二次創作小説(新・総合)

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Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~
日時: 2019/11/14 06:31
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: lAkC0vKa)

 息吹の勇者の伝説は、一人の人間が抱いた空想により書き換えられた。
 特異点と化した滅びた王国に、カルデアのマスターは身を投じる。

 しかし彼等は、知らない。
 その大地にて、架空の英霊による争いが起こっているという事を。


 二つの世界は混ざり合い、そして捻れる定めなのだ。


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 皆さんどうもこんにちは!初めての方もこんにちは!
 Fateとゼル伝のクロスオーバー!今ここに開幕します!
 え、pixiv?LH?
 勿論同時進行です!多分!(おい)
 まぁ、こんな作者で良かったら楽しんで!

追記
Fateの英霊についてよく分からない場合は、先に『Fate/Lost Hope 空白の聖杯戦争』を読めば大体わかります。それでも分からなかったらググって下さい()




【小説情報】

・世界観設定 >>1
・募集情報 >>2

・ピノさんオリキャラ >>3
・Xさんオリキャラ >>4
・月詠さんオリキャラ >>7
・エイジアさんオリキャラ >>11
・桜木 霊歌さんオリキャラ >>13


【も~くじ】

・プロローグ >>6 >>9-10 >>15
・間章 開幕の茶番 >>16
・第一節『命の大地』 >>19 >>22-25
・第二節 『過ぎ去りし過去』 執筆中

Re: Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~ ( No.22 )
日時: 2019/10/30 00:14
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: 18CkmatM)

「それにしても、広いなぁ……」

 どこまでも広がる草原を歩き、遠くを見据えながらポツリと呟く。草原の先には大自然と言える広大な景色が広がっており、空を飛ぶ鳥達、時折聞こえる獣の声、小川のせせらぎに風の音……一方でコケの生えた建造物や廃墟、何かのパーツらしき物も辺りにあり、自然の大地と一体化している。

 ……この世界は、一度滅びた世界なのだろうか。そんな事を立夏は思った。

 存在しない架空の歴史というならば、そんな可能性があってもおかしくない。風化した人工物がある世界は、ほとんどが崩壊を迎えた事による物である。年月が経っているにしては鮮やかで、しかしもう動くことの無い数々の人工物を眺めながらも、立夏は歩みを止めずに歩き続けた。


 草原を渡り、木製の橋を渡る。橋は一歩を踏み出す度に軋むものの、崩れる様子は見せない。とても頑丈な作りなんだろうなと思いながら渡り終えた時、妙な音に歩みを止めた。

「……アコーディオン?」

 笛でも弦楽器でもない、独特で美しい音を聞いて、立夏は聞き覚えのある楽器の名を口にする。音の正体を確かめようと少し歩いてみると、道端にある大きな石の上に一人の人物を目にした。


 正確には、人ではなく『鳥人』らしき人物。
 鮮やかな水色をベースに、白や黄色で彩られた羽毛。大きくも艶やかな嘴。細い足で立ち、翼を手のように使ってアコーディオンを弾いている。見たこともない不思議な光景だった。

「あ、あの……!少し良いですか?」

 思いきって声をかける。鳥人はアコーディオンを弾く手を止めると、こちらに顔を向けた。

「おや、見かけない服装ですね……どこか遠き地方の者か、あるいは異邦からの旅人か。深くは問いませんが、どうかしましたか?」
「えっと、俺……この世界……じゃなくて、ここら辺の事を知らないんだ。頼りになる仲間ともはぐれちゃって……誰でも良いから聞きたかったんだ」

 適当に誤魔化して伝える。きっとこの世界やカルデアやら言った所で、相手を混乱させるだけかもしれない。そう思っての発言だったが、鳥人は首を傾げて立夏を見つめている。眺める様に見つめた後、石の上に静かに座った。

「貴方はもしや……以前出会った旅の者がおっしゃった、『カルデアの者』ですか?」
「…………え!?」

 カルデア。その単語が出てきた事に驚いて大きな声をだしてしまう。その様子を見た鳥人はクスリと笑うと、「あぁ、やはり。服装がどうにも見覚えがなかったので」と言った。

「とは言え、驚かせたのであれば謝罪しましょう。
 私の名は『カッシーワ』。『ハイラル』各地を旅しては詩を歌う、『リト族』の吟遊詩人です」
「ハイリア……リト族?えっと、俺は藤丸 立夏……よ、よろしく」

 聞きなれない単語が連続で流れ、戸惑いながらも自己紹介をする。リト族は恐らく、カッシーワの様な鳥人の総称なのだろう。そしてハイラルとはこの世界の名前だろう。何とか単語を結びつけると、立夏は唐突に浮かんだ疑問を投げ掛けた。

「そういえば……カルデアの事を教えた人って、誰ですか?」
「羽衣のような白い服を纏う、白髪はくはつの少女でしたね。片目を包帯で覆っていましたが、会話が終わった直後に幽霊の様に消えてしまって……カルデアの者の事を、異世界からの希望とおっしゃっておりました……」
「異世界からの……希望?」

 大袈裟な例えに口を傾げると、カッシーワは少し俯いた後に立夏の方を向く。






「恐らく……現在起こっている争い事かもしれません……」

Re: Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~ ( No.23 )
日時: 2019/10/30 20:47
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: 18CkmatM)

「争いって……随分平和に思えるけど……」
「今は起きておりません。争いは主に、赤い月……『ブラッディムーン』の時に」

 赤い月と聞いて、立夏の体が強張る。
 三つ目の亜種特異点『下総国しもうさのくに』。女性の『宮本武蔵』と共に修復したあの特異点にも、赤い月があったからだ。
 もしかしたら、それと関係があるのかも……一瞬だけそう思ったが、よく考えると別名で知られている為、ずっと前からあるのだろう。深く考え込んでいると、カッシーワが立夏の顔を覗きこんで「大丈夫ですか?」と聞いた。

「あ、はい、大丈夫です。ちょっと考え事を……あ、出来れば、争いについて詳しく教えてくれませんか?」
「……出来るのならば、お教えしたいのですが……私も詳しい事は分からず、大雑把な風の便りしか知りません。実際に見た者もいるそうですが、どうにも覚えていないと言うそうなので。しかし風の便りやら噂やらで聞くにしてはあまりにも正確で、誰の話を聞いても矛盾がありません。確証はありませんが、お聞きしますか?」

 カッシーワの問いに、「お願いします」と一言言う。噂でも何でも、聞いておいて損はない。通信が繋がった時の情報にもなる為、なるべく沢山の事を知っておく必要があるのだ。
 カッシーワは立ち上がると、どこか遠くを指差した。立夏が指差された方を向くと、何か大きな建造物が見える。目を凝らすと、それは『城』のようだった。

「あそこに城が見えますね?あれはハイラルの地に在りし唯一の国、『ハイラル王国』の城であります。……今は誰も立ち入れない禁忌の場となっていますが」
「ハイラル王国……前に、何かあったんですか?」

 立夏の問いに、カッシーワは直ぐに答えなかった。少しばかりの静寂の後、羽の腕を下ろす。

「……100年前です。100年前に、このハイラルは崩壊を迎えました」

 崩壊。信じられない言葉に、立夏は驚きを隠せなかった。
 作られた架空の歴史。ダ・ヴィンチの言葉が脳裏をよぎる。

 100年前に歴史が滅びたのなら、何故特異点として確立されているのだろうか?

「ハイラルが滅びて100年が経ちましたが……かつての『厄災』は途絶えておらず、赤い月が登るといつも、おぞましい怨嗟の叫びがあの城から響き渡り、それと共に消えた筈の魔物達が蘇るのです」
「厄災?」
「この世界の歴史に関しては、この道の先にある村の端、『ハテノ古代研究所』の者に聞くと良いでしょう。
 ……とにかく、いつもは魔物が蘇るだけでしたが……近頃、厄災の叫びと異なる咆哮と共に、黒き亡霊らしき者と『竜神族』が、争いを行うようになったのです。
 竜神族は伝承に語られる幻の存在。人の前に出ることは滅多に無く、そして争いは極力避ける者達なのですが……どうにも、竜神族の長と数名の竜神族が行方不明になったらしいそうで」

 カッシーワの話を一通り聞いた立夏は、予想に過ぎないが理解した。
 厄災と呼ばれる何かとは異なる咆哮。
 そして竜神族と謎の亡霊によって引き起こる争い。
 行方不明になった竜神族達。

 これらが、聖杯とその聖杯を扱った少女に関係していると。

「……ありがとうございます、助かりました」
「それは良かったです。これから『ハテノ村』に向かうのですか?」
「その古代研究所の人に話を聞いてみようと思って」
「そうですか。道の途中で魔物が出没する事もあるので、どうかお気をつけて」

 にこやかに微笑むカッシーワに礼を言うと、立夏はハテノ村へと続く道を歩き出した。

Re: Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~ ( No.24 )
日時: 2019/11/01 17:17
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: k0yQBLKc)

 少しだけ坂になっている道を、無言で歩く。小川は静かな水音をたてて流れ、そよ風が道に生える草を揺らしていく。
 橋や村があるのは分かったが、ここまでの道のりで出会ったのはカッシーワ一人だけだ。100年前の崩壊で、もう人はほとんど残っていないのだろうか。そんな不安がよぎった時、遠くの川の中心にある物に目が留まった。

 この世界の景色とほとんど一体化しており、しかし明らかに何者かによって作られたであろう、青い光の灯った塔らしき建物だ。登る場所も降りる場所も見当たらず、川の中心に飾り物のようにして立っている。少なくとも立夏達がいる世界では絶対に作ることが出来ないだろう。

「なんか……この世界って不思議だなぁ」

 そんな事を呟いて再び歩き出そうとした時、通信機から一瞬だけ砂嵐の音が聞こえ、塔よりも深い青色のランプを灯した。


『人とは異なる種族、謎の技術により造られた太古の建造物。自然と共に生きる世界とは、これまた面白い特異点だ。そう思うだろう?立夏』
「!?」

 突然聞こえた男性の声に驚いて通信機を見る。するとランプの光が強まり、目の前に正方形の映像を映し出した。映像の中には、燕尾服を纏う細身の男性が機械性の円形の椅子に座っている。

『やぁ、無事なようで安心したよ。何かとんでもない事が起こりそうで仕方が無いと『モリアーティ』が五月蠅うるさいから、ダ・ヴィンチ女史に内緒で映像通信機能をこっそり追加してみたが……どうやら成功の様だね』
「え……『ホームズ』!?」

 映像の中で笑顔を見せる男性、『シャーロック・ホームズ』に立夏は驚いて大きな声を出してしまう。レイシフトの際に姿を見せなかったというのに、唐突にこの特異点に来てそして突然姿を見せたからだ。

「無事だったんだね……他のみんなは?」
『ミス・マシュとダ・ヴィンチ女史を含む数名のスタッフはまだ復帰出来ていない。気絶しているだけなのだが、どうにも、魔術的干渉が若干あって目を覚まさなくてね。意識が戻るまでは私が代わりを務めているよ』
「魔術的干渉……」

 恐らくあの少女が強制的にレイシフトさせた事だろう。あの少女は確かに人間だが、夢による干渉で聖杯を扱う所を見て以来、まるで中に別の『何か』がいるかのようだ。あのダ・ヴィンチを気絶させるというのだから、相当な力を持っているのだろう。

「そういえば、ホームズはあの時どこにいたの?」
『部屋だよ。私の部屋。出ようとしたら何故か開かなくなってね。『ナイチンゲール』が側を通ってくれたから、なんとか手伝ってもらって今に至っている』

 開かなくなったのも、やはりあの少女の仕業なのだろう。どうやら思ったより事態は深刻なようだ。そう思っていると、ホームズが軽く咳払いをする。



『さて……通信を繋げる一方で状況を整理してみたが、そちらの世界に飛ばされた人間は立夏を含めて約七名。勿論、名前及び個人情報も全把握済みだ。そして先ほどの強制レイシフトによって約半数のサーヴァントが意識を失い、十数騎ものサーヴァントが特異点に飛ばされている』
「何だって!?」

 尋常じゃ無い被害に、愕然とした。ホームズも険しい顔で話している。
 ぐずぐずしている暇は無い、何とかして聖杯を回収して、特異点を修復しなければ……
 そんな焦りに動揺を隠せずにいると、それを察したのか、

『焦る必要も、急ぐ必要も、今は無い。今は特異点の情報収集に努めてくれ。大丈夫、みんなはすぐに目を覚ますだろうから』

 ゆっくりと話すホームズに図星を突かれた。焦った心が、熱が冷めるかのように静まっていく。その途中で、どこかほっとするかのような安心感も感じられた。

「……ありがとう、ホームズ」

 いつもだったら『礼なんて要らないよ』と笑顔で言うホームズだが、この時だけは、何も言わずに微笑みだけを見せていた。

Re: Fate/Grand Order ~幻想風化大陸~ ( No.25 )
日時: 2019/11/12 22:29
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: lAkC0vKa)

 藤丸立夏の生存を確認できた頃、気を失った者達と看護をする者達で込み合う医務室で、一人の男性が目を覚ました。
 長い黒髪に黒いスーツを纏う男性は、体を起こした直後にどこからともなく眼鏡を取り出してそっと掛ける。鈍器で殴られたかのような頭痛に顔をしかめ、辺りを見渡す。

「ここは……医務室か?何故こんなにサーヴァントやスタッフが倒れて……」

 状況を理解出来ない事に戸惑いながら立ち上がると、医務室の扉が開く。

「ん?随分早く目覚めたね、『諸葛孔明しょかつこうめい』。あの太陽王でさえまだ目覚めていないのだから、君が誰よりも早かったのは予想外だ。しかし、実に良いタイミングだと私は思うよ」

 数名のスタッフに代理を少し任せて席を外したホームズは、目を覚ましている孔明を見るなり流暢に喋り出す。孔明は不機嫌そうな顔をそのまま治さずに、話を遮るように口を開いた。

「どういう事だ、ホームズ。頼むから分かるように説明してくれ……あぁ、頭が痛い。昨日徹夜していた事は覚えているが、ここまでの頭痛は別の原因だろう?」
「勿論。察しが早くて助かるよ」

 頭を抱える孔明に、ホームズは頷いてみせる。そして機械製の球体の椅子を顕現させてそれに座ると、事の事情を一から説明し出した。
 第三者の介入による強制レイシフト、魔術干渉による意識不明者、

 架空の特異点の話をしている最中、孔明が何かに気付いたかの様に顔を上げる。それは丁度ホームズが特異点の名を言った時だった。

「『幻想風化大陸ハイラル』。国名にも地域名にも存在しない、本当に架空の大陸だ。そこの世界ではハイラル王国が100年前に滅びていると立夏から報告が……孔明?何か思い当たる節でもあるのかい?」
「は?いや、何でもない。状況に驚いただけだ」
「……そうか。立夏の存在確立も行わなければいけないから、私はもう行くよ。じゃあ、君はここで意識不明の者達を見ていてくれ。もう少ししたら、ナイチンゲールが来てくれるだろうからね」

 ホームズがひらりと軽く手を振って、医務室を出ていく。孔明は辺りを見渡した後、大きな溜め息をついた。






「まさか……いや、あり得ない。これはきっと偶然で、そんな筈がない。



 マスターのレイシフトした特異点が、ゲームの地である筈なんて……」

Fate/Grand Order ( No.26 )
日時: 2019/11/17 08:56
名前: 餅兎ユーニアス ◆o0puN7ltGM (ID: VysvHxvS)

第二節 『過ぎ去りし過去』








何も無い純白の空間。そこに一人の少女以外の生命はなくて。



右目が何かで覆われて見えない事に気付いて手を当ててみると、つぎはぎの縫い目が施された布で覆われていると知る。手に取ってみると、それは黒い眼帯だった。いかにもわざとらしく雑に縫い目が施されているが、簡単に壊れるような物には見えない。眼帯を手に取った時に白いマントの一部が見えて、自分の服が寝る時のパジャマでなくなっている事にも少女は気付いた。

「ど……どういう事?これって、夢?」

戸惑って自分の頬をつねってみる。しかし少女がこの空間から消える様子は一向になかった。大きな声を出してみたり、自分の前で両手を強く叩いてみたり、様々な方法を試しても、少女はこの空間から出られなかった。

「嘘……嘘だよね。ねぇ、誰かいるんでしょ?何で私をこんな所に連れて来たの?何が目的?」

誘拐でもされたのだろう。そんな事を考えた途端に思考は混乱に呑まれ、震える声で何も無い場所に話す。声だけじゃない。事実、身体中が震えてた。

「黙ってないで答えてよ!」

体の底から奮い立たせるかのように、叫びに近い声を上げる。いつもの自分には信じられないような声。大声を発した直後、少女はそんな事を思った。
その声が虚無に完全に消えると同時に、小さな鈴の音が微かに聞こえた。咄嗟に、ほぼ無意識に振り返ると、そこには今の少女と同じく、いや、変わってはいるが明らかに違う格好をした女性が一人立っていた。

「神の忌み子と己から名乗りし者が、聖域の静寂を恐れるか。汝は何を名乗ろうと、所詮は人間に過ぎないのであろうな」

凛々しく、そして澄んだ声だった。
白と黒が入り混じる、無造作に切られた短髪。海のような青でありながら、威厳ある光を宿した瞳。空間に負けない程に純白の短いローブの下からは金色の軽鎧が見え、手には刃先が桔梗色の青く鋭い槍をもっていた。

何故かは分からない。しかし少女は女性の姿を目にした時、一瞬にして理解した。
今目の前にいる者が、人間ではない事に。

「私を恐れるな。汝を攫うなどいう不敬を犯すなど、神の遣いがする筈なかろう。汝は、巻き込まれた。原初を宿す怨嗟が、罪無き少女を使い引き起こした『禁忌』に」
「原初……禁忌?」

あまりに現実離れしている。そんな事を少女は考えたが、戸惑うという感情よりも、何故か好奇心の方が勝っていた。

「……もしかして、私……この後何かやらなくちゃいけない?」
「……驚いた。数々の疑問を押し退けてそのような事を問うとは。だが、察しが良いという事にしておこう」

女性はふっと笑うと。少女に歩み寄った。呆然とした様子で見つめる少女の目の前まで来ると、持っている長い槍を少女に差し出す。

「目覚めと共に、顕現は成立する。
汝が己の世界への帰還を望むのならば、世界の崩壊を拒むのならば、私の力を手に、闘え。そして、人理を救いし星見屋の青年に、手を差し伸べよ。
……ただ一度、救うべき時が来たら伝えよ。

『神の栄光は、汝の道を照らす』と」

空間が霧に霞み、女性の姿が消えていく。何も見えなくなる前に、少女は口を開いた。

「待って!貴女の……貴女の名前を!」
「私の名は、汝が今知るべき事では無い。ただ一度だけ、伝える事を許したその言葉。正しき時に口にすれば、探さずとも理解できるだろう」

何があっても、挫けるな。
その一言を最後に、女性の姿は完全に消えてしまった。

空間に取り残された少女。しかし、知らないうちに手に取っていた槍を見つめると、何も言わずに歩き出した。
心の中で、不安定な覚悟を決めて。


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