその時ユエは魔力枯渇するまで使い果たし後倒れてしまいハジメ達が慰めるのに苦労したがその事もありいい所を見せたいのだろう。

ハジメ「はは、いや、十分役に立っているって、ユエは魔法が強力な分、接近戦は苦手なんだから後衛を頼むよ。前衛は俺と立香の役目だ。」

ユエ「・・・ハジメ・・・ん。」

立香「と言っても俺の場合はどの職にも当てはまらないと思うけど。」

ハジメの指摘のシュンとなるユエ、ハジメの役に立つ事に拘りすぎる嫌いのあるユエの苦笑しながら彼女の頭を優しくなでる。それだけでユエの機嫌は直ってしまうから何とも言えない。そして立香の場合は前衛と後衛もそつなくこなすから彼の場合は彼が言った通りどちらとも言えない。ハジメとユエがいちゃついていると気配を感じそちらに視線を向けると十体程の魔物が取り囲むように向かってくる。統率の取れた動きに狼型の魔物かと思いハジメ達は現場を離脱する。円状に包囲しようとした魔物に対しハジメ達はその内の一体に突進した。茂みを抜けたその先には体長二メートル強の爬虫類、ラプトル系の魔物、それも頭にチューリップのような花をヒラヒラさせて。

ユエ「・・・可愛い。」

ハジメ「・・・流行りなのか。」

立香「いや、どう見ても違うだろ。」

マシュ「多分、これも寄生種なのでしょう。」

ユエが思わずほっこりしながら言えばハジメはシリアスブレイカーな魔物にあり得ない推測を口にしそれを立香とマシュに突っ込まれた。唯ラプトルは花等知らんと言うような殺気を放ち臨戦態勢に入った。頭の花が揺れてるがそれの構わずラプトルはハジメ達に飛びかかる。ハジメ達は左右に分かれるように飛び退き回避する。立香がガンドで動きを止めハジメが試しにチューリップを撃ち抜いてみた。ラプトルは一瞬痙攣し着地に失敗した後地面を転がり樹にぶつかった。

ユエ「・・・死んだ。」

ハジメ「いや、生きてるっぽいけど。」

ハジメの見立て通りラプトルは起き上がり辺りを見回し地面に落ちてるチューリップを見つけると歩み寄り親の敵と言わんばかりに踏み始めた。予想外な行動に皆固まったがラプトルは満足したのか如何にもいい仕事をしたと言わんばかりに天に吠えた。そしてようやくハジメ達に気が付き彼らを見た。

ハジメ「今気づいたのかよ、どんだけ夢中だったんだよ。」

ユエ「・・・やっぱりイジメ。」

ハジメが突っ込みユエがいじめられていたのかと同情するかのようにラプトルを見た。ラプトルは暫く硬直するもすぐに姿勢を低くして牙を剥き出しにしハジメ達に飛びかかってきた。ハジメは咄嗟にドンナーを掲げ大きく開いたラプトルの口に照準を合わせ電磁加速されたタウル鉱石の弾丸を撃ち抜いた。一筋の閃光となってラプトルの口内を貫通し後頭部を粉砕し背後の樹をも貫通し樹海の奥に消えた。跳躍の勢いそのままに滑りながら絶命したラプトル。ハジメ達も何とも言えない表情でラプトルの死体を見た。

ハジメ「ほんと、一体何なんだ。」

ユエ「・・・いじめられて、撃たれて・・・哀れ。」

ハジメ「いや、イジメから離れろよ、絶対違うから。」

立香「さっきので自由になったはずなのに何でまた襲い掛かってきたんだ。」

マシュ「まだ、怒りが収まってないから奴当たりさせろでしょうか。」

立香とマシュが推測を立てたがハジメは訳が分からずそもそも迷宮の魔物自体が意味不明ばかりなので気にする事はやめた。包囲網が狭まってきたので急いで移動し有利な場所を探ってゆく。程なくして直径五メートルはありそうな太い樹が無数に伸びている場所に出た。隣合う樹の太い枝が絡み合いまるで空中回廊だ。そこから狙い撃ちしようとした時ある事に気づいた。

ハジメ「何でどいつもこいつも花つけてんだよ。」

ユエ「・・・ん、お花畑。」

フォウ「フォウ、フォフォフォウ。」

立香「似合ってないなとフォウが言っている。」

ハジメの言う通りラプトルは皆頭に花をつけていた。ユエとフォウがズレた感想を言い立香がフォウの言葉を翻訳していた。ハジメ達はそれぞれの武器や力を使って倒していくがキリがない。やがてラプトル系だけでなくティラノ系まで現れ近くの樹に登って対処するが相手は体当りをしたり樹に登ろうとしたりして中々しつこい。恐竜はまだ半数以上も残っている。しかもさらに増えてる。そしてハジメもある事に気づいた。

ハジメ「こりゃ、いくら何でも可笑しいだろ。たった今全滅しただろ。なのにまた特攻、まるで強制されてるみたいに。さっきまで確証がなかったから言えなかったけど、これって立香やマシュが言ったように、あの花は、もしかして。」

ユエ「・・・寄生。」

マシュ「それなら本体がいるはずです。それさえ倒せばどうにかなるという事でしょう。逆に倒さなければ。」

立香「俺達はここで永遠に恐竜ハントしなければならなくなるという事だ。」

ハジメ達は物量作戦で来られる前に魔物を洗脳していあるであろう本体を探す事にした。でなければ階下探しなどやってられない。座り込んでいるユエに吸血させている暇はないのでハジメは神水を渡そうとしたがユエはそれを拒み両手を伸ばした。

ユエ「・・・ハジメ、抱っこ。」

ハジメ「お前いくつだよ、ってまさか吸血しながら行く気か。」

ハジメの推測にユエは頷いた。確かに神水ではユエの魔力回復は遅いし不測の事態に備えて回復させておきたい。だが自分が必死に駆け巡る最中に吸血される構図はさすがに抵抗を覚える。だが背に腹は代えられなく抱っこは邪魔になるのでおんぶしてハジメは本体を探し立香やマシュもそれに続く。

そして冒頭、ハジメ達は現在二百体近くの魔物に追われていた。草むらが鬱陶しいと吸血が済んでいるユエはハジメの背中から降りようとしない。しかも事あるごとにハジメの首筋に噛みついて吸血してくる。ハジメ達は草むらの向こう側に見える迷宮の壁、その中央付近にある縦割れの洞窟らしき場所だ。その場所に使づくと魔物達はその場所に近づかせまいと動きが激しくなる。ハジメ達は思い切ってその場所に突貫してみる事にした。

ハジメ「ユエさん、さっきからちょくちょく吸うの止めてくれませんかね。」

ユエ「・・・不可抗力。」

ハジメ「嘘だ、殆ど消耗してないだろ。」

ユエ「・・・奴の花が、私にも・・・くっ。」

ハジメ「何わざとらしく呻いてんだよ。奴のせいにするなバカヤロー、っていうか余裕だな、おい。」

こんな状況にも関わらずハジメの血に夢中なユエ。元王族なだけあって肝が据わり方が半端ない。立香やマシュ、フォウが呆れた視線を送るも彼らは二百体以上の魔物を引き連れ縦割れに飛び込んだ。縦割れの洞窟は二人並べが窮屈な狭さでティラノは通れずラプトルも一体ずつしか通れない。何とかハジメ達を引き裂こうとラプトルが一体がかぎ爪をのばすがその前にハジメと立香が迎撃しすぐさまハジメの錬成で割れ目を塞いだ。

立香「これで奴らは入ってこれないな。有難う、ハジメ。君がいてくれて助かった。」

マシュ「ほんと、凄いです。ハジメさん。」

ユエ「・・・お疲れ様。」

ハジメ「へっ、褒めても何もでねぇぞ。二人共。っていうか、ユエ。そう思うなら、そろそろ降りてくれねぇ。」

ハジメがそういうとユエは渋々と名残惜しそうに彼の背から降りた。余程心地良かったようだ。さっき恐竜達がやたら必死にこの場所に行かせまいといていたためハジメ達は警戒しながら奥に進む。暫く進むと大きな広間に出た。奥に縦割れの道が続いており階下への階段かもしれない。ハジメ達は辺りを探る。気配感知には反応はないがそれでも嫌な予感はしたので周囲の警戒は怠らない。気配感知を誤魔化す魔物がこの迷宮に沢山いたからだ。広間の中央に来た時それが起きた。全方位から緑色のピンポン玉のような物が無数に飛んできた。

立香「・・・嫌な予感がする、皆、この玉には絶対に当たるな。」

玉を聖剣で弾き返した立香はハジメ達にそう指示を出す。彼らは立香の指示を受け飛来する緑の玉を迎撃する。立香は剣、マシュは盾、ハジメは錬成で防ぎユエは風系の魔法で迎撃している。ハジメはユエの吸血鬼の五感に頼ろうとユエにどこに本体がいるかと指示を出すが何故か彼女は答えない。

ユエ「・・・逃げて、ハジメ、皆。」

何とユエがハジメ達に手をかざし攻撃しようとしてきた。見るとユエの頭の上に彼女に合わせたのか赤い花が咲いていた。恐らく敵に寄生されたのだろう。さっきの緑玉が胞子だったようだ。唯これは神経毒の一種のためハジメや立香、マシュは毒耐性のお陰で効果はなかった。ユエの体に人間と植物の姿をしたものが纏わりつく。どうやらユエを人質に取り攻撃を防ぐつもりのようだ。

ユエ「・・・ハジメ、皆。御免なさい、・・・私に構わず撃って。」

何やら覚悟を決めこちらに攻撃をするよう叫ぶユエ、ハジメや仲間達の足手纏いになるくらいだったら攻撃する前に自分事撃ってほしい。だがそんな事は出来ない、必ず助ける、普通ならこういう熱い台詞が飛び出しヒロインとの絆を確かめ合うシーンだ。現に立香やマシュは攻撃を躊躇っている。一昔前のハジメだったら躊躇ってだろうが彼には通用せず

ハジメ「え、いいのか、助かるわ。」

容赦なく引き金を引きユエに寄生していた花を吹き飛ばした。ユエや立香、マシュは勿論の事植物人間型の魔物でさえ唖然としハジメに非難するような目で睨みつけた。ハジメはお前までそんな目で見るなと敵を撃ち倒した。ハジメ達はユエに近づく。

ユエ「・・・撃った。」

ハジメ「そりゃ、撃っていいって言ったから。」

ユエ「・・・躊躇わなかった。」

ユエとしてみては例えそう言っても例え自分が不死身であっても少しは躊躇ってほしかったのだ。あの反応は軽すぎると不満全開で奴当たりする。立香やマシュもあれはないわというような目でハジメを見る。ユエはハジメ、知らないとそっぽを向きハジメは勿論の事立香やマシュもどうやって彼女の機嫌を取るのかこの迷宮攻略よりも遥に難しそうだ。


Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.15 )
日時: 2019/08/25 00:59
名前: セイント (ID: mNBn7X7Y)

第十五話 最奥のガーディアン

あの植物人間を問答無用で倒してから損ねてしまったユエの機嫌を取り戻すのにハジメが気絶するまで吸血されてから随分経った。その甲斐もあってユエの機嫌を直す事に成功し再び迷宮攻略に勤しんでいた。ちなみにその時立香とマシュは自業自得という事でギリギリまでユエによるハジメへの吸血を止めなかった。

そして遂にハジメ達は最初にいた階層から百階目になるところまで来てハジメはその一歩手前の階層でハジメは装備の確認と補充を行い立香とマシュは戦闘の準備や時折ハジメの手伝いをしていた。ユエはそんな彼らを見つめて否ハジメの作業を見るのが好きなかもしれない。

ユエ「ハジメ達、いつもより慎重。」

ハジメ「うん?ああ、次で百階だからな。もしかしたら何かあるかもしれないと思ってな。一般に認識されている上の迷宮も百階だと言われていたから・・・まぁ念の為だ。」

ハジメの指摘に立香やマシュも賛同する。彼らは最初にいた階層から八十階を超えた時点でここが地上で認知されている通常の【オルクス大迷宮】である可能性は消えた。奈落に落ちた時の感覚と各階層をクリアしてきた感覚から言えば通常の迷宮から遥に地下であるのは確実、ハジメ達はここに来るまで実力や技能を磨いてきてそう簡単にはやられはしない。だが油断すれば実力とは関係なく死や致命傷を与えてくるのが迷宮の怖さだ。ちなみにユエを除くハジメ達のステータスプレートはこうだ。

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:76
天職:錬成師
筋力:1980
体力:2090
耐性:2070
敏捷:2450
魔力:1780
魔耐:1780
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・剣術・武術・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解

藤丸立香 17歳 男 レベル76
天職:召喚士・聖剣士
筋力:1976
体力:2086
耐性:2075
敏捷:2385
魔力:2000
魔耐:2000
技能:対魔力・騎乗・解析・陣地作成・魔力放出・全魔力適正・全魔力耐性・全属性耐性・召喚・英霊召喚・聖剣召喚・騎士王憑依・剣術・縮地・武術・直感・気配感知・魔力感知・魔術・道具作成・全麻痺耐性・毒耐性・石化耐性・胃酸強化・威圧・念話・言語理解

マシュ・キリエライト 女 レベル76
天職:盾職人
筋力:2000
体力:2100
耐性:2080
敏捷:2500
魔力:2000
魔耐:2000
技能:対魔力・騎乗・解析・全魔力適正・全魔力耐性・全属性耐性・盾創造・武術・直感・縮地・魔力感知・気配感知・魔術 全麻痺耐性・毒耐性・石化耐性・念話・胃酸強化・言語理解

ステータスは初めても魔物を喰えば上昇するが固有魔法は増えなくなった。主級の魔物なら取得する事もできるがその階層の通常の魔物ではもう増えないようだ。ちなみに立香やマシュは魔物を喰っても技能やステータスは増えるが外見は変わらなかった。二人は毒の耐性があるらしく神水が無くても普通に魔物が喰えていた。立香の方は肉や野菜、果物等も召喚で来ていた。

立香「一番の懸念材料はユエさんか。」

ユエ「・・・私、役に立つ。」

立香「それは分かっている。だが君の場合ステータスプレートが無いから実際どうなのか分からないんだ。」

立香の言う通りユエのステータスプレートが無い。何れどこかのギルドで発行してもらう必要があるがここでは出来ない。実力や魔法とかはある程度分かったが技能やレベル、天職すらが分からないため未知数な部分が多い。恐らくこの中では一番強いが実力差が不明なため連携が取りにくいという懸念なのだ。

ハジメ「悩んでてもしょうがねぇ、兎に角俺達は前に進むしかないんだ。」

ハジメの指摘に立香達も頷き次の階層に降りて行く。その階層は強大な柱に支えられた広大な空間で柱の一本一本が直径五メートルはある螺旋模様と木の茎が巻き付いたような彫刻に彩られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでおり天井までは三十メートルはある。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものでどこか威厳を感じさせるものだ。ハジメ達はこの光景に見惚れながらも我に返り奥に進んで行く。ハジメ達は感知系の技能で周囲を警戒しながら進んで行きやがて大きな扉の前で止まった。全長十メートルはある巨大な扉でこれまた美しい彫刻が彩られている。特に七角形の頂点に描かれた何らかの文様が抽象的だ。

ハジメ「・・・これまた、凄いな。」

ユエ「・・・反逆者の住処。」

立香「如何にも迷宮のラスボスが潜んでいそうな場所だな。さて、一体何が出るか。」

マシュ「恐らくベヒモスを遥に凌駕する魔物がいるかと。」

フォウ「フォウ、フォウフォウ。」

立香やマシュも言ったように如何にもラスボスの部屋って感じだ。フォウもかなり興奮している。気を付けろと言っているようだ。この先はマズイと、ユエもそれを感じたのか額に汗をかいている。

ハジメ「ハッ、だったら最高じゃねぇか。漸くゴールに辿りついたってことだろ。」

ハジメは本能を無視して不敵な笑みを浮かべ立香達も覚悟を決めた表情で扉睨みつける。四人は揃って扉のある近くまで歩いて行き最後の柱を超えたその瞬間、扉とハジメ達の間に巨大な魔法陣が現れた。その魔法陣には見覚えがある。赤黒い光を放つその魔法陣は奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだものと同じものだ。唯ベヒモスの魔法陣が直径十メートルだったのに対し眼前にある魔法陣は三倍の大きさのうえ構築された術式も複雑で精密なものだ。

ハジメ「おいおい、何だこの大きさは、マジでラスボスかよ。」

ユエ「・・・大丈夫・・・私達負けない。」

立香「ユエさんの言う通り、ここまで来て負ける事を考えるなんて格好悪い。」

マシュ「必ず勝ってここから脱出しましょう。」

三人の言葉にハジメが頷きフォウもやる気に満ちた声を上げる。この魔法陣から出てくる魔物を倒さない限り先へは進めない。魔法陣は一層に輝きを増すと弾けるように光を放った。ハジメ達は咄嗟に腕を翳し目を唾されないようする。光が収まったのと同時に現れたのは体長三十メートル、六つの頭と長い首に鋭い牙と赤黒い目を持つ例えるなら神話の怪物ヒュドラだった。ヒュドラは咆哮を上げハジメ達を睨みつける。並の実力者ならここで怖気づく、それ程の凄まじい殺気だった。同時にヒュドラは口を開き火炎放射を放った。炎の壁が出来ハジメ達は左右に散り反撃を開始する。ハジメのドンナーがヒュドラの赤い文様が入った頭を吹き飛ばした。ハジメは内心でガッツポーズを上げるがそれを見た立香が

立香「待て油断するなハジメ、俺達の世界の伝承ならヒュドラには再生能力があったはずだ。」

立香の言う通り白い文様が入った頭が咆哮を上げると白い光が吹き飛んだ赤頭を包み込み逆再生したかのように赤頭が戻ってしまった。立香の言った通り回復魔法の再生能力があるようだ。少し遅れてユエとマシュが緑の文様のある頭を吹き飛ばしたが同じように白頭の叫びで復活してしまった。四人は念話で連絡を取り合う。

立香(皆、伝承通りならヒュドラは本体である頭が不死身で他の首も斬っても何度でも再生するはず。普通なら増えるはずだから違っているとしたら白頭だ。)

ハジメ(それなら白頭を狙うぞ、キリがない。)

ユエ(んっ、)

マシュ(了解です。)

四人で白頭を攻撃するが他の首に邪魔されてユエの術や立香の聖剣も白頭には届かない。黄色い文様の入った頭が白頭を庇うように射線に入る。しかもあまりダメージを与えられてないようだ。まさに盾役、攻撃に盾に回復にとバランスがいいとハジメがそう嘆いたが確かにその通りだ。黄頭はハジメ達の攻撃を尽く受けとめるがさすがに無傷といいうわけには行かずあちこち傷ついていた。白頭がすぐさま回復させるがその頭上でハジメの焼夷手榴弾が炸裂した。このチャンスを逃すかとハジメが念話で立香達に合図を送り同時攻撃を仕掛けようとしたが

ユエ「いやぁああああー。」

ハジメ「!?、ユエ。」

咄嗟にハジメ達がユエに駆け寄ろうとしたが赤頭と緑頭がそれを邪魔するかのように攻撃してくる。立香とマシュがそれを防御魔術で防ぐ。だがその時立香はある事に気づく。それは黒い紋様を持つ頭が未だに何もしてこなかった事だ。いや、ほんとに何もしてこなかったのか、立香は疑問に思いながらももしやと思いながらマシュとハジメの念話で指摘を送る。

立香(マシュ、ハジメ。もしかしたらユエさんは何かの状態異常にかかっているのかもしれない。犯人は恐らく黒頭だ。)

ハジメ「くっ、そうかよ。おい、ユエ。しっかりしろ。」

マシュ「ユエさん、大丈夫ですか。」

ハジメやマシュの呼び掛けにもユエは反応せず唯震えるだけだ。ハジメは立香の言う通りユエがヒュドラに何かされたと考え一度ユエを喰らおうとした青頭の前に立った。ハジメの体を青頭が噛みつこうとした時立香が聖剣で青頭を斬りおとした。ハジメはその隙をついて閃光手榴弾と音響手榴弾を投げた。音響手榴弾の方は八十層で超音波を発する魔物から採取したものだ。この魔物からは固有魔法は手に入らなかったが代わりにその特殊な器官が鉱物だったので音響爆弾に加工できた。二つの手榴弾でヒュドラを怯ませその隙にハジメがユエを抱えて立香やマシュと一緒に柱の陰に隠れた。

立香「よし、ここはあれで何とかしよう。顔のない王(ノーフェイス・メイキング)。」

立香は英国の義賊ロビンフッドの宝具を模した外套を召喚し自身やハジメ達にそれをかぶせた。これはロビンフッドが生前、顔や素性を隠して圧制者と戦った事で具現化した宝具で周りと同化できる言わば透明マントだ。ハジメはこれは何かと声を上げようとした時立香に右手で口を塞がれた。

立香(これは言わば透明マントだ、声までは誤魔化せないから出来るだけ小声で話してほしい。)

立香の指摘にハジメはこくりと頷きマシュも小声ではいと答えた。ハジメは小声でユエに呼び掛けるが彼女は青ざめたまま震え反応しない。ハジメはユエに頬を軽く叩いたり神水を飲ませたりしてユエの手当てを行う。やがてユエの瞳に光が宿った。ハジメの問いかけにユエは彼の名を呼び安心したかのような表情になりハジメの存在を確認するかのように彼の頬に触れた。

ユエ「・・・良かった・・・見捨てられたと・・・また暗闇で一人で・・・」

ユエの様子にハジメ達は困惑するがユエ曰く突然激しい不安感に襲われ気が付けばハジメに見捨てられ再び封印され恐怖で動けなくなったという。つまりあの黒頭はバッドステータス系、相手を恐慌状態に出来るという本当に攻守に渡りバランスのいい怪物だった。敵の厄介さにハジメは悪態をつき立香やマシュもそれに同情する。だがユエは未だハジメを不安そうに見ている。今のユエにとってハジメこそが彼女の心の支えになっていた。そんな彼に見捨てられる事はずっと一人で封印されていたユエにとっては死ぬことよりも辛い事だろう。その時ハジメはユエにキスをした。

ユエは驚愕な表情を浮かべ立香とマシュは一瞬呆気にとられるもこれはハジメなりの対処の仕方だった。ハジメの存在をしっかりと覚えて貰うのと責任と覚悟を持ってユエを守るという意思表示だった。

ハジメ「奴を殺して生き残る。そして、地上に出て故郷に帰るんだ。一緒にな。」

立香「ユエさん、君はもう一人じゃない。だから迷ったらハジメや俺、マシュを思い出せ。」

二人の問いかけさらにマシュも頷きその時ユエは唖然としたが無表情を崩しやがてふんわりと綺麗な笑みを浮かべ頷いた。ハジメはシュラーゲンを使うと言い立香共に前に出ると言いユエとマシュに援護を頼むと言った。ユエは大丈夫と判断し皆透明マントから出た。立香はその場で透明マントを消し新たな聖剣を召喚する事にした。

立香「召喚、オートクレール、ハルパー。」

立香が召喚したのはフランスの叙事詩ローランの歌に登場する伝説の聖剣であらゆる能力を封じる力を持つ剣だ。もう一つハルパーはギリシャ神話に登場する鎌のような形状をしており不死殺し呼ばれる聖剣だ。立香自身この聖剣を使っていた英霊とは出会ってなかったためエミヤの投影や本で見たものを参考にして召喚した。

立香「よし、行くぞ、皆。」

立香の声に三人は頷き攻撃を仕掛ける。黒頭がユエにもう一度魔法で精神攻撃を仕掛けるがもはやハジメの想いを受け取った彼女にはもう通用しなかった。代わりにハジメや立香に仕掛けるが耐性がありそれぞれの苦難を乗り越えてきた二人にも効かなかった。立香は黒頭の首を斬りおとす。白頭が回復魔法を使うが何故か黒頭は再生しない。

立香「残念だったな、オートクレールは能力殺し、ハルパーは不死殺しと呼ばれる聖剣だ。これらに斬られたものは二度と再生しない。」

立香の言葉にヒュドラはその事を理解したのか立香を狙い始めるが彼の動きやマシュの守りに攻撃が届かずハジメやユエの攻撃を受け他の首もその隙をつかれ次々と斬りおとされる。再生魔法が効かないため白頭には成すすべが無く最後に残るもユエの雷系の最上級魔法”天灼“によりとどめを刺された。ハジメとユエはその事に安堵の表情を浮かべるも立香とマシュは経験上念の為に周りを警戒していた。その時立香が声を上げた。

立香「⁉、マシュ、宝具を展開せよ。二人は油断するな。」

マシュ「はい、先輩。」

立香の指示にマシュは絶対的防御を持つ宝具の展開準備に入りハジメやユエも彼の指摘を理解したのか身構える。彼が言った通り何処かに身を潜めていたのか銀色の紋様を持つ頭が極光を放った。

マシュ「モールド・キャメロット。」

立香「よし、俺もローアイアス。」

マシュの宝具の元ネタはアーサー王伝説に登場する円卓の騎士の一人ギャラハッドの宝具だ。マシュは英霊と融合するために造れてた試験管ベビーで今は聖盾の騎士の加護を失ったためマシュは己の霊気だけでかつての宝具を疑似的に再現する。立香も念の為にアイアスの盾を召喚し攻撃を防ぐ。

立香「今だ、二人共。止めを刺せ。」

ハジメ「分かった。」

ユエ「・・・了解。」

立香の指示にハジメとマシュの同時攻撃により遂に銀頭は断末魔を上げ爆散した。ハジメ達は漸く迷宮のラスボスを倒した。ハジメと立香は力を使い果たしその場に倒れ込んだ。

ハジメ「さすがに、もう限界。」

立香「俺もちゃっとだけ、落ちるね。」

ハジメと立香はそのまま意識を手放し安らかな寝息を立てる。ユエがハジメにマシュが立香に寄りそいながらお疲れ様と言った。こうしてハジメ達は遂にオルクス大迷宮を攻略した事になるが彼らがそれを知るのは少し後の話になるのだった。





Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.16 )
日時: 2023/12/24 07:22
名前: セイント (ID: XWukg9h6)

第十六話 反逆者の住処

ヒュドラとの戦いを終えたハジメ達、ハジメと立香は戦いを終えた後に力尽きその場で気を失った。それから暫くしてハジメはある場所で目を覚ました。だがハジメはある事に気づいた。迷宮で倒れたはずなのに何故かベッドで寝ていたのだ。ハジメは起きようとしたが何故か右腕が動かせない。何かに掴まれて動かないのだ。それは何やら柔らかい感じがして動かしてみると

ユエ「・・・ぁん・・・。」

聞き覚えがあるユエの声が聞こえた。唯何故か艶かしい喘ぎ声だった。ハジメは慌てて飛び起きた。ほんとにベッドで寝ていた。しかも純白のシーツに豪奢な天蓋付きと高級感ベッドで周りは太い柱と薄いカーテンに囲まれている。ハジメは最初ここはあの世ではないかという不吉な考えが頭にうかんだが隣から艶かしい声が聞こえてきた。

ユエ「・・・んぁ・・・ハジメ・・・ぁう。」

ハジメは慌ててシーツを捲ると隣には一糸纏わないユエが右腕に抱き着きながら寝ていた。しかもハジメ自身も素っ裸だった。

ハジメ「成程、これが朝チュンってやつか・・・ってそうじゃない。」

混乱して思わず余計な考えが頭に浮かんだがとりあえずユエを起こす事にした。だが彼女はそれを拒むかのようにイヤイアヤと丸くなる。ハジメは周りを見てここがあの世ではないかというまた余計な事を考えてしまった。

ハジメ「ぐっ、落ち着け俺。いくら年上といえど相手はちみっこ。動揺するなど
あり得ない。俺は断じてロリコンではない。」

ハジメは己の中にある欲を払拭しようと必死になって理性を呼び起こす。ユエの太股に挟まれている右手を引き抜く事を諦め何とか呼び掛けて起こそうしたが中々起きてくれずイラっとしたハジメは

ハジメ「いい加減に起きやがれ、この天然エロ吸血姫。」

と言って纏雷を発動した。バリバリと右手の電流が流れる。ユエはビクンビクンしながら奇声をあげて感電する。ハジメが解放するとピクピクと体を震わせながら漸くユエが起きた。

ユエ「・・・ハジメ?。」

ハジメ「おう、ハジメさんだ。寝坊助、目は覚め・・・。」

ユエ「ハジメ!。」

目を覚ましたユエは暫くの間茫然とハジメを見ていたがやがて眼を大きく見開き彼に抱き着いた。勿論素っ裸で動揺するハジメだったがユエがハジメの首筋に顔を埋めながらぐすっと鼻を鳴らしていることに気づくと仕方ないなと苦笑しユエの頭を優しく撫でた。

ハジメ「わりっ、随分と心配掛けたみたいだな。」

ユエ「んっ・・・心配した。」

暫くしがみついたまま離れそうになかったし倒れた後面倒見てくれたのでユエの気が済むまでこうしてようとユエの頭を優しく撫で続けた。暫くしてユエが落ち着いたのでハジメは事情を尋ねた。ちなみにユエにはシーツを纏わせている。

ハジメ「それで、あれから何があった?、立香とマシュは無事なのか?、ここはどこなんだ?。」

ユエ「・・・あの後・・・。」

ユエ曰くあの後力尽きて倒れてしまったハジメにユエが立香にマシュが寄り添っていた。その後後ろの扉が開き新手かと二人は警戒したが特に何もなく時間経過で回復したユエが二人をマシュに任せ確認のために扉の奥に入った。神水のお陰で少しずつ回復しているとはいえ魔力が枯渇し疲労が蓄積している事に変わりない。その為に確かめずにはいられなかった。やがてここがかつて神に挑んだ反逆者の住処だと判明し住み心地が良さそう住居がありユエとマシュはそれぞれ別のベッドで二人を寝かせ看病に当たったのだという。やがてハジメが回復しユエも看病疲れのためそのまま眠ってしまったという。

ハジメ「・・・成程、そいつは世話になったな。ありがとな、ユエ。」

ハジメがお礼を言うとユエは嬉しそうに瞳を輝かせる。無表情であるが、その分瞳は雄弁だ。だがハジメには気になる事があった。何故なら、

ハジメ「ところで・・・何故、俺は裸なんだ。」

何故か妖艶な笑みを浮かべるユエ。ハジメは末恐ろしくなり距離を取ろうとした。リアル朝チュンは勘弁だった。いや、別にユエの事は嫌いじゃないが心の準備とか誰ともなくブツブツとハジメは呟く。

ユエ「・・・汚れてたから、綺麗にした。」

ハジメ「・・・何故、舌なめずりする。」

ユエはハジメの質問に吸血行為の後のような妖艶な笑みを浮かべ、ベロリと唇をなめた。何となくハジメはブルリと震えた。

ハジメ「それで、どうしてユエは隣で寝てたんだ。しかも・・・裸で・・・。」

ユエ「・・・ふふ・・・。」

ハジメ「待て、何だその笑いは!、何かしたのか!、って舌なめずりするな。」

激しくユエに問い詰めるハジメだったがユエは妖艶な目指しでこちらを見つめるだけでハジメは何も言えなくなった。暫くしてユエに問い詰めていたが彼女自身何も答えないので色々諦めて反逆者の住処を探索する事にした。ユエがどこからか上質な服を持ってくる。男物の服だから反逆者は男性だったのだろう。それを着こむとハジメは体の調子を確かめる。何かしらの仕掛けがないか念の為にだ。後ろでユエも着込んだが何故かカッターシャツ一枚だった。ハジメは狙っているのかと聞いたがユエはサイズが合わないと返すだけだった。

ハジメ「・・・天然なら、それはそれで恐ろしいな。」

狙っているのか、天然なのか分からないが、色々な意味で恐ろしいユエに戦慄を覚えるハジメだった。

立香「おはよう。起きたか、二人共。お邪魔だったか。」

マシュ「二人共、お早うございます。」

フォウ「フォウ⁉。」

立香とマシュが二人に声を掛けてきた。フォウが立香の肩に乗っている。心なしか二人共顔が赤い。ハジメはユエと共に二人に軽く挨拶を交わし何があったのか聞いてみた。

立香「・・・その格好を見てすぐ分かったよ、マシュの言う通りお前だろ。マシュに変な事吹き込んだの。」

ユエ「・・・別に添い寝してやれば、殿方は喜ぶと言ってたから。」

ユエの言葉に二人は気まずそうに顔を逸らす。ハジメとユエは知らないが立香とマシュがカルデアにいた頃ロマニや英霊らが変な事ばかり吹き込んでくる事もあったので警戒する事もあったがユエも大概だった。一方ハジメの方はユエの事づけとは言え二人はそこまで進んだのかとさっきとは別の意味で戦慄を覚えた。地球にいた頃からお人好しで有名な立香と白崎、八重樫と並び転校初日から女神の一人として数えられたマシュ。立香が日本に戻ってきたと同時にマシュも来たのでどんな関係かと聞いたら立香は唯のバイト仲間だと答えたが絶対深い仲まで進んでいるとクラスの連中はおしどり夫婦だと叫んでおりクラスの新たな風物詩にもなっていた。

ベッドルームから出たハジメは周囲の光景に圧倒され茫然とした。まず、目に入ったのは太陽だ、もちろんここは地下迷宮なので本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていた。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないために思わず太陽と称した。

ユエ「・・・夜になると月みたいになる。」

ハジメ「マジか、・・・。」

立香「恐らくこの迷宮を造った人が魔法やアーティファクトで具現化したのだろう。それにしても良くぞここまで造り上げたものだ。」

マシュ「はい、かなりの実力者と同時に頭がきれる人物だったんだと思います。」

次に注目するべきは心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがありその部屋の奥の一面は滝になっており天井近くの壁から大量の水が流れて川に合流して奥の洞窟へ流れている。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼の風が心地良い。良くみれば魚も泳いでいるようだ。地上の川からの魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。川から少し離れた場所には大きな畑や家畜小屋がある。今は植物や動物はいないがいれば自炊できそうなものだ。

ハジメ達は川や畑からは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方に歩を進めた。建築というより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

ユエ「・・・少し調べたけど、開かない部屋も多かった。」

立香「特殊な鍵がなければ入れない仕掛けになっているようだ。」

マシュ「罠という可能性もありますから、気を付けたほうがいいでしょう。」

フォウ「フォウ⁉。」

ハジメ「そうか、皆、油断せずに行くぞ。」

石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感がありエントランスには、温かみがある光球が天井から突き出す台座の先端に立っていた。長く薄暗い場所にいた少し眩しいくらいだ。三階建てで上まで筒抜けなっていた。取り敢えず一階から見てみる。暖炉や柔らかい絨毯、ソファーのあるリビングらしき場所、台所やトイレを発見した。長年放置されていた気配はない。人の気配も感じないが、言ってみれば旅行から帰った時の家の様。暫く使ってないが管理維持だけはいているような感じだ。

ハジメ達はより警戒しながら進んで行き更に奥に進むとまた外に出た。そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注ぐとライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。

ハジメ「まんま、風呂だな。こりゃいいや。何ヶ月ぶりの風呂だか。」

立香「俺もそろそろ風呂が恋しくなってたからな。早く入りたいな。」

思わず頬を緩める二人、最初の頃は余裕がなく体の汚れとかは気にしてなかったが余裕ができると体の痒みが気になり魔法で水を出し体を拭くぐらいはしていたが二人は日本人。マシュもまた立香の影響で例にもれず風呂が大好きなのだ。安全確認が終わったら堪能しようと頬を緩めてしまうのは仕方ない。

ユエ「・・・入る、一緒に・・・。」

ハジメ「一人でのんびりさせて。」

立香「右に同じく。」

素足でバシャバシャと温水を蹴るユエの姿に、一緒に入ったら寛ぎとは無縁になるだろうと断るハジメ、立香も同じ気持ちでユエがハジメに好意を寄せていると知っており時々いちゃついてる姿を見て苦笑するが流石に風呂の中までそれをされると気まずい感じになる。マシュと入る時も同じだ。ユエは唇は尖らせて不満顔でマシュはそれを見て苦笑いを浮かべていた。

それから二階で書斎や工房らしき部屋を発見したが二部屋共中の扉が封印されているらしく開ける事は出来なかった。仕方なく諦め捜索を再開し三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかなく奥の開けるとそこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほどの精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央に刻まれており一つの芸術と言っていいほど見事な幾何学模様だ。しかしそれよりも注目すべきなのはその魔法陣の向こう側に豪奢な椅子に座った人影である。人影は既に白骨化しており黒に金の刺繍をしたローブを羽織っている。その骸は椅子にもたれかかりながら俯いておりどうやらその姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。

ユエ「・・・怪しい、どうする。」

立香「罠の可能性もあるが調べてみない事には何とも言えんな。」

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。恐らく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿はまるで誰かを待っているようである。

ハジメ「まあ、地上への道を調べるには、この部屋の鍵なんだろうしな。俺の錬成も受け付けない書庫と工房の封印・・・立香の言う通り罠の可能性もあるが調べるしかないだろう。俺と立香で調べるから二人は待っててくれ。何かあったら頼む。」

ユエ「ん・・・気を付けて。」

マシュ「右に同じくです。」

ハジメはそういうと立香共に魔法陣へ向けて踏み出した。魔法陣の中央に二人が足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が発し部屋を真っ白の染め上げる。眩しさに目を閉じるハジメと立香。その直後二人の頭の中に何かが侵入し、まるで走馬灯ように奈落に落ちてからの事が駆け巡った。やがて、光が収まり目を開けた二人の前には、黒衣の青年が立っていた。









Re: ありふれた職業で世界最強 錬成師と英霊を従える者 ( No.17 )
日時: 2019/09/15 09:36
名前: セイント (ID: 9u1Zwsgn)

第一六話 世界の真実

ハジメと立香がある部屋の魔法陣に立つとその魔法陣が発動しそれが終わるとその先に黒衣の青年が立っていた。

黒衣の男「やあ、初めまして。僕の名はオスカー・オルクス。反逆者といえば分かるかな。」

ハジメ達がどういう事なのか質問しようとしたが彼曰くこれは記憶映像みたいなものでこちらからの質問が出来ないと言うだった。

オスカー「ここまで辿り付いたって事は話さなければならないな。何故我々が神に反逆したのか、そして我々が反逆者であり反逆者ではないことを。」

神代の時代人間族、魔人族、そして亜人族が絶え間なく戦争を繰り広げていた。その事に危機感を抱いた創生神エヒトは彼らに力を与え戦争を終わらせようとした。だがある時神の目的に気付いたものがいた。

それは解放者と呼ばれる人達だった。彼らは神が彼らを戦争という名の遊戯の駒にしたげ上げ戦いを誘発していたことを知るが神を討伐する前に計画が破綻してしまう。エヒトは解放者を神に仇名す反逆者にしたげ上げた。そのため解放者達は守るべき人々を攻撃するわけにもいかず次々と撃たれ残ったのはその中心となった人達だった。彼らは自分達では神を撃てないと判断しそれぞれの場所に大迷宮を作り上げそこに潜伏することにした。いずれ神を倒すものが未来に現れると信じて。


Page:1 2 3 4



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。